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GUNMAN GEORGE  作者: 根井
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第7話 カメラ編(後編)

 やがて、その音に気付いた下の警官が、はっと瞬時に顔を見合わせコンクリートの階段を駆け上がる。


それを聞きつけたイゾルデは転がった三脚を拾い上げ窓の縁に足をかけた。


その途端、乱暴にドアを弾き飛ばし、どかどかと幾人もの警官たちが駆けつけた。

そして彼らは見る。振り向くイゾルデの真下で、血を流し横たわる1人の少女を。


「くそがぁあ!」


途端警官が怒声を響き渡らせ、彼らは真っ直ぐイゾルデに銃を構えた。


「だから違うんだってぇぇぇええ!!」


イゾルデはそれから悲鳴と共に窓から飛び降りた。

銃弾が窓を貫き、大きな音を立てて割れる間にイゾルデの身体が宙を舞う。

銃弾がかすり、ガラスが刺さる痛みの中、目前に迫るは9m下の地面だ。

このまま飛び降りては骨折をしてしまう。が、


「うぁああああああ!!!」


イゾルデは無意識に持っていた三脚を振り上げて飛び降りた。

それが丁度2つの電灯の間に引っかかり、宙ぶらりんにイゾルデの身体が揺れた。上を見れば警官が唖然としてその一抹を窓から見ている。


「しまった…!」


急いで身を乗り出し三脚を抱えたまま地面へと手を着き、着地する。


「ま、待てぇぇぇ!」


窓からイゾルデの足元に弾道が走るもそれらを跳ねるように飛び退け、道を横切ってイゾルデは走り去った。向かいにある建物の隙間へ滑り込んだ時に、弾が建物を撃ちつけた。


「くっそぉ!取り逃がしたぁ!あの女ぁ!」


窓の縁を叩いて悔しがる同僚を確認したもう一人が、気絶する高珊を抱きかかえながら無線を出した。


「今灰かむりの猫を発見した!一般人女性に暴行を加え逃走中! 路地裏に逃げ出した!至急確保を要求す!」


***


「大変だみんな!《猫》が女の子に危害加えて逃走したって!」


「なんだって!?」


無線を聞いて叫ぶ警官に、交通規制をしていた仲間たちが一斉にパトーカーに集まった。

赤警灯を持ったヨーナスもクラクション鳴らす車の列を横目にそれに続いて問いた。


「場所はどこなんです!?」


「18番ストリートから路地裏をずっと横切っているってさ!何人か横から割り込んで追いかけたらしいけど、みんな取り逃がしたらしいよ!」


パトカーを取り囲んだ巡査たちが動揺に湧いた。


「取り逃がしたって…たかが女一人だろ?どうしたってそんなヘマ…。」


一方、その横でヨーナスが青ざめて呟く。


「それよりちょっと待ってください…。その報告によりますと…《猫》はいずれこっちに向かってくるって事になりますよね…?」


「…ははは…まさか~こんな大通りに…。」


回りの巡査の苦笑いが、逆に焦燥を掻き立てる。

その時である。更に大きなクラクション音に振り向けば、摩天楼の隙間から自転車が飛び上がった。車のボンネットを踏みつけ、跳ねるように車の隙間を必死の形相で駆け抜けるは、栗色のポニーテールをした若い女―!


「ね、猫だぁあああ!」


「つ、捕まえろぉおおおー!」


唖然としていたパトカーの巡査も、後ろから追いかける同僚らの叫びに気付き慌てて飛び出す。ヨーナスもそれに続いた。


「そういや初めて顔みたな…!っでもなんであんなに痣だらけ…?」


ヨーナスは皆を追い抜き、横切らんとするイゾルデの豊胸に手を伸ばすも、ポニーテールはすっとヨーナスの手をかわして通りの間にある新緑の広場に脇目も振らずに飛び出した。


車をすり抜けた巡査たちとぶつかるように合流し、ヨーナスは必死に彼女の跡を追い掛ける。


「仕方がねえ!撃つっきゃねえなぁあああ!」


巡査の一人が息をきらしながら銃を構える。それにやめろ!と叫んで留めた。


「駄目です!女性に撃つのはゲスの極みですよ!」


「んだからっでどうすんだよ!向かいの通りに入れられちゃ取り逃がすぞ!」


脇から走り抜けたもう一人の同僚が叫ぶ。ヨーナスは遠くなるイゾルデの尻をきっと睨み、腕を振り回して叫んだ。


「まわりこむんです!通路に入る前に、まわりこめっ!」


その声に応じるよう両側から警官がぐるっと取り囲む。イゾルデはそれも構わず突き抜けようとするがそれを妨害するは―白馬騎馬隊の警官だ!


「おお!」


遠く、向かいの通りから走り出た白馬は、新緑の地面を蹴りあげ、鬣を靡かせる勢いでイゾルデにぐんぐん近づいてゆく。


「観念しろ!猫ぉ!」


めかし込んだ騎馬警官がたずなを引いて叫ぶも、イゾルデは横目で見るだけで全く応じない。


「くそぉ!」


警官は歯を食いしばり、鞭を叩く。更に勢いを増した馬がついにイゾルデの前に至った。


「ったぁ!」


取り囲みに成功したと拳を振り上げる警官たち。

だが、イゾルデはそのまま真っ直ぐ前を阻む馬に向かって突進する。


「自転車で馬から逃げられると思ってるのか、馬鹿が!」


と上に乗る警官はにやっと笑い、馬の向きを変えイゾルデを迎えうたんと構える。そして真正面に至った時、イゾルデはくっ、と頭上の警官を睨みつけながら胸からカメラを取り出した。


「何…!?」


何を今更と思う顔に、ぶんと振り飛ばされたカメラが顔面に至る。ジーとセミの鳴き声のような機械音が警官の耳に張り付いた。―と、途端火をふいたような音ともに、カメラのフラッシュが警官と馬の視界を真っ白にしたのだ。

その突然の閃光にパニックに陥った白馬が「悲鳴」と共に前足を上げ、騎馬警官を振り落とした。


「わぁぁああ!」


「しまったぁ!」


地面に転がる主人をよそに、パニックが醒めやらない白馬は全速力で向かいの通りと平行に走り出す。


「避けろおぉぉ!!」


今の白馬には敵も味方も関係ない。横に逃げる警官の間を白馬が抜ける。

がその横に回り込んだのは、イゾルデだ。自転車を馬の腹の下に潜り込ませ、そのタイミングと共に揺れる足踏みに右足をかけて勢い良く馬にまたがる。


「な…!」


イゾルデは無表情のまま荒く揺れる馬上でたずなを引っ張り、馬を向かい通りに誘導する。

そして全速力のままぐるりと馬の向きを変え、広場にいる警官たちを通り過ぎたのだ。


「な、なんだぁあの女…乗馬のテク半端ねぇぞ…!」


振り落とされた警官は地面に突っ伏したまま感嘆の声をあげる。

彼の側にいたヨーナスははっとなって通りを走る馬の尻を追いかけた。


「逃げろー!向こうにパニックになった馬が来るぞー!」


ヨーナスの呼びかけと、迫り来る白馬に人々の叫びが通りに湧いた。

澄み切った秋空を背景に、摩天楼NYの大通りを駆け抜ける白馬と、その上に乗る青い服の女。

車を縫うように抜けるその跡には衝突音と共に、無残な事故現場が広がっていくばかりだ。


風が通る草のように避ける人々。巡査が横から銃を放つも、揺れる馬上では焦点が定まらない。


「撃つな、撃つなぁ!一般人もいるんですよっ!」


通路を走るヨーナスが構えた男の腕を弾き飛ばす。それに続いて何人もの警官が列になって走る。警官たちはそうして両側から通路を走り追いかけるのだが、駿馬に適うべくもなく距離はどんどん離されていった。


