旅の仲間 相棒 5
「君、よっぽど自然豊かなところで育ったんだね?しかも高い感受性を持っている。精霊の姿が見える人間に会ったのは初めてだ」
「ござる」が抜けてる。そうツッコむのも、もう面倒くさいか・・・・・・。
「いや・・・・・・まあ、確かに田舎の森の中で育ちましたが・・・・・・」
リラさんが、恥ずかしそうにボソボソつぶやくように認めた。
「君はもしかしたら精霊使いの才能があるのかも知れない。同胞が来たらちょっと相談してみる事にしよう」
ヒシムさんが嬉しそうに言った。
「そ、相談ってなんですか?」
精霊の秘密を知ったとかで捕まえられたりしないよな・・・・・・。
「君に精霊を付けてあげようかって事だよ。精霊が付いていると、色々便利だよ。その内精霊使いになれるかも知れない」 マジか!?精霊使いって、精霊魔法使いの事だよな?!ハイエルフしか使えない、超強力で便利な魔法だって聞くけど・・・・・・。
リラさんも少し興奮した様子だ。
「おお~い!!お前ら遊んでないで手伝えよ!!」
ファーンの怒鳴り声がする。ファーンは1階の鎧をバラして外に運び出していた。1階を病室にする為にスペースを作っている作業中だった。
いつまでも助け出した人たちを2階や1階にバラバラに寝かせているわけにはいかない。まとめて一カ所に集めた方が良い。1階の鎧を運び出して、1階部分を空にする作業だ。塔全体で200体近い悪魔の鎧があるのだから大変だ。
「すまん!今手伝う!」
俺はファーンの元に駆けだした。
ネイルーラさんがヒシムさんに頷くとかき消えるほどのスピードで南に向かって駆けて行った。
さて忙しくなるぞ。
俺たちは手分けして作業した。
ヒシムさんは「土遁の術」とやらで土を大きく掘り起こした。そこに即席で作った担架に遺体を乗せて俺とファーンが埋葬する。
墓標はまだ用意していないが。全員埋葬して、病人の移送が終わったら作る事にするから、今は勘弁してもらう事とする。
リラさんは病人の治療に懸命に当たっている。優しく手を握ったり話しかけたり励ましている。
きれいなだけでなく、とても優しい女性なんだと、見ていて感動する。
それと、怖ず怖ずと森から出てきた狩人に状況を説明して、手伝ってもらう。主にリラさんの手伝いで、水を近くの小川に汲みに行ってもらったり、沸かしてもらったり。手が回らないので非常に助かる。
そして、ヒシムさんは3階にあった食料などを持ってきて、簡単な調理をして、食べられそうな人には消化の良さそうな何かドロリとした物を与えていく。
一通り作業が終了した時には、もう肉体的にも精神的にもボロボロだった。
一応回復してもらったが、俺もファーンも体中が痛い。
ファーンは背中と腕からまた血が滲んできているし、俺は複数箇所の骨折が痛むし、腫れ上がってしまっている。右手なんかパンパンだ。
回復魔法は助け出した人にかけてもらわないといけないし、魔法をかけるリラさんの負担が大きい。
すでに魔力が尽き欠けていて、リラさんの顔色も悪い。このままでは倒れてしまいそうだ。
ヒシムさんも尽力しているが、俺たちに回す余裕はない。
最後の鎧を外に放り出すと、俺とファーンは背中を合わせるようにその場に座り込んでしまった。
「うあああああ~~!もう限界だぁ~~」
ファーンがぼやく。俺も同意見だ。
しかし、この男には感心させられっぱなしだ。
人の為にあんなに頑張れるのだ。全身ボロボロになっても、他人を守る為に命がけで踏ん張る。
そして、それを当然の様に行う。これだけきつい作業が続いても、不平不満を決して口にしなかった。
自分だってボロボロなのに、弱っている人に励ましの言葉を掛けたり、わざと明るい調子で冗談を言ったりしていた。
もっと適当でいい加減で自分勝手な男なんだと思っていたが、それは大きな誤解だった。
正直、「探究者」が何だかわからないが、きっとその目的の為に、本気で取り組んでいるだけなのだ。
俺も考古学者になる為に、それまで積み重ねてきた修行を放り出してしまった。何よりも大騎士であるペンダートン家を飛び出してまで、考古学者の道を選んだのだ。なので、ファーンの真剣さは理解できるつもりだ。
「ファーン」
俺は背中に声をかける。
「あんだよ」
背中から俺に答えが返る。
「助かったよ、ありがとう」
「・・・・・・カシムって時々バカなのな」
背中でファーンが「ヒヒヒ」と笑って続ける。
「お互い様だろ、『相棒』」
ファーンの言葉に俺もクスリと笑う。
「・・・・・・そうだな、『相棒』」
俺とファーンは背中合わせのまま、肩越しに拳を軽くぶつけ合った。
俺は初めて同年代、同性の友を得たと思った。
俺はファーンに、生に向き合う事。そして冒険者としての心構えを教わった気がする。
きっとこれからも、俺はファーンから多くの事を学んでいくのだろう。
俺は生きるのを諦めない。
創世竜との会合も果たしてやる。
呪いも克服してみせる。
出来なかったとしても諦めずに足掻いてみせると覚悟を決めた。




