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GUNMAN GEORGE  作者: 根井
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第7話 カメラ編(エピローグ)

「きゃ、ああああああああーっ!」


橙色の熱風にあおられ、イゾルデは遠く向かいのフェンスへと吹き飛ばされる。

擦り切れた痛みと、熱さに呻きながら燃える車の向こうを見ると、斜め左向かいの屋上から、M79をその肩に抱えた脚の長い誰かの影が赤い火にゆらめいている――。


「まっず!ばれたか!」


イゾルデは這いつくばった態勢から急いで立て直し、フェンスごしに左へ逃げ出した。

もう一発を素早くしこんだ「影」の放った弾が、彼女のすぐ目前に当たり、そのフェンスを突き破る。

イゾルデは炎の中、その破れた中に入った。

そのまま真っ直ぐ行けば、目的地の沿岸へ行けると、夜の暗闇に紛れようと走ったのだ。


しかし、その「影」は他の輩と「程度」が違っていた。


イゾルデを追うために、屋上からスキマから除く月の光を背景に、その長い脚を広げ遠い先にある道を挟んだ向かいの屋上へと飛び乗ったのだ。


そして、凄まじい速さで屋上を駆け、飛び乗っていく。段々と通りを走るイゾルデと距離を縮めていく。


「何アイツ!?スパイダーマン!?」


斜め後ろを見上げながら、その身軽さに都合が悪いとイゾルデは悪態をついた。

やがて、イゾルデの横にある建物へ、―おそらく10mもあろう高低差も構わず、影はぴょんと跳ねて一回転すると、激しい衝突音と共に出窓のサッシに着地したのだった。

そうしてイゾルデとの距離はあっという間に縮まった。


「しまっ…!」


急いで左に曲がる。振り向く事なく彼から距離を離そうと必死に走った。


あの身軽さはホセの物ではない。じゃあ、誰が? 


ふと思ってまた後ろを振り向いた時、とっさの気配にはっとなる。その間際だった。追っかけていたと思って居た相手は、いつの間にか頭上を飛び越え背後にいた事に気付いた。


振り向く間にその姿を見ようとした刹那、背後からかざされたのは、闇夜に映える黄金銃―、


「みいーつけた♪」


軽々しい声と共に途端、背中から感じた衝撃と、皮膚が貫かれる痛みにイゾルデの時が止まる。

空に舞う自分の血しぶきの中から振り向いた視界の先には―


「ジョ、…ジ!」


にやけた顔で笑う、金髪碧眼の美少年、ジョージ・ルキッドが3年ぶりの姿を現した。


猟犬がついに、《猫》の首を捕えた―。


初めて撃たれた衝撃に、イゾルデは頭が真っ白になったままその場に倒れ込む。

その身体の脇に踏み込んだ、ジョージの先の尖った靴先がぼんやりと見える。


「貴方がジョージ・・・!」


初めて感じた、じわりと焼けるような痛みに痙攣しながらイゾルデは声をあげる。それに対しジョージは乱暴に彼女の首根っこを掴み、持ち上げる。

そしてその苦悶の顔を楽しむように横から覗きこんで笑っていた。


3年ぶりの、23歳と成人したジョージの風貌は「白」服に身を包んだ「警部補」姿となっていた。

逆立つ金の髪は後ろ髪を刈上げており、その大人としての雰囲気を漂わせている。


が、変わっていない。とイゾルデは霞む視界の中でその端正な顔立ちを眺めていた。

その透き通った蒼い目は、その笑う口元は、18歳の時の子どものままと変わっていない。


「ついにこれでしめえだぜ。猫。」


そして呟く。その口調も全く-、野放しにされたままだったのね。と。


「今まで話にゃ聞いてたが、女のくせによくここまでやってこれたなあ。が、さすがに俺の手にかかればテメーは所詮そんなモンってワケな、分かったか。」


調子よく嗤うジョージを虚ろな翡翠色の目で、イゾルデは横流しに見た。


ああ、ここで、ついに会ってしまった。

やはりこんな形であったけれど、これで―。


そんな面持ちでいるイゾルデを、ジョージは躊躇なく地面へ突き落す。そして、その側で無線機を取りながら管制室へ報告をした。


「ジョ、ジョージが猫をつか、まえた・・・・!」


震えるギークの破顔が一気に管制室に波を作る。


「「「「やったぞ!ついに猟犬が《猫》の首を捕えたぞー!」」」


久しぶりに聞いた「猟犬」という言葉と、歓喜にわいている管制室の様子に、ジョージはくっくっと笑いながら無線機を口にあてる。


が、ふと、血だまりを見下ろしてみると、その中にイゾルデがいない事に気付いた。

はっとなって前を見ると、音を立てずゆっくりと壁につたいながらイゾルデが逃げている。


「撃たれてんのに、よくまあそんな元気がねえ。」


とわざとらしく感心しながら、ゆらりゆらりと乱れたポニーテールを揺らめかしながら、奥へ逃げるイゾルデにチンッと鉄のギルデットを突きつけた。


たとえ揺れていても、彼の弾ははずれない。おまけの御遊び感覚で、ジョージは更に2発、イゾルデの左太腿と、腰を的に撃った。


その音と衝撃にイゾルデはのぞけるが―、倒れる事なくそのまますっ、と闇の中へ紛れて行ったのだ。


「・・・・・おいおいおい、大丈夫かあ?そのまんまで?」


ジョージはイゾルデの頑丈さに特に驚く様子もなく、面白そうに見やった。

そして、腰に手をあて悠々とイゾルデの血の跡を追っかける。


十の字の真ん中にたち、ギルデットを掲げながらジョージは楽しそうに辺りを見渡した。

それはさながら「かくれんぼ」を始めた子どもの姿―。

そして、真っ直ぐゆっくり歩き出し口笛を吹きながら、歌を歌って歩き出す。


「What‘s new pussy cat

(仔猫ちゃん)                

 What‘s new pussy cat  

(仔猫ちゃん 何かいいことあったかい?)

pussy cat.pussy cat

(可愛い仔猫ちゃん)

I've got flowers and lots of hours to spend with you 

(キレイなお花や一緒に遊んであげる時間も一杯あるぜ) 

So go and powder your cute little pussycat nose   

(さぁ その可愛いお鼻におめかししておいで)

Pussycat, Pussycat, I love you           

(仔猫ちゃん 俺はてめえの事が好きなんだ)

Yes, I do!                       

(ああ、とてつもなくね!)」


のびやかなテノール声が、殺風景な夜中の路地裏で華を咲かせる。

トム・ジョーンズの色気ある歌詞も相重なり、美声で女を探す様は艶のあるものだったが、ギルデットを掲げ、猫をイゾルデと重ね合わせて歌いあげる様は追われる身にとしては恐怖以外に他ならない。


足音と共に響く歌声が大きくなっていくのを感じながら、ゴミ箱に隠れるイゾルデは痛みに震え、歯を食いしばっていた。


「あと、もう少しだったのに…!あともう少しで、約束の場所へ…!」


*** 


 しかし、その「約束の場所」にも既にNYPDの手が渡っていた。


ぽつりぽつりと雨が降り出しネオンが霞む夜の街。

イゾルデの仲間たちは人通り離れた地下水路の中に入っていた。私が編集長の肩を抱き、きっと向こうの土手にいる黒影―警官(ESU)たちを睨みつける。


一方向こうは、パトカーの蛍光灯をライト替わりに、私たちを写しながら拡声器で声をあげる。


「EIB社の者だな!貴様らの目的はもう叶わん!猫は我ら「猟犬」が捕えた!もうここに猫が来る事はないんだ!諦めろ!」


パトカーの脇から突きつけられる拳銃。しかし、私たちはそれに構う事なくじっと、地下水路に佇む。後ろから降り始めた雨の冷たさに震えながら部下の女が呟いた。


「ど、どうしましょう…社長…。私たちの負けでしょうか…。」


「そんなワケあるものか、まだ20分ある。待とう。マリアンヌは絶対に来る。それを信じて待とう。」


「し、しかし・・・・。」


そうだ、このまま黙っていてもいずれは捕まえられてしまう。


自らを慰めるようにぎゅっと強く編集長の肩を握りしめた私の様子に、編集長ははっとなって私を見上げ

ていた。そして雨に打たれ、私の後ろに隠れる2人の様子を見、決意したように俯く。


やがて、抵抗する様子もないとみて警官たちはじわりじわりとその距離を近づけようと土手から降りていく。後ずさりする私たちに反し、編集長は1人突然その前に立った。


「な…お前!」


「編集長!?何してるんですか!?」


制止に構わず彼女はその両手を広げ、大声で警官たちに言う。


「待て!このままあたしらを捕まえようとすると、あんたたちはこれから1人の命を殺す事になるよ!」


どういうことだ、と止まる警官に、そのお腹を指しながら言った。


「あたしは今、ジェームズの子どもを妊娠している!あんたらの乱暴な捕え方で流産でもしたら、どう責任とってくれるんだ!?」


ずぶ濡れのまま叫ぶ編集長に周りに動揺が走った。


「このまま雨に打たれてるだけでもつらいんだよ!どうだ、このまま膠着して、身重のあたしを低体温にさせるつもりかい!

