<大家がうちにやってくる。>
家賃の催促にや。気が付いたら3か月滞納しとった。
しゃあないやん?いまどき銀行からやなくて直接手渡しとかある?
そもそも、銀行引き落としにしたところで金ないんですけどね??
「そうですか……家賃出せへんのやったら仕方ないですわ。今月中にここ、出てってこらいますわな」
「は!?ちょっと待ってな!!オバちゃ…いや、おねえさん!!」
「ちょっとおべっか使おうとして失敗すんの、逆に腹立つさかいやめてもらえる?」
「……それは……すんません」
うん。それは俺が悪い。
いやでも今月中に出てけって言うてもやな…。
物件探す時間ないわ、引っ越し費用はともかく、敷金礼金にする金もないんやぞ。
しなみに、引っ越し費用は、あれや。
こないだのスーパーのバイト代、最後の一回の振り込みがあるはずや。
しかしこれを目の前のオバハンに渡してもうたら、全部終わる。
『やれやれ……家賃出す金もないのか』
「せや。せやのにジジイは俺にあたりめをねだったんや」
『それは何というか……知らなかったとはいえ悪かったのぅ』
少なくとも、俺にはこの部屋を追い出されるという選択肢しかない、ちゅうことや。
オバハンは「絶対に今月中やで!!」ってぶつくさ言いながら帰りよった。
もう来んなよ。次に会うときはオバハンにこの家の鍵ぶん投げるときや。
「いうても……参ったなぁ。今の手持ちやと、たぶん借りれるとこないで」
『そこまでか。逆に同情するのぅ』
「同情するなら金をくれ」
『今や伝わらんネタをしても仕方なかろう』
「……え、このネタもう通じひんの?マジ?」
『まぁ落ち着け。問題はネタの話じゃないじゃろが』
「はっ!現実逃避しとった。とにかく引っ越し先やけど……とにかく不動産屋行ってみんとあかんか……少なくともタコ部屋も視野に入れるしかないわ」
『もう生活保護とか受けたらどうじゃ?』
「嫌や。行動が制限される。それは俺の良しとするところやない」
『そんなこと言っとる場合じゃなかろうて』
『ねえねえ、おじーちゃん』
『ん?どうした、ちーちゃん?』
千紘の言葉に猫なで声で返すなジジイ。キモい。
しかも一人のチビから両方聞こえてくるんやぞ。
もはや腹話術よりすごい技になっとるで。声優か?
『あのね……こしょこしょ』
『ほうほう、なるほど。確かにそれは……いけるやもなぁ』
『えへへ』
『ちーちゃんは、そこのバカと違って頭が良い子じゃなぁ』
「なあ、内緒話するんやったら、口に出さんと中でやってくれへん?」
なんか見てると鬱陶しいわ。
『ちーちゃんが、良い案を出してくれての』
「へぇ、どんなん?」
『その前に、該当する部屋があるかどうか探してくるからの。ちょっと待っとれ』
「は!?何探すん!?めっちゃ嫌な予感すんねんけど!!」
クソジジイはふわっと宙に浮いて、窓をすり抜ける手前でこっちを向いた。
『事故物件。』
……嘘やろ?今までの俺の身の上、どう聞いててん。
いや、そういえば身の上なんて話してなかったわ、そういえば。
てことは、これマジで言うてんのか。
逃げたい。めっちゃ逃げたい。
次回へ続く!!
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