<今ごろ気づく、クソジジイ。>
『……ん?』
「どないしたん、ジジイ」
『作った札がない。やや、どこへしまったかのう…』
懐とかゴソゴソがさがさ漁っとる。
なんやろ…この、『メガネがないメガネがない』って探す年寄りの空気…。
「おいジジイ、忘れモンや」
『おお!それじゃそれじゃ!!』
「ジジイは壁抜けできるかもしれんけどな、どう考えてもコレは無理やろ」
『ぬぅ。迂闊であった……』
「いや、なんかボケたジジイみたいでちょっとおもろかったで」
『…………。』
あ、御札ひったくられた。
それを、リビングの大きな窓の左右と、玄関のドアの左右に貼る。
目立たんように、とは言うとったけど……。
「……なぁ、これ、ほんまに目立たへんと思う?」
「上の方やし、たぶん大丈夫やないかと思うけど…。別に目立ってもかまへんよ、特に女の子を連れ込む予定あらへんし」
おう、思った以上に崩してきたな。
今までと違う雰囲気で、それはそれでおもろいんちゃう?
『よし、これで良かろう!』
「道玄先生、ありがとうございます」
『これくらいはの、これからお隣さんとしてよろしく頼まんといかんしのぅ』
「あ、じゃあ修司さん、これ。ハダカで申し訳ないんやけど」
そう言うと、竹倉サン……凪は俺に…俺に!!
現・金・5・万・円・!! を出してくれた。
良かったァ!!とりあえず来月の家賃は確保された…!!
『あ、終わったみたいですね、お疲れ様です、道玄先生』
『おう、久々にでかい仕事じゃったわい。今夜はビールでパーっと』
「アカンに決まっとるやろ!!てか、山田!!ほいほい人ん家に顔出すんやない!!」
『いいじゃないですか、竹倉さんには視えないんでしょ?聞こえないんでしょ?』
「山田……お前なに拗ねてんねん……いい歳こいたオッサンが……」
「修司さん、山田さんこっちにいてはるん?」
「あー……すまん。勝手に壁抜けてきよった」
「そうですか…。山田さんも、これからよろしくお願いします」
ぺこり。
そうやって凪はお辞儀をした。
冷蔵庫の横に向かって……
「いや凪、山田はこっちや。さすがにお前んちの冷蔵庫の横にはおらん」
「え?せやけど、冷蔵庫の横が定位置て……」
「それはうちでの話や。クソジジイのせいで、このマンションの敷地内ならフラフラ出歩ける迷惑な地縛霊になってしもた」
「ほな別に、修司さんの家でも冷蔵庫の横を定位置にする必要ないんとちゃう?」
「……どうなん、山田」
『あそこはあそこで居心地が良いんです!生きてる人でいう、ベッドみたいなもんです!!』
あっそ。
まぁ、変にウロチョロされるよりは、目につくところに居ってくれた方が、俺は助かるからええけど。
「山田さん、なんて?」
「『あそこはあそこで居心地が良いんです!生きてる人でいう、ベッドみたいなもんです!!』やと」
「ふっ……あははは!山田さんって面白い人なんやね。視えへんし話せへんのが残念やわ」
「疲れるだけやしやめとけ」
さて、ひとまず今回の【依頼】はこれで終わりやな。
なんか、変な友達できてしもたけど……思ったよりおもろい奴やったし、ええか。
結果オーライ、結果オーライ。
終わり良ければ総て良し、っちゅうやっちゃ。
「ほな部屋に戻るわ。お邪魔さん」
「どうせ隣なんやし、いつでも来たらええよ」
「……クソジジイが嫌んなったら来るわ」
「シェルターかい!」
ははは、と二人で笑って。
気ぃついたら、クソジジイは山田と一緒に壁抜けてさっさと帰っとった。
次回へ続く!!
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