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【完結】流星の星霊術士  作者: 折尾リク
二章 北極星【ポラリス】
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孤児院への慰問

 不思議な夢をみた。その日の放課後の星霊研究部で、今日も見学に来ていたアマツさんが、僕らに提案した。


「週末に孤児院への慰問があるのですが、皆さんも一緒にいかがでしょうか?」


 アマツさんが、両手を合わせ、澄んだ瞳をキラキラとさせながら、僕たちに問いかける。


「いいわね! 最近は顔を見せてなかったし、いい機会だわ!」


 ステラは、身を乗り出し、待ってましたと言わんばかりに瞳を輝かせた。


「ふふふ、子供たちに何かお土産を用意しておかないとだね!」


 メグも何だかウズウズしているようだ。変な物を持ってこなければいいが。


「私も行くわ、子供は大好きなのよ」


 ことあるごとに「お姉ちゃんって呼んでもいいのよ」と言っていたカレンも、賛成なようだ。


「決まりだね、じゃあ、週末はみんなで一緒に孤児院に行こう」


 みんな乗り気なので、僕たちは、アマツさんの孤児院への慰問に同行することになった。


 ***


 孤児院にやって来たのだが……。僕たちは建物を見て驚愕した。孤児院というには、立派すぎる、美しいレンガ造りの建物が立っていたからである。


「ふふふ、驚きましたか? この孤児院はポラリス教団によって、多額の資金を投入して改修したのですよ!」


 アマツさんはこれ以上ないほどのドヤ顔で、えっへんと胸を張る。


「私の知ってる孤児院じゃない……。もっとボロボロだったわよ!」


 流石のステラも動揺の色が隠せないようだ。


「凄いね、これなら子供たちも過ごしやすそうだ!」


 メグは率直な感想を述べた。


「教団の力は凄いのね……」


 カレンは教団の資金力に少し警戒をしているようだった。


「あっ! せいじょさまだ!」 


 庭で遊んでいた子供の一人が、アマツさんに気付き、駆け寄ってくる。


「えっと、おうちをりっぱにしてくれて、ありがとう!」


 子供が可愛らしく、アマツさんにお礼をする。


「いえいえ、当たり前のことをしたまでですよ」


 子供に対しても真剣に対応する、アマツさん。そんな微笑ましい光景を見て、僕は少し違和感を感じた。


 なぜ、聖騎士が護衛に付いていないんだろう?


 世界樹の前では、暗殺未遂まで起きたのだ、それなのに、護衛もなしに孤児院に慰問に来ている。


「ちょっと、アスター、アマツさんのことを見すぎじゃない?」


 ステラに注意され、ハッとする。あまり見すぎるのも不審がられるか。


「こりゃあ、強敵出現ですなー、カレンさんや」


「まったくですわね、メグさんや」


 メグとカレンが僕をからかうような、寸劇を始める。


「それでは、みなさん、私は管理人さんに挨拶をしてきますので、子供たちの相手を頼みます」


 そんな僕たちのやり取りなど、アマツさんは意に介さないようだ。気付けば僕たちの周りは、子供たちが取り囲んでいた。


「あそんで、あそんで!」


 子供たちが一斉に喋る。僕たちは元気一杯な子供たちと、遊ぶこととなった。


「ステラおねえちゃん、けんのつかいかたおしえて!」


「剣かー、ちょっと早いと思うけど、仕方ないわね、見てなさい!」


 ステラは木剣で華麗な剣技を披露する。あまりの剣さばきに、子供たちは興奮の色を隠せないようだ。


「きんぱつのおねえちゃん、なにしてるの?」


「これはね、帝国から輸入したガラクタだよ、それをこの星霊の祠のそばから採れる、星霊石と組み合わせて……!」


 メグは器用にガラクタを組み合わせていく。そして――星霊石がはめ込まれた、『何か』が完成した。


「おねーちゃん、これはなに?」


「ふふん、これはお手製のお守りだ、君にあげるよ!」


「やったー、おねえちゃん、ありがとう!」


 メグお手製のお守りを貰った子供は大喜びだ。


「はい、アスターくんにも!」


 メグは僕にも、お守りを握らせてくれた。見ると細部が精巧な『ネジ』で固定されている。


 へぇー……、帝国はこんな精密な『ネジ』まで作れるのか。


「ありがとう、メグ、大事にするよ!」


 僕は、お守りを胸ポケットに大事にしまった。ここには母さんから貰ったお守りも入っている。


「プレゼントした甲斐があったよ!」


 メグは満面の笑みになった。


「かれんおねえちゃん、だいすきー」


「私も大好きよ」


 カレンの周りにはやけに子供たちが集まっているな。あふれ出す『お姉ちゃん力』ってことなのだろうか?


「おにいちゃん、おんぶしてー」


 男の子が僕にねだってきた。よし、一肌脱ごう。


「これでいいかな?」


「わーい、おにいちゃんありがとう!」


 僕が男の子をおんぶしていると、周りに子供たちが集まってきた。


「ずるい」 「わたしもして!」 「ぼくも!」


「わかった、わかった、全員してあげるから」


「アスター、何か、お父さんみたい」


 ステラたちの声に、僕はそんなに老けてないぞ、とツッコみたくなった。


 一人一人、おんぶをしてあげていると、背後からアマツさんの声がした。


「大人気ですわね、アスター様」


「ははは、そうですね。もう用事はいいの?」


「はい、もう大丈夫ですわ」


 彼女は一瞬、(かげ)りのある表情で視線を落とした。けれど、すぐにいつもの聖女らしい笑顔に戻ってそう告げた。


「ばいばーい」


「ばいばい!」


 僕たちは子供たちに別れを告げ、孤児院から学園に戻る。正直疲れたが、それ以上に元気を貰えた気がする。


 子供たちにまた会う日を楽しみにしながら、僕たちは茜色に染まる帰り道を、ゆっくりと進んでいった。

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