『夢操の檻』カナン編 第6章:開戦(前編) ― 灼熱の世界、そして絶望の檻
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1.希望の夢と無慈悲な檻
総司令官ヴァルターの号令が無線を震わせた瞬間、世界の夜明けは「音」と「光」によって上書きされた。
ニューソウルから出航した数千隻の船団が、一斉に咆哮を上げたのだ。
ユーリたちが乗り込んだミサイル船も、船体を激しく軋ませながら六十四連装ミサイル砲を解き放つ。
四基のランチャーから吐き出された無数のミサイルが、白煙を引いて夜明けの空に巨大な放物線を描き、カナンの外海を埋め尽くす新政府の艦隊へと降り注いだ。
世界が、文字通り「燃えて」いた。空気が熱風となり肌を焼く。
新政府の白銀の艦隊も、すぐさま迎撃態勢に入る。海面から突き出すように配置された自動防衛レーザーが空を格子状に切り裂き、飛来する砲弾を次々と爆砕していく。
墜ちた火種が海面に花火のような水柱を上げ、逃げ場のない灼熱の渦を作り出していた。
「……これが、戦争なのか」
今までの小規模な小競り合いとはまるで違う。
ユーリは船の手すりを掴み、震える足でその光景を凝視していた。
かつて彼が見ていた「戦争」は、シティのスクリーンに映し出される清潔な戦果報告か、あるいは新政府軍の小さな舞台と繰り広げる泥まみれの小競り合い。
だが、目の前にあるのは、世界のすべてを焼き尽くさんとする夢と檻の衝突だ。
「ユーリ! 前だけ見てろ!」
ジンの怒鳴り声が飛ぶ。彼は操舵室で通信機を片手に、味方の船団との連携を必死に保っていた。
「能力部隊が出るぞ! 目を離すな、あいつらが本気で戦うのなんてもう絶対に見れなぃ……」
その直後だった。
連合軍の中央、最も強固な装甲を持つ巨大な旗艦の甲板から、幾筋もの「光」が飛び出した。 それは砲弾ではない。夢を具現化したかのような帯。
「……夢みたいだ」
ユーリは思わず呟いた。
一人の能力者が海面を指差すと、荒れる波が凍りつき、巨大な氷の橋がカナンに向かって真っ直ぐに伸びていく。
その上を、雷を纏った別の能力者が閃光を轟かせ走り抜ける。
炎を操る者が空を割り、突風がヘリを落とす。
神々しく、恐ろしいその輝きに、新政府の洗練された兵器たちが次々と沈黙していく。
だが、敵も黙ってはいない。
夢を覆い、閉じ込めようとする檻のように、無慈悲なレーザーが無数の戦艦を蒸発させる。
沈みゆく船から海へ飛び込み、泳いででもカナンへ近づこうとする兵士たち。
嘆く暇もなく進軍は続く。
「あのれは……! ロシアだ!」
カイトが指差した先――視力のない彼には、大気を震わせる巨大なエンジンの唸りが聞こえていた。
雲を割り、巨大な輸送機が低空でカナンの外壁に接近する。
ハッチが開いた瞬間、そこから「戦車」が降ってきた。
落下傘すら開かず、ただの鉄の塊となって落下する戦車。
戦車たちはカナンを取り囲む浅瀬の岩礁に、そして凍った海に着地した。 彼らはそのまま、海面に突き出た岩や氷をキャタピラで削りながら、要塞の壁へと突き進んでいった。
その背中を追うように、中国の小舟が数百、数千と海を埋め尽くす。 一隻が沈めば、二隻が。二隻が沈めば、四隻が。 圧倒的な物量が、新政府の迎撃速度を超えて壁へと迫る。
「俺たちも行くぞ! ハル、S-EINを起動させろ!」
「了解! みんな、目を覚ませ、僕たちの出番だ!」
ハルの叫びに呼応し、船倉に並んでいた二十三機のS-EINたちが一斉にカメラアイを赤く灯した。
ガシャン、ガシャンと、船体を揺らすほどの駆動音。
ユーリが破壊したあのテスト機も、今は装甲を強化され、最前列に並んでいる。
「……行くよ、みんな」
ユーリは混乱していた。しかし何故か自分は何をするべきなのか分かっている。
一同、白いマントを翻し、腰のワイヤーフックに手をかけた。
ご覧いただきありがとうございました!
ヴァルター総司令の号令とともに、ついに「カナン攻略戦」の火蓋が切って落とされました。
荒波を凍らせて突き進む能力者たち、空から容赦なく投げ込まれる重戦車、そして果てしない物量で迫る船団。
かつて新政府の綺麗なスクリーン越しにしか「戦争」を知らなかったユーリの目の前で、世界のすべてを焼き尽くすような本物の激闘が繰り広げられます。
そして船倉で静かに眠っていた23機のS-EINたちも、ハルの声に応えてカメラアイを赤く点滅させました。
継ぎ接ぎだらけのガラクタから生まれた仲間たちが、いよいよ要塞カナンへと牙を剥きます!
ここからさらに激しさを増すカナン攻略戦、ユーリたちがどのように戦場を駆け抜けるのか、ぜひ見届けていただけると嬉しいです!
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