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【完結】流星の星霊術士  作者: 折尾リク
二章 北極星【ポラリス】
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メグ先生の初授業!

 アマツさんの編入で一騒動あったが、教室は徐々に落ち着きを取り戻しつつあった。


「よし! せっかくポラリス教団のアマツさんが編入してきたのだから、今日は()()()()()()()のことを教えようじゃないか!」


 メグの明るくハキハキとした声が教室に響く。クラスメイトも()()()という単語を聞いて興味津々なようだ。


「真の絆を持ちし者の前に、星霊王ポラリスは顕現すると言われていてね。普通の星霊には祠があるんだけど、ポラリスの祠だけは未だに見つかってないんだ!」


 メグの星霊研究の深さは、王国でも右に出るものはいない。彼女は豊富な知識を惜しみなく披露しながら、授業を進めていく。


「じゃあ、何でポラリスが存在しているって分かるのですか?」


 僕は軽い気持ちで質問してみた。祠がないのに、どうやって契約を結んだのだろうか。


「ふん、勉強不足だよアスターくん! ポラリスはこのジオアントス王国の初代国王が契約していたんだ。だから、ちゃーんと公文書にも記載があるぞ! というわけで、勉強不足の罰としてレポート追加だ!」


 理不尽すぎる……! 軽い気持ちで質問するんじゃなかった。


 メグはブラーエ先生みたいに、授業ではかなり厳しい。だが、それだけ自分の研究に真剣だということだろう。


「じゃあ、ポラリスの意味を、アマツさんに答えてもらおうかな!」


 メグが指名すると、アマツさんは姿勢よく立ち上がり、澄み渡る声でスラスラと回答した。


「ポラリスとは『北極星』のことです。人々の正しき道標になるために、この名前を教団に付けたのですよ」


 アマツ様の完璧な回答に、教室中が熱狂する。さながらポラリス教団の集会のようだった。


「よし、正解だ! 皆もアマツさんを見習うように。特に――勉強不足のアスターくん!」


 またしても名指しでチクリと言われてしまった。メグ()()はきびしいなぁ……


「ふふ、座学ばかりでは退屈だろう? 今日は面白いものを持って来たんだ!」


 メグはそう言うと、懐から何やら小さな箱状の物を取り出した。そして自慢げに語り出す。


「これは()()()()()()と言ってね、星霊の力を一時的にためておけるんだ。アストロ帝国から取り寄せた、最新技術だぞ!」


 おおっ、と教室が大きくざわめき立つ。僕も興味津々だ。クラスメイトたちが一斉にメグの机の周りを取り囲む。


 星霊の力を貯めておける、バッテリーのような物なのだろうか。


「見たまえ、こうやって使うんだ!」


 メグが星霊力保管器に手をかざす。するとぼんやりとした光がメグの手から器具へ吸い込まれるように移っていった。


「それで、それはどうやって使うのですか?」


 ステラが首を傾げながらメグに問いかける。


「使い方は、星霊力保管器に対応する()()()とかいうのに装着して使うらしい!」


 ――()()()? 脳内でその音が、カチリと『機械』という字に変換される。 この世界では一度も耳にしたことがない、僕の元の世界に存在した概念だ。アストロ帝国には存在するのか。流石は軍事大国、といったところか。


「『らしい』って、そのきかい? というのは無いんですか?」


「すまない! だってすごく高かったんだもん! この星霊力保管器だけでも予算オーバーだったんだぞ!」


 メグはぷんすかと怒りながら、少し涙目になっている。


 そんな彼女の姿を見て、教室はドッと笑いの渦に包まれた。決して嘲笑ではなく、彼女の小動物的な可愛らしさに、自然と空気が和んだのだ。


「笑うんじゃなーい!」


 メグは顔を真っ赤にして照れながらも、どこか満更でもなさそうだ。


 それにしても『機械』か。アストロ帝国は星霊と科学を組み合わせて、一体何をしようとしているんだろう。まさか戦争をするつもりなのだろうか? 


「ふふふ、メグ先生の授業、とても面白いですわね」


 隣に立っていたアマツさんに突然声をかけられ、僕は少し驚いたが、平静を装って答えた。


「そうだね。アマツさんも、あんなにハキハキと答えられて立派だったよ」


 僕は改めて彼女の横顔をしっかりと見つめる。やはり、世界樹の時より、どこか柔らかい印象を受ける。確かに顔も声も彼女だ。けれど、あの世界樹を再生させた時の圧倒的な力を彼女からは感じられない。本当に同一人物なのだろうか。  


「そんなに見つめられると……少々照れますわ……」


 しまった、真剣に観察しすぎてしまったか。


 彼女は白い頬をほんのりと赤く染めて、気恥ずかしそうに身じろぎしている。


「ア・ス・ター?」


 背後から、地を這うようなステラの凄んだ声が聞こえた。


「ス、ステラ……ど、どうしたの?」


 僕は油の切れた人形のようにゆっくりと後ろを振り向き、声を震わせながら問いかける。


「今は授業中よ! イチャイチャしてないで、ちゃんと授業に集中しなさい!」


 鬼の形相で怒られてしまった。そして、その怒声を聞き逃さない人物が教卓の前に一人。


「私の初授業で、私語三昧とはいい度胸だねえ諸君! ――そこ、三人まとめてレポート追加だ!」


「私はアスターに注意しただけで……っ!」


「お黙り! 喧嘩両成敗だ!」


「わ、私もでしょうか?」


「アマツさん! 聖女だからといって、私の授業では一切容赦しないよ!」


「そんなぁ……」


 僕たち三人の少々情けない声が綺麗に重なった。


 こうして、メグ先生の記念すべき初授業は無事? に幕を閉じるのだった。 

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