第六章 九月はだれにもわからない ③
第六章②
年度末試験直前の大騒ぎ!
二日後、またいつものふたり連れがきた。
「もう、まとめたのかよ?」
オレがガレージから出てくると、ウマは手を挙げながらマジメくさっていうのだ。
「ユウヒが適当に分けたところだけだと、繋がりがわからないんだよ。やっぱり一度全部を見ないと… 」
「結局やってないんだろ?」
「そうじゃないよ。やろうとしたんだけど、オレの担当は頭の三分の一だけなんで、核心の部分がないような気がするんだ。そこだけやっても意味がないと思ってさあ」
「やってないんだろ?」
さんざん言い訳がましいことをいいながら、やっと頷いた。
「オレも」とエルザもいう。
エルザの担当は真ん中部分だ。そこに核心がなければ、オレの部分だけを書けばいいということになる。
「じゃあ、オレのコピーを渡すから二人がかりでやれ」
「オマエは?」
「オレは《累進課税説》をやってるだろ」
「まだやってるのかよ? 間に合うのか」
よく、そんな険しい顔でひとを責められるな、と腹立たしくなってきた。どうせ、《累進課税説》の方が終わったころだから、これもやらせようぐらいのつもりできたのだろう。そうはいくか。
こういうとき、エルザは正直だ。
「いや、オレは本当にまだなにもやってないんだ。だからオレの部分が不要かどうかはわからない」
「読んで、まとめるだけじゃないか」
「読むのもかったるくて…」と頭を掻きながら笑っている。
「みんなでやろう、なっ、なっ?」
エルザは勉強以外のところでなにかと頼りになる男だが、こと勉強となるとからきしだった。要領もよくない。というより、最初から無理だと思い込んでいるみたいなのだ。
「三人でやった方が効率的だろ?」とウマまでも。
最初から他力本願だったことが明白になった。オレは、まともに受講していないペーパー学生みたいなものなのだ。そんなヤツを頼りにしているコイツらというのは、いったいなんのために大学に通っているのか不可解としかいいようがない。
「いっそのこと、三人で留年するか?」
オレが冗談ともつかない調子でいうとウマは慌てた。
「バカいえ、オレはほとんど就職が決まってるんだ」
「もう決まったの?」
「いや、決まったわけじゃないんだけど、オヤジの教え子が銀行に勤めててね。なんとかしてくれそうなんだ」
ウマのオヤジは、カエデのオヤジとおなじで教師だった。カエデのところは校長先生だが、ウマのオヤジはそうではない。そのぶん、教え子に近いから、そういう話も気軽にできるのかもしれなかった。
「ゴリゴリのコネか」
オレとエルザは面白くない気分になった。
「銀行員だから、内定もらうためには約束どおり現役で卒業しないとな」
ウマはますます調子づく。
「なら必死になってやれ。オレは《累進課税説》の方をまとめなければならないから」
「そっちも、みんなでやろうよ」と妙にソフトになるのだ。
そんなところで今夜は《累進課税説》一本でいくことにした。大筋で核となる部分はアタリをつけておいたので、そこをふたりにまとめさせた。その間にオレは明日のルートの検索をしていた。
オレの指示が的確だったのか、ウマとエルザはアッという間に終わらせてしまった。まだ配達の段取りができていなかった。
「やればできるじゃないか」
「当然だろ、そっちはいつ終わるんだよ」
「ちょっと待ってろ」
ふたりは手持無沙汰になって、「この部屋、なんでこんなに寒いんだよ」などといいながら、オレの部屋にあるマンガ本などを読み漁っている。その後、五分ごとに「まだ? まだ?」と急かすようにいってくるのだ。
うるさいのでオレは途中でやめて、あとはコイツらが帰ったあとにでもやろうと思った。どうせ、なんだかんだいいながらもオレの指示があったおかげで《累進課税説》の方は終わったようなものだと信じていた。
ところが…
