第80話 侯爵令嬢の、登場人物紹介
第79話まで、前半の旅に最後までお付き合いいただきましてありがとうございます。
想定よりも長丁場となり、登場人物も増えてきましたので、ここに登場人物紹介を挟んでおきます。
この先の物語には触れておりませんので、ご安心ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
セヴェリーニ侯爵家
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【プルデンティア・セヴェリーニ】
本作の主人公。プラチナブロンドに、アイスブルーの瞳。セルヴィア法王国の侯爵令嬢にして、乙女ゲームでは冷たい美貌の女性と表現される――のだが、その内側には、もう一人が住んでいる。
城山律子。日本で四十三年間を生きた、家事事件専門の弁護士。母を喪ったあの日に前世の記憶を取り戻した彼女は、令嬢の微笑みの下で、弁護士の目で世界を見る。足元の影を意のままに操る「影魔法」の使い手。「お母さまの想いを、法律にする」――その一心で、賢慮の令嬢は、今日も本の山に埋もれている。
【クラウディウス・セヴェリーニ侯爵】
プルデンティアの父。元老院の新世俗派の法務担当。「うむ」の一言で多くを済ませる、沈黙の戦略家。娘を「プリュ」と呼ぶ。判例の話が、なにより好き。妻を失ってから、笑うことを忘れていた人。感情を表に出さぬまま、それでも娘を守る道を、黙して選び続けている。
【コルネリア・セヴェリーニ侯爵夫人】
プルデンティアの母。すでに世を去っているが、物語のすべては、この人から始まる。穏やかな侯爵夫人の顔の裏で、ある「仕組み」の被害者たちを、静かに救おうとしていた。律子によく似た、アイスブルーの瞳。庭の白薔薇と、数十数通の手紙を、娘に遺した。
【マルチェッラ】
侯爵家の侍女頭。コルネリアが嫁ぐ前から仕える最古参。袖口の裏地の色一つ見逃さぬ、鋭い観察眼の持ち主。澄ました顔の下に、深い忠誠心を隠している。律子の学問道具――蜜蝋の付箋――の、隠れた製作協力者でもある。
【ロドリゴ】
六十代の老執事にして、御者頭。口が堅く、言わないことで多くを語る人。亡き奥様が密かに学んでいた「自動車」の整備も、この人の役目。
【ジーナ】
律子の専属メイド。背が高く、日に灼けた丸顔に、大きな垂れ目。「凄いですお嬢様!」が口癖の、からっと明るい娘。ある事件をきっかけに、律子の専属メイドになった。表の調査員として、時には修道女にも化ける行動力。初めて見た海に、誰よりも大きな声で喜んだ。
【ペッピーノ】
【ジョルジョ】
三十年来の料理長ペッピーノは、亡き奥様の好物を、今も作り続ける忠義者。庭師のジョルジョは、律子が幼い頃から、薔薇の世話を。二人とも、聞き上手な相手には、つい昔話を喋ってしまうのが玉に瑕。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
学び舎の人々
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【モンタナーリ先生】
セルヴィア法曹予備学院の、契約論・古代法・教会法の教授。白髪、黒の法衣に赤の縁取り、眼鏡。この国の法の、生き字引。穏やかな声で、鋭い問いを投げ返す。律子の才を、誰よりも早く見抜き、その背を、静かに押し続ける人。――「奇跡は、制度ではない」。
【サントーニ先生】
律子の魔法の家庭教師。栗色の髪に、銀縁の眼鏡。等価交換、置換魔法、そして影の御し方――四年をかけて、律子に多くを教えた。「一度に使う量を、決めておいてください」。厳しさと、照れ隠しに頭を掻く癖と、時々の大笑いを持つ先生。
【キアラ・ロッセリーニ】
律子の親友。商家ロッセリーニ商会の令嬢。栗色の巻き毛に、大きな緑の瞳。明るく、笑い上戸で、そして――誰よりも早く、律子の隣にいてくれた人。「プルー」と呼び合う仲。海辺の街リミニに、別邸を持つ。律子が長く胸に秘めてきた「あること」を、この世界で最初に打ち明けた相手でもある。
【マルクス・カンディドゥス】
教室の一番奥の席で、ノートを取らない、背の高い転入生。編入試験の成績は、たいそう凄かったのだとか。律子が、ほんの少しだけ、気になった人。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
