『夢操の檻』 新政府軍 第1章:白亜の檻と、無垢なる狂信 第2話
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3. 英雄の素顔と、造られた「悪」
ホワイト・アイズ本部、最上階のブリーフィング・ルーム。 そこには、ユーリの専属の部下である二人の姿があった。
「遅いぞ、ユーリ。若いくせに血の巡りが悪いんじゃないのか?」 腕を組み、重厚な声で皮肉を言うのは、デオ。白髪交じりの短髪と、分厚い筋肉に覆われた歴戦の老人だ。彼の体には雑兵時代に負った無数の傷跡があり、部隊の「盾」として彼以上の適任者はいない。
「分隊長の到着時刻は、規定のミーティング開始一分前。遅刻ではありません、デオ」 冷たい声で訂正したのは、若い女性副官のシルヴィアだ。
彼女は手元のデータパッドから目を離すことなく、一切の感情を排した合理的な思考で部隊の頭脳を担っている。
「二人とも、おはよう。今日もニュー・プロビデンスは美しいね」 ユーリが微笑みかけたその時、部屋の自動ドアが開き、一人の男が入ってきた。
レオン。
ユーリたちの上官であり、新政府の英雄。敵地への潜入捜査を自ら買って出て、数え切れないほどの市民を旧政府の暴力から救い出してきた伝説の男。 ユーリにとって、レオンは理想の体現者だった。
「休め。……急な呼び出しですまない、ユーリ」 レオンは深く椅子に腰掛けると、疲労の滲む、しかし慈愛に満ちた声で口を開いた。
彼の手首には、いつもと変わらぬハンドバンドが巻かれている。
「先日、南方の拠点『ニューマザーズ』が、旧政府のテロリストどもに半壊させられた。いや、指揮官として半壊させてしまった…」 ユーリは思わず身を乗り出した。レオンが潜入スパイとして敵指揮官になり、現地で味方の部隊を犠牲にしたという噂は耳にしていた。
だが、それはきっと、より多くの市民を救うための、苦渋の「合理的な決断」だったに違いない。ユーリはそう自分を納得させていた。
「私の責任だ。……そして今日、君たちを呼んだのは他でもない。上からある一人の少年の救出を頼まれたんだが、私は多用があってな。そこで君に頼む。」
レオンはモニターに、一枚の写真を映し出した。
「彼の名はアキト。旧政府の狂信的な集団に拉致され、非人道的な『改造』を施された哀れな被害者だ。テロリストどもは、彼のような子供を洗脳し、兵器として使っている」 レオンの瞳には、深く、痛切なしかしどこか偽っているような悲しみが宿っていた。
「彼を救い出してほしい。これ以上、無垢な子供が旧時代の暴力に晒されるのを見過ごすわけにはいかない」
レオンの瞳の奥の違和感も忘れ、ユーリの胸の奥で、純白の炎が燃え上がった。 子供をさらい、改造し、洗脳して戦場に立たせる。旧政府とは、そこまで腐り果てた悪魔の集団なのか。
「……承知いたしました、レオン司令。このユーリの命に代えても、必ずその少年を救い出し、正しい『夢』の中へお連れします」 ユーリの敬礼に、レオンは優しく微笑んで頷いた。




