『夢操の檻』 新政府軍 第1章:白亜の檻と、無垢なる狂信 第3話
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4. 汚れなき出陣と、白き正義の矛盾
数時間後、ニュー・プロビデンスの巨大な防壁のゲートが開いた。
先頭を走るのは、新政府の紋章が描かれた最新鋭のオフロードジープ。それに続く装甲車には、デオやシルヴィアを含む二十名の精鋭部隊、そしてケージに固定された十機の『EIN』が搭載されている。
目指すは北北西。テロリストの血と泥で汚された、ニューマザーズ近海。 車窓の外には、ホログラムの空が途切れ、どんよりとした雲と、荒涼とした大地が広がっていた。ユーリはその穢れた景色から目を逸らすように、レオンから手元のデータパッド送られた「追加指令」を見つめた。
『――進軍ルート上に存在する、夢の管理を拒む村落、および旅人については、速やかに処分、あるいは強制的に夢を付与し、最寄りの都市へ収容すること』
処分。強制。 その冷たい単語に、ユーリの心臓がほんの少しだけ嫌な音を立てた。 先ほどのレオンの悲痛な顔が思い浮かぶ。あれほど命を尊ぶ人が、なぜこのような非情な命令を下すのか。
「……合理的な判断です、分隊長」 ユーリの心情を察したのか、助手席のシルヴィアが冷淡な声で言った。 「管理を外れた野良の人間は、いずれテロリストに同調し、システムを破壊する『ノイズ』になります。ノイズは、増殖する前に消去するか、書き直さなければなりません」 「わかっているさ、シルヴィア」
ユーリは無理やり笑顔を作り、窓の外へ視線を投げた。 自分の手は汚れていない。自分が行うのは「救出」であり「保護」なのだ。あの可哀想なアキトという少年を、血塗られた現実から救い出し、永遠に続く幸福な夢の中へ還してあげること。それこそが疑いようのない「正義」なのだと、ユーリは強く、強く自分に言い聞かせた。
白亜の車列は、排気音すら立てずに、死の臭いが立ち込める荒野へと進んでいった。 その先に、己の信念を根底から砕く存在が待ち受けていることなど、彼はまだ想像すらしていなかった。




