<本気かこのクソガキ。>
何乗りたい?って俺は訊いた。
間違いなく訊いたで。
なのになんで返事が、
『ぼく、お化け屋敷入りたい!』
に、なんねん!!おかしいやろ!!
ていうかそれ以前にお前がもうお化けやろが!!
傍から見たら、たった一人でお化け屋敷に挑む勇敢な若者やで。アラサーやけどな。
ちゅうかせめて乗り物であれ!頼むわ!!
いっそ勝手に走り出すカートでもええから!!
なんでやねん……俺、怖いの得意とちゃうねんぞ。
作りもんって分かってても、なんか降ってきたらビビるし、人間やと分かってても、なんかに追っかけられたら心臓止まりそうになるねんぞ?
「なぁ、千紘……ちょっと、ちゃうのにせえへん?」
『えー……ぼく、楽しみにしてたのになぁ』
……へー、楽しみにしとったんかぁ……。
ほんなら一人で入ってきてくれへんかなぁ…?
『でもぼく一人で入っても、誰も気づいてくれないから、たぶん怖いの出てこないよね…?』
「うん、どっちかっていうと、俺はそっちの方がええねんけど」
『それだと、つまんないよ』
「ええやん、つまらへんのが嫌やったらやめとこ?な?」
『でも、おにーちゃんが一緒なら大丈夫だよね!』
なんでここで俺を持ってくるかなぁ!?
いや、俺はすでにお化け屋敷の前におる。
傍から見たら一人や。
つまり…どう見える?
【お化け屋敷を前に尻込みしとる情けない男】や。
しかも、ボッチっちゅうオプション付きや。
お化け屋敷で叫び散らす自信しかないけど、もう既にミッションは始まっとった。
ここに来る前に、千紘とは話つけとくべきやった。
今はそれを後悔しとる。
『あ、おじーちゃんが何か言ってる』
「は?クソジジイが?」
『えっとねぇ、”おめさん、いつまでグズグズ言ってら。男らしくねぇど?”だって!』
「クソジジイがこっちの気も知らんとお気楽かましよってェェェ!!」
『あ、あとね、”こったら独り言、散々わめいでらんだ。今さらこの先どんだけ恥さらしたって、同じだべ”って!』
「…………ソウデスネ」
そうやった。千紘は見えへん存在やった。
さっきから千紘としとる会話も、クソジジイに向けての罵詈雑言の叫びも、全部俺の【独り言】っちゅうわけか…。
どおりで、さっきから人が遠巻きにこっち見とるわけや。
写真は好きにせえ。動画は録るな。
どっかにアップしたら名誉棄損で訴えたるからな!
「しゃあない……行くか、千紘!」
『うん!!』
俺の言葉に嬉しそうに頷いて、千紘は手を繋いできた。
後のことは……まぁ、察してくれ。
そして俺を慰めてくれ。
俺は、頑張った。
ビビった。叫んだ。逃げた。
けど、ちゃんと千紘連れて出口に辿り着いたで。
千紘は大喜びやったから、結果オーライっちゅうことで…。
なんでか知らんが、千紘がお化け屋敷2周目を希望してきよった。
俺、断っていい?あかん?あかんのか??
頼む。誰か骨は拾ってくれ。
次回へ続く!!
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