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【完結】流星の星霊術士  作者: 折尾リク
二章 北極星【ポラリス】
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聖女の『奇跡』

 僕はステラ、メグ、カレン、そしてブラーエ先生と世界樹の麓まで来ていた。以前見つかった世界樹の枯死を調査するため、メグと先生が選出され、僕たちも同行することになったのだ。


「それにしても、アランを近衛兵に選出するなんて、アルタイル国王陛下も思い切ったことするわね」


 アランが四星(フォースターズ)を憎んでいたのを知ってなお、身近に置く国王陛下の度量は計り知れない。


「それだけ、ブラウン君が優秀だということだ。ふっ、まあテストの点数は赤点だったが……」


「アランがいないから、学園も寂しくなりますね……」


「きちんと休暇もあるみたいだから、その時思いっきり遊べばいい」


 先生が微笑み、僕の頭をワシワシと撫でながら言った。


「もう見えてくるんじゃないかい?」


 メグが背伸びしながら、前方を眺める。


「あれは!? 何!?」


 カレンが驚愕の声を上げる。そこには木々は枯れ果て、禍々しいオーラを放ち、見る影もない世界樹の姿があった。大地も侵食され変色している。


「これは酷いわね……でも人が集まっているのは何故かしら?」


 ステラは首をかしげる。人々が集まり、何かを待っているかのようだった。


「すみません、皆さんここで何をしているのですか?」


 僕は群衆の中の一人に話しかける。その人は瘦せ細り、世界樹の影響を受けているようだった。


「何って、今日はポラリス教団の()()()がいらっしゃるんだよ、だからその()()を一目見ようって集まっているんだ」


「奇跡ですか……教えていただき、ありがとうございます」


「お前さんたちも見ていくといいさ」


 奇跡か……、まさかね……


 僕は自らの左手の甲を見つめる。北斗七星――()()()()()を起こした証。――まさか、聖女様も僕と同じなのか?


 突如として、雲が裂け街道が光に照らされた。そこを白銀の馬車と白銀の甲冑で身をまとった騎士が通る、その馬車は世界樹のそばで止まった。


「アマツ様、到着いたしました」


 騎士が馬車の扉を開け、中から少女が現れる。彼女の姿は神々しく、それでいてその表情は慈愛に満ち溢れていた。


 彼女の瞳が群衆に向いた、――瞬間、彼女の顔に涙が一筋流れた。それは彼女の純粋さゆえか、あるいは他の何かを孕んでいるのか。


「辛かったでしょう。今、私の()()()()をもって救いましょう」


 彼女の言葉に群衆は涙し、膝を屈する。彼女が世界樹のそばまで歩み寄り、世界樹に左手を当てる。その時僕の目には、信じられないものが映っていた。


 北斗七星の傷――それは奇跡の証。


「ポラリスよ、どうか、世界樹をお救い下さい!」


 彼女が目を閉じ祈りを捧げると、それに呼応したかの如く、世界樹が見る見るうちに再生する。木々は青々と生い茂り、侵食された大地が元に戻る。そして、辺りは心地よい空気で満たされた。


「これがポラリスの導きです」


「うおおおおお!」「凄い!」「流石は聖女様!」「ポラリス万歳! 聖女様万歳!」


 彼女に向けられる凄まじい称賛。そしてそれは群衆の()()()となるだろう。


 妙だ、彼女は既に()()()()()を使っている。あの傷が本物なら、奇跡の力は使えないはずだ。だが実際に奇跡は起きた。


「これが、聖女様の力!?」


「こんなのまるでアスターくんの……」


「実際に目の当たりにすると、疑いようがありませんわね……」


「ふむ……」


 ステラたちがそれぞれ反応する。先生は馬車の方が気になるようだ、鋭い眼光で睨みつけている。


「ブラーエ先生? どうかしましたか?」


「いや、馬車から妙な気配がしてね……」


 妙な気配? 流石に魔将とかじゃなさそうだけど……


 ――その時、群衆を割って黒い影が飛び出した。


 黒装束を纏い、キラリと光るダガーを握った暗殺者。護衛の聖騎士を瞬く間にあしらい、標的である聖女に肉薄する。


 凶刃が彼女の白い首筋に迫る寸前――。


 僕は一瞬でその間に割り込み、腰の剣を抜き放ち、ダガーを鋭く弾き飛ばした。


「ちっ、化け物女を庇ったこと、後悔するぞ!」


 暗殺者は何か札のようなものを胸元から取り出した。すると魔法が発動し、暗殺者はその場から消えたのだった。


 転移魔法……!?


 ***


「やはりアスター様なら、助けてくださると、信じておりました」


「いえ、当然のことをしたまでです」


「ありがとうございます、私はアマツと申します、ポラリス教団の聖女をしております」


 彼女は頬を赤く染めながら、僕にお礼を述べる。


「僕は……って、あれっ?」


 お礼を言おうとして、ふと強烈な違和感を感じた。


 ――僕、まだ自己紹介なんてしていない。どうして彼女は僕の名前を知っているんだ?


「どうかなさいましたか?」


 小首を傾げるアマツの瞳は、僕の疑問を見透かしているような、不思議な視線だった。


「アマツ様、そろそろお時間です」


「すみません、アスター様、これで失礼させていただきますわ」


「はい、わかりました」


 彼女は、少し動揺している群衆に丁寧にお辞儀をした後、馬車に乗り込んだ。

その時に僕の目にあるものが映った。


 馬車の中にもう一人いた。誰だろう?


「アスター、大丈夫? 怪我とかしてない?」


 ステラたちが心配そうに近づいてくる。


「うん、大丈夫だよ」


 僕は平気平気とガッツポーズをしてアピールする。


「アスターくん、聖女ちゃんとイチャイチャしてたねぇー」


「鼻の下が伸びてますわね」


 メグとカレンがジト目で僕をからかう。僕は慌てて否定する。


「そんなことないよ、少し話をしていただけだから!」


「本当かしら? あんなに熱烈な視線で馬車を見送っちゃって」


「ステラまで!? あれは、馬車の中にもう一人いたのが気になったからだよ」


「「「本当にぃー!?」」」


「君たち、いちゃついているところ悪いが、少しフォーマルハウト君を借りるよ」


「「「いちゃついてません!!」」」


「はいはい、とにかく来てくれるか?」


「分かりました」


 聖女アマツ様が起こした、奇跡の謎、気になるけど、今は先生の話を聞くのが大事だ。


 その後、先生の口から告げられたのは、僕たちの日常を揺るがしかねない、魔人国に関するある『驚愕の事実』であった。

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