<なんかコイツらの視線が痛い。>
俺が買い物行ってる間に何があったんか知らんけど。
帰ってきたら、クソジジイは元より、山田も、竹倉サンまで、なんか俺を冷たい目で見てくる。
なに?俺のおらん間に何があったん?いや、クソジジイは何をした!?
ジジイがどれだけ心霊業界で有名で最強やったとしてもな、俺は尊敬どころか信用も信頼もしてへんからな!?
「おうジジイ、半紙」
『…………。』
「…なんやねん。はよ受け取れや。てか、この空気なに?」
「秋月さん……出かけたはる間に、道玄先生から色々聞きましたん」
「は?」
「さすがに、ちょっとどうかと思いましたわ」
「……何の話や?」
『僕も初めて知りました!幽霊虐待は良くないですよ!失望しました!!』
「それはどうでもええ」
『ひどい!!』
山田が言うのはどうでもええとして……竹倉サンの言葉が気になる。
クソジジイ…俺のおらん間に何を吹き込んだ!?
「竹倉サンは、このジジ……いや、道玄サンから何聞いたんです?」
「道玄先生と千紘くんが、秋月さんとどうやって出会ったかっちゅう話です」
あ。
アカンやつや。
絶対話盛られとる。
「このクソジジイ、なんて言いましたん?」
「夜中に一人ぼっちでいる小さな子供に、声もかけず素通りしたとか」
「間違いではないけど、間違うてる。俺は素通りはしてへんし、なんやったら素通りしたくてしゃあなかったんを、クソジジイがバカでかい声で引きとめてきよりました!」
「あと、コンビニでジュースを買ってもらおうと、籠に入れようとした時に手をはたかれたとか」
「ジュースやないです。ジジイ、スーパードライ持ってきよりました。7歳児がビール持ってきて『買え』って言うてきたら、とりあえずシバくやろ?」
「……この部屋も、家賃の安さで狙うて、居座っとった怨霊を無理やり祓わせた……とか…」
そろそろジジイの話の盛り方に気づいてきたんか、竹倉サンは首を傾げながら言うてくる。
「ちゃいます。そもそもこの事故物件拾ってきたんも、怨霊を祓ってやるからここに住め言うたんも、全部そこのクソジジイの仕業です」
「……なんか、聞いてて、途中からそんな気はしてましたわ…」
「怨霊は祓って、山田はそのままってとこは気に入らんのですけど」
『僕は怨霊じゃありません!!失礼な!!』
「やかましい。がなるなや、どアホ。……俺はそもそも幽霊なんておらん世界で悠々自適に生きたかっただけなんや。霊感なんて何の足しにもならん。むしろいちいち挙動不審になって周りから変な目向けられて、仕事もクビばっかりですわ」
「秋月さん……」
「なんでね。ある意味この部屋が最後の砦っちゅうか……ここも追ん出されたら、たぶん宇治川のどこら辺かで浮いとるんちゃうやろか」
『不穏なことを言うでない、小僧』
やっとクソジジイが喋った。
絶対黙って煙に巻くつもりやったやろ。
『どれ、ささっと札を作って、お隣さんの部屋に貼って来てやろうかの』
ガサガサと半紙を出して、折り目を作ってるクソジジイを見て、竹倉サンは言った。
「……幽霊やのに、触れたり書けたりするんやなぁ……」
『おめさん、さっきまで儂が目の前で茶を啜っておったの、どういう感じで見ておったんじゃ?』
「半透明の子供が、湯飲み持って……あ!」
『おめさんも大概に鈍い奴みたいじゃのぅ……』
そう。
持てるし書くだけやない。食うし飲むんや、この幽霊。
規格外もええところやろ。食い扶持が一人増えてつらいんはこっちやねん。
ジジイが作ったんは、短冊ぐらいの大きさにした半紙に、読めへん漢字でなんやかや書いてある御札が4枚。
なるほど、部屋の浄化をして、あとは外から変なんが入って来られへんようにするっちゅうわけか。
『おめさんは【いけめん】っぽいからのぅ。女性を連れ込んでも引かれんよう、あまり目立たないところに貼るから心配せんようにの』
「連れ込みません!!変な気遣いは要りまへん!!」
『ほっほ、照れんでも良いのに。じゃあ、ちょいと壁から失礼するぞぃ』
そう言って、403号室側との境の壁をするっとすり抜けてったんやけど。
「……ジジイ、アホなんとちゃうか?」
「あはは、そう言わんでもええですやろ。たぶん、生きとる時と同じ感覚でいはるんとちゃいます?」
「じゃあ、すんませんけど、俺も竹倉サンの部屋、お邪魔してええですか?」
「もちろん。散らかってても笑わんとってくださいよ」
「まぁ、この部屋よりはマシやと思いますわ」
そう答えながら、俺はひょいと床に落ちた御札を拾い上げた。
物理が壁を素通りできると思っとるんか、クソジジイ。
次回へ続く!!
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