そしたらお腹の子どもがどうなっちまうかその貧しい頭で考えてごらんよ! 両親の目の前で子どもを殺させるのかっ!?」


唾を吐き、啖呵をきる編集長であるが、それは勿論ハッタリである。

編集長は必死の演技で私たちを守ろうとしていたのだ。そしてイゾルデが来るまでの時間稼ぎを嘗て出ていたのだ―。


が、突然警官の列に誰かが割り込んで、仁王立ちする編集長の前へ飛び降りる小さな影が出た。


「なんだ?」


向かい合う相手に顔を歪める編集長。その相手が、ライトを背景に映った時、一房の三つ編みを肩にかけた傷だらけの高珊であると分かった。


「お前…。」


黙る彼女の神妙な面持ちに、編集長がそう呟いた瞬間、

高珊は甲高い声と共に彼女の腹を、思い切り蹴とばしたのだ。


「っがああ!」


「なあああああああ!?」


「「編集長―っ!!」」


突き飛ばされた編集長を部下2人がその身で受け止める。


警官たちは妊婦に行った高珊の行動に、動揺した。

彼らもこの時「女って…。」と我らと同じ事を思ったであろう。


「ちょ、ちょっと!何やってるんですか、高珊ちゃん!」


そして脇から入った傷だらけのヨーナスが慌てて声をかける。

しかしそれに答えず、腹の痛みにうずくまる編集長につかつかと駆け寄った高珊は、その胸元を掴み上げ、牽制した。


「あのなァ…あたしにハ、その「気」デてめエの嘘ガまる見エなんだヨ、クソ女…!妊婦の特権笠にとっタ、その無様な格好、自分の赤ん坊をダシにシテ万引きすル母親と同じですっゴイ、吐き気がすル……!」


私はあの時、唇を歪ませて光のない大きな瞳で見下す高珊の様子に、女の子もああいう表情するものなのだと正直、とても怖かった。

思い返せばあの時、「救世主」を取り逃がして、非常にイラついていたのであろう。


「成程。あの女も女ナラ、上司も上司でクズ人間だナ!!」


更に追い詰めるように、イゾルデへのあてつけへと編集長を拳で殴りつけた。


「ちょっと…!」


鼻血を飛ばし、メイクもぐちゃぐちゃになって倒れ込む編集長は、雨の中胃液を吐きながら蹲る。

それを、物を見るような目で見下ろす高珊に警察も、そして私たちも割り込む事が出来なかった。が―、


突然編集長の頭が見下ろす高珊の目前にせまる。

そして、般若のような表情で彼女は高珊の顔に頭突きをくらわした。

その寸時のびた高珊の首筋に、これでもかと編集長が強く噛みついた―!


「ぎゃああああ!」


女の声とは思えない叫び声をあげて高珊は編集長を引きはがす。

それに続いて彼女の鼻に向けて肘蹴りをくらわすも、それと同時に編集長が高珊の白い肌をネイルで尖った爪で掴みかかり、引っ掻いた。


「このアバズレがぁぁぁあああああ!」


「んだと、このクソアマぁァァァァあ!」


雨の中互いに血を噴き出し、がむしゃらに掴みあう内についに、高珊をヨーナスが、編集長を私が腕を掴んでそれを止めた。

しかし、2人共目の前の敵に噛みつかんと、ぐしゃぐしゃになった顔も構わず腕の中で暴れ回る。


「そのまま観念しロアバズレ!オマエ達がNYPDに勝てルわけがなイ!」


「高珊ちゃん、落ち着いて…!」


「んなもん、最初から分かってんだよ!あたしらはあんたらに勝つんじゃなくて、負けねえんだ!それ位の違いが分かんねえオツムの女に説得されたくはねえなあ!」


「お、お前…!良い加減に…!」


互いに留める男など最初からいないかのように、2人は雨の中罵詈雑言を飛ばしあった。


「ドブネズミのようにコソコソ這いずリ回りナガラ逃げやがっテ…汚わらしイ!そんナ顔ヤ根性デよく生きてられんナ!あたしナラみっともなくテ、死んでしまいタイ位ダヨ!このクソババァ!」


「あー!?ドブネズミで結構!クソババアで結構!テメーらみてーに、「主人」にケツの穴見せて尾っぽ振るのを恥ずかし気もなく、「誇り」と言えるような犬畜生になるよりゃ、100倍もマシだよ!」


「んだとコラァァアアアア!」


「「あああああ!本当に落ち着いてええええ、2人共おぉぉぉぉ!」」


その中で私とヨーナスは必死に掴みかかる2人を抑えながら叫んだ。


「落ち着いて下さいよ、編集長!誤解です!私たちにNYPDに主人はいません。あくまで仕えるのはNY市民です!理不尽な事を貴方たちに課す組織ではありませんよ!ですからそんなに恐怖せずとも、きちんと尋問に答えてくれたら……!」


ヨーナスは獣のように唸る高珊を抱きしめながら、まずは編集長を慰めようとその言葉に真摯な気持ちで答えた。

が、それを編集長はマニュアルを開く機械仕掛けのようだと軽蔑しながら、私の腕の中で叫ぶ。


「はああ?NYの民?それって誰だよ!?どこにいるんだよ!?そんなモン、アンタと「お上」の頭の中にしかいねえよ!」


「え・・・?」


考えもしなかった答えにヨーナスは雨を散らす。思わず後ずざりをしてした。


「市民権得られれば守るべき人か?なければ射殺もやむなしか?紙一枚で人間の値踏みをするような組織のどこが健全といえるんだ、ディンゴ!あんたの後ろに、ほくそ笑む下衆の顔がよく見えるよ!」 


「?!」


「五月蠅イ!」


雨の中、高珊は動揺するヨーナスを振りほどき、編集長の言葉をさえぎるように唸った。


「それ以上ほざくナ!どんなにあたしラを馬鹿にしようガ、所詮アンタラは敗者ダ!どんなニ屁理屈こねようガ、負けラタあんたタチの戯言は否定されル!それガ世の常ダ、諦めロ!」


ばっ、と腕の中からクナイを取り出す。そうだ、このために武器があったんだ、と初めて高珊は気が付いた。


言葉でどうにもならない問題は確かにここにある事を。


そして解決するための一つの「手段」として武器が、あったのだ。


―それ以上でも以下でもない価値だったのだ。


一方、編集長はその雨に塗れるクナイを、見下ろしながら言った。


「人の意見は人ぞれぞれとガキみてえに言うつもりは毛頭ないが・・・勝ち負けでこの現実(せかい)は語れるような、生易しいもんだと思うなよ。」


同時に続ける。何としてでも逃れたかったその訳を。そして、我らがここにいる意味を―。


「Even if I turn the 【B】 up side down!

(たとえBを逆さにしてでも!)

これからも、ずっとあたしらはあんたらの、そしてこの街の嘘を、歪みを侮ってやる!抵抗してやるんだ!」


激しい雨の中で編集長は腕を振り回す。

思わず離してしまった私から逃げるように、高珊にいどみかからんとする彼女であったが、

それに向かう高珊の本気の目に、やばいと私は無理やり編集長の腕を掴み、それを留めた。


「やめろ!それ以上抵抗したら撃たれるぞ!」


私の言葉に編集長は高珊とヨーナスの向こうにいる彼らを見る。

そしてパトカーのライトに照らされ、警官たちの銃口の的にされた自らの状況に気付く。


やがて自嘲気味に、ずぶ濡れの編集長は突然私に掴まれたまま、狂ったように笑いだした。


鼻血を流したまま、涙も流したまま、高珊とヨーナスを見てにたりと笑う。

その歪んだ笑みは非常に醜いものであったが、それと同時に私には非常に美しくとも思った。


「猫は捕まえられないよ。」


そして最後に、雨の粒に紛れた涙を散らし、抵抗の言葉を吐き捨てた。


「あんたらに、猫は絶対捕まえられない。猫はきっと逃げ切るよ!猟犬にとってこれが初めての失敗になるさ!」




11、TARGET10 『CENERENTOLA CAT』


 雨が段々酷くなっている。寒さと痛みにイゾルデの精神はすり減り、このまま倒れてしまいたい衝動へと誘う。しかし、それが高い音に目を覚まされ、再び身を固めた。


「良い加減出てこねえか~?迷子の仔猫チャン。」


その舐めるような物言いにぞっとイゾルデの鳥肌がたった。

ジョージも一方で、濡れた金髪の髪がべったりと額に張り付き、白の制服と黒ズボンがぴったりと自分の細い身体に張り付く状況に、気色悪く感じていた。


が、どちらも譲る事なく、「猫」は息をひそむように隠れ、「猟犬」はそれを見渡しながら探し続けている。互いの意地がはりあう中、無線が音を立てて鳴った。


「なんだ。」


雨に塗れ、辺りを見渡しながらジョージは、無線に答えた。


「只今、ウェストサイドの地下水路にて《猫》と待ち合わせをしていたEIB社の社員たちを確保した。残るは猫の確保だけだ。おそらくこの付近にいると思われる、至急駆けつけるように!」


