ダンジョンアタック
翌日、アキトはそれぞれのトレーニングメニューを持って四人に差し出す。
「アスカ、お前はまず体幹を鍛えろ。剣を弾かれて大きく姿勢を崩すのは致命傷だ」
「は、はい!」
「カスミとエツコは立ち回りが甘い、避けろと味方に言う前に自分が好位置に回るのがチームワークだ」
二人は動かずにぼっ立ちだった事を指摘されてガックリ肩を落とす。
「ススム、お前は…総合的に足りてない。まずは体力。次に技術だな」
「そ、そうですよね…器用貧乏だから…」
「伸び代があると言ってる。器用貧乏と卑下するのはそれでもダメな時だ」
アキトの言葉にまだ自信を持てていないススム。
それぞれの課題を提示されて四人はいつ特訓するのかと不安そうにするが放課後にでもやれとアキトは突き放すのだった。
ーーーーー
アキトは授業をある程度見守って放課後一人でダンジョンへ赴く。
「取り敢えずどの程度か確認しないと生徒達を送り込むなんて無理だよな」
独り言を呟いて自分を正当化しながら内部へ進入する。
街と違い近代的なコンクリートジャングルにアキトはノスタルジックな気持ちになるがすぐにぶち壊すようにゴブリンの群れがアキトの前に現れる。
「なんだろうな、魔窟騒動鎮火に失敗した世界みたいだな」
過去の事件を思い返してアキトはこの世界を評して木刀を構える。戦意を見てゴブリン達は数の優位でアキトを嘲笑うようにニタニタ顔で武器を構えてくる。
そうこなくてはとアキトもグッと居合いの姿勢で力を込める。
「絶空!」
ゴブリン達は圧倒的な力で吹き飛ばされ宙を舞いバラバラになり霧散する。
(霧散した!?…なるほど死体は残らないタイプか)
モンスターどもは死体すら残さないとにかくエコなダンジョンなんだとアキトは知る。
(死体を回収して再利用する無限の循環か、ちょっと減らして帰ってってのは意味が無いわけだな…)
腕試しついでに何かしら貢献できたらと思うが無意味そうでアキトは少しガックリする。
「さっさとコア探すかぁ」
攻略する気満々でアキトは歩みを進める。
小物なんかはすぐに木刀で殴殺していたが流石に深部へ入るとアキトがこの世界に来た時に見た合成獣キマイラが姿を見せ始める。
「いいねぇ!楽しませてくれよ!?」
テンション高めに脚から攻めて姿勢を崩させて頭を何度も殴打する。
絶命するまで繰り返すと暫くして霧散し始める。
「中型以上は時間掛かるのか」
色々と学びがあるとアキトは帰路の事をすっかり忘れて探索に夢中になる。
道中のシャッターの降りている店なんかもシャッター開けたら宝の山何じゃないかとか思っても強盗まがいな事はせずに霧散した煙の導く先へ向かう。
暫く歩くと刺々しいデザインのドラゴンの様な敵が現れてアキトに牙を向く。思わずアキトは「カッケェ」と少年心を揺さぶられるが敵は敵だと木刀を構える。
鋭い爪の連続攻撃を回避を織り混ぜて弾き返す。通じないと察したのか大きく息を吸ってブレス攻撃。
アキトはどうせ正面にしか撃てないだろと大きくジャンプしドラゴンの背中側に周り鎧のような背中を激しく打ちつける。
「ボスっていう割りには弱すぎるんじゃないか?」
耐久性はあっても実力はアキトが遥か上をいっていて様子見は終わりだと圧倒的手数でボコボコにしていく。
「乱舞技にも名前つけてやろうかな…ドラゴンの叩き一丁上がり」
バキバキのボッコボコにされたドラゴンは何とか頭を上げようとするが力尽きる。
ゆっくり霧散してとある一箇所に煙が向かいアキトもいよいよだなとウキウキした足取りでダンジョンコアを目指す。
煙の吸い込まれている先にはコンクリートの壁に根を張るようにクリスタルが刺さっていてコレがコアかとアキトは近付くが背後から笛が吹かれてアキトは両手を上げる。
「不用意にコアに触れるな!」
「おいおい、ここまで俺任せにしてたのに手柄は横取りか?」
