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救世主Aの冒険記録  作者: D沖信


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生徒との対面

アキトは学び舎の中を案内され一つのクラスルームを示される。


「担当はF班、君は実技担当で班を統括してくれ」


(統括?実技担当なら他の組も面倒見ると思ったが違うのか?)


疑問は置いておいてクラスルームへ入る事にする。

席は六つだけ、そのうち一つには花瓶が添えられていてどういう状況なのか理解する。


「五人か、少ないな」


「四人だ。一人は精神を病んで除隊してます」


机が片付けられていないのはつい最近の出来事と話されアキトは前途多難過ぎると頭を抑える。


「臨時講師のアキト先生だ。失礼の無いように」


「どうも、アキトだ。よろしく頼む」


生徒達はどう見ても根暗な意味で問題児しか居なくてアキトも微妙な顔になる。どう見ても問題のある班を押し付けられたと理解して案内してくれた男を見る。

男はマジだと真剣な表情をアキトに向けて逃げ場は無いんだなと分からされるのであった。


アキトの挨拶が終わると生徒達の自己紹介が始まり一人目が立ち上がる。陰の空気の中で唯一目が死んでいない男子生徒。


友沢 飛鳥(ともざわ あすか)です。得意武器はソード、魔術は苦手ですので前衛頑張ってます」


「わかる。俺も魔法は苦手だ」


アキトが同調すると共感してもらえて嬉しそうにですよねとアスカは頷く。


(飛鳥は姓じゃないんだ…)


内心失礼にも名前にツッコミを入れるアキト。

二人目がゆっくり立ち上がり自己紹介を始める。


「し、四之原 香澄(しのはら かすみ)です。武器は弓、魔法も少しは…」


高身長で猫背な女子、髪の毛も長く弓を本当に扱えるのかと不安になる姿勢だがアキトは取り敢えず褒める。


「遠距離は俺苦手だが扱えるのは尊敬するよ」


「え…えっと、ありがとうございます」


カスミは困惑気味に感謝の言葉を述べて席につく。

三人目の男子が恐る恐る立ち上がり自己紹介を始める。


「は、はい。古代 晋(こしろ すすむ)です。武器は槍、魔法も出来ます」


天然パーマのススムは心強い遠近両刀の存在にアキトはウンウン頷く。


「槍か、魔法も出来て万能な立ち位置だな。期待しているぞ」


「き、期待だなんて…ただの器用貧乏です…」


少しネガティブが入っているが鍛えれば必ず役に立つとアキトは励ます。

F班最後の一人、四人目の女子が立ち上がりアキトを睨みながら自己紹介する。


藍原 恵津子(あいはら えつこ)。武器は杖、魔法主体の戦い方をします。先生とは相性悪いですね」


のっけからアキトを突き放す冷たい態度の三つ編み眼鏡っ娘アキトも少々困惑するがそんな事はないと胸を張る。


「直接戦い方を教えられなくとも模擬戦は出来るからな」


「どうでしょう?どうせすぐに皆死んじゃうでしょうし」


「ふむ、どうしてそんな事を?」


アキトはエツコの言う言葉の真意を尋ねる。


「他の班に比べてF班は人員が少ないし先生もすぐ辞めます。呪われてるんですよここは」


他の生徒達は浮かない表情をして空席をチラ見する。


「俺は本日配属されて色々と知らないからな。良ければ他の班とか活動内容を教えてくれると助かる」


「何も知らないんですね」


エツコに呆れられながら説明をされる。


「本来一つの班には十名以上のメンバーが配属されますが私達F班は(いわ)く付きというやつで問題児や使えない人が島流しされるんですよ」


「ハハッ、跳ねっ返り者ってことか?気に入った。俺が指導する限り誰一人死なせないさ」


アキトは高らかに宣言し四人を、そしてこれから来るかもしれない生徒は誰一人死なせないと誓う。


「馬鹿ですか?戦場で死なせないなんて無理ですよ」


「無理を通すのが俺の仕事だ。だからお前達もついて来い」


熱血教師並の無茶苦茶っぷりに四人は唖然とするがなぜだかアキトの有無を言わせない自信に期待してしまっていた。


ーーーーー


「という訳でまずは基礎体力だ。どれぐらいあるか長距離走で確かめさせてもらう」


四人をジャージに着替えさせアキトがグラウンドを使い俺について来いと軽いランニング感覚でトラックを走る。全速力では無いので最初は全員付いてくるが五周程した所でカスミとススムが肩で息し始めてアキトは時計を確認して足を止める。