「待てコラぁああああ!!」」


それでも諦めずに走り続ける中で、ヨーナスは息をきらしながらイゾルデのその先を伺う。


「大丈夫かな・・・!あの先には、妊娠中のメアリー刑事が尋問していたはずですが…!」


どうか横にそれていてくれと願うヨーナスであったが、

馬が向かうその先に車の運転手と話している、ブギーボードを持つメアリー刑事を遠目から捉えた。


「メアリー刑事!逃げてー!」


ヨーナスと警官らの叫び声に横を向くメアリー刑事。

草をかき分けるように走る蹄の音と、迫り来る「白」にようやく気付いたのだった。

しかし同じように逃げる回りの警官、刑事たちの中で、メアリーだけはそれよりも運転手を出そうと慌てる男を宥め、車のドアノブをガチャガチャと動かしていた。


「何をしているんだ!早く逃げろ!」


後ろから叫ぶ刑事に慌ててドアが開かない。その様子にイゾルデもしまったと目を開いた。


「何をしてるの!早く逃げて!」


たずなを引いたままイゾルデも叫ぶが、いきなり開いたドアに運転手が前めのりに転がる。近づく蹄の音に逃げる意欲を失ったか男は途端「もう間に合わねぇよぉ!!」とうずくまり動かなくなってしまった。


「あぶない!」


慌てて男に駆け寄るメアリー。それから、きっと白馬を睨みつけたかと思えば、彼を守るように膝をつけたまま前に身を乗り出した。


「ちょっと逃げてっていったでしょ!?」


「逃げてくださいメアリー刑事ー!」


するとヨーナスとイゾルデの叫びに応じず、メアリーはしゃがんだまますっと、腰からP226を取り出し両手で構えたのだ。


「なぁ…!?」


「駄目ですよ、メアリー刑事ぃぃいい!」


メアリーは黙ったまま精悍な顔つきで手を震わせ、銃口を向ける。何よりも市民を守るためにただ一心に。その様子が同じ銃を持っていたジュリアと重なり、イゾルデは目をそらす。


しかしそれは違う。今、彼女は「命」をその身に宿している「母親」なのだ。


「く、くそおぉぉぉぉぉ!!」


イゾルデは突然絞りきった声を出し、無理にたずなを引っ張って白馬の片足をあげだ。

悲鳴をあげて、一瞬動きを止めた白馬に通路から走った警官が一斉に駆け込む。


必死になって掴みかかる警官を慌てた白馬はなりふり構わず振り払う。

そしてイゾルデの蹴りに従って建物の脇へと逃げ込んだ。


ヨーナスはそれでもただ一人、足を引きずりながらも諦めずに走る白馬に掴みかかった。


「ちょっと…!離して!そのままじゃ骨折するわよ!」


「構うもんですかぁあああ!!」


必死の形相でイゾルデを捕まえようと手をのばす「ディンゴ」に、「猫」は顔面蹴りによってそれを拒否した。


「ぐおぼ!」


ついにヨーナスは手を離し、脇に捨てられたゴミ袋に突っ伏す。

その後から警官が次々と無線を携えながらイゾルデの跡を追った。


***


「逃げた?」


「捕まえた?」


「いや、逃げたそうです。」


「…クソっ!」


無線報告に苛立つ同僚を見ながら、メアリー刑事はへなへなとその場にへたり込んだ。


「メアリー!大丈夫!?」


駆け寄った別の同僚たちに支えられながら、メアリーは大通りの真ん中で涙を流す。無意識に、そして必死にお腹を押さえながら掠れるように呟いた。


「…こ、こっちに来なくて良かったぁ…。」





9、TARGET8 『BIG BEAR』


「よくない。実によくない。」


その報告を聞く上層部の男は、不機嫌にプラザから見えるNYを眺めていた。

その陰気な雰囲気を漂わす男の背中を本部長-、今年59歳となったフェルナンデス・バードは、更に深く刻まれた皺を寄せながら心配そうに彼を伺う。


沈黙に響く無線の報告を正面に聞きながら、フェルナンデスはぼそっと呟いた。


「思っていた以上に捕まらないものですね…。その《猫》というのは意外にもただ者ではないのでしょうか。」


「はっまさか、たかがジャーナリストもどきの女だぞ?捕まらないのはカッパーズ共がなっとらんからだ!またきちんと再教育してやらんとな!」


と「現」教導委員長である男は、不機嫌そうに口まで覆う白髭をゆらし、乱雑にフェルナンデスの後ろを横切っていく。


「フェルナンデス、本部長として皆に報告しとけ。猫がこれ以上抵抗して一般人も巻き込ませるなら、射殺命令もやむなしとな!」


「な…!?射殺…!?」


「仕方あるまい!」


乱暴にドアを閉めながら委員長は吐き捨てた。その様子を唖然として見ながらフェルナンデスは顔を覆う。


「くそぉ…上層部ってどうしてこうして良い人材ってのが、ないんだ…。」


せめてお前だけでも早く戻ってきれくれれば…とかつて居た友の名を呼んで俯いた。  


その時教導委員長は、廊下の突き当たりに立ち携帯をかけていた。

誰もいない事を確認しながらこっそりとかける。


「ハロー。ブラックパンサー。私です。NYPDのリンクです。」


応じた相手に、教導委員長は恭しく挨拶した。


「先ほど本部長に命令して猫の射殺命令を出させました。これならもう《例の事》を知られる余地はありません。証拠も何人かの同士にどさくさに紛れて、消滅するようにさせましょう。」


「本当に出来るであろうな。」


低く淡々とした相手の声に「はぃぃ!」と恰幅の良い男は声を裏返して言った。


「だ、大丈夫です。我が主ブラックパンサー殿。今丁度良い時にあのめんどうな「熊」は怪我でいません。あいつさえいなければ、あとは私だけで何とか…。」


「誰が面倒な熊だって!?」


「わぎゃぁっ!」


ばっと振り向くリンクの首に太い腕が回った。それからリンクは外れようと爪をたて力強く掴んだが、それ以上に男の腕がきつく締め付けて、そして――、


「っなんだぁ!?」


部屋に響く殴音に驚き、フェルナンデスが部屋を飛び出す。

右手の突き当たりに顔を向けた先には、床に膝をつき唾液を垂らしてうずくまる教導委員長と、その側で仁王立ちする黒く広い背中が見えた。


「ウェッブ!」


うずくまる委員長をよそに、歓喜の声をあげて走り寄るフェルナンデス。

それに振り向いた男、ウェッブは5年前と変わらずにっと得意気に笑った。


ここでついにジョージ以外の主要人物が揃った。NYPD元教導委員長、現NYPD副コミッショナー 、アルバ・ウェッブ。53歳となった今でも、右目に黒い眼帯をつけている以外特に変わりはない。


