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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第二巻 旅の仲間
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旅の仲間  相棒 4

 それからは地獄のようだった。

 房飾りを切って、鎧の頭を外し、次々人々を解放していったが、皆やせこけて身動きも出来ずにふるえて衰弱している。

 全く意識のない人もいたが、全ての鎧200体あまりの中から56名が解放された。しかしその半数以上がすでに事切れていて、中にはミイラ化していたり、腐敗が進んでいたり、白骨化した人まであった。

 結局、今現在生きている人は22名。それも時が経てば確実に命を落とすほどの容態だ。とても移動させられる状態じゃない。

 回復魔法程度ではその場しのぎにしかならない。

 とりあえず一カ所に集めて寝かしているが、掛ける毛布もありはしない。

 みんな夏だというのにブルブル震えている。



 さすがにどうしたものかと考えていると、突然紫の影が出現した。全身派手な紫の装束で身を包んだハイエルフの女性だ。

 ヒシムさんの妻でネイルーラさんと言うらしいが、2人並ぶと目がチカチカする。


 ネイルーラさんは人見知りなのか、ずっとモジモジしていて、俺たちに対して一言もしゃべらない。

「スマンでござる。妻はどうも緊張しているようだ」

 ヒシムさんが言う。

 こっちは精神的に限界に近い中、どう反応すれば良いのか、正常な反応が出来ない。


「ん?ああ、そうでござるな。それがいい」

 ヒシムさんの耳元でネイルーラさんがささやく。

「妻が言うには、亡くなった人をまず埋葬してあげるべきだそうでござる。その為に拙者が土遁どとんの術を使うでござる」

 ああ。確かにこのままという訳にはいかない。ちゃんと家族の元に帰してあげたいが、損傷が進んでいる人や白骨化している人もいる。身元を確かめる事は困難と言わざるを得ず、時間もかかる。

 弱っている人の衛生状況も考えると、せめて埋葬してあげるべきだろう。


 それにしても、今でこれほどの人たちが犠牲になっているのだ。ゼアルの実験では一体どれだけの人たちが犠牲になったのだろうか?

 改めてゼアルの所行しょぎょうに怒りを覚える。


 彼らは何処から連れてこられたのだろうか?少なくともイーラ村の人たちではあるまい。もしも村人が掠われていたら、あの村でも大騒ぎになっていたはずだ。

 恐らく、あの魔法使いも、近隣の村から人を掠ったら、秘密の実験塔が発見されてしまうので、さすがにそれは避けたのだろう。

 そして、エルフの大森林が目の前にあるのに、まさかハイエルフがあの村に住んでいるとは思わないだろうから、たまたま迷い込んできたハイエルフの子どもを実験材料として使ったのだろう。


 まあ、普通に考えるとハイエルフの子どもを掠うなんて、その方が遥かにリスクが高い気がするのだが、鎧の力でエルフの大森林に侵攻しようなんて考える狂人だ。差別主義者でもあったようだし、その辺の感覚がおかしいのだろう。



「ふむふむ」

 また、ネイルーラさんがヒシムさんに囁いている。面倒くさいなぁ、もう。ハイエルフだけあって美人なのに。

「ええ?!いや、それはちょっと・・・・・・。え?う、うん・・・・・・。わかったよぉ~。うへぇ、イヤだなぁ~」

 なんか悪い事を親に叱られるのを覚悟しようとしてしきれずに、何とか誤魔化したがっている子どもの様だ。

「どうしました?」

 ヒシムさんがものすごく渋い顔をしているので、話しを促す為にも訊いてみる。

「・・・・・・今から妻が、『我が魂癒こんゆの地』・・・・・・ああ、エルフの大森林に行って、同胞に救助を求めるって言ってる。割と近くに集落があるんだ。村やギルドに応援を頼んでやって来るより早く来てくれるし、弱った人の治癒も出来るはずだって・・・・・・」


 それは助かる。

 ハイエルフが大勢来てくれればこの人たちの命もつながる。ハイエルフの精霊魔法は元より、「エルフの霊薬」は物語の中でも有名だ。

 でもなんでヒシムさんはこんなに嫌そうなんだろう。「ござる」口調も忘れてるし。

「それは助かりますが・・・・・・何か問題でもあるんですか?」

 俺が聞くと、ヒシムさんは力なく首を振った。

「ん~~~~。ないよぉ~~~~。君たちにはね。問題があるのはボクだよぉ~~~~。ああ、イヤだ~~~」 

 なんだ、この人。子どもか?

「ええ?うんうん。わかってるよ。人命が掛かってるんだからしょうがないよね。すぐ行って来てよね」

 ネイルーラさんに何か叱られたらしい。観念してヒシムさんは表情を引き締めた。


「妻は足が速くてね。しかも今から『風遁ふうとんの術』を使う・・・・・・でござる。さすれば一時ひとときほどで里に着けるだろう。救援が準備を調えてすぐに駆けつけて来るでござる」

 すると、ネイルーラさんが手のひらで空気をなでると、自分の足をなでる。

風遁ふうとんの術!!」

 ヒシムさんが叫ぶ。

 いや、精霊魔法じゃないのか?良く知らないけど。

「あの、それ精霊魔法じゃないんですか?」

 リラさんが聞く。おお、ナイスだ。

「い、いや。忍術でござるよ」

 忍術って何だよ。

「でも奥さんの足下に何かが漂っているように見えるんですが・・・・・・」

 んん?何かって?

 俺はネイルーラさんの足元を凝視するが何も見えない。

「うん?君、見えるのっ?!!」

 これにヒシムさんもネイルーラさんも驚きの表情を浮かべる。

「いや、何か薄らとした透明な影のような・・・・・・生き物のようなものがいくつか足元を飛び回ってるみたいな・・・・・・」

 リラさんが首をかしげる。その仕草が可愛らしい。


「これは驚いた。人間で精霊が少しでも見えるなんてね~」

 精霊?いるの?そこに?

 俺にはさっぱり見えない。


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