「よし、分かった」


アスカとエツコはもう少し出来るとアキトのストップに異議を唱えようとするがバテ気味な二人を見て理解する。


「大体二キロくらいか、戦闘したり歩いたりもあるがちょっと鍛錬不足だな。エツコが最初に音を上げると思ったが意外だな」


「コレでも何度か探索経験ありますから」


魔法使いタイプで体力があるのは心強いとアキトは笑い練習メニューを考える。


「学業もあるからな…可能なら両立して鍛えていきたいな」


学生というのもあり流石に色々とやらないといけないことが多いかと悩んでいると他の班がグラウンドにやって来て体育の授業を始める。

落ちこぼれのF班が何かトレーニングしていると笑い者にされてアキトはムッとするがエツコが止める。


「実際落ちこぼれですから…体力も学力も他に比べて…」


「え?お前その見た目で勉強できないのか?!」


「み、見た目は関係無いでしょう!?」


窓辺で常に本を読んでそうなエツコが学力低めだと言われてアキトは先入観から性格難の優等生かと思っていて驚く。

そしてもう一つの課題は器用貧乏を自称していたススムの体力問題、前衛もして欲しい彼には是非とも体力を付けてもらいたいとアキトは頭を悩ませる。


教室に移動してアキトは用意された問題集を四人に渡して解かせてみる。

最初に持ってきたのはカスミで成績は割と問題なく次にススムと体力とは真逆の結果が出て最後はアスカがバッテン一杯で回答を持って来る。


(戦いに学力はそんなに必要ないが進路が心配になるな…)


高卒の自分が言えた事ではないが学力にもそれなりに問題があると気付かされる。


「授業は俺以外からも受けるからいいとして…確かにちょーっと問題があるな…実技の方はどうなんだ?」


エツコが語ってた探索経験。これをアキトが尋ねると全員困惑したように口を閉ざしてしまいエツコが仕方なく説明する。


「私以外は前回初任務で初探索。私と他二人が先輩として引っ張りましたが二人の内一人が死亡、一人は病みました」


結構ショッキングな内容にアキトは険しい表情をする。


「よくお前は病まなかったな…」


「私達世代は両親をダンジョンで失ってます。半端な気持ちで参加している訳じゃないんですよ」


「地雷だったか。すまない」


探索に出た親世代が既に大半あのコンクリートジャングルでロストしていると聞いてアキトは謝る。

アスカは自分が不甲斐なかったからと拳を握り前衛としての責務を果たせなかったと悔しがり他のメンバーも自分が十分に働けなかったと肩を落とす。


「なるほどな、実技の訓練をしっかりする必要があるな。よし、もう一度外に来い。ちょっと相手してやる」


アキトの一声に全員が先生が相手になるのかと不安がるのであった。


ーーーーー


裏でこっそり旅行鞄から木刀を取り寄せてグラウンドでアキトはびしっと構える。

他の班は新任の先生が何か始めると落ちこぼれのF班の新任はどんなやつなんだと興味津々でアキトを観察する。


「四人全員本気でいいぞ、遠慮はいらない」


四対一で破茶滅茶な提案をするアキトに全員引け目を感じるが対面してアキトの放つ威圧感に全員ぶるっと震える。


「い、行きますよ!?」


武器は本物、アキトだけ木刀と危険過ぎる戦いだが模擬戦が始まるやいなやアキトは時の圧縮を使うまでもなく素早い動きでアスカに突進していき軽くアスカの剣を弾く。


「…っ!?」


軽々と構えを崩されアスカは目を丸くし後ろから援護しようとしていた女子二人はアスカに屈むように指示しアキトを狙い撃ちにするが魔法含めてアキトはひょいと避けてしまう。

ススムがアキトを取ろうと食らいついてくるが逆に槍を掴まれて首筋にスッと木刀が突き付けられる。


「まぁこんなもんか…よし、大体見えてきた。明日からトレーニングメニュー用意してやる」


呆然とする四人にアキトはにこやかにそう言うのであった。

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