「お前休暇長かったなぁ!丁度3ケ月か!」


「あぁ、化膿が思ったより酷くなってな。」


と眼帯を指差しながら笑うウェッブに相変わらずと微笑むフェルナンデス。久しぶりの再会をわかちあう2人の下で、教導委員長は咳き込んだ。


「にしてもこいつぁ、俺がいない間に散々な事しやがってよ。まあ、俺のみぞおち撃ちに気絶しなかった所だけは、さすが元海兵隊だと誉めておこう。」


手首を回し悠々と見下ろすウェッブに委員長は悪態をつく。


「いたんですかいつのまに…。」


「っそうだ!ウェッブ!いきなり委員長殿をみぞおち撃ちなんてどうしたんだ!」


慌ててしゃがみ寄り委員長の背中をさするフェルナンデスに、ウェッブは委員長から奪った携帯を掲げながら言った。


「さっき盗み聞きをして聞いた。こいつ、俺の居ない間にスパイ活動しやがってた。」


「な…!?誰の…!?」


「NSA。」


驚愕の面持ちで顔を向けるフェルナンデスに、委員長は口元を吹きながら悔しそうに顔をあげた。


「もう大体の事はこの俺が盗み聞きしたんだ。あらいざらい吐きな、委員長。《例の事》を隠すために《猫》をそこまで射殺したい理由はんだ?」


「例の事…!まさか…!」


ジュリア殺害、容疑者の猫、結びつく可能性にフェルナンデスが目を見開く。

見下ろすウェッブの白い眼光とフェルナンデスの驚愕の目に諦めたようにリンクは目を伏せた。


「申し訳ありませんブラックパンサー殿…。」


と携帯の向こうにいる相手に呟いた。


「…お前が考えている通り、ジュリア、そして猫は《例の事》を知っていた。」


「はぁ…!?」


「何て事だ、おい!」


リンクの言葉に2人は互いに顔を見合わせる。

そして、ウェッブはわなわなと携帯を握りしめながら叫んだ。


「成る程ブラックパンサー…それをそっち(NSA)で知ってたんだな…!」


「ああ、ようやくコンドルの家宅を見つけ、前もって仕掛けておいた監視カメラで覗いていた所で、見たんだよ。昨日の夜にクラパのコンドルが、取材を受けた《猫》の誘導にまんまと騙されて《例の事》を話してしまった、一抹をな。」


一方ブラックパンサーという男は、さして動揺する事なく淡々とした口調で答えていた。


「それでまさかその根を断つために、ジュリアを貴方たちが…!?」


「違う違う!警察としてそこまで落ちぶれちゃいねえぜ俺たちは!」


とリンクはぶんと首をふってフェルナンデスに抗議した。


「監視カメラはあいつらにばれて壊されちまったんだ!その後にジュリアは銃殺された。さしもの私もそれには驚いたよ!本当の話だ、信じてくれ…!」


咳き込みながら必死で腹を抑える委員長にフェルナンデスは再び背中に手を添える。

が、ウェッブは相変わらず冷徹な目でリンクを見下ろしたままだ。


「・・・だからってなぁお前、それを利用して猫を犯人に仕立て上げ、確保するどさくさに紛れて仲間に抹殺させようとなんて、それこそ警察として地に堕ちた行為じゃねえか!ほんっと、俺が居ない間に勝手な事しやがって…!」


携帯を握りしめて怒るウェッブに委員長は


「お言葉ですが…!」と生真面目に答えんとした。


「副コミッショナー!あの野良猫は「幸い」ながら、市民権を持っておりません!つまり不法入国者、我々が保護する義理はないのであります!ですから…!」


「俺が聞きてえのは、「お役人」の言葉じゃねえんだよ!」


ついにウェッブはリンクの首を掴み上げ激しく窓に押し付けた。

「ウェッブやめろ!」とフェルナンデスが肩を掴むも、それをあっさり弾き飛ばす。


「胸糞悪いぜ…全く。警官としてなら正解だが人間としてお前は屑だな…!!」


「何を今更…!NYの市民の権利を守るためなら…我々は進んで彼らの代わりに人間である事をやめ、無慈悲に鉄槌を下すと…!代わりに「単位」になると…誓ったのはお互い様でしたでしょう…!」


「開き直ってんじゃねえぞお前!」


ぎりぎりと更に強まった腕の締めつけに構わず、「海兵隊」出の男は口を開いた。


「そこまでして言うのであれば…ならば…コミッショナー、この状況を一体どうしろと言うのですか…!《あの事》を知ってる猫を手放しにして、情報が広まったりでもしたら…!それでこそNYが…!いや世界がパニックに陥る事になる…!それを正義のためにと辞さないやり方は本当に妥当だと言えるのですか…!?」


かばと唾を吐きながら苦しそうに男は叫んだ。


「……!」


ウェッブはその言葉に一瞬我にかえる。そして、思い出す。ウェッブもこの男と共に《例の事》を『本人』にも語らず守らんと決めた1人の上層部であった事を。


「そういう事だ、NYPDの大熊。」


そして、すべてのきっかけを作った男―、ブラックパンサーがようやく口を開いた。


「殺すにも殺さないにしろ、どっちにしろ《猫》は捕まえなければならぬと言う事だ。それに異論はないだろ。ウェッブ。」


ウェッブは何も答えない。それに構わずブラックパンサーは悠々と言葉を続けた。


「念のためと思ってした抹殺計画は実行したかったが、お前のために諦める事にしよう。ならば、せめて《猫》の手から写真は取り戻せ。ジョージと全く同じ顔をした…あの男の…ゲオルク・ライヒートが玉無しになる前の一枚の写真を。」


「な…貴方の組織でさえ見つけられなかったあの写真を《猫》が…!?」


突き飛ばされたフェルナンデスは背中をさすりながら驚いた。


「あぁ。それが、私たちが今まで手に入れられなかった唯一の「物的証拠品」だ。それは何としてでも私たちの手のものにする。それ位の暴挙は先の事を考えても問題ではなかろう。」


