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錬金術師の無双劇  作者: ツッチー
11/17

1ー11

布団の中でうじうじして悩みに悩み、何故か丸一日経っていた。


凄い!これが僕の集中力なのか!、と心の中で絶賛していたが普通に寝落ちしただけだ。


それも昼頃から。


本来なら寝過ぎで頭が痛くなっているだろうに何故か未だにピンピンしている。


多分ご飯のおかげだろう。


いいご飯は体すら潤すのだ。


(それじゃあご飯でも食べたら理事室行きますか)


そう心に決め食堂へ向かった。






「おや、ようやく来たのかね」


扉を開けると山のような書類の後ろから理事長の声が聞こえて来た。


「……あの、大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃよ、これくらいなら五徹すればすぐに終わる」

「理事長、五徹は完全にブラックです。労働基準法に反してます

、少しは休みましょう」

「ただのジョークじゃよ、そこまで間に受けないでいいよ」


そう言って理事長は来客用のソファーに座るよ促した。


僕がソファーに座ると目の前の机からお茶の入ったコップが浮き出てきた。


「……因みにこれは?」

「来客用のお茶を魔法で出してるだけじゃよ」

「本当に無駄なところに力を注ぎますね」

「まぁそれがワシの第二の人生じゃからな」


そう、このおっさん、現役を退いてからの所業のせいで『天才的な発想の持ち主(アホ)』と魔術師からは皮肉を言われ、国の住民からは魔術師らしくないと敬意を込めて言われている。


それも魔法という物は神聖な物、あくまで神に選ばれた物が扱える物だとして認識されている。


スキル等で火を出したりできるがそれは完全にスキルという枠組、魔力を消費しないで使えるのは魔法としては認識されないのだ。


その神聖な魔法を民衆のために魔道具を作るのは異端、迫害されても文句は言えない程に禁忌とされていた。


だが一定数戦闘意欲を持たない魔術師もおり、その者の支援もあって今に至る。


僕は一口お茶を飲み息を吐く。


「……なかなかのお手前で」

「まぁそうじゃろうな。入れ方にもこだわっているのは当たり前じゃが茶葉にもしっかりとこだわっておるからな」

「成程、是非その茶葉を教えて欲しいものですが──今日はその様な話をしに来たわけでは無いことは分かってますよね?」


瞬間、今まで緩かった空気がピリッと張り詰めた。


前までの僕だったら耐えられない程の緊張感が漂う。


「来てくれたと言うのは受けてくれるということで解釈していいのかね?」

「ええ、勿論です」

「おお!そうか!ならば今からでも「ただし!」……」


僕は理事長の言葉を遮った。


「二つほど要望があります。これは理事長が言った事を反故しないということを信じています」

「……言ってみよ」

「一つ、探索系の魔道具で最上級の物を譲渡。二つ、当然ながらしばらくの期間は教師としての職業を休まさせて頂きます。週に一度程ならば可能ですがそれ以上は無理です」

「何故そのような条件にしたか聞いてもいいか?」

「はい、質問返しになる様で悪いですが()()()についてどれ程理解していますか?」

「どれ程と言われても……この世の全ての物を作れる、それぐらいしか分からないが?」

「そうですね、追加でいうならばレベルが上がる毎に新たなレシピが追加されるということでしょうか。それも現代技術では作れない物が」


そこまで言って理事長は気づいたのか、顔色をどんどん悪くさせた。


「確かに理事長が言った集積機を作る事はそう難しくありません、逆に簡単かもしれないです。ですが、今の技術であれば精々が過去の遺産である勇者の持っていた剣か魔銃を作る事ぐらいしか出来ないでしょう。そして僕の分析、いや、傾向を見た結果、本に書かれるレシピは開示される度に想像もつかないような、異世界製の武器のような物が増えていくんです。まぁ、まだ全然解放させてないのでまだ大丈夫ですけど」


解放出来ないんで、と巫山戯た様に付け加えた。


それでこの重い空気が軽くなる事はない。


……それもそうだ、もしこの技術が何らかの理由で広まったら世界が終わる。


比喩でも何でも無く、言葉通りに。


世界が炎の海に包まれ真っ黒な雨が降り注ぐだろう。


生態系は完全に破壊され最悪この世界が終わるかもしれない。


実際にそうすることすら出来る物が本の中にレシピとして存在するのだ。


「目先の危険を潰す為に将来に背負わせるつもりですか?」


そう言ってはいるが何をどう言われようとやるつもりだ。


言質をとれば何が起きても自分のせいになる事はない。


いわゆる身代わりの様なものだ。


酷いと思うかもしれないが本当に世界を救うという崇高な目的が有るならばやりきるだろう。


だが、そうで無いなら僕は依頼を受け終わった後に莫大な料金を請求し手を切るだろう。


そして理事長の返事は僕の思い通りの言葉だった。


「ああ、だから君にお願いをしたんだ。遠くの不確定な未来で世界が滅びようとも近くの確定している悲劇を排除しなければその未来すら生まれないんだ。だから、頼む、この通りだ」


理事長は恥も外見も全てをかなぐり捨てて僕に頭を下げた。


まだ成人したばかりの僕に、何十年も生きていた人生の先輩とも呼べる人物が。


それを断れるほど僕は悪く出来てない。


それに、これで理事長の本心が確かめられた。


「分かりました、それじゃあ、これから一緒に頑張りましょう」

「…ああ、共に頑張ろう」


そして理事長と固い握手を交わした。

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