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Vtuberをしていたら、美形生徒会長が僕のガチ恋ファンだった  作者: 七瀬おむ
第3章 これって本当に「友達」ですか?

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11/13

3-3

 ***


 そうして迎えた日曜日。


 待ち合わせをすることになったのは、コラボカフェの最寄りである、東京の表参道駅。


 地下鉄の出口に出ると、大通りは多くの人々で賑わっていた。


 道行く人はみんなおしゃれに見えるし、ガラス張りの高級ブランド店が立ち並ぶ光景に圧倒されてしまう。


 ――どうしよう、すっごい緊張してきた……!!


 絶対に遅れちゃいけないと思いすぎて、約束の三十分前に着いてしまった。


 会話が続かなかったらどうしようとか、服がダサすぎて引かれるんじゃないかとか、ネガティブなことばかりが頭を巡る。


 無駄に駅のトイレに入ってみたり、周囲を散歩してみたりしたのだが……あまり時間をつぶせなかった。


 ――待ち合わせ時間まで、あと十五分。


 僕はスマホを弄るふりをして俯きながら、地下鉄の出口の前で待っていた。


「渉?」


 透き通るような声がして、はっと顔を上げる。


 目の前には、私服姿の湊が立っていた。


 仕立てのいいシャツに、細身のジャケットを羽織っている。シンプルな服装なのに、一目でいい素材のものだとわかる。洗練された大人っぽい容貌は、この街の雰囲気とぴったりだった。


 ――か、カッコよすぎる……!!


 学校でも彼の美しさはこれでもかというほど浴びてきたのに、私服姿の破壊力は想像を超えていた。男の僕ですら見惚れて、心拍数が上がってしまう。


「……あの、渉? ごめんね、待たせた?」

「いやっ! 全然そんなことないれす!」


 急いで返事をするが、甘噛みしてしまった。


 湊はくすりと笑うと、「それじゃあ行こうか」と歩き出した。



 きらびやかな大通りを進み、湊の後を追う。


 コラボカフェの予約まで、時間はたっぷりある。僕たちはその前に、軽くランチをとる予定だった。


 そわそわして落ち着きのない僕とは対照的に、湊は躊躇なく裏路地に入っていく。少し坂を上っていくと、ガラス張りのレストランが見えた。


「ここ、俺のおすすめのお店なんだ」


 湊は慣れた様子で扉を開ける。ウェイターに名前を告げると、すんなりと奥のテーブルへ案内された。


 ――なんか、すっごいおしゃれなお店に来ちゃった……


 僕は店内を見回して、思わず息をのむ。


 大開口のガラス張りに、吹き抜けの天井。見上げると青空が見えて、陽光が店内を明るく照らしている。


 広々としたオープンキッチンでは、シェフが腕を振るう姿も見える。美しく盛り付けられた料理がカウンターに並べられ、ウェイターが手際よく運んでいた。


「お昼を食べてから行こう」と言われたので、てっきりチェーン店でさっと食べるのかと思っていた。チェーン店どころか、なにかの記念日でしか行かないようなお店じゃないか。


 ――湊、よくこんなお店を知ってるなあ……。っていうか僕、完全に場違いじゃ……


 すっかり気後れしてしまって、手元のメニュー表に視線を移す。しかしそこには、衝撃的な数字が並んでいた。


 ――高っ!?


 大げさではなく、桁が一つ多い。僕の財布には、到底ランチ代を払えるほどのお金は入っていない。


 どうしよう、と頭が真っ白になった。


「渉。この店、パスタが本当に美味しいんだよ。あとデザートはティラミスがおすすめなんだけど、この後コラボカフェがあるから、あんまり食べ過ぎないほうがいいかな」


 湊は楽しそうな声色で、満面の笑みを浮かべた。

 僕は罪悪感に苛まれながらも、そっと口を開く。


「あ、あの……、湊。申し訳ないんだけど、僕、お金が……」

「ん? 気にしなくていいよ。最初から俺が出すつもりだったし」

「……えっ!?」


 思いのほか大きな声が出てしまい、すぐに口を噤む。しかし彼は一度小首を傾げて、当然のように言った。


「今日は俺が直前に付き合わせちゃったから、お詫びにご馳走しようと思ってたんだ。でも言い忘れちゃってたね」

「いや、でも……! さすがにこれは」

「そんなに慌てた顔しないで。俺が勝手にこの店を選んだだけなんだから。――あ、すみません」


 僕が言い返す暇もなく、湊はウェイターを呼びとめた。「なにがいい?」と聞かれ、流されるまま注文する。


 ――本当に、僕と同じ高校生なんだろうか。


 今更ながら、湊が御曹司だということを思い出した。もしかしたら、僕みたいな庶民とは金銭感覚が違うのかもしれない。


 けれどそうだとしても、僕が想像していた「友達」との外出と随分違う。

 おしゃれな高級ランチに行って、ご馳走までしてもらって。


 ――これじゃあまるで、「デート」みたいな……


 そう思い至った瞬間、はっと我に返った。


 ――僕はなにを考えてるんだ!


 湊は友達として僕を誘ってくれたのに、変なことを考えるなんて恥ずかしすぎる。


「渉、あんまりフレンチは好きじゃない……?」


 狼狽える僕を見て不安に思ったのか、湊は顔を覗き込む。僕は首を横に振って、「そんなことないよ」と否定した。


 彼は安心したように吐息を零して、柔らかな笑みを浮かべる。


「俺、駄目だなあ。渉と出かけられるのが嬉しくて、張り切りすぎちゃった」


 率直な言葉に、心臓が大きく跳ねた。一気に体温が上がり、頬が熱くなってくる。


 ——普通、友達相手にそんなこと言う!?  いや、僕が友達に慣れてなさすぎて、過剰にドキドキしてるだけ……?


 頭がこんがらがって、その場で固まってしまった。


 一息ついて、なんとか冷静になろうとする。


 ——きっと湊は、無自覚な人たらしなんだ。だからこれが、彼にとっての普通で、僕が特別なわけじゃなくて……


「お待たせいたしました。前菜とスープでございます」


 ぐるぐると考えている間に、料理が差し出された。


 僕は熱を冷ますように水を飲んでから、料理に口をつけ始めた。


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