ウェッブとリンクが睨みあう横で、ブラックパンサーがそう提案した。くそっ…と乱雑にリンクから腕を離しウェッブは俯く。


「仕方がねぇ…不本意だが・・・今回はテメェの言う事に従う事にするぜ。」


「…ウェッブ…!」


「潔ぎの良い事で。」


ふっと笑いかけた物言いにウェッブは嫌悪した。一方フェルナンデスは彼が少しも動揺しなかった理由を解し、その腹黒さに恐怖していた。


「…その写真は…もう出回っちゃぁいねえだろうな…」


「あぁ私達が『見る限り』どこにも転送された跡はない。《例の事》を知り、なおかつ《写真》を持っているのは今の所《猫》だけ、という事だよ。―捕まえない限りはな。」


とブラックパンサーが言い終わる前に、ウェッブは携帯を叩きつぶした。

落ちる金属片がリンクの前に散らばる。そしてウェッブはリンクを置き棄てジャケットを翻しながら廊下をずんずんと歩き出した。


「まだ猫の射殺命令は出していないだろうな。」


歩きながら、ウェッブはフェルナンデスに尋ねる。


「あ、あぁ。幸いお前が駆けつける手前で出す所だったよ。」


「なら良い。とにかく包囲網を強化しヘリを出させる事にしよう。猫はとにかく生け捕りにする。管制室に直行だ、バート。」


「全く忙しくなりそうだな!アルバ!」


リンクの側にいたフェルナンデスが慌てて背中を追っかけた。


「あぁまったくだ。たっく今すぐ、どいつもこいつもみぞおち撃ちしてやりてぇ気分だぜ!」


ぱあんと眼帯をつけたまま、ウェッブの拳を叩く音が廊下に鳴った。


***


 細道を駆け抜ける馬に立ち向かわんと警官が路地裏を走る。


「これ以上走り回られたら、埒があかねえ!胸糞悪いが馬を撃ち落とそう!」


「馬鹿言うな!だってあれは俺たちの…!」


そう言いながら近づいてくる蹄の音を頼りに小道を走る警官2人の横から、白馬が突然身を乗り出した。


「わぁー!」


「伏せろー!」


そう叫ぶ間に前の男が白馬の前脚に頭を蹴られる。八角帽子と赤い血が空に飛び散る刹那、恐れおののくもう一方の警官の頭上に跨るは、すす汚れた白馬の腹―。


「うあああぁぁああ!」


二の舞にはならんと警官はGLOCK19を取り出し、幅広い腹に向かって必死に弾を撃った。


風穴が開いた白の腹に途端に赤い血が吹き出し、馬は頭上で甲高く鳴いた。

警官を乗り越え痛みに呻く白馬に、突っ伏しながら警官は更に仲間を蹴り飛ばしたその足を撃つ。バランスを崩した白馬は、ゴミ溜めの中に倒れ込み、体中あちこち滝のような血を流しながれピクリ、ピクリと痙攣していた。


「どうしましたー!」


後からついてきたのは割れたメガネをかけたヨーナスだった。

突っ伏せて震える男の指差す方向に目を向けば、そこには血濡れの白馬が横たわって動かなくなっている。がしかしその背には誰もいない。


「小道を走ってる間に飛び降りた…?」


はっと四方の路地を見渡すも、建物の隙間から青空が見えるだけだ。そして振り向いた先には頭から血を流す同僚を抱きかかえる銃を持った警官が――。


「う、うあああああああ!!このクソアマァぁぁぁ!どこへ逃げやがったちくしょおがぁぁあ!」


ぶんと、馬を撃ったその銃を四方に向ける。

が、誰もいない十字路で警官の叫びは虚空にわたるだけであった。


「よくも仲間を…!よくも俺たちの馬をぉぉおお!メス猫がぁぁ!」


「落ち着いて下さい!彼はまだ助かる可能性はありますよ!」


必死になって両脇を固めるヨーナスに構わず、悲壮の涙を散らし暴れる警官の無念が、血と硝煙にまみれた空気にどよんだ。


*** 


 一方、その叫声を遠目に聞くイゾルデは通りに面する部屋の窓に、体をつけずるずると座り込んでいた。割れた窓から見えるベランダの柵には、向かいの壁に端をつけた三脚が引っかかっている。馬上に乗る間に三脚をはしご代わりにし、階上の部屋へ上がったのだ。


やがて疲労でだるい体を起こし、ぼんやりと映る翡翠の瞳の先に見えるは、ゴミと機器類に囲まれた埃まみれのワンルーム。


「さしずめ、出稼ぎのためにNY入りした若い建設業者って所かしら…朝なのに居ないのはブルックリン橋の修理に泊まり込みでいるからかしら…。」


かけっぱなしの薄汚れたベッドを見ながら推理してみる。その向かいには錆びた機器類に覆い尽くされる長テーブルがあった。


「ちょっと綺麗にさせていただくわよっと。」


と取り構えた三脚で机の上を掃く。と鈍音の中からチンと軽い音を立てて、黒電話が現れた。


「あったあった。」


転がっていたパイプ椅子を引きずって机の前に置く。

それに座って電話をかけると、ベルが鳴ったようなダイアル音が狭い部屋にうるさく響く。やがてしばらく待った後。受話器の向こうから出てきたのは女の甲高い声だった。


「マリアンヌ!マリアンヌなのね!」


「へ、編集長~…!無事で良かったぁ~…。」


その変わらぬ声に脱力し、イゾルデは机に突っ伏した。


「全くもう!一体全体どうしたのよ!あんたのモンタージュ写真がニュースに出た時は茶ぁ吹いちゃって!こっちにサツが来る前にみんなでトンズラする事になっちゃったんだからね!」


「…みんなでって事はよもや!」


「ええ、みんな無事よ。」


彼女の後ろから聞き慣れた2人の呼びかける声が聞こえた。


「よ、良かったぁ…」


安堵した刹那に流れた一筋の涙。編集長はそれを察したように優しく話しかける。


「今こっちでも貴女の様子はラジオから聞いてるわ。本当一体どうしちゃったのよ。あんたがジュリアを殺したのは毛頭信じてないけれど、だからってそこまで抵抗して逃げる事ないじゃない!つーか何があった!ジョージ絡み!?」


「えぇまぁはい…。いや、それには複雑な理由がありまして…。」


立て続けに質問する編集長に苦々しく思いながら、胸からその「事情」を入れたUSBを取り出す。携帯も、パソコンも高珊とのやり合いで壊されてしまい送る手立てがない中、黒電話を恨めしく思いながら「状況証拠でしかないけれども。」とNYPDにはめられたその事情を説明し始めた。


***


 一方プラザの管制室。


「み、見つけたぁ…っ!」


画面に映るデータを見ながら、ピザを頬張るギークボーイはほくそ笑んだ。


「本部長殿見つけましたぜ!《猫》は今、 周辺の建物の中で誰かと電話をしている!」


「何だって!?よし、至急そこら辺にいるポリスに捜索させよう!」


フェルナンデスとウェッブは管制室を走ってギークボーイの横につき、画面を覗き込む。と、そこからぼそぼそと女の声が聞こえた。


「すみません。内容まではうまく聞き取れませんが、声判別からして《猫》である事は間違いないっすねぇ。」


いや、それは好都合と2人は互いに顔を見合わせた。


「電話の相手は何だ!」


「話声から察するに女っすね。そして場所は…。」


カタカタとボードを打ち込み、NYの街並みが三次元に歪んだ。


「…変だな。なんであんな所に。」


「どうした。」


「データに基づくと相手は今NYの地下水路にいるって事になってるぜ。

どういう事っすか?」


「モグラ…モグラの穴の住人だ…。」


フェルナンデスが椅子を掴みながら呟いた。


「モグラの穴?何だ、それは。」


「ホームレスや不良、低所得層などの所謂世間のはぐれ者たちが、雨露しのぐために地下水路や地下駅、地下部屋に住み着くってのがあるんだよ…。その中には勝手に電線や電話線を引いて家賃無しで過ごす輩もいたりする。おそらくそういう相手に連絡を…。」


