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Blue Blood Devil and the Black Rose Garden

「俺は魔族四天王直属、チョイツヨ! 伝説の装備を鍛え直そうとしていた様だが……遅かったなァ!」

 悪魔みたいなやつがあらわれた!

 

「遅いとはどういう事だ!」


「ギェヒェヒェヒェ…… アッッッッッッツアツ火山の力を目覚めさせる事ができるエルフの娘は……死んだ!」

 

「え?」

 アルワちゃんは気絶してるだけだけど。

 

「……」

 タイ・リョクが俺を見た。

 

 エルフの、娘……まさか。

 

「う、嘘だ……」

 

「ギェヒェヒェヒェ! 嘘なものか! 俺が殺したんだからなァ! 腹を一突きにしてやったわ!」

 

「この娘は……」

 ライ・バルが倒れたアルワちゃんを指差して口を開きかけたが、タイ・リョクが片腕を伸ばして制止し、その続きを言わせなかった。

 

「ロイン、ちゃん……?」

 

「ギェーッヒェヒェヒェ! お前らも殺してやるわ!」

 悪魔が笑う。


 あまりの事に、意識が軽く遠のいた。

 

 俺は突然この世界に転生させられて……初めて出会った彼女に、勇者としてこの世界に来たって言われて……気づけば周りの期待に流される様に、世界を救うための冒険をしていた。


 何もできなかった前の世界と違って、ここでは何度も人を助けてきた。

 

 転生する前のどうしようもない俺と違って、今の俺には勇者の力が与えられた。努力して得たものじゃないけど、誰にも負けない力。

 

 そんな力で世界を平和にして、俺はその後、ロインちゃんとふたり、仲良く平和に暮らすんだと勝手に思い込んでいた。流されるままに行動していたけど、きっとそうなるんだと思っていた。


 でも、そんな事は無かった。


 もっと、自分の意志で……彼女と言葉を交わして、仲を深めていけばよかった。モンスターを一撃で倒すパワーを突然手に入れて、いい気になっていた。変われたつもりでいた。


 でも、俺は何も変わってなかったんだ。突然現れた俺になんの疑いもなく好意を向けてくれた彼女に、俺からは何も応えてこなかった。何も努力しなかった。悔やんでも悔みきれない。


 死の後には、後悔しか残らない。


 自分を好いてくれる人を、あまりにもあっけなく失ってしまった。

 

「ロインちゃんを……殺して……どうしたんだ……」

 

「ギエッヒェヒェ! 腹をぶち抜いたあとは……あそこに放り投げてやったわ」

 悪魔がバラ園だった場所を指す。あの洞窟に行く前、魔族四天王と戦った庭は整備も間に合わないまま、無慈悲な炎によって焼き尽くされた。赤と緑の美しい庭園は見る影もなく、黒に染まっていた。

 

 でも、あの場所にロインちゃんの死体があったとして、それで……何になるんだ。もう、彼女と言葉を交わす事はできないんだ。

 

 どうして……どうして俺は……

 

「ギエッヒェヒェ! どうした勇者? 悔しいか! 二度と装備を鍛え直せなくなったからなぁ!」

 悪魔は嬉々として俺達の顔を順に見回しながら、高笑いをした。

 

「貴様……!」

 タイ・リョクが斧を構える。


「……」

 ライ・バルも剣を構えた。 

 

「ギェヒェヒェヒェ! 死ね……え?」

 

「もう黙れ」

 

「ギエッ⁉ いつの間に……ぐぇぇ……」

 俺は悪魔の喉を掴んで、力を込める。

 

「黙れ!」

 

 俺が思い切り握り締めた手は悪魔の頭と胴体を、一瞬で離れ離れにした。


 ごとり、と地面に悪魔の頭が落ちた。

 

 悪魔の胴体は力なく腕をだらりと下げたあと首から青い血を噴き出しながら、膝から崩れ落ちた。

 俺の顔が悪魔の血で真っ青に染まる。それと同時に俺の心も冷たく、青く染まっていく。

 

 声にならない叫びと共に、俺もその場に膝から崩折れた。

 

 つい先日まで赤と緑に彩られていた、黒焦げになったバラ園がパチパチと音を立て、俺達に死の臭いを届けていた。

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