表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】流星の星霊術士  作者: 折尾リク
一章 七つの奇跡
12/48

メグ

 王都観光の翌日、僕は学園の廊下でジャックおじさんに会った。


 やけに大荷物だが、出張だろうか。


「アスターか。所用で暫く王国を離れることになった。例の男には気をつけるんだぞ」


「うん、分かってる。でも、ジャックおじさんがいないと少し不安だな……」


 僕が心配そうな顔を向けると、ジャックおじさんは力強く頷いた。


「大丈夫だ。もしもの時はブラーエ先生を頼れ、いいな?」


 ブラーエ先生か……いまいち頼りないんだよな。


「分かりました。ジャックおじさんも気をつけて!」


「おう! それじゃあな!」


 ジャックおじさんは僕の右肩を叩き、足早に去っていった。


 おじさんと別れた僕は、星霊研究部の部室へと向かった。


「アスター、遅かったわね」


 部室に入るとステラが声をかけてきた。中にはメグ先輩とカレン先輩もいる。


「ちょっと学園長と話してて。カレン先輩も来てたんですね」


 僕は空いている席に腰を下ろした。


「ゆっくり話がしたかったのよ」


 カレン先輩は、初めて会った時の暗い雰囲気を一切感じさせなかった。


「それでー、話って何なんだい?」


 メグ先輩が、少しそっけない態度で尋ねる。


「改めて、お礼が言いたくて。アスターくん、ステラさん、メグ、本当にありがとう」


 カレン先輩が深く頭を下げた。


「いいえ! 困っている人を助けるのは当然ですから」


 ステラが意気揚々と答える一方で、メグ先輩は投げやりに言葉を返した。


「別にいいよ、そんなに畏まらなくてもさー」


 なんだか態度に棘がある。まだ仲直りできていないのだろうか。


「ちょっとメグ先輩、真剣に答えてください!」


 ステラがムッとして詰め寄る。


「ステラくんはいいのかい? このままじゃアスターくんをカレンくんに盗られちゃうよ?」


「先輩、何言って……アスターは別に、誰の物でも……」


 唐突な言葉に、ステラが動揺を見せる。


「見えたんだよ、アスターくんとカレンくんが結婚する未来がね……」


 メグ先輩がポツリと、消え入りそうな声で呟いた。


「私のはずだったのに……」


「そんなこと、分からないじゃないですか」


 反論するステラに、メグ先輩が声を荒らげる。


「分かるさ、私は星詠みだぞ! 運命が変わったんだ、アスターくんの奇跡の力で!」


 運命が変わった……? 本来なら、カレン先輩は呪いで命を落とすはずだったからだろうか。


「私だけを……くっ……!」


 メグ先輩は部室を飛び出していった。その瞳には涙が浮かんでいる。ステラとカレン先輩は、あまりの剣幕に絶句して動けずにいた。


「追いかけます!」


 僕は跳ね起きるようにして、部室を飛び出した。


 ***


 学園内を隈なく探したが、メグ先輩は見つからない。唯一探していない、立ち入り禁止の屋上へと向かう。


 辺りは既に暗くなっていた。薄暗い灯りの下、小さくうずくまる人影があった。


「ここにいたんですね、メグ先輩」


「アスターくん……私は最低最悪の女だな。あんな風に当たり散らして……」


 メグ先輩は自嘲気味に言った。散々泣いたのだろう、目の周りが酷く赤くなっている。


「私はね、温かな家族との暮らしが欲しかった。ただそれだけでよかったんだ。でも、どうしてこうなっちゃったのかな……。スピカを継承したのが間違いだったのかな? 君と出会うためには、そうするしかなかったのに……!」


 呪うように、メグ先輩は言葉を零し続ける。


「私のことをスピカとしてしか見ない連中、金儲けにしか興味がない両親……。だから、あいつらの付けた名前は嫌い。マーガレットも……スピカも!」


 メグ先輩の目から、また大粒の涙が溢れた。


「昨日あの女に会ってから、もう、何も見えなくなっちゃったんだ……。こんな役立たずな女、もう要らないよね、アスターくん!?」


 半ば錯乱した、悲痛な叫び。


「お願いだよ、アスターくん……私を、メグが必要だって言ってくれ……っ」


 その言葉が終わるより早く、僕はメグを強く抱きしめていた。


「何があっても、メグが要らないなんて言いません。僕にとってメグは大切な人です。それに――僕はメグの良いところを、いっぱい知っていますから」


「アスターくん……うわああああん!」


 メグが子供のように声を上げて泣き出した。僕は、腕の中の愛おしい存在をさらに強く抱きしめる。


 しばらくして、ようやくメグは泣き止んだ。


「みっともない姿を見せてすまないね、アスターくん」


 メグが僕の体から離れ、照れくさそうに微笑んだ。


「そんなことないですよ、辛いことは吐き出したほうがいいんです」


「……そうだね、二人にも、きちんと謝らないと」


「そうですね」


 僕が答えた瞬間、二人の唇が優しく触れ合った。


「隙ありだよ、アスターくん!」


「な、ななな何を……!?」


 いきなりの出来事に頭が真っ白になる。


「ステラくんばかりズルいからね、これでイーブン、カレンくんには一歩リードかな? 運命なんて変えればいい! 私だって奇跡を起こしてみせるからね!」


 柔和な笑みを浮かべるメグの美しさに、僕は思わず見惚れてしまった。


「ん? そういえば二回していたな! もう一回させるのだー!」


 うわっ、襲われる!?


「寮までの道で捕まえられたら考えてあげますよー!」


 元気を取り戻したメグを見て、僕は心から安堵した。追いかけっこをするように、僕たちは寮への道を帰っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