「はっ!聞いたか猫!てめえの行く先も、もう縄張られちまったようだなあ!」


高らかに嗤い声を上げたジョージは無線をあげ、どこかにいるイゾルデに向かって掲げた。

一方イゾルデはその言葉を聞き絶望の縁に目を閉じている所だった。


これでいつに袋小路―。


イゾルデは仲間を思い、泣きだしてしまいそうな衝動を必死に耐えようと舌を食いしばる。そして、段々と痛みの感覚を失い、そこには一種の「諦め」が走っていた。


しかし、それは逃げるのを「諦める事」では決してなかった。


「もうこれで、しめえだぜ《猫》。いい加減出てこいや。」


無線を投げ捨てながら、ジョージは再び歩き出す。


「……どうして、仲間を呼ばないの?」


雨の中聞こえた猫の声にはっと嗤ってジョージは上を見る。ギルデットを2丁持ちながらその問いに答えた。


「そんなん事したら、すぐに捕まってつまんねえだろ~。お前は俺の獲物だ。俺のこのギルデットでしとめてやんねえと、このヤマも締まらねえだろが。」


ジョージはちろりと、濡れた桃色の舌で薄い唇をなめ、黄金銃にキスをした。


「あら、随分となめられたものね。」


それにイゾルデもふっと笑い、血が流れる脚をゴミ箱の影から出しながら、目を細めた。


「ほぉ?随分と余裕かますじゃねえか?」


「まあね・・・・。たとえ仲間が来たとしても、捕まえられるつもりはないから。」


じわりじわりと近づく音が聞こえながらもイゾルデは声を張った。


「それにしても、楽しそうにしてるわね。」


「へっ、しゃらくせえ。なんたって久しぶりだもんな。」


はっと嗤いながらジョージはゆっくりと、じわりと猫を追い詰めるように近づいていく。


「…ジュリアの血をかむった私でも、そんな顔をしてられるの?」


思いつめたように呟くが、それでもジョージは表情を変える事はなかった。


「コンドルか、久しぶりに聞くな。」


「そうよ、貴方の世話役だった人よ。彼女に対する労いの想いはないわけ?」


「ふんっ、そんなもん関係ねえや。俺はただ、楽しいことをやるだけよ。」


それはたった一言の、いかにもジョージらしい言葉であったが、

それがイゾルデを「激怒」させたとは、この時誰が想像しただろうか。




馬鹿じゃないか。


突然弾かれたように何かが切れたような気がして、イゾルデはぼそりと呟いていた。


お前は馬鹿じゃないか。


繰り返す。その言葉はジョージに対するイゾルデの、最大の侮蔑だった。


何度も溢れ出す言葉がイゾルデの身体にみるみる熱を上げる。


男の独りよがりな慕情によって生まれ、女の気まぐれと放任主義に巻き込まれ。


自分の正体も勝手に隠され、相手の都合で匿われ。


NYPDからも、そしてムンダネウムからもただの「単位」として生かされている有様だと言うのに。


「その足元に一体どれだけの(ヒト)が血を流したと思っているんだ・・・・。」


そのくせに、当の本人は何も知らず呑気にタノシイコトヲヤルダケヨ。



「……ふざけるな。」


「あ?」


トーンの変わったイゾルデの声にジョージは一瞬真顔になった。苛立たしくなった彼の歩調を、丁度よいという様にイゾルデは力なく口角をあげる。


酷い。酷過ぎる。


「無知」はやはり人間にとっての、最大の罪悪だ。



その楽しい事を「あえて」与えられている事に気付かず、自由になっているつもりで、思っていると思って居るのか。


いや、違う。


お前は最初から自分で選択なんてしていない。―誘導されて、操られているんだ。


「解放してやってくれ。」


ジュリアの最期の言葉が雨にぬれた耳にべたりと張り付いた。その時に、イゾルデはその本当の意味が分かったのだ。


が、それに対しイゾルデは寂しくその虚ろなジュリアの目に答える。


「3年は、あまりにも長かったかもしれないわね。」


しかし尚更、だからこそ私は―、私だけは。


「おい、何がふざけるナなんだ。黙ってねえで何とか言えよ。」


そうして段々と苛立ちを隠せないでいるジョージの声が低くなっていった。

そしてついに、イゾルデが隠れる角の所へ向かう。


雨と暗闇の中、にぶく光る黄金銃をちらり、とイゾルデは壁に張り付きながらそれを横目に見る。


そして―ジョージが振り向き際に彼女と「視線を合わした時」、イゾルデは飛び出して言った。


「捕まるわけには、いかない!」


「!」


斜めから走り寄ったイゾルデに途端、ちっとギルデット向けるジョージであるが、間近に迫るイゾルデの手がその腕を弾いたのだ。


彼女の頬に2つの咆哮が鳴る、が勢いはそのままに壁に2度強く押し付けられたギルデットは空中に跳ねた。


その内、落ちた一つをイゾルデは踏みつぶし、後ろの方へ蹴り飛ばす―!


「何しやがんだぁぁぁあああああ!」


ジョージは雄叫びをあげて、片手でイゾルデの顔を思い切り殴り飛ばした。

血を吐き、右の通路へ転がったイゾルデであったが、ジョージもイゾルデに胸元を掴まれて、そのままバランスを崩しそのまま一緒に横倒れしてしまう。


「にゃろぉ…、テメぇ!!!!」


倒れたまま急いでギルデットを拾い這いつくばったまま撃ったが、その前に立ち上がり走ったイゾルデの脚に斜め右からかすめるに留まった。


「くっそがぁぁあああ!!」


ジョージは急いでを態勢を立て直して走り、蹴り飛ばされたギルデットを取り上げて跡を追う。

そしてイゾルデが逃げ出した角を曲がり、遠くにいる彼女の背中に向かって銃を放ったが、彼女の後ろへ走った車に弾はすべて当たってしまったのだ。


「あぁ…!?ちっ、車道へ走り出たか!」


けたたましくクラクションが鳴る車に向かってジョージは勢い良く走り出した。


「なんだぁ!」


と怒る運転手をギルデットで静め大通りへ出るも、雨の夜の大通りを走るイゾルデの姿ははるか遠く、横切る車にさえぎられ見失う直前だった。


「逃すかぁああああ!!」


ジョージも構わず大通りを走り出す。

その度に迫り来るクラクションを鳴らす車が、ジョージの脇からスリップし急停車する。

向こうにいるイゾルデは身体を素早く縦にしたり、滑り込む事で横切る車を避けていた。


一方、ジョージも大股を広げて追いかけながら飛び前転、側転 、ギルデットでタイヤを撃ちぬきスリップさせて、その差を縮めていく。

やがて先に大通りを横切ったイゾルデは、沿岸の広場に駆け走り、土手の下を降りて黒い薮に、何かを投げ捨てた。


それから、しばらくジョージも車のライトを背景にその土手を飛び降りる。も、薮の中から音を立てた何かに反応し二丁のギルデットを容赦なく撃ちつけた。


そこから転がったのはフラッシュをたいた穴だらけのカメラ。

じわりと近づきながらも、そこにはカメラしかない事に気付き、ジョージは前を見返る。

と、高いフェンスの向こうでイゾルデが沿岸へ斜めに走っていた。


「下手な小細工しやがってええええ!」


カメラを蹴り飛ばし、ぶんとギルデットを振って撃った。それに一発がイゾルデの腰に当たる。

そして、倒れるように向こうの段差にイゾルデが落ち再び見えなくなる。


「まさか…あの先にある地下水路に逃げようって…!」


その先は地下水路の中へ入れる入り口がある。

暗闇の水路に入られてしまったら、ジョージが猫を追うその術は最早、ない。


そうはさせるかと急いでジョージはフェンスにへばりついた。

2mもあるフェンスをたった二歩で上がって飛び降りる。段差のへちに駆け寄って、そこから見下ろした先は―。


「…また、うまくいかなかったわね…。」


溢れんばかりに茶色い雨水が流れる地下水路。入り口が天井まで雨水が浸かっている中、その前に血だらけのイゾルデが立っていた。


「……逃げ込むには、雨が振り過ぎたようだな、メス猫。」



―やっと捕まえられた。

とそれを見下ろしながらジョージは「安堵」して、身体を斜めにし口角をあげて黄金銃を《猫》に向けた。


「これで、本当にしめえだな。」


イゾルデは振り向かない。その身体は痣だらけ、そしてジョージの撃った弾で血だらけだ。

それを見てよくまあそれだけで「立ってられるな。」と思いながら、ジョージはもう1丁のギルデットを掲げた。


「ったく、一体何を調べてどうしてたら、そんな目に合されるたァ?Care kills a cat(好奇心は猫をも殺す)とはよく言ったぜ。」


とってつけた諺を言いながら嗤うジョージに、イゾルデはゆっくりと振り向き、向かい合う。

2人はこれで初めて、真正面に対面した。


激しく振る雨の間でフェンスを背景に、金髪の髪を垂らす黄金銃を持つ「猟犬」と、

海岸の向こう岸のネオンにぼんやりとその姿を映す、頬に傷が走った栗色の髪を垂らし、黒いカメラを持つ「猫」。


蒼の瞳と翡翠の目が互いに光を放ってぶつかる―。


「馬鹿ね。」


イゾルデは最初に雨音に紛れるように答えた。


「Care kills a catの本当の意味は「失敗しても、くよくよするな」、よ。」


小馬鹿にしたように嗤うその顔は、「それだけ」を馬鹿にしただけではなかったのだろう。


「うるせえ。いちいちでしゃばるんじゃねえよ。これ以上無駄口叩いたら撃ち殺す。マジで。」


その暗喩に気付いたか否か長くのびた柳眉をきっと顰め、ジョージはギルデットを構え直す。


イゾルデはそれを何か吹っ切れたような面持ちで見上げ、光のない翡翠の目を伏せてふっと笑った。


銃口を向けられてるというのに、なんでそんな顔をしてられる。


今まで見たことのなかった「敵」の表情に、ジョージは方眉をあげた。


しばらく黙って見つめ合う両者の間でサイレンの音が鳴り、喧噪を聞きつけやってきた仲間たちの知らせが2人の、2人限りのリミットを告げる。


―うるせえな。


その音を聞きながらジョージは、ふと自分の冷たい身体にはしる「気持ち」に戸惑っていた。


・・・何故だ。


何故、今この音が酷く、煩く感じているんだろう。


この時間が惜しいから?