「そういう問題ではない!」
武装した集団がアキトに銃を向けてその内の一人がコアを回収するための器具を用意し慎重にコンクリートの壁から引き抜き収容ボックスに入れる。
「そんなに厳重に扱うものなのか?タダの宝石感覚だったよ」
アキトはその様子を笑って謝ると重武装した一人がマスクを外してアキトが一人でここまで来た事を怪物と評する。
「一人でコアまで到達するとは…無許可での進入など色々と処罰の対象になるが今回は大目に見てやる」
「大目に見るのか…無許可ってドコに許可申請すればいいか知らなかったしな」
「非常識な化け物め…」
コアの回収が終わりバタバタと帰投の準備が始まりアキトは拘束される様に銃を突き付けられながら拠点へと戻されるのだった。
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ダンジョンが一つ攻略された事はすぐに放送され拠点は歓喜に包まれる。
「そんなにすごい事なのか?楽勝だったぞ?」
「だから貴様は怪物なのだ…コッチだ。付いて来い」
また拘留されるのかと思ったが学び舎の中の職員室の奥に案内されて眼帯の男と対面する。
「ど、どーも…」
アキトは気不味そうに学長だったのかと思いつつ椅子に座らされる。
「クラスを任せて翌々日には放課後に一人で探索、攻略までされるとはな…面目丸潰れだな」
重装備の部隊は申し訳無さそうに姿勢を正す。
「アキトくん?何のためにダンジョンに足を運んだのか釈明してもらおうか?」
「あー、生徒達が相対するに当たって敵の実力はどの程度か把握しておこうと思いまして…」
正直に答えると学長に大きく笑われて戯けたヤツ扱いされる。
「低層とはいえ一人に攻略されてしまった事は明かす事は出来ないな…悪いが秘密裏に部隊がやった事にさせてもらおう」
「誰がやったとか名誉はいらないんで…えーっと次からは学長に申請すれば良いんですか?」
「…そういうのも踏まえての臨時講師としての期間なのだが…」
非常識極まりないとアキトを叱ろうとするが功労者だしなと微妙な空気になりつつ次からは勝手に行くなと注意をされるのであった。
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翌日F班の朝の挨拶に顔を出したアキト。
放課後の訓練を夜遅くまでしていたようで全員眠そうな顔をしていた。
「皆それぞれの特訓を頑張っているようだな」
「昨日攻略情報が出回って皆浮足立ってるんです。私だって知識を必死に溜め込もうと…」
エツコがやれやれと語る。ダンジョン一つ突破するのがそんなに凄いのかとアキトは学長達の反応から遠からず理解していたが生徒達にまで波及するとはと目を丸くする。
「生徒なら英雄と謳われ将来安泰とまで言われているんですよ?」
(数人分の将来安泰を潰しちまったか…ちょっと申し訳無いな)
一人で調子に乗って攻略までしてしまったアキトは頬を掻いて「なるほど」と答える。
特訓を終えて早く自分達もダンジョンに向かえる様になりたいと願う四人にアキトは指導を先にちゃんとやろうと思う。
放課後、アスカから特訓に付き合って欲しいと頼まれアキトは体幹トレーニングにつき合うことにする。
「しっかり腰を入れろ、行くぞ!」
グッと力を込めているアスカにアキトは何度か打ち込みをして姿勢が崩れないように必死に耐える。前衛の自分が守りの綱と必死に耐え忍ぶ姿に初々しさすら覚える。
「一昨日よりは成長している。守りは戦いの要、お前が仲間を守り勝利に導くんだ」
「はい!」
グラウンドを走るススムの姿もあってF班が何か頑張っていると噂が流れるがどうせ長続きせず全滅する。と陰口のように広まる。
四人はそんな噂にめげずにそれぞれが出来る努力を積み重ねるのであった。




