上海楼war6
マリアを連れ出し、家へ戻ると言うヒビキ。
GTとメガネアフロは先ほどの少年と少女にお礼をすると言い別れた。
「恐かったろ?」
「うん」
帰り道二人が初めて出会った場所を通りながら歩く。
手を繋ぎ、まるで兄弟の様な光景だが他人であり複雑な感情を纏わりつかせる。
初めて信じられる人に出会い、親とはこうなのかも、兄弟とはこうなのか?
人を好きになった事などないし。
あの日は夜空に月が映えて出会いの祝福をしている様だったが、今日は漆黒の闇が少女へ嫉妬しているかの如く不安な気持ちにさせる。
その不安がさらに彼女にとってヒビキを絶対無二の存在へと変貌させていく。
「でも、助けにきてくれるって信じてられたの不思議だけど。なぜかしらね、ヒビキにできない事なんてなく、きっと守ってくれるって心の奥にあったのよね、だから少しだけ強気でいられたわ」
「守ってみせるさ、せっかく知り合えたんだ。俺だって明日会えなくなったら寂しいって気持ちぐらい持ち合わせてんだからな」
「寂しいの?そんな風に見えないぐらい、毎日が楽しそうに見えたけど」
「楽しいってのはGTもいるしメガネもいるマリアがいて、ユートンやリンリンがいて大勢の人がいるから、マリアがいなくなったら寂しいだろ?俺一人で楽しいは成り立たないからな」
マリアは初めて自分の気持ちに気づく、今までは一人だったから抱かなかった感情を沢山の人間に囲まれるようになり感じるんだなと。
まだまだ熟成してない二人だが今の様な問答が人を成長させたり、強くさせたりと沢山の影響があるとまだ知らない。
沢山の実のある木になるか、朽ちた木になるか、一人で壮大な木になるなんて事は珍しいのだ。言ってしまえばアイルなどはそうなのだろうがそれ故に感じる孤独もあるだろう。
実がなり綺麗な花を咲かせ、四季おりおりの顔を持ち、鳥が集まり虫に寄り逸られれば空からも一際興味をそそる。
人間も同じだ。
ヒビキにとっての実や花や鳥や虫が周りの人間なのだ、だからマリアは楽しそうと表現し、ヒビキは寂しいと答える。
そんな会話を終えるぐらいには家についた。
シャワーを浴びて寝る準備をするマリア。
「ねぇ今日は凄く恐い思いをして不安なの。一緒に寝て欲しいの」
マリアはヒビキにどっぷり甘えたくなっていた。
「あぁ側にいるからゆっくり休んだらいいよ」
マリアは胎児の様な格好でヒビキの胸の中へ飛び込んだ。まるで子犬の様に。
一方その頃
GT達は少年と少女に沢山のお礼をした後だった。
「後ろから失礼」
GTの背中に衝撃が走る。
「てぇなっ!誰だよ」
「私のシマでとんでもない事しましたね、あなた達」
後ろにユンファと3人の男達。
「これでもチャイニーズマフィアの端くれ報復しないと周りへの面目ってありますから死んでもらいますよ、やれ」
その瞬間残りの男達が大きめのナイフで切りかかってきた。
二人はバックステップで避ける。スラム街の一角、関わりたくない者達は路地やら雑居ビルに避難する。
その辺に転がっていた鉄パイプを手にしたメガネ
一人目の男が追撃するも一歩引いて下段から打ち上げ、ナイフの手を弾く。ナイフは大きく弧をえがいユンファの足下へ、がら空きの脇腹へフルスイング。
二人目は上段構えから打ち下ろしナイフを弾いて、すかさずGTが顔面めがけ蹴りをお見舞い、よろけた所に背中からメガネの打ち下ろし。
「面目もねぇな素人相手にこれじゃ」
「くっ死にさらせ」
ユンファの足下のナイフを拾い上げ走り迫る。
鋭い突きから身をよじらせながら回転してGTへハイキック。これをガードしたGT、そのガードされたハイキックの状態から軸足を跳ね上げメガネにソバット。
「最近やっと軌道に乗ったのに、お前らみたいなのは知らないかもしれないが上海楼には上海楼のルールってもんがあんだよ、スラムから這い出てまともに生活すんのにはまず力を見せるか売るもんがねぇと、この女もそう。俺達もそう」
男の巧みなナイフ裁きがGTの胸を捉えそうになる瞬間、メガネの強烈な一撃が男の顎を捉え気絶した。
ユンファが逃げ出し、遠くへ走っていく。
「こいつどうするよ?」
「うーん、上海楼の裏の顔役知り合いはいませんし、保安局もあまり上海楼の揉め事に介入しないんですよね。どうしましょうかね」
転がしておいても問題ないが後々面倒になると困る。
「よぉ兄ちゃん達」
後ろを振り返るとそこには黒い眼帯のスーツ姿の細身の男がいた。
「そいつら渡してくれるか?結構面倒事の種でな上海楼でも最近困ってたんだよ」
「あんたは?」
「クリスティーノ・ルイベ、上海楼東通りのレジネッタって組織のもんだ。クリスっていや東通りではわかる奴が多いから安心しろ、そいつらの店、及び組織はここ最近色んな場所で迷惑かけてたが今さっき上海楼の上役で追放が決まった。俺が責任もってとある場所まで送らなきゃならん、だから身柄の引渡しをして欲しい」
「そいつは構わない」
「ところで行く当てがなくなったら、いつでもウチで面倒見るから顔だしな、東通りの紅蓮ってbarに来れば案内してもらえるか、俺が呼び出されるから」
そう言って男達を運んでいった。
「何者なんだろな?」
「普通の雰囲気じゃなかったですね」
クリスティーノ・ルイベ
非合法組織レジネッタ
彼らはまだ知らない、上海楼の奥底にいる怪物クラスの一人。
通称、ヴァンパイア・クリス
血を好みながら、そして紳士的でもある彼を良く知る者達が呼ぶ愛称。
上海楼に君臨する王様の1人である。
「素人ながら、なかなかに面白いやつらかもな」
ルイスは笑みを浮かべながら闇に飲み込まれ姿を消した。




