第24話 評定
「神稲の徳次郎、およびその一味の者、面を上げぃ。」
徳次郎と神稲一家の配下達は南町奉行所のお白州にいた。
なお、小寺兵衛は幕臣としての身分が残っていたため評定所に送られている。
「関八州を股にかけ窃盗を繰り返すこと十余件、まことに許し難し。よって、市中引き回しの上、打ち首獄門を申し付ける。引っ立てい!」
一方的な評定の宣告を受けると、小伝馬町の牢屋敷に戻された。一同、言葉も出ない。
(長谷川様が罪一等を減じてくださるよ。)
捕らえられた際の密偵らしき男が放った言葉に一縷の望みを抱いていたが、十両の盗みで死罪となるのが相場のところ、六千両を筆頭に数々の窃盗を働いた自分達は十回死罪となっても足りやしないし、そもそも火盗に評定を下す権限はなく、評定を下すのは火盗に手柄を奪われて怒り心頭の町奉行なのだから、刑罰が重くなることはあっても減じることなどないのだ。
頭の徳次郎は目を瞑ったまま黙して語らない。
配下達は陰鬱とした表情で顔を見合わせるばかりだった。
翌日になって藤丸駕篭に乗せられたが、小伝馬町から小塚原の刑場など目と鼻の先であろうに駕篭に揺られている時間が妙に長い。
徳次郎らが首を傾げながら駕篭から降ろされた場所は、火盗改方役宅であった。
どういうことなのか理解が及ばず困惑しているところに平蔵が現れ、一同は平伏した。
「おう、市中引き回しの上に打ち首獄門だってなぁ。人は殺めず、火も付けないのに、かつての日本左衛門と肩を並べる極刑とは、お前さん方ァ随分と町方に憎まれてんなぁ。」
かっかっかと笑う平蔵を神稲一家の面々は睨みつけるも、徳次郎は殊勝な態度を崩さない。
「や、どうせなら私どもを捕らえた長谷川様のお裁きを受けたかったもので。」
「悪ィが、お前さん方には一度死んでもらうさ。じゃねえと六千両が使えねぇ。」
「そりゃ、どういうことで。」
「あの六千両はな、俺ら火盗に追い詰められたお前さん方が自棄になって幕張沖に捨てたってことになってんのさ。お前さん方が町方のメンツを潰しまくったこともあるんだが、六千両を取り戻せなかったことが極刑に至った一番の理由さね。」
「ちょ…、長谷川様、あの六千両は越後屋に戻されたんじゃねえのですかぇ?」
「六千両なら此処にあらぁ。」
平蔵が悪い顔をして座敷奥を指差すと、そこには千両箱が六箱、山積みにされて鎮座していた。
天明8年(1788年)
長谷川 平蔵 (43)
遠山 金四郎 (24)




