<山田のこと忘れとった。>
「ほんで、山田クンとやらは出てってくれへんの?」
『そりゃあ……僕の方が先に住んでたんで』
「それ、ほぼ地縛霊って言うんとちゃうんか」
『まあ呼び方はなんだっていいんですよ。出て行く気がないだけで』
「おい!クソジジイ!!どないなっとんねん!!」
『別に害はないし、そっちの幽霊はわしと違って飲食もいらん。エコ幽霊じゃよ。賑やかになって良いじゃろが』
「エコって……あんたが規格外なだけとちゃうんか」
『あ、でも僕、お供えものであれば食べれますよ。あると嬉しいです!』
「お前もさり気にねだってくんのやめぇ!!」
『もちろん、下げたものは秋月さんのお腹へどうぞ』
「ジジイよか……エコやな、うん」
『おい小僧。』
『おにーちゃん、ひどーい!!』
「こんな時だけ千紘を表に出してくんなや!!」
ああもう、話が進まへん!!
「とにかく!俺は仕事したいねん。けど、この体質のせいで続かん。正直行き詰まっとる」
『おめさんが、いちいち反応するのが悪いんじゃろ?』
「あんな、俺は割とはっきり視える方やねん。血塗れの幽霊がいきなり目の前に現れて、頭ゴロンとか落ちてみ?普通に叫ぶわそんなん」
『もしかして、おめさんの反応が面白くて、揶揄われてるんと違うか?』
「ふざけんな!!」
怒鳴った瞬間に天井からピシッって音がして、思わず肩がビクンってした。
『……本当だ。面白いですね、秋月さん』
「おい山田。お前の仕業か山田。」
『試しにラップ音をちょっと』
「なにしてくれとんねんてめぇいてこましたろか、アァ!?」
『ごめんなさい!!一気に言うのやめてください殺意が怖いです!!』
『だっはっはっは!!確かにこれじゃあダメじゃのぅ』
「はぁ……なんでもええから何か案くれやぁ…」
『じゃから言うておろうが。霊障の触りを受けた者を助ける商売をしてみんかと』
「俺、霊媒師とちゃいますけど」
『同じことを何度も言わすな。わしが手伝ってやると言っておろうが』
「具体的には?」
『ふむ……とりあえず、ここに常駐しておった怨霊のせいで、霊障を受けておる者がいくらかはおるじゃろう。まずはそれを炙り出すかの』
「常駐とか言わんとってくれる?」
なんか、交代で別の怨霊が派遣されてきそうやん。
「せやけど、どないして探すん?」
『それなんじゃが、霊障の触りを受けた者は、一時的に霊への感覚が敏感になっておる。ラップ音や、タンスをちょいとガタガタさせるだけで反応する』
「いやそれ俺も怖い」
『で、じゃ。山田の出番よ』
『僕ですか!?』
『このマンションは5階建て、部屋は各階5室。深夜に各部屋を回ってちぃと脅かしてこんか』
なるほど、そういう風に山田を使えばええのんか。覚えとこ。
『うーん……そう言われましても……』
『客が釣れて報酬が入ったら、お前さんにビールと柿ピーを供えると小僧が言っておるぞ?』
「おい」
『僕は、柿ピーよりはミックスナッツの方がいいです』
「より高級品をねだるな、ボケ」
『ただ…手伝いたいのは山々なんですが…。僕は、ここで死んで長くて…もう地縛霊になっちゃってるんですよね。だから、ガタガタ言わせるのも、両隣が精一杯ですよ』
「役に立たねェェェ!!せめて上下もやれるようなっとけや!!」
『ふむ。地縛霊になってしもうたことで、行動に制限ができとるんじゃな。じゃあ、ちょいとわしが行動範囲を広げてやるか』
『はい?』
クソジジイがなんかササっと印を結んどる。
こういう時だけなんかソレっぽいの、やっぱ腹立つよな。
子供の姿でもなんかこう……なぁ?
『こんなモンかのぅ。このマンションの敷地内であれば、好きに動けるじゃろ』
『あっ、身体が軽い!』
「嘘やろ!?この部屋だけやなくて、マンション全体に幽霊が出ることになるやん、それ!!」
『むしろそうしたんじゃが……問題あったかの?』
「全部が問題や……。ま、まぁ、ええやろ。とりあえず霊障を受けとるモンを炙り出す間だけやろ?」
『あ、すまんのぅ。一度広げたもんは元に戻せんよ。山田がこの部屋であと10年ぐらいじっとしておけば、戻れるかもしれんがの?』
『え、普通に嫌ですよそんなの』
『じゃよなぁ?』
「近所迷惑ゥゥゥ!!」
あれ、でも、ちょお待てや。
「両隣だけ山田クンに任せて、あとはジジイが行けば良かった話とちゃうんか」
『嫌じゃよ、めんどくさい。夜は寝たいわい』
「クソジジイ……鬼太郎でも寝るのは朝やぞ」
申し訳ない、不動産屋さん。
この部屋だけやのうて、このマンション全体が……ほんま、すんません!!
次回へ続く!!
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