違う、これは俺の獲物だ。誰にも邪魔はさせたくないからだ―。


その理由をも誤魔化すように雨の寒さに身体を震わせ、イゾルデを睨みつける。逃がすものか、絶対に逃がすものか。とイゾルデの次の動きに神経をとがらせる事に集中した。


一方、イゾルデは後ろから響く水流の音を聞きながら、木陰の向こうで光る赤青の蛍光灯を遠目に見ていた。


言葉を出す事もままならなくなった自分の身体、迫りくる彼との別れの中で、敵意の目を向ける男に投げかけるべき言葉は、何なのだろう―。


血糊にのった手でカメラをとる。はっとギルデットを突きつけるジョージの青い瞳を、細くのびた浅黒い両手の中から、D90とイゾルデの目が真っ直ぐに捉えた。


そして、最後にジョージを見ながら、一つだけ、呟いた。






「不細工ね。もっと、良い顔しなさいよ、私の「被写体」。」







「………!?」



イゾルデの真剣な眼差しに、ジョージの銃口が震える。


途端、突然弾くような音がしたと思えば、水路の入り口から水鉄砲が飛び出した。

そしてイゾルデはジョージの表情に満足したかのように微笑み、仰向けに身体を倒す―。


「・・・しまっ・・・!」


水鉄砲がなめるようにイゾルデを巻き込み、水流の渦へと飲み込んだ。寸時2丁のギルデットが途端に火を噴いた。


茶色い怒涛の水流の間から一瞬イゾルデの脚がぬっと出て血を飛ばすも、それもすべて水流が混ぜこみ、残酷にジョージから《猫》を引きはがす。


「くそが、くそが、くそがああああああ!」


ぴしゃぴしゃと既にいないと分かっている水流の中へギルデットの弾が空しく走る。

共に跳びこまんと決めて踏み込んだジョージの足に、一発の弾が飛んだ。


「死ぬぞ!」


きっと振り向けばフェンスごしから目をひん剥いたヨーナスが、煙をはくGLOCK18を構えている。

雨の中、涙を流さんとばかりに怒声をあげる顔は、ジョージを「彼」を見なした目だったのか。


「くそっ・・・余計な事しやがって・・・・・。」


ジョージはそこから憤怒の顔を途端にゆるめ、やがて何も言わずにゆっくりと水路を見返った。筋の通った鼻筋から垂れる水滴をすすり、ギルデットを降ろしたまま斜め下に俯くその目は、イゾルデのそれと全く同じだった。





12、TARGET11 『BLACK PANCER』


 3年ぶりに勃発したNYの大事件は、「三流カストリ女性記者殺人逃亡事件」〈通称:猫事件〉と名付けられた。


それは「マフィアの元幹部、ジュリアを殺害した容疑者の女が逃亡した後に、猟犬に捕えられたはずみで地下水路に飛び込み、死亡した。」とされ、それに対しメディアは「カストリ記者、正体不明の若い女」という刺激的なタイトルから下俗な意味を含ませる事に躍起になり、その逃亡劇を大げさに取り上げる事に必死になっている。

その中の「真実」は気付かれる事なく、次第に消耗品として忘れ去られていく有様となっていく。つまるところそれらは結局、すべてNYPDの思惑通りになったという事であった。



