<逃げ場ないなら、ないなりに、>
それっぽく遊んだろやないか!!
もうこうなったらヤケや!!
絶叫系なら野郎一人でもなんとかなるやろ!!多分!!
『おにーちゃん、ぼく、あれ乗りたい!!』
千紘が指差したんは……まさかのメリーゴーランド。
とうとう地獄の釜が蓋を開いたか…ッ!!
「な、なぁ千紘。あのゴーカートとかどうなん?」
『乗りたいけど、あれ、ぼくが動かさないといけないんでしょ?』
……せやった。
いや、触れるから千紘が乗ることはできる。
自分で操作もできるやろ。
せやけど、これ、ハタから見たら「誰も乗っとらんカートが勝手に動き出す」っちゅう怪奇現象が起こるだけや。
あかん。こういうトコロでホラー要素はあかん。
ほんならもう……しゃあないな。
ありがたいことに、見えへんからこそ千紘は全部のアトラクションが自動フリーパスや。
あ、俺はちゃんとフリーパス買うたで?
それはそれで窓口のお姉さん、憐れみの微笑みをくれたな。死のう。
「ほんなら、行ってこいや千紘ォォォ!!」
『わ!わ、わあァァァァァ!!!』
体重っていう概念がないんで、俺は千紘の腕を掴むと、乗り場の反対側で千紘の体をぶん投げた。
千紘は馬のとこまで飛んでって、せやけど馬を支える棒にうまく掴まると、くるっと回転してストンと馬に跨った。
へぇ、千紘、結構やるやんけ。
『えへへへ、おにーちゃん!!』
「はいはい」
回転してこっちに来るたびに、千紘が笑顔全開で手を振ってきよる。
しゃあないから、そのたんびに俺も振り返してた。
あ、せっかくやし写真でも撮ったろかな。
記念や、記念。
スマホを向けたら気づいたんか、千紘が笑顔でピースしよった。
ほんま……なんでこんなにクソジジイとちゃうんや…ピュアすぎるやろ。
と、思っとったら、ふと周囲の人混みの声が俺の耳に入ってきた。
「ねぇ、あの人……誰も乗ってない馬に向かって手を振ってない?」
「スマホで写真も撮っとるよね…?こわっ」
……やってもうた。
いつものクセで、つい…。
そう考えて、ふと俺は気づいた。
「いつものクセ」って言ってまうぐらい、コイツらは俺の傍におったってことやんな……。
ほんなら、ええわ。
地獄の底でもなんでも、飛び込んだるわ。
俺のことはどうでもええ。
これ以上ないぐらい、千紘を楽しませたる。
気が付いたら、回転が止まってたんか、千紘が俺の前に戻ってきとった。
ほんなら、俺が言うのはこれだけや。
「なあ千紘、次、何乗りたい?」
次回へ続く!!
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