婚約と、社交界
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【カリスト・ヴァレンティーノ・アルカディア】
律子の婚約者。アルカディア公国の公太子。淡い金髪に、澄んだ青い瞳、均整の取れた長身。律子いわく「アポロの胸像みたい」。お馬とお洋服とお庭の話は流暢だが、政治の話は、出てこない。悪い人ではない。ただ、彼もまた、婚約の駒。「魔法は殿下の勝ち、自動車と法学は私の勝ち」――そんな点数表を、二人は持っている。
【ルクレツィア・フォンターナ伯爵夫人】
黒のドレスに翡翠の首飾り、せわしなく動く扇子。強い眼力の貴婦人。亡きコルネリアの、古い協力者の一人。律子を案じ、時に厳しく、母の遺したものの重さを、そっと手渡す人。――「悪名は、消すものではなくてよ。使うものよ」。
【フォンターナ伯爵】
ルクレツィアの夫。新世俗派の重鎮にして、治安長官。恰幅の良い外見の奥に、鋭い目。侯爵家とは長い付き合いで、「できることはする」と、律子に告げた。
【アウレリオ・スカルラッティ】
セヴェリーニ家の警備担当。黒いコート、無口、銃の手入れを好む。言葉は極端に少ないが、観察眼は鋭い。屋根の上を、危なげなく歩く男。ジーナには、当初「殺し屋」呼ばわりされていた。いざという時、律子の「撃っては駄目」の一言を、守れる人。
【ヴィオラ・ダルコ】
かつての舞台女優にして、男爵未亡人。晩餐会を、たった一声の歌で救ってみせた達人。だが、その技術は、時に別の顔を持つ。律子が前世の弁護士の所作を、この世界で初めて本気で使った、忘れがたい相手。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
謎と、因縁
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【クレメンティア・パピニアーニ】
亡き名判事の未亡人。琥珀色の瞳に、蜂蜜のような温かさをたたえた貴婦人。父の書斎に、四年ぶりの笑い声を取り戻した人――のはずだった。彼女をめぐる出来事は、本編で。律子が、足元の影の声に、ちゃんと耳を傾けるようになった、きっかけの人。
【ガリーブ】
「異邦人」を意味する、自らを嗤ったような偽名。法曹資格を持たぬ、契約の設計者。粗暴な暴力ではなく、洗練された仕組みで、合法的に人を搾取する男。かつて一度だけ、コルネリアの前に現れ――脅しではなく、警告を、告げていった。
【顔の見えない術者】
クレメンティアの一件で、律子の前に現れ、そして消えた者。「報告させていただくわ」――その言葉は、背後に、より大きな手があることを、示している。律子を「危険」と分類した、名も知れぬ敵。
【聖ルチア孤児院と、三つの影】
セルヴィア旧教会派。リミニ商会連合。そして、アルカディアの魔法評議会に巣食う腐敗。国境を越えた三つの影が、一つの「仕組み」を支えている。子供たちの髪が、静かに集められる場所――律子が、まだ手を出せずにいる、痛みの在処。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
百年前の名前
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【アリアドネ・テミス】
百年前、アルカディア魔法評議会の議長を務めた女性。賢者学府の通称「テミス・アルカナ学院」の名は、この人に由来する。晩年、置換魔法の契約を規制する法案を、三度、評議会に諮り――三度、退けられた。「必要だったのは、法案ではなく、法典だった」。時を越えて、律子の道と、静かに重なる名前。
【リーナ・ヴァイス・フローラ】
百年前の「染み抜き事件」で、歴史に名を刻んだ人。今は、教科書に載る歴史上の人物。(――詳しくは、『転生詐欺師の幸福論』をご参照ください)
【東の都で待つ、若い手の紳士】
古い書店を営む、白髪混じりの紳士。だが、その手だけが、年齢に似合わず、若々しい。彼が誰を、どれほど長く待っていたのか――それは、いずれ。律子は、まだ、その存在を知らない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第81話からアルカディア賢者学府編が始まります。
よろしければ、引き続き、ゆっくりとお付き合いください。




