継承
僕がアメオ様とのやり取りや、前世の事を認識したのは十五歳の誕生日だった。
「そろそろアスターに星霊を継承させるか」
「サロス、まだ早いわよ」
「何を言うソフィア、もう学園に通うのだから星霊はいるだろう」
僕の今の名前はアスター・フォーマルハウトと言う、男爵の家で所謂田舎貴族だ、父さんの名前はサロス、黒髪で左腕が無い、母さんの名前はソフィア、金髪で顔に傷がある、十年ほど前に大きな戦争があったから、その時に負った傷だ、ちなみに僕は黒髪で母さん似だ。
「星霊か、僕に扱えるかな?」
期待と不安が入り混じる。
「心配ない、俺がアスターの歳にはもう使いこなしていたぞ!」
父さんがそう言うなら大丈夫なのだろう、多分。
「善は急げだ、早速星霊を継承させよう、泉の祠に行くぞ!」
父さんは僕と母さんを急かすように、速足で家の外に出て行ってしまった。
「言い出したら聞かないんだから……」
「行こう、母さん!」
母さんは呆れ気味だったが、僕は少し興奮していた、逸る気持ちを抑えて歩いて泉へと向かった。
泉にやって来たが、星霊の継承はどうやってするのだろう? そんな事を考えながら待っていると、父さんが剣を抜き、空に掲げながら叫んだ。
「来い! フォーマルハウト!」
すると眩い光とともに、美しい女性が現れた、その姿はまるで天女様のようで神々しかった。
「サロス、久しぶりじゃない、ソフィアも、10年ぶり位? サロスったら全然呼んでくれないんだから! そこにいるのはもしかして、サロスとソフィアの子供? 大きくなったわね、可愛いー」
結構気さくな方で、拍子抜けしてしまい、キョトンとしてしまった。
「最近は平和だったからな、お前を呼ぶまでもなかったんだよ、こいつはアスターだ、そう俺達の子だ」
「フォーマルハウト、元気そうね」
この人? が星霊?
フォーマルハウトさんは、空中に浮いて僅かに発光している。
「初めまして、フォーマルハウトさん」
僕は少し緊張しながら挨拶をした。
「呼び捨てでいいわよ、アスター! 緊張してて可愛いわねー」
緊張していたのを見透かして、気を使ってくれたのだろうか、フォーマルハウトさんは場を和ました。
「分かったよ、よろしくフォーマルハウト!」
「それじゃあ、本題に入るか、フォーマルハウト、アスターに星霊を継承させるぞ」
父さんは真剣な表情でそう言った。
「本気なのね?」
「ああ」
父さんがそう答えるとフォーマルハウトは少し寂しそうな表情をした。
「そんな顔をしないでくれ、俺の息子を守ってやってくれ、頼む」
「私からもお願いします」
父さんと母さんが頭を下げる。
「わかった、私の力でアスターを守ってあげるわ! 任せなさい!」
フォーマルハウトは明るく返事をする。
「アスター、右手を前に」
父さんに促され右手を前に出す、そこにフォーマルハウトが左手を出し、手の平を重ね合わせた、すると僕とフォーマルハウトの周りが光り出し、何かが僕の内側に流れ込んでくる感覚を覚えた。
「これが、星霊の力?」
僕は初めての感覚に戸惑った。
「そうだ、これで継承は完了した、フォーマルハウトの力は強力だ、一等星霊の名に恥じないように、正しく力を使うのだぞ」
父さんが珍しく厳しい口調で言った。
「もちろんだよ、父さん」
僕はしっかりと父さんの目を見て、そう答えた。
僕の右手にフォーマルハウトとの繋がりをハッキリと感じる、そして左手にも……。
ん? 左手?
「ちょっと待つですのー!」
「痛っ」
僕の左手が少し痛むと、眩い光とともに星霊? が現れた。
「星霊ならドゥーちゃんにお任せですの!」
その星霊はフォーマルハウトが大人の女性位の身長に対して、手乗りインコ位のサイズしかない、星霊だった。
「えっと、ドゥーちゃんでいいのかな? 星霊ならお任せって?」
「ドゥーちゃんとご主人サマは既に契約済みですのー、一蓮托生ですのー、こんなオバサンの出る幕はないですのー」
「おばっ!? 小娘には大人の魅力が分からないみたいね!」
二人の間に稲妻が見えるようだ。
「不味いぞ、星霊二体と同時に契約した者は負荷に耐えられない、早くフォーマルハウトの契約を解除しなければ」
特に何ともないけど、危険な状態なのか僕!?
「ドゥーちゃんとご主人サマは特別だから問題ないですのー、でもオバサンとは契約を解除するですのー」
「またオバサンって、この小娘が!」
フォーマルハウトとドゥーちゃんは一触即発の状況だ。
「二人とも喧嘩しないのよ」
母さんが凄んだら、二人は大人しくなった、母は強しってことか。
「アスター、大丈夫か?」
「うん大丈夫、大きな力を二つ感じる」
「前例がない事だ、あの星霊は大丈夫と言っているが、しばらく様子を見る事にしよう」
特に暴走するような感覚はない、安定していると言ってもいいだろう。
「そういえば聞いてなかったけど、ドゥーちゃんの本当の名前は?」
「ドゥーちゃんはドゥーベと言いますのー、でも可愛くないからドゥーちゃんって呼んで欲しいですのー」
「わかったよ、これからよろしく、ドゥーちゃん、フォーマルハウト」
「何だかおまけみたいね……」
「そんなことないですよ、ははは」
こうして一騒動ありつつも、僕は二つの星霊と契約した。