オレはコイツらの実力を甘く見ていた。ふたりがまとめたものに目を通して唖然とするしかなかった。
「おい、オレはこれをまとめろといったんだぞ!」
「まとめるっていったって、そう簡単なことじゃないだろ? 必要なところを端折っちゃったら元も子もない」
「だから、まる写しにしたのか?」
オレは呆れて、ものもいえなかった。むしろ二人がかりとはいえ、この短時間でよくこれだけの分量をまる写しにしたものだと褒めてやりたいくらいだ。
「じゃあ、これを解答シートに書くってことだな」
するとウマは、立場もわきまえず口をとがらすのだ。
「なにいってんだよ。こんなもの、まる写しにできるわけがないだろ。解答シートに書ききれないじゃないか」
「だから、まとめろっていったんだ」
「みんなでやろうよ。オレたちだけじゃあ無理だよ」
「オレたちにオレは入ってないのか?」
「オレとエルザ」
こいつらはホントに役に立たない。頭の使い方を知らないで大学まできたのか。そんなことで、よく銀行員の内定が出る予定だなんていえる。
「いいか、オレだってまったく受講してないんだから、端折っちゃいけないところとか、わからないんだぞ。それでもいいんだな?」
ウマもエルザも「うん、うん」と頷いた。
そこからオレは自分でも信じられないくらいの集中力で要約を始めた。その間ふたりは、またしてもマンガやらTVを見ながら時間を潰すのだ。まあ、よけいな雑音がなくて、その方がいいのだが、たまにウマが「まだあ?」ときいてくるのには腹が立った。
オレの集中力が切れたのは、もう日付が変わってからだった。それでも、けっこうなボリュームがあった。
「こんなにあるのかよ?」
「いやでも憶えなきゃならないぞ。せっかく憶えたとしても、オレの見立てがまちがっている場合があるからな」
「まとめたところがマトはずれだったってことだろ? 教本に書いてあれば《E》にはならないだろうよ」
エルザは慰めるようにいってくれるのだが、ウマはオレのむき出しの神経を逆なでするようなことをいい出す。
「これ、どこが重要なの? ポイントがないと、これをまる暗記しなけりゃならないだろ」
いまさら、なにがポイントだ。ウマは、まるで他人事みたいな顔をしている。
「だから、まる暗記だよ、まる暗記」
「もっと、なんとかなるだろ?」
オレはブチ切れそうだったが、そこはグッと堪えていった。
「もっとラクしたけりゃあな、これをよく読んで自分なりにまとめろ。そうすれば、みんなおなじ答えじゃなくなるから。それができなけりゃあ、まる暗記だ」
「ええ~~」と情けない声を出すウマ。
こいつはあくまで頭脳労働をしたくないらしい。銀行に就職して、なにをするつもりなのか。
「まる暗記しよう、まる暗記」といってエルザはウマを引っぱって帰ろうとするが、ウマは未練がましくまだいっているのだ。
「こんなの、まる暗記したってヤマがはずれたらなんの意味もないだろ」
それはオレが最初からいっていることだろう。それを承知でやってくれといったのはそっちだ。オレの知ったことじゃあない。
ヤツらがクルマに乗り込むところを部屋から見下ろしていたら、それに気づいたウマがしつこくいうのだ。
「これでホントに大丈夫なんだろうな?」
「教本に書いてあることを書けば《C》はくれるっていったのはオマエだぞ」
「苦労して、まる暗記で《C》かよ」と吐き捨てるようにいう。
ひとにやらせて、できれば《A》をとりたいという考えが甘すぎる。
「《A》をとりたけりゃ、教本を熟読するんだな」
ウマは、きこえよがしに舌打ちして底冷えの街なかへ消えていった。
その試験当日の朝。夢うつつのなかにヘンな音が響いていた。意識が戻るとモバイルがのたうっていた。
ウマだった。
《おい、遅刻するぞ。早くいこうぜ》
時計を見ると試験開始まで、まだ二時間以上あった。ウチから大学までクルマで十五分だ。いくら慎重な運転のウマですら、一時間もかからない。