「相手の心当たりは、バート。」


「女という事を考えると、多分《猫》のパイプ役としても知られた、三流編集プロダクションIWB社の「編集長」だろう。昨日の夜、彼女の会社に突入調査したが、社員もろとも蛻の殻だった。

きっと、この地下水路のアジトに逃げ込んで《猫》との連絡を待ち望んでいたに違いない!」


画面の赤い点を強く何度も叩くフェルナンデスと共に、ウェッブが無線を急いで取り出した。

情報が流れる前にそれを根止めておかなければと―。


***


 その由も知らず、地下道に佇む編集長は驚きのあまり受話器を握りしめたまま動けなかった。


「編集長…?」


懐中電灯を持ったまま様子を伺う部下の声にどっと汗を吹き出し、舌を回した。


「じょ、冗談じゃないわっ。そんなジョージにそんな事なんて……っ。」


「《冗談》を知った私がこんな風にNYPDにはめられ追われるとでも?」


「…!」


ジュリアを殺したのはイゾルデでない、と信じ切っている編集長はぶんと首を振った。


「でも、なんとかこうして逃げ切って情報を伝える事が出来たのは安心しました。編集長も警察に伏する事なく、約束通りそこにいてくれて感謝しています。」


「な…なぁに!サツにケツ振るような奴がパンクなんかやってられっかよ!」


とスカルのタンクトップで胸を張る編集長であるが、その後ろから


「嘘をつけ。俺が逃げろって言わなけりゃ、ずっとべそかいてたくせに。」


と肩に顎をのせ囁く男がいた。


「きゃぁああ!」


「……誰?」


驚く編集長をその胸に抱き受話器を受け取ったのは、汚れたベレー帽をかぶる男。


「ほぉ。かつての師匠に対して随分と言う様になったじゃねえか、猫。」


「ジェームズ・ラングトン氏…!?」


その時久しぶりに聞いた野卑な声に、イゾルデは翡翠の目を大きく見開かせたに違いない。


「久しぶりだな、猫。なんだ、嬉しくて言葉が出ないか。」


「何故…貴方がそこに…!?」


「あん時逮捕されて以来、FBIからマフィアの殺リストに載ったって難癖付けられてずっと監禁されてたンだよ。でもお前がピンチだって知って、急いで監視から逃げ出して駆けつけやった。NYPDにはめられたって事は、ニュースを見た瞬間に予想ついてたぜ。」


「師匠…!」


「ジェームズ!逃げられるならもっと早く逃げてくれれば良かったのに!馬鹿馬鹿!」


編集長はぽかぽかと私の胸を叩きながらその中に泣き崩れる。私はトレードマークの出っ歯をのぞかせ、笑いながら「すまんな」と彼女の頭を撫でたのだった。


その様子を後ろの2人は、地下水路の暗闇の中、顔を合わせて微笑みあった。


「それはそうと猫。お前これからどうするんだ。このままだらだらと逃げ続ける訳には。」


「師匠。」


私からの問いに辺りはしんとなった。そしてその中で響いたイゾルデの答えは、


「ジョージに会いにいきたいと思います。」


「な…!」


私と編集長は慌てて向かい合う。


「私が、真実を突き止めるならと思うあまりにジュリアを騙し、死なせてしまったのです…。死んだジュリアのためにも、私はその責任として彼にこの事を伝えなければならない、と思うのです。」


この時、イゾルデは怒っていたように見える。それは自分自身に対しても、おそらく彼らに対しても。自らの秩序を保つためにジュリアを殺し、自分をもはめようと追い詰める、このNYの街を牛耳る組織に対して――。


しかし、それを知った上で私たちは彼女の怒りを、『大人の対応』でもって留めた。


「落ち着けマリアンヌ。お前がジュリアについて責任を負う必要は何もない。」


「それにあのままNYPDが―、アメリカが、ジュリアを手放してイタリアへ隠居させる根拠なんてどこにもなかったじゃない!」


「そうだ。アレはジュリアにとって、殺される前にお前に託す事が出来て幸いだった事だと思えばいい。真相なんてこの際、何の意味もならん。」


「そうよ!それに、ジョージはきっとNYPDから唆されて、貴女がジュリアを殺したと思い込まされているわ!あのジョージの事だもの。貴女の話なんて絶対に信じるわけがない!

