『夢操の檻』 ユーリ編 第7章:亡霊の刃、真実の残光 第2話
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物語をお楽しみください。
3. 帰還、そして幼き日の「憧れ」への決別
帰りのヘリの機内。 奪取した医療道具や道具を抱えながら、ユーリは激しく波打つ心臓の音を聞いていた。
「やったな、坊っちゃん。あんな鮮やかな立ち回りは、アキト以来だぜ」
ジンが隣でパイプを燻らせ、満足げに笑った。
「……ありがとうございます。でも、まだまだです」
ユーリは、煤けたヘリの窓から、遠ざかるニューシティーの光を見つめた。
まるでさっきの戦闘などなかったかのような秩序を感じさせる風貌。 あの中には、かつての自分、デオ、そしてシルヴィアのような者たちが、今も「偽りの夢」を正義だと信じて戦っている。
(今の僕を見たら……レオンは、何を考えるだろう)
裏切り者。脱落者。システムのノイズ。
きっと、冷酷な蔑みを向けるに違いない。あるいは、それすらも「計算通りだ」と不敵に笑うのだろうか。
ユーリの脳裏には、初めて軍服に身を包んだ日にレオンと握手した時の感触が残っていた。 あの大きな手。
自分を導いてくれると信じて疑わなかった、強く温かな手。
「レオン上官……」 思わず、かつての呼び名が口を突いて出た。
今の自分には、怒りがある。
仲間を売ったことへの、激しい憤りがある。
だが、その根底には、まだ消し去れない「理由を聞きたい」という甘い願いが淀んでいた。 なぜ、あんなにも理想的な上官を演じる必要があったのか。 演じていなかったのか?
本当はこんなことしたくなかったのかも……
なぜ、旧政府の仲間を愛しているかのように振る舞いながら、彼らを地獄へ叩き落としたのか。
自分はまだ、レオンからの直接的な裏切りを経験したわけではない。
けれど、かつての部下を裏切るという痛みなら、今の僕には痛いほどわかる。
だからこそ思ってしまうんだ。僕みたいに、彼にも心を動かされる深い理由があったのではないか、と。
一回だけでいい。武器を置き、一人の人間として、彼の本心を問い詰めたい。
(……僕は、まだ子供なんだな)
ユーリは心の中で、自分を自嘲した。 戦い方を覚え、敵を倒し、仲間を救えるようになった。それでも、心の一部分は、まだレオンという「完璧な上官」の幻影を追い求めている。
「ユーリ、どうした? 浮かない顔して」
隣で、疲れ果てたマリアがユーリの肩に頭を預けてきた。
「……いえ。少し、昔のことを思い出していただけです」
「そう。……いい空ね。今夜は」
マリアが窓の外を指さした。
そこには、人工の光に汚されていない、深い、深い宇宙が広がっていた。
星々が輝き、吸い込まれていくような深い闇。
幼い頃、池のほとりで白鳥を見上げながら憧れた、あの自由な空。
今、自分はその空の下に立っている。
新政府が配る偽物の夢を捨て、痛みと血と、そして確かな「温もり」がある現実の中に。
ユーリは、アキトのナイフの柄を強く握りしめた。 次にレオンと会う時。 それは、言葉で語り合う時ではない。
このナイフで、彼が守る「偽りの夢」を切り裂き、その奥にある醜く歪んだ、あるいは悲しく切ない真実を暴き出す時だ。
ヘリは、夜の闇を切り裂き、孤島へと向かって高度を上げた。
かつての自分への決別。そして、まだ見ぬ「アキト」という少年の足跡を辿るための、新しい旅路が今、始まった。
『帰還、そして幼き日の「憧れ」への決別』をご覧いただきありがとうございました!
激しい潜入作戦を終え、孤島への帰路につくヘリの中で、ユーリの胸を去来するのは「レオン」という男の存在でした。
激しい怒りと同時に、かつて自分を導いてくれた「完璧な上官」への捨てきれない憧れ。自分自身が新政府を裏切り、泥を舐める道を選んだからこそ、レオンにも何か心を動かされる不可避な理由や、切ない真実があったのではないかと考えてしまうユーリ。
マリアの温もりに触れ、窓の外に広がる圧倒的な「本物の夜空」を見上げたとき、ユーリは自分の中の青くささと向き合い、静かに覚悟を固めます。
次に巡り合う時は、言葉ではなく、アキトのナイフで彼が掲げる「偽りの夢」を切り裂く時。
幼き日の白鳥が見た自由な空の下で、ユーリの新たな戦いがここから始まります!
ユーリ編の大きな節目となる今回のエピソード、彼が見上げた夜空の情景が少しでも皆さんに伝わっていたら嬉しいです。
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