<よっしゃ、俺はハッタリをかます。>
ジジイが言うんやし、しゃあない。
実際は祓ったり清めたりとかはでけへんけど。
視える聞こえるはほんまやしな。
「えっと…どこから話したらええか、なんですけども」
「はい」
頭を掻きながら、どう話したもんかと考えながら言う俺に、竹倉サンは律儀に頷いてくれた。
「霊媒師を名乗ってますけど、その前に俺は霊感のある一人の人間ですねん」
「ああ……確かに。霊媒師っていう肩書で、つい特別感持ってしまいましたけど……そうですね。秋月さんも……いうても一人の人間ですよね」
肯定してくれるのは嬉しいねんけど、あんまり部屋ジロジロ見るのやめてくれへんかな。
絶対、部屋見て納得したやろ、コイツ。
「先に、山田っていうアホの話をしときましょうか」
「さっきから秋月さんが話してるっぽい相手ですか?」
「はい。コイツは山田…下の名前は知らんけど、ほんまにショボい地縛霊なんですわ」
『ショボいってなんですか!!いくらなんでも酷いですよ!!』
「うっさい山田。喋んな」
「手厳しいわぁ……」
「あはは、特に強い力もなんもない、いわゆる地縛霊ってヤツです。霊感がない人には視えませんし、なんもでけへんヤツなんで、そこは安心してください。俺が管理してますんで」
「は…はぁ……地縛霊って管理できるもんなんですか。初めて聞きましたわ…」
まぁ、俺も言うたん初めてやからな。
管理できるかは俺っていうか、クソジジイ次第やけど。
「で、恐らく竹倉サンのお困りごとって、体調なんとちゃいます?」
「え!?な、なんでそのこと……」
「いや、俺がこの部屋に引っ越してきた時にね、居ったんですわ。先住民が」
「……先住民…?」
『僕のことです!!』
「黙っとれ山田。お前のことやない。」
「え、…違いますのん?」
竹倉サンまでビックリしとる。
まぁ…視えへんのやったらしゃあないわな。
よぉ考えたら、俺もまだ山田の事しか話してへんし。
「なんていうか……分かりやすく言うと、怨霊が長いこと居付いとったみたいで」
「怨霊…と、いいますと?」
「ここにいた奴は……うーん、見た目だけザックリ言いますと、大柄な男が血塗れで、包丁握っておったんです。これがホンマもんの人間なら警察案件なんですけども、や。霊なもんで誰にも視えん。せやけど腐っても怨霊なんで力は強い。なんで、この部屋と……たぶん両隣にも強い霊障があったはずなんですわ。……隣、いうたら竹倉サンの部屋ですやん?影響があっても当然なんですわ」
「じゃ、じゃあ、その怨霊は…!?」
「もう居りません。ちゃんと祓いましたさかいに。で、その後一息入れようと思ったら、何故か山田が残ってまして。まぁ……このアホは周囲に霊障バラ撒く力もないですし、こっちの事情で誰彼構わず祓うんも…ちょっとかわいそうですやろ?」
「……そんなに、山田さんって幽霊、弱いんですのん?」
「あっはっは!!気になるのそこなんや!!竹倉さん、おもろい人ですやん。まあまあチョロいやつです。地味に腹立つことはしますけど、人を傷つけたりとか、そういうことはようやりませんわ、アイツは」
ゴットン!
冷蔵庫から結構な音がして、竹倉サンがビクっと肩を竦める。
あのアホ……後で説教やな。
「い、今の音……」
「あー、俺が山田のこと悪う言いすぎましたんで、ちょお怒っとるんです」
「え…今ので?」
「ええ、今のでです。たぶん、晩に俺が飲もうと思った酒、冷蔵庫の奥に隠されましたわ」
「えっ……それだけですん?」
「それだけですわ。けど、楽しみにしてるモンを冷蔵庫の奥にやられるのって、地味に腹立ちますやろ?それでよぉ喧嘩はしとります」
「………ふっ…あははは」
竹倉サンが。この部屋で初めて少し安心したような朗らかな笑い声をあげた。
よっしゃ、掴みはオッケーってことか!?
チラっとクソジジイを見ると、腕組みしてうんうん頷いとる。
……うん?なんか衣装チェンジしとるぞ?
なんか……袴とか履いとる。
Tシャツと短パンどこいってん。
『それっぽい”いめちぇん”ってやつじゃよ』
あっそ。
「ほんなら、今度は竹倉サンが話してくれはる番……で、よろしいですやろか?」
「はい」
首を縦に振って、竹倉サンが言った。
「……痛いんですよね」
「は…?」
「ほら、なんか憑いとったら、頭が重いとか、肩が凝るとか、よう言いますやん?」
「あー……そうですねぇ」
すまん。
なったことないから、ちょっと分からん。
「なんか、もうそういう次元やのうて…頭とか肩とかだけやのうて、背中から腕から足から、あちこちが痛むんです」
「うわ……」
『可哀想にのう。霊障の障りがそこまで強く出とるとは…早う楽にしてやらんとな』
クシジジイが言うと、違う意味の【楽】に聞こえるしやめてくれ!!
どっちかっちゅうと【あの世】的な意味に聞こえんねん!!
『小僧、浄化すると言え。霊障で受けた障りを浄化する、とな』
「…………。」
ジジイに声で返事することはでけへんけど、一応頷いといた。
具体的に何をどうするのんかはサッパリ分からんけど。
そこはジジイに丸投げするわ。
次回へ続く!!
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