一方場所はそれから3週間後、


メリーランド州フォート・ジョージ・G・ミード陸軍基地内。「NSA」本部。


ワシントンD.Cから近い場所に位置する本部にて、ガラス張りで吹き抜けた入り口を高い靴音を立てながら横切る男が2人いた。


1人は大柄の黒人ウェッブ・アルバ、そしてその隣にいる小柄な男はフェルナンデス・バートである。


回りの黒服の男に囲まれた物ものしさに嫌悪しながら、ウェッブはNYPDの白制服を着た自分たちを物珍しく見るNSAメンバーを睨みつけた。


「ったく、何だってンだい、ブラックパンサーの野郎。大事な話があるから本部に来いだなんて、偉そうな口ほざくじゃねえか。」


「そうじゃないだろ。むしろ、これは向こう側の妥協だよ。」


つかつかと中心にあるNSAの鷹の紋章を踏み越え、2人はブラックパンサーに指示された部屋へと促されるままに進んでいく。


やがて紋章の前にある同じくガラス張りのリフトに乗り込み、某階へ至る。

そして反対側から降りて進んだその突き当りに、大きく高い扉が立ちふさがった。


それを、ウェッブは回りの制止も構わず乱暴に開く、と―


「おお・・・。」


その先は真っ白な床に真っ白な天井のある巨大な部屋であった。


ガラス貼りの壁からは、NSA職員たちの車が列をなして並ぶ巨大な駐車場と、向こうに俗界と分断させている森林が遠くまで見えている。


未来都市を彷彿とさせるアートデザインの「NSA長官室」に、ウェッブの後ろからフェルナンデスも、


「おお、NYPDの本部長室もこれ位金をかけたいものだな!」


と感嘆の声をあげる。が、その真ん中で佇む2人の後ろ姿に慌てて背筋をのばした。


「・・・マルコム長官・・・! アーサー議員殿・・・!」


その声に外を眺めていた2人の右側がその声に振り向いた。


「久しぶりですね。フェルナンデス本部長。」


「ああ、はい・・・!」


緊張するフェルナンデスを淡々として灰の目で見下ろすは死神議員、アーサー・ベリャーエフである。


「な、なんだってお前がここに・・・?」


一方に、突然の再会に戸惑うウェッブに、アーサーの隣にいたもう一人が振り向く。


それは、カーキー色の5つの金飾ボタンをつけたブレザーに、黒ネクタイをぴっしりと締めた制服を着た長身のムラート―。


NSA長官兼、陸軍大将を勤める軍人、マルコム・ワイアットであった。


「わざわざNYから呼び出してすまないな。感謝するよ。」


と、アーサー議員の手前、丁寧な言い方で2人を迎える策士の男は、ふっと黒人にしては薄い唇をあげて歩み寄ってきた。


細面の顔に刈り上げられた坊主頭、と整えられた口髭と顎鬚が彼の潔癖な性格を示した。

そして8頭身にすらりとのびた手足や均等についた筋肉質な造形を、分厚いブレザーの中からシルエットで見せつけていた。


筋肉に沿って張り付いたようなズボンの凹凸が、厚い胸板に飾られた略綬よりも彼の軍人としての実力をも表している。


製錬された身体つきと、その自信溢れた黒い瞳はさながら―、「ブラックパンサー」と仇名されるに相応しい風格を持っていた。


「ああ、まったくだ。」


同じ身長の大熊と黒豹、軍人と警官は向かい合い、互いに相手の拳を握りつぶさんとばかりに強く握手する。


その対決はおあいこで終り、節々とした手を振りながらマルコムは再びアーサーの元へ向かいながら言った。


「今回君たちを呼び出したのはな、≪猫事件≫に関する話し合いをしよう。という事であったのだ。」


「はあ?何だって今さら?ああいうのは、≪本当の事≫を含めて共有し合ったはずだろ。」


「話し合うのは「私たち」、とは言ってないぞ。」


アーサーが答え、そしていったん置いて言った。


「話し合うのは、―ムンダネウムの輩と、だ。」


「!?」


向き合った2人に振り向いたマルコムは口角をあげて続いた。


「昨日、私のこの長官室にハッキングした「魔女」を介して、今回の事について交渉をしたいともちかけてきたんだよ。」


「・・・なんちゅー話だ!このアメリカに対して、向こうはすっかり「相手国」気取りなのかよ、ムンダネウムの野郎は……!」


怒りで白い歯を震えるウェッブにアーサーが待てと留める。


「この交渉を許可したのは私だ、ウェッブ。向こうもそれなり譲歩はしてな、今回の交渉相手としてわざわざオーディンが出るという事になった。」


「オーディン?誰だ、それは。」


「ゲオルク・ライヒートの仇名だ。」


「!」


「…向こうの方で、彼は北欧神話の最高神「オーディン」という異名で呼ばれているらしい。」


マルコムの笑顔に促されるまま、にウェッブとフェルナンデスははっと目を合わせあった。


「・・・・と、言う事は・・・すべての元凶・・・!ジョージの父親と・・・?」


フェルナンデスの言葉が出る前に、ぱっとアーサーとマルコムの後ろでテレビがついたような光が放った。そこから四方に広がった光が、巨大なスクリーンを映し出す。


「お、どうやら来たらしいぞ。」


マルコムの声に、2人は慌ててアーサーとマルコムの間に割り込もうと白の床を走った。

丁度4人が列になって揃ったとき、真っ白のスクリーンの端から車いすに乗る黒影が現れる。


それが段々中央から4人に向かって近づいていく時、その全貌を映し出した。


「お前が・・・オーディン・・・!」


こくりと頷いた車椅子の男は、黒のシルクハット、黒のスーツに身を包んだ眼帯の老人だ。

手すりを掴む両手は白手袋に隠され、ズボンからのぞく足は両足共に義足。


四肢すべてが義体なんだ。―と4人は初見で把握した。


その中でも最も注目すべき所は「顔」である。

鼻を境にした右側の顔は、まるでくしゃくしゃに包んだ紙を広げて貼り付けたような、ケロイドの痕が残り、口元も酷く歪んでいる。

それをも覆うようにつけられた黒い眼帯が、右目をも失った事を諭していた。


そして、彼の唯一残った生身の部分は顔の左半分である。

均等に目じりに口元に深く刻み込まれた皺、シルクハットカラのぞく金髪のまじった白髪はそれなりの年老いた男のものである。


が、細長い眉から強い眼光を放つ深いグレーの瞳、重症の身でも保たれた筋の通った鼻、整った顔立ちは老人になった今でも歪む事はなかった。そうそれはまるで―。


「・・・・本当に、ジョージだな・・・・・・。」


ウェッブが唖然として呟いた。

そう、それはまるでジョージがそのまま「老人」になったような姿だったのだ。


「それはそうだろう。彼は私の息子だからな。」


初めて聞いたはっきりとしたオーディンの言葉。

それも、全くジョージの声そのままで、4人はそろって目を見開かせた。


「初めまして、だな。私はムンダネウムの構想者兼、その代表をしているゲオルク・ライヒートと言う。以後お見知りおきを。」


と黒いステッキをつけて目を伏せた様は、それだけで老人としての威厳を十二分に保っていた。

しかし、その堂々と自分たちと対等の立場にいると思っている「爺」の態度に、ウェッブは腹が立って身を乗り出す。


「挨拶はどうでもいいんだよ、クソ爺。余計な事をして、よくも俺たちを巻き込ませやがったな・・・!」


しかし、オーディンはその怒りをも淡々を受け取り、笑った。


「おや、そうですかな。私はただ、貴方たちが不法に監禁している大事な1人息子を取り返そうとしていただけだ。」


「何が息子だ。ゲノム操作で普通なら出来もしない人間を作って、父親面をかますな犯罪者。」


その隣にいたマルコムも、太い腕を組みかわしながら低い声で唸るように言う。

も、それをもオーディンはまるで子どもを見るように微笑み、応えた。


「犯罪者、か。なるほどね。そういえば最近、ゲノム生殖法案はそっちの方で否決されたばかりだったな。」


「当然だ。優生学を推進させるような法案など、通すわけにはいかない。」


アーサーはよどみなく言ったが、それをオーディンはそれを、


「嘘だな。」


と切り捨てた。


「本当は我ら、ムンダネウムを摘発するために邪魔だから、切り捨てただけだろ。その魂胆をひた隠しにしたまま、そっちだけ良い人面をするなよな露助。」


すべて分かっているんだと言うようにと眉を顰めるアーサーを見、そして全体を見るように、オーディンは言った。


「ここではっきり宣言しておこう。よく聞け、ヤンキー共。」


突然口調が変わった。それがオーディンの本性であり、また「余裕」であった。


「我ら、ムンダネウムはれっきとした健全な「組織」であり、貴様ら「民主主義国家」と連なる力を持った組織だ。」


と、言った後ふと、唖然とする目前の彼らを小馬鹿にして嗤う。


「・・・どちらかと言えば、我らは道徳的観念によってゲノム操作における、「命」を認めている、君らよりも高等な概念を持った組織だ。」


有無を言わずに理論を述べる。そして、


「さあ、ここで対等に交渉、取引だ。」


と、対等な相手同士として、ステッキを掲げてそれを提案した。


「これから2週間以内に、ジョージを正式にこちらに引き渡してもらおうか。その代わり、私たちが集めた実験の成果を貴様たちに幾つか教える。どうだ、互いにとって悪い話ではなかろうよ。」


「「「「断る」」」」


4人は同時に即答した。


「何が、「健全」な組織だ、核テロリスト! 赤の「救世主」を使ってジュリアを殺し、我らの仲間をなぶり殺しにしおってどの口が・・・!」


フェルナンデスが拳を震わせながら怒る。が、しかし-、


「彼女を不法に監視し、《猫》を勝手に犯罪者に仕立て上げておきながら、それを正義の名の基に「犬」に納得させた事に対する、天からの罰だろうよ。」


淡々とその理不尽な言われようを咎める言葉にフェルナンデスは「それはリンク殿が・・・!」と口走る。も、それを留め、フェルナンデスは歯を食いしばる事しかできなかった。結局オーディンにとっては、どちらも所詮同じ「NYPD」なのだ。


「それに、今一度言っておこう。ホセを敵視するのはあんたらだけだ。彼は、本当は名もなき弱者のそして我々にもったいない位に忠誠を誓う、とても優しい英雄だよ。

伊達に周りから「赤の救世主」と呼ばれているワケではない。あんたたちがただ、認めてないだけの話だ―。」


ぴっ、と右手で髪を書きあげながらオーディン悠々と言ったが、


「倫理の論争はこの際どうでもよい。」


と切り捨てたのはアーサーだった。


「話を戻そう。何を言おうと、ジョージは市民権を得ている。ジョージは我らと同じアメリカ人だ。同胞を、研究都市組織とかいう、得たいの知らぬ組織に引き渡す義理はない。」


「そうだ!ジョージは俺たちの仲間だ!クローンだろうが何だろうが、たとえ、ここがその命を認めようとしなくても!ジョージは俺たちの仲間だ!引き渡してたまるかよ!」


ジョージをよく知る2人は、前に出てオーディンに抗議したが、

それにオーディンがぴくりと眉を動かした。


それが初めて姿を見せた、オーディンの怒りであった。


「アメリカ人?仲間?つくづく見下げた奴らだな、小僧。 そんな曖昧なシステムがあるのが当然だと信じておるか。」


「なんだと。」


眉を顰めたのはアーサーだ。


「死神議員、君は特に腹正しいな。」


とアーサーより30も年上という権威を見せつけるように、老人は見下ろして言った。


「ムンダネウムを実験都市というのなら、あんたらアメリカも、州連邦国家とかいうもまだ「実験段階」じゃないか。いや、違うね。もう結果は出ている。とんだ失敗策だ。」


はっきり言った彼の、皺に覆われた瞼の奥で、昔から変わらぬグレイの瞳がぼんやりと光る。


「私たちムンダネウムによって、今にも崩壊しそうなシステムの上にそれが成り立っている事にまだ気付かないか?家族「愛」も、恋人「愛」も、そしてあんたら組織の中に蔓延る「仲間意識」も、すべてはその枠組みが成功するか、と託された「実験体」の1つにすぎない。それが、貴様らの実態だ。」


かすれるような息を吸い、オーディンの口が火傷でくっついた皮膚を破る程の勢いで開かれる。


「身の程を知らずに、それを「自分の意思」だと思ってるモルモット共に、どうこう言われる筋合いなど、ない!」


―ああ、そうだ。あんたらは、まるで70年前の私みたいだよ。と。

そして今度は眼帯をはずし―実験体「兵士」として生きた自分自身の、その「末路」を見せた。


それを信じた先が、このザマだったのさ―。 


その衝撃的な有様を見ながら、4人はその意味を解し、互いの心の神髄を突かれた面持ちになり、動けなくなっていく。



「・・・・・つまり、これは宣戦布告という事か。」


しかし、それでも、とマルコムが唸る。


「・・・・私たちの組織が勝つか、貴様らのムンダネウムが勝つか。それによってどっちの「実験体」が成功だったかを相手に見せつける、それだけの話、という事か。」


「・・・・そうだな。」


それに応えるウェッブに、両側からフェルナンデスとアーサーがただならぬ空気に見返った。


「ジョージは、渡さない。」


最期、マルコムは自らの「意思」を確認するように呟いた。


「ああ、絶対に渡さねえ。宣戦布告だぜ。」


2人は指をさし、そして、車椅子の老人を、煽るように笑う―。


「「俺たちは貴様らと違う!絶対に俺たちがお前たちをぶっ潰してやる!」」


そして、その手にはM29FSとM10が―、


「ちょっと!?」


フェルナンデスが止める前に、2つの弾が放たれた―。

が、防弾でできたスクリーンは割れる音をたてながらも弾を跳ね返す。


それでも、と睨み付ける濃いグレーの瞳に見せつけるように中指を立て、そして2人は颯爽とその部屋を出て行った。


「ふっ、40、50のガキ共が「あの戦争」を知らずに、ようわめきあるわ。」


画面に煙が舞う中でオーディンは嗤いながら見送った。そして眼帯を付け直し、シルクハットをかぶりなおす。


そうして部屋に残ったのはフェルナンデスとアーサーの2人だ。だが、


「フェルナンデス。すまないが、少し席をはずしてくれないか。」


「え・・・?」


驚くフェルナンデスに、アーサーは無表情のまま横流しに見た。


「しばらく、2人きりになりたい。悪いが、あの2人を追いかけて留めてくれ。」


「あ、は、はい・・・・・。」


フェルナンデスはちらりとアーサーとオーディンを見ながら、そそくさとアーサーの言うとおりに扉を向こうへ行った。


「なんだね。今度は2人きりで何を話すというのか?」


「話し合いたいのは貴方とではない。貴方との会話は、ウェッブたちと同じく、これで終わりだ。」


ほぅ、言うねえ。と言うオーディンにアーサーは小さくつぶやいた。


「私が話をしたいのは、貴方とではない。トゥルーデの魔女とだ。」


「魔女?ああ、サラ・コーヘンの事か。勝手に変な仇名をつけおって。」


オーディンの言葉に初めて魔女の本名が「サラ」と知った。それに少し戸惑った自分を隠すように


「もちろん、ただでは言わない。」


と、マルコムたちから「絶対に口外するな」と言われた情報をこの機会に託す。


「ムンダネウムは何故、ジョージがイタリアのクラパのに引き渡されていたか、を把握していなかったはずだったな。」


「あ、ああ・・・。23年前のあの日、ムンダネウムの施設で眠っていたジョージが何者かに誘拐されただけは。その相手も、何故クラパの元に行っていたのかも、確かに私たちは分かっていない。」