「早すぎるんじゃないのか? まだ、だれもいないぞ。試験会場の鍵もあいてない」
《いいから早く降りてこい!》
目をこすりながら、顔も洗わず、寝ぐせのままの不気味な髪型で降りていくと、いつものふたり組が待っていた。
「なんで、こんな早くいくんだよ?」
「忘れそうなんだ」
「エ?」
ウマはどうやら一夜漬けでまる暗記したのだが、あまりに量が多いので忘れないために寝ていないという。
「バカじゃないか、オマエ」
「バカとはなんだ、失礼な! 横になると脳ミソから覚えたものが零れそうになるんだ」
「だって、早くいったって開始時間が早まるわけじゃないんだぜ」
「そりゃそうだけど、準備があるんだ。そういうオマエはまる暗記できたのか?」
「それがさ」とオレは初めての不思議体験を彼らに話した。
つまりあの晩、異様な集中力で熟読作文したおかげで、まる暗記以前に話の展開が頭に残ってしまって、逆に忘れられなくなったのだ。
「もう、そらで答えられる」
それをきいたふたりは、あからさまにシカメ面をした。
「じゃあ、いってみろ」とウマ。
「ききたい?」
余裕綽々のオレの顔を見て、エルザはともかく、ウマは歯ぎしりした。
「ききたくねえよ! どうせ、まちがってるに決まってる」
「オレがまちがえてれば、オマエもおなじ運命だ」
「くそ~~」
平常心を保てなくなっても、いつものような安全運転は変わらない。
「どこかで朝メシを喰っていかないか。まだ時間は十分あるだろ。オレ、腹へったよ」
車窓の外の寒々とした街並みを眺めながらいうオレに、ウマは冷たく返すのだ。
「メシなんか喰って眠くなったらどうするんだよ。オレは寝てないんだぞ」
「ええ~」といいながらオレは笑っていた。
試験会場に着くと、当然のようにだれもきていなかった。オレたちは試験会場のある建屋のまえの冷たい芝生に腰をおろして待った。ウマは大きな欠伸をしている。
「エルザもまる暗記したの?」
なんだか余裕そうなエルザにオレはきいた。
「ある程度はな」
彼はあいかわらず口数が少ない。
「《C》が取れりゃいいよ」
オレは曇った二月の空を見上げながら「そうだな」と頷いた。そこで、まてよ、とオレは気づいたことがあった。
「これ、必修だっていったよな?」
エルザは無表情に首を縦に振る。
「ということはポテチもくるはずだな?」
すると眠りに落ちそうだったウマが反応した。
「選択必修だから、この科目をとっていなけりゃ、こないよ」
最初からこないことはオレにもわかってはいた。だが、もし辞めていなければ、ここに現れる可能性がある。オレはポテチのその後のことが気になっていた。結婚はできたのか、またアヤとのことも最大の懸念だったのだ。
オレたちがまんじりともしないでいると、やがて校門の方からパラパラと学生たちが集まってくる。そのなかにポテチの姿があるのではないかと、オレは目を凝らしていた。
「おい、そろそろいった方がいいんじゃないか」とエルザが立ち上がって尻をはたきだす。見ればウマは芝に横になって寝ている様子だった。
「おい」とオレはウマを軽く足蹴にした。
「こんなところで寝てると凍死するぞ」
彼はびっくりしたように飛び起きると、こっちを見た。目が真っ赤なのだ。
「寝ちゃったじゃないか! なんで起こしてくれなかったんだよ」
「心配するな、イビキは掻いてなかったから」
「そんなことじゃないよ! 忘れちゃうだろ、憶えたことを」
「エエっ、もう忘れたの?」
会場に入り座った席の後ろを見ると、そこに座ったウマはさかんにテーブルにシャーペンでなにかを書き込んでいる。その内容が、《まず》とか《そもそも》とか、平仮名の接続詞みたいな言葉ばかりなのだ。
「机に憶えさせているのかと思ったら、なに書いてるんだ。大丈夫か?」
「うるせえな。ちょっと黙っててくれよ」
