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ただいま 検品中  作者: 黒田 容子
14/14

今度こそ、大団円

アンタみたいにヒネくれてたら、よその部署に友達もいないでしょ?

いいわ、友達になってあげる


初めて真知子(今は嫁ね)を抱いた時の返事がそれだった。

いくら同意があったとはいえ、翌朝 ボコられるのも覚悟していたから、

あっさりした柔軟さには 驚いた。


もっとも、真知子の「友達」の定義は、世間の恋人よりも厳しい規定だったけど。

「友達」に昇格できたときは、昇給したときよりも嬉しかった。

っていったら、俺はマゾなんだろうか? 

嫁には「あんだけ強引に押し倒しておいてMはありえない」といわれてるんだけど。



あの夜から半月後の話だ


「現状レポート、早くもってこい」

真知子にメールを送った

提出期限まであと3日あるのだが、わざと催促した。


提出書類に慣れてない真知子を育ててやりたい気持ちと。

会いたい気持ち半分と。

「来たらその場で添削してやる。 20時半までなら待てる」

待てなかったら? 押しかけるまでだ。

我ながら「待てない」高校男子だ。どうしていいか分からない程、手に追えない自分


合点したところで、家からの荷物を こっそり取り出した。

…マグカップ。

彼女がここの職場に来た時用に使ってもらおうと、内緒で用意した。

どんな顔するか、楽しみだ


コンコン、と小気味の良い音が部屋に響いて すぐに扉が開いた。

「失礼します。物流部の蕃昌です」

「真知子、俺しかいない。入れよ」

作った顔が お互い崩れる。


改めてみる真知子は、贔屓目に見ても 可愛いと思う

遅くなってごめんね、と無邪気に駆け寄る姿が 気持ち良い。

誰にでも駆け寄るか?と前に聞いたら、そういうものじゃない?と返されたことがある

嫉妬に駆られたが、昔よりは 嬉しそうにそばへ来る姿をみて 自信を持つことにした


真知子には、「そのイケメン面、悪用しないでくれる? 心臓に悪い」といわれた

手前味噌で恐縮なんだが、他の女性から言われないでもない。

ただ、自分の相手が「素直に、カッコいいね」と言えない天邪鬼なので、有効手段になってるのか分からない以上、不安にはなってる

本当に、天然で人を振り回す奴だ…まぁ 天邪鬼自体が鬼だからな、ぴったりだ


「コーヒーでいいか?」

声を掛けた真知子が 生返事をする。

いつもなら、使い捨ての紙コップだが、今日は マグカップが用意されていることに気がついたらしい

「それ、見覚えあるな…」

それもそのはず。家にあるのを持ってきた。

「真知子が 前に 俺の家で使ったやつだよ」

真知子の顔が一瞬で破顔した

「ワタシ用になるわけ?」

あぁ、と 頭を撫でる


「気軽に本社へ来い。 それで本社に慣れろ。」

お前が今まで教わりそびれてきた仕事は、俺が教えてやる

嬉しそうに「やったー」とマグカップに暖を求める手が 楽しそうだ

真知子が 一瞬、涙ぐんだように見えて 言ったそばから気が変わった。


「ちょ、ちょっと! せっかく入れてくれたんでしょ?飲ませてよ」

抗議も無視して 強引に押し倒した。

その後の展開は、言わなくても「大人同士」の話だ。


ちなみに、レポートは 家で読んだ。

ぐったりした真知子が隣で寝ている中、赤ペンを引いていた。

「赤ばっかりだ。」

呆れため息半分、読んだときの真知子が「すごーい」とまたキラキラする顔が見たくて、顔が緩むのが分かる


実は、初対面の頃から、顔とか体つきがタイプだったから、一目惚れに近かったが、

仕事を教えたとき、本当に嬉しそうに笑う顔に惚れこんだ。

いつも、自分のパートたちと話しているとき、楽しそうに振舞ってる。

人に教わり、覚えて自分の糧にするのが、本当に嬉しいんだろう。

一途で負けん気が強くて、向上心が高くて。「教えてくれてありがとう」その顔にいつもクラクラする


「早く 俺に追いつけよ」

寝顔にキスして、同じ夢をみれるのを祈って眠った。

俺の机の隣で「やったー」って言った顔、可愛かったなあ…そんなことを思いながら。



プロポーズしたのは、これから1年後だった。

彼女は、男ばかりの物流センターで勤めている。

ただでさえ、可愛くて一途に職場の仲間を思いやる良い子。肉体労働者だから、凄いスタイルいいんだぜ?でもって、勘違いさせる天才。

これで、仕事も出来るようになったら、どうなる? 

ウカウカしたら他の男に持っていかれそうで、「すごーい」と笑ってくれているうちに、さっさと切り出した。

独占欲って、そういうものだろ?


俺たちが結婚したとき、他所で波乱があったらしんだが… それはまた別な話。

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