有無を言わずに撃たれるだけよ、きっと!」


「…はい…。」


掠れるように応えるイゾルデであったが、その真意までは私たちにも知る由はなかった。


「…そうだとしても、やはりこの物的証拠を誰かに見せなければ、というのは絶対ですよね。」


「ああ、そうだな。でも誰に?」


「分かりません。今あるのはジュリアに託されたこの写真だけ、一体誰に渡せば良いのか…。」


しわくちゃに、それでも確かに存在(あるのはジョージ、――ムンダネウムの男の写真。


「それはやっぱり…私たちしかいないじゃないかしら…。」


やがて、腕の中で編集長は私の顔を見ながら言った。


「ね!そうでしょ!幸い駆けつける前に逃げたから私たち顔は知られてないし、ここにいる限りは滅多に見つからないわ!時間を決めて合流する事にしましょう!」


「さすが編集長!伊達にパンカーじゃないっすね!」


後ろの後輩がはやしたてるが胸の中にうずくまる編集長は


「だからそうだって言ってるでしょ!」


と声を震えながら声をあげた。それは後ろの男も同じだ。


「そうだな。もうそれ以外に手はないだろ。場所を決めよう。」


「ええ。」


そして震える声はイゾルデも同じだった。


「場所は、ウェストサイドの郊外で、どうだ。」


「地下水路から地上へ出られる入り口が1つありますね。」


「あぁあそこなら一番目立ちはしない。時間帯もこの状況を考えると…夜8時はどうだ。」


「はい。」


「よし、決まりだな。その間なんとしてでも、逃げ切ろよ。」


私の言葉にイゾルデは答えない。

その次にその間に「写真は守れるか?」と強く、強く訊ねた時、


「やってみます。」


とイゾルデは重々しく頷いた。


「あっ、もう行かなきゃ。これも盗聴される可能性が。」


「分かった。8時、8時だぞ。俺たちも絶対に迎えてやっから、お前も絶対に来いよ。」


「…はい…あ、駄目、もう行かなきゃ。」


急ぐように喋ったイゾルデに答える前に、走り去る風の音がむなしく聞こえた。


「雨が…降るかもなぁ…気を付けろよ、マリアンヌ。」


鼻についた錆の匂いを嗅ぎながら、俺は答えのない呼びかけに寂しく目を伏せた。


「・・・・いざと言う時のためにパソコンの用意はしっかりしておけよ、部下。」


「がってんです!」


威勢の良い後ろの声に頼もしく思いながら、俺は受話器と、心配そうに俺を伺う編集長の肩を握りしめた。こっちも絶対に捕まらない、という意思を持って-。


***


「雨が降るな。」とウェッブ。


その隣でフェルナンデスも曇りゆく昼の空を見上げながら


「心配だな。」と呟いた。


「熊どの、熊どのー。地下水路の配備、今全体的にできたようですぜ。」


振り向いたウェッブにピザを差し出しながら、ギークボーイがパソコンを手に報告する


「装備したってのに…、全く良い情報聞かねえなぁ。」


ギークの隣でピザを頬張りながらウェッブがため息をつく一方で、フェルナンデスは額の皺を歪ませて「仕方がないだろ」と呟く。


「無茶な事を言うなウェッブ。NYの地下水路は縦横無尽。お前のその要望は、地下にある『もう1つのNY』から、はぐれ者を探し出せっ、て言ってるようなモンだぞ。」


もう1つのNYか…ホームレスや不良者が居座る地下のニューヨークを思い浮かべながら、ウェッブは皮肉気味に笑った。

フェルナンデスもその脇でピザを頬張りながら問う。


「ギーク、地上の猫の方はどうだ。」


「相変わらずっす。」


ギークボーイの短い答えにすべてを解した3人は、ピザを片手にふかーいため息をついた。

朝から緊迫状態の管制室が、倦怠感によどけていく。


「やばい、これはやばいぞぅ。もうすぐ夜にでもなってでもしたら…。」


「おまけに雨も降ってでもしたら…。」


最悪な事態を考えまいと2人は同時にピザを頬張った。


「やっぱり…俺ァそろそろ『あれ』を出すしかないかもって思うぜバート…。」


その半ば諦めたような口調に、フェルナンデスも気だるい目線を向けた。


「アルバァ…そいつは火薬庫に点火するような暴挙だぞ…?」


と言ってはみるもののフェルナンデスもそれしかないと思っている。


「駄目だ。絶対にいかん!」


が一方、その後ろから強く否定したのは、仁王立ちしてピザを頬張るリンク教導委員長であった。


「万が一、『あいつ』と猫が接触して《例の事》がバレればどうする!?そうなりゃ我々は今度こそお仕舞いになるじゃないか!」


 そう。彼らにとって《例の事》を知られたくない相手は一般人ではなく、何よりも「彼自身」に対してなのである―。それにリンクは更に悪態をつく。


「たっく、大体まだ真犯人も分かってないという上に、こんな事になろうとは…!」


「真犯人?何すかそれ。容疑者は《猫》なんでしょ?」


「「あーそうそう、そうですそうです!」」


怪訝な顔するギークに慌てて、ウェッブはピザを貯めたリンクの口をおさえた。


とその時、管制室の大画面がぱっと切り替わったかと思えば、そこに建物の屋上を俯瞰した映像が映し出された。


「何の映像だ!」


「ヘリからっす!」


画面からはボバリングの音、プロペラが回る黒い影が画像の端っこから見える。

そして風が舞う無機質な屋上の映像には、入り口から飛び出す若い女がいた-!


「猫だーっ!」


管制室に大きな歓声が湧いた。

画面に映るイゾルデは、必死に向かいの手すりにと駆け抜けるが、入り口からは次々と警官たちが湧いて出てイゾルデに迫らんと構えている。


空にヘリ、入り口には警官と袋小路になったイゾルデは苦悶の顔で手すりを掴んでいた。


「やったぁ!やったやった!ついにやったぁー!」


その結果に手をあげて喜んだのは、リンク教導委員長である。


「よぉーっし!そのまま確保したまえー!」


そうしてリンクは調子良く指をイゾルデに突き指す。映像からきっと眉を潜めるイゾルデを嘲笑い、


「どうだ、見たか野良猫!!これが我が組織の実力だ!」


と得意気に髭を揺らす、がしかし指を向けたイゾルデの顔面に突然弾が走った。

「な…!?」


しかしその弾の飛ぶ方向はオフィサーのものでも、ヘリのものでもない。

手すりに沿って倒れ込むイゾルデにはっとし、弾の飛ぶ方向に銃を向ける警官たちであるが その前に向かった弾幕が彼らを一網打尽にす!


「な、なんだぁあ!?」


「ギーク!弾の方向にカメラを寄せろ!」


ウェッブの大声に慌ててコマンドを打つギーク。

カメラが弾の飛んだ方向にズームした時、8ブロック先の屋上に手すりから突き出る長い銃口を捉えた。


「なんだあれは…?」そこから途端ぬっと現れ銃を掴む男が。


「もしや…」


「《あいつ》か!?」


違った。


それは強い癖っ毛を風に靡かせる、黒いタンクトップを着た男であった。

前髪まで覆う癖っ毛から黒い目がカメラを捉える。それと同時に寸時銃口が―。


「上昇しろー!!」


ウェッブの叫びと共にカメラが空を向いた。

その間に響く甲高い鉄の音、火花が空に散る。


がなんとか墜落は免れたか、ボバリングの音はさめやらなかった。やがてカメラがぐるりと囲むようにその男を映し出す。


反撃の弾幕がヘリから向かうも、どうせ当たらんと分かりきったように男は、悠々と立ち上がり銃を片手で持ち上げた。


「いや、あれは銃じゃない…!?」


「嘘だろ!あんな…M2なんて…!!」


長方形の黒いボックスに付けられた取手、長い銃口。それは38キロもするブローニングM2重機関銃だ。それを肩にかけ男は、手すらから飛び乗って向かいの屋上へ乗り移っている。


「持ったまま!?信じられねぇ!つーか、M2は持ち歩いて撃つもんじゃねーだろ!」


「俺でさえ出きるかどうか…!」


とウェッブが驚く合間にも、斜め上からヘリが男を追っかける。


足元に走る弾幕をも我関せずと、大股で屋上を横切る男の色白の右腕には、トライバルの刺青が絞り鍛えられた筋肉の凹凸に沿って、滑らかにのびていた。


それが映る間にぶんと乱暴にM2を振り回し、弾幕が斜めバラバラにヘリに襲いかかる。

再び上昇して逃げるヘリを見ながら


「何なんだよ、あいつはぁ!」


とリンクが机を叩いて悪態付いた。


「《猫》を狙っていたよな…あの刺青男。」


そして今、《猫》に向かって歩いている。と、すると、彼も『写真』を追う人物。つまり―、


「ムンダネウムの人間って事かぁ……!」


リンクは忌々しく空を見上げた。

しかも猫を殺そうとし、仲間を容赦なく叩き潰す眼差しは―、


「…ジュリアを殺した真犯人かぁ…!」


その唸りに応じて、フェルナンデスがギークを呼んだ。


「おい!今から男の顔認証で、余りあったテロリストリストと照合しろ!」


「出来ねえ事はねえっすけど、時間がかかr」


「構わん!人種はメスティソ、出身は南米に限定しろ!すぐに出てくるはずだ!急げ!」


「なんで分かるんで?」


「あいつの腕のトライバルは『PATRIA O MUERTE』、『祖国か死か』と書かれてる!