ウマの後ろからはエルザものぞき込んでいる。
「おい、オレの見える位置にモニターをおいてくれよな。ゆっくりとキーボードを打ってくれよ」
どうやらエルザの方は、本人も認めているように、ろくに覚えていないようだ。
「エルザ、ウマの解答を写すのはいいけど、日本語の使い方をまちがえるなよ。内容以前の問題だぞ」
「ある程度は頭に入っているから、そんなバカなまちがいはない」
ふだんなら、ここでなにか反応を示すはずだが、ウマは一心不乱に意味不明な言葉を書き続けている。
「オマエ、さっきからいったいなにを書いてるんだよ?」
「オレに喋りかけるな」とこっちも見ない。
しかたがないので、時間まで覚えていることを反芻していた。その間にも学生たちは増えていき、五分前には席がほとんど埋まった。ポテチの姿はなかった。
始まりのアラームとともにモニターに設問が映し出される。そこには《累進課税説》なんて言葉がどこにも記されていなかった。この設問にオレたちが覚えてきたことを書いて正解なのかどうかもわからなかった。
だが、どうしようもない。オレはムダなあがきは最初からしないことにして、自分で《累進課税説について説明せよ》と解答シートに問題をつくり、頭に入っていることを打ち始めた。
余裕があったので、けっこうまわりの様子がわかっていたのだが、後ろの席からはキーボードを打っている気配がなかった。教本に書いてあることを書けば《C》くらいくれるだろうなどとタカをくくっていたウマだったが、ここにきて想定外の設問なのでフリーズしているのにちがいない。
――口ではいえても、実際は臨機応変に対処できなければ社会に出ても大成しないぞ。
開始三十分で終わった。一時間も余ってしまった。
何回も読み返して、悔いはないと思ったころに送信受付が始まった。さっきから公儀隠密のように後ろの席から気配はなかった。もう、オレは出るぞ、と解答シートを送信して、講義室を出ていった。
講義室から出るときに、ちらと後ろのふたりを見たら、ふたりとも手を止めずにキーボードを叩いているのだ。なにをそんなに書くことがあるのか、と首を傾げてオレは出た。
ウマのクルマできたのだから、ウマが出てこないと帰れない。オレは建屋のロビーでふたりが出てくるのを待っていた。しばらくするとエルザが降りてきた。
「ずいぶん時間がかかったな?」
「いやあ、ウマが書き始めるのが遅くてさ。それまで、ずっと待ってたんだよ」
「ウマのをまる写しにしたの?」
「それどころか、出題がちがうみたいで、すっかり覚えたことを忘れた」
エルザは悪びれないで頭を掻いた。
「でも、まだウマは出てこないのか?」
「まだ、なにか書いてたよ」
エルザは肩をすぼめて続ける。
「でもよ、出題がちがうのにオレたちそろって《累進課税説》のことを書いて大丈夫だったのかな?」
「だって、設問どおりの解答なんて書けないだろ」
「こっちからウマのモニターがまる見えだったわけじゃないから途中までは、ほぼ写したけど、アイツ、ヘンなことを書き始めてさ―― 《ピグミー族》がどうしたとか… 」
「《ピグミー族》? 《累進課税説》となんら関係がないじゃないか」
エルザは首を傾げて自信なさそうにいうのだ。
「わからないけど、学者の名まえをまちがえてるんじゃないかな。ほら、ユウヒのまとめた解答のなかに出てきただろ?」
そういわれれば、すぐに思い浮かぶ。忘れもしない記憶領域に刻み込まれた名まえだ。
「〝ピグー〟のこと?」
「そう、それ」とエルザは手を打った。
「ピグーと《ピグミー族》とまちがえたの?」
「たぶん、そうじゃないかと思う」
信じられない。常識で考えても、こんなところにアフリカの小人族が出てくることはありえないとすぐにわかるはずだ。
「エルザはまさか、それも写したんじゃないだろうな?」
すると彼は破顔した。エルザのつくり笑いでないときは眉毛が下がって、妙にカワイイ顔になるのだ。