そう、それさえなければここまで火種が飛ぶこともなかったのに。

一体誰が何の目的でジョージを誘拐したのか―、


「母親だ。」


アーサーは答えた。その言葉に今度はオーディンが、一気に顔をひきつらせた。


「クラパの組織と対立していた今は亡き、オランダの麻薬王ヨハン・ブリューメルの妻、マリア・ブリューメル。彼女が夫の組織をそそのかし、部下をムンダネウムに忍び込ませジョージを誘拐させた。」


その時、オーディンの言葉にはブリューメルという言葉は聞こえなかっただろう。

そう、「マリア」。毎日忘れる事のなかった、マリアという言葉しか彼の頭に入らなかったのだ。


「しかし、ジョージを、麻薬を積ぶ列車に紛れ込ませたその途中、クラパの襲撃によってそれが遮られたのだ。その麻薬が積まれた貨物を奪われた途中で、ジョージも拾われた。それが真相だ。」


つまり、と付け加えアーサーは仁王立ちして言った。


「狂気に走った父親から、不本意ながら存在する自分の「息子」のために、マリアは奪い返そうとしていたんだよ。」


―生きている、生きているんだ。あの時貴方が愛した、「ポーランドの少女」は。


取引の情報としては十分すぎただろ、とアーサーは目をひきつるオーディンに促すようにゆっくりと、細長い手を差し伸べた。


「これで以上だ。会わせてくれ。トゥルーデの魔女に、・・・・・・サラ・コーヘンに。」





13、TARGET12 『WITCH OF THE TRUDE』

 

 真っ白になった画面の中央から、緑色の粒子が木枯らしのように渦を巻く。


その中からすっと表れ出たのは、ムンダネウムメンバーの一人であり、超天才クラッカーのシンボルー。「トゥルーデの魔女」だ。


花柄の刺繍が飾られた革のベスト、真っ白なワンピースに三つ編みをアップした1人の少女。

アーサーはこの時初めて彼女をその目で見た。


「君が・・・・。」


「ええ、そうです。私です。お久しぶりですね、5年ぶりですか。」


垂れ下がる赤毛まじりの茶色の髪を靡かせながら少女は目を開き、笑う。

その声色は、5年前でF35から聞こえた声と全く同じだ。

ああ、本当に魔女なのだ、とアーサーはふと感じた心地に眉を歪めた。


「おじい様より話は聞きましたわ。それで、この私に話したい事とは一体、何ですの?」


おじい様と穏やかに話す言葉から、彼女のオーディンに対する慕情の念が読み取れる。

更にアーサーはその違和感に眉を顰めた。


「おじい様か。―彼と違って、君なら話が分かる相手だと思って呼んだのだが。」


残念そうに目を伏せるアーサーに、こくんと首を傾けて魔女―サラはどういう事ですか。

と、呟く。


「……あの時、君は敵であるはずの私を模倣犯から助けてくれたな。本来なら、ほっといていた方が君たちにとっては俄然優位だったというのに。それでも君は私を、助けてくれた。」


そしてアーサーはあの時思ったのだ。


騙し合い、貶しあい、意思の押し付け合いが交じり合う内憂外患の世の中で、君なら、君ならいつか「話」が出来るのではないかという事を―。


しかし、その時、アーサーはその事を言わなかった。


薄れてゆく意識の中で空に換えるF35を見ながら、彼女に言いたかったのは、そういう後付けの言葉ではない。あの時、言いたくてどうしても言えなかった言葉は―、


「・・・・ありがとう。」


これだけだ。

その様子をしばし見ていたサラは、ぱちくりと黒い目を瞬かせて驚いていた。


「まあ、大変義理固いお方ですこと・・・・・。」


「正しい組織というのは、こういうものだ。」


と答えたアーサーに、そうですね、と口に手を添えサラはふふふと笑う。

サラはそこから、アーサーの皮肉を感じ取っていたのである。


「・・・・成程。それに対して、今回私のした事を責めていらっしゃるのね。」


そして、一瞬眉を下げて寂しそうに呟いた。


「確かに。《赤の救世主》の不法入国の手引きを援助し、NYPDの監視カメラをハッキングしてコンドルの居場所を彼に報告したのは紛れもなく、この私です。」


あえてはっきりして言った物言いでアーサーと正面に向かい合って、サラは言った。


「正直に言います。私はおじい様からその指示を受けた時これは「正義」だと、そう思って躊躇なく行いました。愛しいおじい様と、優しいあの方なら、きっと、義理を通した事をしてくれるだろうと。」


しかし、それは違っていた。

アーサーの瞳から避けるように、斜め上を見上げてサラはそれを後悔した。


「お二方は言いましたわ。これは仕方がなかった事だと。

確かにそうでしたわ。NYPDが不法監視さえしなかったら、ジュリアはホセのおじ様に見つかる事は決してありませんでしたし、NYPDが猫を犯人に仕立て上げ、あそこまで執拗に追わなければ、おじ様もそこまで撃つつもりはなかったとおっしゃっていました―ですが。」


震えるような言葉に、斜め上を見上げたのは涙を溜めているからだと、アーサーは察した。


「でも、でも・・・・それはただの言い訳です。開き直りです。私は、それをどうしても納得する事は出来ませんでした。」


「ああ、そうだ。」


それがやはり君なのだ―。やはり君は後悔をしてくれている。


アーサーは不本意ながらそれに「安心」していた。それが、例え議員として相応しくない気持ちだったとしても。


「それは私も同じだ。」


と、アーサーは彼女の言葉を受け取った。


「―だが、この背後にいる「仲間」たちはそれを良しとしていない。この秩序を保つために、あくまで君たちと戦うつもりだ。」


「そうでしょうね。私たち、ムンダネウムもこれでもう真っ当な組織として向き合う事も出来なくなりました。―新たなる「泥沼」の始まりですわね。」


と、真顔に一筋の涙を流してサラは言った。しかし、アーサーはその顔に向かって言う。


「違う。」


泣くな、泣くんじゃない。だって私たちには―


「まだ、私と君がいる。」


その言葉を出すには、相当の時間と勇気がかかってしまった。


か細くようにひねり出した言葉。俯くように言ったアーサーの声に、ぱっとサラが涙を散らす。


「私と貴方?」


「ああ。まだ、己の愚かさを反省し、それを後悔している私たちがいる。」


そして、互いの姿を確認しあった。

そしてアーサーは言った。続いた言葉は彼らしい、冷たい「取引」ではない。


「この問題は2人で解決しよう、サラ。 」


少女に向ける言葉は自分の真意―。


「これから起こる互いの組織の歪みを中から正しあって、いつか、同じテーブルについて話し合おう。まだ、間に合う。私と君がいる限り、まだ間に合うんだ。」


「本当にそうお思いですか。」


サラはその呼びかけにはっきりと正直な気持ちを述べた。


「フェアではないので、今あえてここで言わせていただきますわ。

私は実は存在してないかもしれないですし、それを言っている貴方も実はいないかもしれない。それでも、貴方はそれを私におっしゃるの?」


「ああ。何故なら、君はいるからだ。絶対に。」


すぐに出た応えに、サラは意外そうに目を開いた。


「どうして、そう言えるのでしょう。何の根拠もないというのに。」


「あるものがないのなら、ないものがあったていい。」


それに対する答えはそれだけだ、と。アーサーは唇をしめた。



「そうだ、どんなに言葉を連ねて価値や根拠を述べたって、それは所詮思い込みや開き直りにすぎない。そうだ。すべてが正しくない、そして存在しないのだ。―しかし、こういう考え方もないだろうか。それも正しくないのかもしれない。」



それにサラはその意味を察して同じように口を閉じた。


「そうだ、本当は違うんだ……。「現実」や「価値」は何もないというわけじゃない。

私たちが考えて私自身で作り出すものなのだ。」


「ないものを信じて、信じつづけて、初めて「それ」は作られる―。」


「信じるよ。」


アーサーは言った。


「君はいる。絶対にいる。そして、いつか私と君は同じテーブルに席をつく事ができる。」


だから、君も信じてみないかとアーサーはその眼差しでサラに問うた。


「・・・・・・・・ありがとう。」


サラはまた一筋の涙を流しながら微笑み、それだけ答えた。

それを見上げながらアーサーはサラを見つめた。灰の目はもう冷たくはない。


「いつか、行くよ。ムンダネウムへ。そして君にいつか、会いに行こう。」


「・・・・待っていますわ。それですべてが、終わりますように。」


ああ、そしてこれが、これがどうか、

互いに「騙すため」の言葉であったと言う事になりませんように―。


サラが手をかざす。それと同時に無表情のままにアーサーも手をかざす。


少女の華奢な手と細長く節々とした色白の男の手が、冷たいガラスの間で重なり合う。


「不思議。貴方のような方がいただなんで、私、今でも信じられないのよ。」


ふっと穏やかに笑い、そして震えるように言った彼女に、手を重ねたままアーサーも、


「私もだよ。」


と応え、粒子に包まれ消えゆく彼女をずっと見守っていた





14、 FINALTARGET 『GANMAN GEORGE』

 

それからしばらく経ったウェストサイドの沿岸部。

冬が近づくNYに久しぶりに青々とした良い天気がやってきた。


眼鏡を反射させながらその澄んだ空気を吸い込み、ヨーナスは快晴の空に良い心地になっている。今日が非番のヨーナスは、Tシャツにチェックのパーカーというシンプルかつ、気心地の良い服装でNYの街を闊歩していた。