キューバの革命家チェ・ゲバラの言葉だ!そういう奴に違いあるまい!」


さすがヒスパニック、詳しいなぁとギークは嬉々として頷きキーボードを叩く。

「共有」しているJTTFのテロリストリストを抽出し、そしてヘリの写真と統合して表れた男の正体は―、


「な、なんでぇ!?」


ギークの叫びに急いでフェルナンデスが駆けつける。


「なぁ…!?」


と、驚愕の顔で固まる両者にウェッブが説明を促した。

画面から遠目に映る刺青の男を睨みつけながら、フェルナンデスは大声で言う。


「あの男の名は・・・・ホセ・シモン・アーンズ!ベネズエラ出身の52歳!FBLご用達の庸兵だ!」


「マルキストゲリラ!?なんだってそんな奴が!?」


ウェッブも驚きで顔をあげた。


「その中でもとびきりの過激派でさぁ、熊殿!爆発、暗殺、テロ、紛争と少なくとも40の事件に関わってやがる筋金入りの国際テロリストですぜ!危険度ランクは…SSだぁ!?えぇぇえ!!」


滅多に見ないSSランクの白表示にギークは椅子から転げ落ちた。


「とんでもねえやつだ!なんでこんな奴が入国でき―」


ウェッブは嫌な心当たりに目を見張る。まさか、また、『魔女』が―。


「その実力で名付けられた彼の異名は…赤の…『救世主』だ…!」


フェルナンデスの強調した物言いに皆は震えた。


そして、その実力を煽るかのようにホセという男は、露払いのごとく湧いて出る特殊部隊らをそのM2を振り回し、なぎ倒していく。それはNYの悪夢を彷彿とさせる戦いぶりだった。


「くっそお・・!《あいつ》を出せと促してるのか…ムンダネウムの野郎…!」


リンクはわなわな震えながら、プラックパンサー表記のアイフォンを握りしめた。


***


 そうして管制部が手をこまねいている内に、現場ではついに男が、イゾルデのいる建物の屋上へと飛び立つ。がしゃんとけたたましい音と共に、鍛えた刺青の筋肉が手すりを掴む。


そしてホセはだらりと垂れるM2を片手で持ち上げ屋上の床に降り立った。

大勢の警官らの屍で挟まって、ついに「救世主」と《猫》が対面する―。


「写真を、カエセ。」


強いスペイン語訛りで喋る男。癖毛から覗く、闇のように深い漆黒の瞳が獲物を捉えている。

一方イゾルデは恐れを誤魔化すように手すりを強く掴み、混乱しながら必死に打開策を打ち出そうと思考を巡らしていた。


「貴方…ムンダネウムの者なのね。」


要求には答えずに確認するようにスペイン語で質問する。すると男は、


「なんだ、喋れるなら最初から言えよ。」


と途端に口調を変えて首をかしげていた。それは意外にも清々しい言い方だった。


「……!?」


「まぁ、良いや。写真を渡せ。渡してくれれば特に用はない。命位は見逃してやるよ。」


滑らかなスペイン語が、ボバリングが聞こえる秋の空の風にのる。

警官の血の臭いの中でも穏やかな口調で手をのばしているホセの態度が、イゾルデの背中を震わせる。


「何なのコイツ…これだけ人を殺しておいて、そんな顔してられて…。」


癖毛からのぞく目は途端に生き生きとしていた。メスティーソ特有の綺麗に彫られた血色の良い顔立ちで、口端に皺を寄せて笑う仕草は「本物」だ。


「そうか。」


イゾルデは悟る。それは、人を殺す事を、虫を殺す程度にしか思っていないから出来る顔なのだからと―。


「おい、どうしたんだよ。」


黙っているイゾルデに対し首をかしげるホセに、イゾルデはゆっくり顔をあげてそれに答えた。


「渡さない。」


「え。」


ホセに撃たれ、「はらわた」がのぞく警官たちの、血の臭いに心が締め付けられそうになりながら、イゾルデは、はっきりとした口調で断った。


「NYPDにも、あんた達ムンダネウムにもこの写真は渡さない。・・・・あんたらの都合で、この「写真」と「事実」は無理に隠したり、利用されるものではないわ!」


これでついに、イゾルデの心は決まった。

皮肉にも敵たちの屍がイゾルデの決意を石とさせたのだ。


「絶対に渡さない。あんたが殺した、この人たちを無駄死にはさせない!」


M2の牽制をも恐れないイゾルデの翡翠の目に、ホセは「めんどくさそう」に頭を掻いた。


「あっ―。そうかい。なら、死んでもらうしかないよね。」


軽々しく言ったホセは、躊躇なくM2の銃口をイゾルデの顔にむける。


「―っ!」


寸時に胸からカメラを出して構えたイゾルデに、動きが早いね。とホセは口笛を吹いた。


「でも、そんなモンでこのM2から逃げられるワケ?」


にやっと笑うホセにイゾルデも汗をかけながら笑い返した。


「ふんっ。M2の弾も止める事と同時に、あんたのアホ面もおさめる事ができるわ。

これほど都合の良い事はなくってよ。」


精一杯のイゾルデの意地っ張りに、ホセは小馬鹿にするように、にこっと笑った。


「ん、ならそのカメラごとぶちのめしてやるか。」


と鉄の音が鳴る。そして、イゾルデの顔に向かって引き金を引く―、


その時であった。

屍の中から這い上がったある男がその横から、ホセに弾を放ったのだ。


「ぬあ…!」


突然の事に、ホセの刺青の張った腕が血で吹き飛ぶ。そして重い音を立ててM2の銃口が床についた。


「!」


「うあああああああ!!」


瞬時に銃を撃ちつけたのは、仲間の血に顔を汚したヨーナスだ。

立て続けに弾を放つ一丁のGLOCK18が、至近距離からホセの腕と脚を撃ちぬける。

それに気付き、途端に真顔になったホセはM2を盾に投げ捨てる。


ヨーナスがそれを避けた寸時にホセはその下へ潜りこみ、血で流れる腕をそのままにヨーナスの右腕をGLOCK18ごと横蹴りで蹴り飛ばしたのだ。


続いて、猫の手でヨーナスの顎を突き飛ばさんと腕を伸ばした。顎をつぶして脳震盪を起こさせようとする構えだ。


しかし、それを身体を反って避けたヨーナスは脚を上げ、逆にホセの顎を潰そうとふりあげた。ホセは、今度はそれを両腕で抱き留め、骨折させようと力を込めるが、撃たれた腕に力が入らない。その間に、ホセの眉間にもう1つのGLOCK18がつきつけられた。


「死ねぇ!」


怒声と共に咆哮がなるも、それはホセがヨーナスの脚を身体ごと宙に浮かせて回した事で、

頬をかすめた程度にとどまる。


そして仰向けに倒されたヨーナスの背中に、脚から取り出したナイフが襲いかかった!