「まさか。いくら、よくわかってないオレでも、《ピグミー族》が《累進課税説》を唱えるわけがないと思ったから、そこはうまくごまかした。ただ、それをウマに指摘していいものか、どうかわからなかった」
「試験中だからな」
しばらく待っていると、やっとウマが降りてきた。暗い顔で、放っておくと隣の建屋の屋上から飛び降りそうな雰囲気なのだ。
「ダメだ… 」
「なにを書いていたんだよ。こんな時間いっぱいまで」
「だって、設問がちがうんだもん。だれだよ、《累進課税説》だなんていったのは!」
「オマエだよ!」
オレとエルザは同時にツッコんだ。
「だいたい、オマエはなにを机に覚えさせてたんだ。なんかわけのわからないことを書いていただろ?」
「まる暗記だったから、文章の頭が出てこないとその後が続かないんだ。それで、頭の言葉を忘れないように… 」
つまり内容をまったく理解しないで、字面だけを記憶したということなのだろう。それじゃあ、寝れば消滅しても無理はない。
「ところが、学者の名まえのところでさ…」
「《ピグミー族》と書いてしまった、と?」
エルザは、おかしそうに指摘する。
「そうなんだよ、よくわかったな」
「こっちから見ていたからな」
「教えてくれよ―― なんていってもダメか…」
「ダメに決まってるだろ。試験中だぞ。おかげでオレは冷静に書けた」とエルザは爽快な表情でいう。
「《ピグミー族》が、なんでこんなところに出てくるんだ。おかしいと思わなかったのか?」
こんな重要な局面で、ふざけているとしか思えないマネをするウマの真意をオレは理解しかねていた。
「ちがうんだよ。まる暗記したのはいいけど、ここでしか出てこない固有名詞を覚えられなくてさ、これはピグミー族と覚えようと思ったんだ。そうしたら本番で、ほかの文章はすらすら出てくるんだけど、肝心の《…と唱えたピグミー族は》と打ち込んだところで、はっと気づいたのさ」
「《ピグミー族》じゃない、と? じゃあ、まちがいじゃないだろ」
「ところが学者先生の名まえが、どうしても出てこないんだよ!」
「《ピグミー族》を覚えてて、肝心の学者の名まえを思いつかなかったの?」
ウマはきまり悪そうに頷いた。
「そんなバカなことがあるか。それで?」
「それでもなにも、その後が出てこなくなった… 」
「嘘だろ?」
ウマは肩をすぼめて両手を広げた。
「じゃあ、なにをこんな時間まで書いてたんだよ」
「その先を書けなくなった事情を素直に書いて、単位をもらえないと銀行の就職が不意になりそうだと。毎年、ツケトドケを欠かさないようにするので、なんとか《B》でいいからお願いします…と」
「この期におよんでも《B》をよこせと書いたのか」
「《A》は、いくらなんでも図々しいだろ? 銀行なんだから、せめて《B》にしてもらわないと」
「図々しいとは、そういうことをいうんだよ」
オレは呆れたが、ウマは「当然でしょ」という顔なのだ。
「ゴリゴリのコネのために贈賄までしようというわけだ」
「気持ちの問題だよ」
だが、ウマとしてもそれが通用するとは思っていないのだろう。それが会場から出てきた態度にあらわれていた。
オレたち三人は歩きだした。その後、ウマのクルマまで、彼はずっといい通しだった。
「ユウヒにダマクラかされたと書くべきだった… 」
そんなことを書けば、いままでの友情は露と消える。さすがにそんな奸計までは思いつかなかったのだろう。こっちには最後の人質もあるのだ。
「いいのか? まだ大きいのが、もうひとつあるんだぜ」
「そうだった―― くそ~~」とジダンダを踏むウマ。
この調子だと、もうひとつの経済なんとかも全部オレがやらされそうだった。
つづく
毎週金曜日23時に更新します。
*作中の人物、団体、作品等の名称は、実在する一部を除き、特定のモデルはありません。