更にそれに気分を良くして、スキップをしてみる―も、脚にしっかりついているGLOCK26が一気に現実を引き戻した。


深緑溢れる沿岸部の公園を真っ直ぐに渡り、丁度良い所で左に曲がる。

おそらく今日もそこにいるであろう、彼の元へと―。


「ああ、居ました。居ました。」


とヨーナスは軽々とフェンスを乗り越え、コンクリートの上を歩いた。

その先には真っ青な空に、海岸を跳ぶカモメたちの白さをみていた金髪をかりあげた青年。


フェンスの音と共に振り向いた青藍な瞳は、今日の空と同じ色をしていた。


「本当最近、暇を見てはよくここに来ている、言いますね。」


それが仕事中でもね、と少々嫌そうに笑うヨーナスに、その青年、ジョージは眩しい程の白制服を着ながら煙草をふかし、


「うるせえよ。」


と煙草の息を吐いて答えた。煙草の吸い過ぎとヨーナスが咎める事ももうない。

それが、3年ぶりのバディーとの「再会」だった。


「そんなに気になるんですか?猫の事。」


ヨーナスは隣に立ちながら訊ねる。2人が立つ場所は最期に彼女が立った場所であった。


「猫じゃねえ。キティだ。これからはそう言え、ややこしい。」


「キティ?は、まさか彼女の本名はキャサリン・・・!?」


「kitten(仔猫)のキティ。」


「な、なんだあ・・・・。」


くだらないやりとりをしてしまったと、残念そうにヨーナスは目を伏せてため息をついた。

しかしそれで、ジョージは「気にしているのか」という問いをやんわりとはぐらかしたのである。


その間にでも訪ねたい事はお互いに沢山あったが、それでもしばらく2人は黙って海を見ていた。

晴れの空に対照的なねずみ色の海。向こう岸の摩天楼。そこに今日も船が幾つも交差してゆく。


「・・・・あいつは、生きていると思うか。」


そっとジョージは海を見たままヨーナスに呟いた。

それに対し、空になっている地下水路を見ながら、思ったままヨーナスは応える。


「無理でしょう・・・。5発も撃たれた上に地下水路の水流に巻き込まれたなんて、絶対に生きてるわけがない。立ってられただけでも、奇跡です。」


しかし、死体は上がらなかった。


NYPD中の巡査総動員で、地下水路の捜索が行われたにも関わらず、あるはずの女性の死体はそこからすっぽりぬけて消えていたのだ。


白制服を泥だらけにして必死に棒を振り回したジョージも、そこからやっと探し出した彼女の赤い髪紐を握りしめながら、その結果に嘆き、叫んでいた。


それが今、ジョージの右手から風に吹かれて、たなびいている。


「逃げやがって。」


悔しさにそれを握りしめ、ジョージはこのとき初めて意地でも認めようとしていなかった「負け」

を感じていた。


「・・・・・・確かに、本当に強い人ではありましたよね。」


その時の彼女の逃亡劇を思い出しながら、私でも出来たかどうかと寂しそうに目を伏せる。

と同時に、彼女が敵である自分に気付かってくれたという事実に戸惑っていたのだった。


騎馬警官の話曰、もしあの時、猫―キティが、自分を蹴り飛ばし馬から落とさなければ、目前の黒階段に階段を打ちつけて自分は今、ここに立っていなかったのだと言う。


それだけじゃない。メアリー刑事のために捕まる直前にわざわざ無理に馬まで止めてくれたりして―、


この時、ヨーナスは「彼女が本当にジュリアを殺した犯人なのだろうか」と、生まれて初めて上の言葉に「疑い」を持ったのだ。


自身がNY市民の最期の砦として、どんな命令でも忠実にこなすのが絶対であると断固として持っていた信念が、この時初めて揺らいだ。


それはおそらく、雨の中の編集長の啖呵に無意識に影響を受けていたのかもしれない。とヨーナスは思ったが、しかし、それでもそこから「思慮」するまでには、彼はまだ至らない。