「ヨーナスさん!」


やられる!と目を瞑るイゾルデ。が、それと同時に別の女の声が聞こえた。


「させるかぁぁぁアアアアア!」


屋上の入り口から突如飛び上がった「女」は、傾く太陽を背景に空高く飛び上がる。そしてナイフを構えたホセの真上から同じ様に尖った―、柳葉刀を振り下ろしたのだ。それは、頭にガーゼを張り付けた、痣だらけの高珊だった。


「高珊ちゃん・・・!」


突然の再会に、ヨーナスが仰向けのまま振り向く合間に、高珊は柳葉刀でホセにとどめをさそうと行き着く間もなく振り下ろす。

一方ホセは、短いナイフでその縦横無尽の素早い動きを一つ一つ受け止め、弾き飛ばし、その合間をぬって負けじとナイフを突きつける。


「遅い、遅イ!」


高珊もそれに身体を縦にし、上半身を斜めに傾けた宙返りと攻撃を避けつづけた。

ぶつかり合う鋼の音の中、2人の凄まじい刀同士の攻防が広がった。


目にもとまらぬ腕と脚の動きに目をとられるヨーナス。

再び2つのGLOCK18を手に取って構えるも、背を向ける高珊の動きに焦点が定まず、撃てないでいる。


「少し離れてくれ、高珊ちゃん!」


というヨーナスの声に、高珊は1つ2つ、素早く柳葉刀を振り回しながら、飛ぶように後ずさった。


「お久しぶりですネ、ヨーナスさン。コイツ、なかなか強者でスヨ。」


きいんと鋼の音を立てながらナイフを構えるホセに警戒し、高珊は床を滑りながら構えなおす。


「ああ、元気そうでなによりだったよ、高珊ちゃん。どうやらコイツ、SSクラスのアナキストらしい。気を付けて!」


再会の挨拶の間もなく、ヨーナスも2丁の銃を構える。


2対1。銃を持つヨーナスを含め、圧倒的にこちら側の優勢となったのではあるが、


「いいねえ…。面白くなってきた。」


血だらけのナイフを掴むゆらりとしたホセの笑みが、その状況をも揺らがした。


「…銃持ってるカラと、油断しない方がいいかもしれませんネ。」


「ああ、でも、君が来てくれテ良い体勢にはなったよ。ありがとう。2人で一緒にコイツを倒そう!」


「エエ!」


一方屋上に広がる屍を見ながら、きっと構えると警官と少女に、


「オーディンよ、この機会に感謝いたします……!」


と「赤の救世主」は十字をナイフできって構え、それに立ち向かったのだった。

その間、イゾルデが柵をカメラベルトでしばり、屋上を降りていたのも知らないで―。





10、TARGET9 『HOUND OF THE NYPD』

 

 イゾルデは振り向き際に、建物の隙間から灰色の雲から除く太陽を見た。

日が大分傾いている。

よくここまで撃たれずにすんだものだと、痛む身体を抑えながらぼんやりと夕日の美しさにみとれていた。


あと、3時間。


ゴミの舞う地べたを歩き、大通りを小走りで横切りながら、イゾルデは緊張に胸を高鳴らせていた。目的地には段々と近づいて行っている。

必ず渡すと誓った思いが実現しそうで思わず歩調が早まっていく。


日が傾いて出来た摩天楼のの影は、まるでイゾルデを隠すように広がっていく。

それと同時に警察たちの喧噪もあまり聞こえなくなっていた。


「おそらく、他の…ムンダネウムの刺客たちに気をとられて、私どころではなくなってるんだわ。」


とイゾルデは予想していた。有難いと思うと同時に湧き出る罪悪感と、2つの大組織に狙われているという恐怖。そして、ひと段落したからこそ湧き上がる、言いようの知れない「不安」。


何か、何か『大事な事』を忘れているような気がする。と思った。

それを無意識に私はとても畏れているのだ、と。


-しかしそれでも逃げ切らなくてはならない。真実を伝えるために。


それを死んでいった警官たちの贐だと思ってイゾルデは建物の中へと紛れこむ事にしていた。

そこはセントラルパークまでは至らないウェストサイドのある一ブロック。

ごちゃごちゃに入り交じった建物の中に停る青い車を盾にして、イゾルデはそこで座り込む。


しばらく、ここで姿を隠していようとしていた作戦は功を奏し、度々走って通り過ぎる警官たちを何度もやりすごす事が出来ていたのだった。


その中で逃げ込むための相棒となったGPS機能付きカメラ、ペンタックopito WG―2 を取り出した。


これで、「男」の写真を撮って、師匠に渡せればなお良かろうと、イゾルデは同時に写真も取出し、焦点を合わせる。その被写体を見た時、イゾルデは思わず呟いていた。


「本当に、そっくりよねえ…。」


そしてふと思わず、考えていた。果たして、この男のした事は罪になるだろうか。と。

だとしたら、ジョージは「罪の子」。

彼を思い、慕う人々の想いも「否定」されてしかるべきなのだろうか。


ジョージの仲間たち、そして死んでいった彼の同僚たちを思い浮かぶと、それはあまりに酷だろう、と考えていた。


がしかしその一方、その罪を「否」ともイゾルデは言えなかったのだ。

老人の白髪の髪、そして、70年前の少女から作られた子ども。

2つの「物体」をイメージしただけで、イゾルデは言いようのない「吐き気」にも襲われるのだ。

この気持ちを「差別」だと、否定されるのもどこかおかしい気もしていた。

 

結局の所、分からないのだ。


ジョージの存在を認めないアメリカと、ジョージの存在を認め、それから取り戻そうとするムンダネウムにも。


どちらからも「狙われている」自分はどちらにも腹が立ち、どちらにつく事も出来ず、どちらも「正しい」とも言えないままでいるのだ。


その、自らの境遇に改めて恐怖し、写真を持ったままイゾルデはしゃがみこんだ。

夜のNYがイゾルデを隠す。それに紛れてまた一つ涙を流していた。


これを公表し、この是非を「世界の人々の判断に任せる」つもりでいるのが、このイゾルデの精一杯の今の立場である。


「また、自分がいないわね。」


と自嘲気味に呟いていた。しかし、ともイゾルデは思って居た。

その世界の人々とかいう者に、この「事実」を理解し、適切な判断が出来るのだろうか。


追われていたこの恐怖を、理不尽さを。

そして、目の前で巻き込まれて死んでいったジュリアのあぶくを吐いた一抹を、はらわたを飛び散らされた警官の無念を。


それを当たり前のように行った男の淡々とした瞳や、お腹の子に構わずNYの民を精一杯守ろうとしたメアリー刑事、そして困難にめげずに敵に目前と立ち向かい、自分を守ってくれたヨーナスの勇姿を。


―この目で、捉えたのは「世界の人々」とかいう曖昧なものではない。

今、ここにカメラを構え確かにいる、この私自身ではないのか。


「……私に決めさせて。」


カメラをぎゅっと掴みながらイゾルデは低く、呟いた。


「…私に決めさせろ!どちら側の事情を、どちら側の愚かさをこの目で見たこの私に、この問題の是非を決めさせろ!この私自身に、だ!」


強く強く、その結果を自分の中で決められないままでカメラを握りしめ、イゾルデは、誰にも届かない声を張り上げた。


行こう。ムンダネウムへ、行こう。


その時、イゾルデの緑の瞳が涙で鈍く光った。


ムンダネウムへ行って、その「親」にそれを訪ねよう。


まだ分からない事がある。何故、ジョージを産んだのか。何故クローンを作ろうとしたのか。それを罪と思ってしたことか、でないなら何故それを罪と思わないのか。


「お役人」と違う「学者」の理屈と信念というものを、包み隠さずその身で存分に語ってもらおうじゃないか。


やがてそれをこの手に持つD90のように曇りのない眼で見定め、すべてを私が決めよう。そしてその事実を連ねよう。


「・・・・それで、本当にガンマンジョージの物語は終わる事に、なるんだわ・・・!」


この問題を決めるのは私自身だ、そして《あいつ》だけだ。


高鳴る胸と共に、ある1人を思い浮かべた時―、

後ろの車が爆発音と共に、勢いよく曇天の夜空へと飛んだのだ。


〈エピローグへ続く〉



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