<天然ドライヤーや。>
知っとる?“バイキング”って乗りもん。
でっかい船が、こう、前後に大きく振られるねんけどな。
あれの一番ええ場所教えたろか。
左右どっちでもええから、“最後尾”に座ることや。
振られる勢いも、風も、ちょうどええ感じ。
『楽しかった!おにーちゃんの髪の毛、乾いたね!』
「あー……まぁ、髪の毛はな……?」
むしろ服は半乾きで気持ち悪い。そろそろ帰りたい。
けど……。
「千紘、あとは?何かやっときたいことあるか?」
『えっと……ソフトクリーム食べたい!!』
きたかぁ……食いもん系。
家なら別にかまへんねん。別に誰が見とるわけでもなし。
俺は千紘がちゃんと見えるから、普通に食うとこ見えてるし。
けどなぁ……他の見えへん皆さんからは、“何もない空間に浮かんだ食べ物が徐々に消えていく”という、手品も真っ青のホラー現象があるわけで…。
せやけど、家ならアイスクリームやガリガリ君は渡せても、柔らかいソフトクリームは無理やしなぁ…食わせてやりたい気はする。
どこなら一番目立たへんのやろか…。
便所飯ならぬ便所ソフトはかわいそうすぎるやろ?
どうしたもんかな……。
『……おにーちゃん、困ってる』
「え?」
『ごめんなさい。やっぱりソフトクリーム、いらない』
「え、え、待って、なんでや急に!?」
『だって、困らせちゃ、だめだもん』
「誰もそんなこと言うてへんやん。顔に出てたんなら謝るけど、ていうか、誰やそんなん言うた奴!!」
『――――おかあさん』
一瞬、言葉に詰まった。
なんでやねん……7歳やぞ?困らせてなんぼの歳やろ?
なんでこんな、人の顔色窺うような子になってんねん……!!
「よっしゃ、ソフトクリームは買うたる!!」
『えっ!?』
「けど、それはちょっと後回しな。乗りたいもん全部乗って、売店で山田と凪にお土産買うて、最後にな?」
『……いいの?』
「かまへんかまへん。子供が遠慮なんてすんな。ほな次はどれ行こ?」
千紘がコーヒーカップを指差したので、それに乗って全力で回した。
高速回転はお約束やろ。千紘も笑いながらいっぱい回しとった。
で、俺は、しばらくベンチで横になるハメになった。
――――すまんな、酔うたんや。
千紘が機嫌ようニコニコ座っとってくれたから、それでええねん。
子供は笑顔が一番や。
次回へ続く!!
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