一方、ジョージは、勝ち負けがすべてだと信じていたその優越感が揺らがされていく事に苛立っていた。


「そんな、どちらかと言えば彼女の方がボロ負けじゃないですか。」


と語るヨーナスの苦笑いも、ジョージは沈黙で受け取る。

それがもし相手が男だったなら、ジョージも笑って納得していたはずだった。


だが、相手は女だった。

「猟犬」より小さくて、か弱いはずの、小さな「猫」だった。

女は、男から逃げる事ができればそれで「勝ち」なのだ―。


それでも、でも、まだた。

とジョージはその戸惑いを否定して煙草を揺らす。


それが成立するのは、お前が「生きている」と分かってからだ、と。


「絶対に、「あいつ」みたいにはなるなよ。キティ。」


と、ジョージは昔の記憶の中で、自分の胸の中で血を流しながら「死に逃げ」した猫の事を思い出す。あんな想いはもう、二度としたくない。


「もし、それが分かったら・・・・・今度こそ絶対に捕まえてやる。」


「え、今、何を?」


真剣に見る眼差しにヨーナスはひょうきんな声をあげて見上げた。


「あの雨の日に俺はお前の被写体になった。次は、お前が俺の―。」


自分の弾より光った黒いカメラのフラッシュ。今度はそれよりも、今度はもっと速く。


死神との約束を忘れたわけではない。


けれど、その想いをも乗り越える程の、溢れて堪らない熱の先に、ぼんやりとカメラを構える奴がいる。


その中にある「本当の気持ち」に知らぬまま、

その想いがいつか「すべて」を「壊す」ことになるも今はまだ知らぬまま―、

青年は黄金銃で空を斬り、銃口を沿岸へと向ける。


細く長い指が引き金を引いて―。


「ちょ・・・・・!」


「バ―――ッン」


慌てるヨーナスの横で笑って、「なーんて、ねっ。」とギルデットを上に掲げるジョージであった。


「その時は、私も呼んデ下さいネ。」


「!」


驚いて振り向けば、フェンスの上で朱い満州服を着た高珊が、細い生脚を組み合わせて座っていた。


「こ、高珊ちゃん・・・!脚が!脚が見える!」


と顔を紅く染めて目を瞑るヨーナスの前に向かって、高珊も軽く飛び降りる。


「私もイツか、あの猫に一矢報いてやりマス。その時ハ、私も一緒ニ、ジョージさん。」


かつかつと側に寄り、久しぶりに清々しい瞳を向ける高珊にジョージは薄く笑い、ヨーナスはその様子に畏れた。


「あわわわ・・・・高珊ちゃん、一体キティさんと何があって、そんなに憎む事になったんだ。」


「そうよ!そんな物騒な事言っちゃだめよ、高珊ちゃん!」


と、その後ろでヨーナスと同じ事を叫んだのは、フェンスに手をつける黒のタートルネックにジーンズを着たミナであった。


「あれ、ミナさん。もしかしてフェンス登れない―」


と思った矢先、鍵を取出しフェンスの扉からその中へと入った。


「ああ、はいはい・・成程ね・・・。」


「ジョージさーん!お久しぶりでーす!すっかり大人っぽくなりましてー!紺も良いですけど、白もとっても似合います~!」


と手を広げて駆け寄ろうとするミナに、すっかり興ざめしたジョージは「めんどくせえ」とすっとかわし、地下水路の向こう岸へ飛び乗った。


「ああ、待って。ジョージさん!」


と寂しがるミナの様子を呆れるように高珊は見る。


「ふン。呑気な事言っていますネ。貴女ハ、あノ化け猫がどんな酷いヤツか知らないンですヨ。」


とミナはそれに唇をとがらせた。


「そんな事ないわよ!インテグラさんは良い人です!」


「戦った事もないクセに・・・・・。」


「貴女だって話をした事もないじゃない!」


それに互いに「なにおう」と掴みあいになった女同士のじゃれ合いにヨーナスは、(あの時の事を思い出しながら)苦々しくも笑ってその間に入っていった。


「おー!なんだー!全員集合かー!?」


と続いてフェンスの向こうにやってきたのはウェッブ、そしてその後ろからはアーサーである。

ウェッブは黒のジャケット、アーサーは灰ストライプのVネック姿と、私服姿で現れ出た。


「ウェッブさン!」


「あ、アーサー様!」


笑いながらつっかみあう2人は、珍しい物を見たように声をあげた。

するとウェッブは突然、フェンスの網を強く掴みそれを揺らす。


「ちょ、何しようとしてるんですか、ウェッブ殿。」


「そりゃ、おめえ、アーサーがこのフェンスを越えられるとでも思ってんのか?」


「え、だからって。いや、その扉開いてますからっ―いやあああああああ―っ!」


きしりと音を立てて2mもあるフェンスが3人に向かって倒れていく。


「そんな入り方ありますかァァァああああ!」


慌てて逃げていく3人。倒れるフェンスの上に足をつけて、ウェッブは高らかに笑った。

その隣でアーサーは呆れるように彼を見上げる。


そして、向こうの青の視線に気づき、ジョージを見上げた。


ジョージは「忘れてない。」と言い、アーサーは「分かっている」と視線で応えた。

しかし、それは互いに今にも壊れそうなものである事に気づいていた。

それを、確認するための合図でもあったのだ。


「これは、これは騒がしい事で。」


と、それを見守る深緑の広場の中に立つマルコム長官と、リンク「元」教導委員長がいた。久々にNYに戻ったジョージの様子を今一度確認しようとやってきた所だったのだ。


冬にも構わず半袖を着たマルコム長官は、腕を組み交わしながら立つ。

その隆々とした黒い筋肉が更によく映えていた。


「良かった。あの様子ですと、ジョージは特に変わりはなさそうですよね。

猫と接触して何かそそのかされたような気はしていましたが。」


一方青のパーカーを着たリンクは、安心して口髭を揺らし息を吐く。

しかし、マルコムは軍人としての洞察力で、彼らの様子に注意深く見守っていた。


「そうだな。まあ、ジョージは変わりはないだろう。が、問題は、それを取り巻くあいつらだ。」


と、マルコムはアーサーとウェッブを睨んだ。

そこではアーサーがウェッブの横から何かを呟いている。

それにウェッブは彼の肩を思い切り掴み、身体を揺らしながら「大丈夫だ」というように笑っていた。


「・・・死神議員は、どうやらムンダネウムとは共調経路を確立しようと、妥策しているようだ。

そのために、付き合いのあるジョージとウェッブを取り込む可能性が、十二分にありうる。」


「そ、それは困りましたな・・・・・・・・。」


そうだ、困る、非常に困るとマルコムはその太い眉を顰めた。


「もしや、ブラックパンサー寄りの私たちが、ウェッブ殿による異例の「一斉解雇命令」で潰されたのは、アーサー氏の差し金・・・・・!?」


「そうだろうな。それで奴は、ムンダネウムの対策案を、私たちを差し置いて自分主導に行うつもりだ。」


だが、しかしそうはさせない。とマルコムは歯を食いしばった。


自分たちの仲間が血を流し、認識票以外見分けがつかない程に嬲り者にされ、そして今も襲いかかるPDSDに苦しめながらも、必死になって守ってきたこの「アメリカ」。


それをモルモットの集合体だと否定したオーディンを、マルコムは絶対に許せなかったのだ。


「ムンダネウムなどと協調などするものか。」


彼は今一度自分の「意思」を確認していた。

彼らの「痛み」や「飢え」は、紛れもなく、本物だった。それを否定される余地などたとえ神でさえもさせない。絶対にすべて壊滅してやる、と。


その思いを察して「海兵隊」出のリンクも強く頷いていた。


「ウェッブを取り込もう。」


そして、黒い瞳を開きながらマルコムは言った。


「あいつと私は、きっとうまくやっていける。そしていずれはジョージとも。な。」


何故なら私たちは同じ「戦える男」だから。

あいつと私には、あの死神議員でさえ立ち入る事のできない「武器を持つ者」という領域、「世界」があるからだ。と思っていた。


「安全な所にいた文官が偉そうに現実を述べるな、死神。」


それを言う資格があるのは、ムンダネウムといずれ血を染める事になるこの私たちだけだ。


「その仲良しごっこも、いつまでも続くと思うなよ。」


マルコム・ワイアット―、ブラックパンサーは策士の笑みを浮かべながら去っていく。

リンクもそれに続き、もうあの笑顔の世界に戻れなくなった彼と共に、これからもついていこうと脚を踏み出したのだった。


***


「あっははははは」


仲間のやりとりを見ていたジョージは空に向かって笑い出す。


「ったく、3年ぶりと思えねえくらい、どいつもこいつも変わってねえなァ!」


と馬鹿笑いして出た涙をきゅっ、と拭きながら、ジョージは集まった久しぶりのメンツを見下ろし、犬歯を見せながら笑った。


そういえば休日のためか、今日はみんな私服姿だ。と見る。

なんか浮いてしまった。とジョージがふっと口角をあげた時それに答えるように、


「ジョージさんも、見た目意外は変わっていませんね。」


とヨーナスが優しく話しかけ身を乗り出した。


「そして、ジョージさん。」


やがてそこから高珊とミナがヨーナスの両側につき、ウェッブもアーサーもそれに続く。

そして、一斉に顔を上げて彼を迎え、声を揃えて言った。


「おかえりなさい。ジョージ・ルキッド。」


手を取り出すヨーナスの穏やかな笑みに、

ジョージは右手に掴んでいたキティの髪紐をポケットにしまったまま、笑った。


海を背景にして笑う美青年の笑みは、この時皆が初めて見た「屈託のない」ものだった。


「どうだ、これでいいだろう。」


と、いずれ会うであろう「彼女」にそう呼びかけて地下水路を見下ろし、それを隠すよう風にのった勢いで顔をあげる。そして、皮のショルダーに輝くギルデットを大きく振り回しながら、皆の所へ跳び出していったのだった。







《GANMAN GEORGE 完》

あとがき 


まっきゅん、ごめんね。

最終回だったのに、全員集合の所でログアウトさせちゃったよ・・・!


 なんとか今年中に終わらせました。GG7話。最終回。


猫がキーワードの話でしたので、私は勝手に「にゃにゃ話」と呼んでます。にゃにゃわー。


6話から激動の最終回でした。しかし1話の頃から最終回はこの様に考えていました。


多少揺れ動く事もありましたが、6話の時事問題に比べて、今度は「普遍的な価値」を問う話にしてみました。


テーマは様々取り込んでしまい、書く度にまとまりがなくなってしまったのが苦労しましたが、1人1人のキャラクターが持っている個性や、意識が組紐のように1本に結ばれて完成するようにしたいなあ・・・・と思ってなんとか書ききれたかなと思います。そうなれたかは分かりませんが(汗)


初めてにしてはかなりハードルの高い小説を書いてしまいましたが、大変ながらもとても楽しかったです。


読んでくれた方には本当に大変、感謝しています。今までありがとうございました。


GGはこれでおしまいます。


タロットカードのように、良い所も、そして悪い所を兼ねそろえた彼、彼女たちが世界の都市NYを舞台に走り回り、泥沼ガンアクション(?)小説。


色々至らない所があったと思いますが、原石の輝きは魅れたかな・・・・と思って居ます。 


これで本編はおしまいですが、これからは番外編の短編や、細かいかい漫画(たぶん主にギャク)、1枚絵(これも主にぎゃgw)などはちょくちょく出す予定ではいます。


しかし、一旦ここを1つの区切りとして今一度ジョージに達に別れを。


そして改めて、7話まで読んでくれた方に深い感謝を。


何か疑問や意見などありましたら、いつでも連絡をくださいませ。

その意味でも今後とも、GGが続いていけばいいなと思います。


ありがとうございました。


                                                               

まっきゅんごめんね 

根井 舞榴                                                     


《登場人物紹介》


●「改」 キティ(イゾルデ・エリザ)・・・・

出身地不明、本名不明。年齢不明。身長170cm。ブロンクスにある三流カストリ下請取材会社「IWB」社の記者(自称)。体型はNYPDの報告曰「少々太め。」ただ単に豊乳であるという事。

花屋とのバイトを掛け持ちしながら記者としての技量を身に着けていた、EIB社創立者であるジェームズ・ラングドンの弟子。

そしてGG6話までの執筆者。

編集長の無茶振りに振り回され、危険な取材に自ら臨んだ事でそのトラブルに巻き込まれ、最後は行方不明となってしまう薄幸女。しかし、丈夫な身体で見せつけた奮闘によって、ジョージが女性として初めて興味を持つ人物となった。行方不明だけど。

通称:〈灰かむりの猫〉―イメージソングは「ありふれたせかいせいふく」


●ゲオルク・ライヒート・・・

ドイツ人。80~90歳。GG登場人物の中で最年長。身長159cm。国際研究都市「ムンダネウム」の創立者兼代表。「魔女」と「赤の救世主」を従えるムンダネウムのリーダー。また、遺伝子上におけるジョージの「父親」。

WWⅡにドイツ兵として出陣した戦いで四肢切断、右半分大火傷という酷い重症を負った。

ムンダネウムを国家と並ぶ「組織」と位置付け、敵対組織に対し、相手との年齢的な意味合いも含めて非常に高圧的な態度をとる。

が、ムンダネウム内ではとても優しい「おじいちゃん」らしい。だけどヤンデレ。

通称:〈オーディン〉―イメージソングは「恐怖ガーデン」


●マルコム・ワイアット・・・・

エチオピア出身のムラート。56歳。身長192cm。アメリカ国籍。

NSA長官を務めるアメリカ陸軍大将。ムンダネウムとは強硬路線をとり、そのためならたとえ同じアメリカ組織でも利用し、駒として扱う事を躊躇しない「策士」。

軍人として鍛え上げた筋肉と、経験(とその痛み)を武器に、すべての権力を凌駕してムンダネウムを潰し、その技術をこっそりごっそり「横取り」する事を画策する。

実は6話において、アヴァ議員に「ムンダネウムがUAVに反対している」という事を、あえて報告しなかったのは彼である。

実はアヴァ議員を慕情していたが、作戦のためならと、想い人さえも利用してしまう悲しい軍人性の持ち主であった。

通称:〈黒豹〉―イメージソングは「人生ゲーム」


●ホセ・シモン・アーンズ・・・・

ベネズエラ出身のメスティソ。52歳。身長173cm。

ムンダネウムの用心棒を勤める、右腕に刺青を彫ったマルキストゲリラ。チェ・ゲバラを崇拝し、革命家を自称して、革新的な組織構造を持つムンダネウムに加担した。生まれた時から父と同じ傭兵として育てられたので感覚が麻痺しており、人を殺す事をホットドックを売る事と同じ位に思っている。52歳とは思えない強靭な体力の持ち主。

その実力によって、NYPDが軟禁中のジョージをNY入りさせざる得ない(つまりキティとジョージが接触する)きっかけを作り出した。

しかしその彼もムンダネウム内では「人の良いおじさん。」らしい。

通称:〈赤の救世主〉―イメージソングは「からっぽのまにまに」


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