『夢操の檻』 第五部:灰の目覚めと鋼の沈黙 第2話
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4. 案内人と不吉な紋章
アキトが泣き止み、荒い呼吸を整えるのを待って、男は顔を上げた。 そこには、先ほどまでの冷徹な兵士の仮面が再び貼り付けられていた。
「……行くぞ。いつまでもここにいても、世界は変わらん。変えられん…………」
男は短くそう言い、入り口の方へ歩き出した。 「俺はレオン。このチームの『リーダー』だ。……ついてこい。お前の牙を研ぐ場所を教えてやる」
アキトはふらつきながら、レオンの背中を追った。 重い扉が開き、廊下に出る。 その時、レオンが扉を押さえるために上げた左手。 そこに巻かれたハンドバンドの幾何学模様が、廊下の非常灯に照らされて鈍く光った。
アキトはその模様に、どこか見覚えがあるような気がして、視線を止めた。 リナが最後に見せた、瞳の中のスクロールノイズ。その奥に一瞬だけ現れた、その紋章によく似ていたのだ。
だが、アキトはその疑念を、胸の奥に押し込んだ。 今の自分には、この男を信じる以外に、手段はないのだから。
「……レオン。一つだけ、教えてくれ」 前を歩くレオンが、足を止めずに答える。 「何だ」 「あんたの『夢』は、何だ?」
レオンは一瞬だけ、足を止めた。 「……忘れた。そんなものは、とっくの昔に、この手で握りつぶしたよ。ただ、今は……いや、何でもない。忘れてくれ。」
レオンは再び歩き出し、アキトを基地の喧騒へと導いていった。 背後に残されたのは、血と涙で汚れた小さな個室。 そしてアキトの右手には、リナの最期の温もりが、呪いのように深く刻み込まれていた。
レオンの背中は、まるで動く鉄壁のように揺るぎない。彼が歩くたび、ブーツがコンクリートを叩く乾燥した音が、湿った廊下に反響する。アキトはその背中を、リナの最期のぬくもりが残る右手で強く服を掴むようにして追った。
扉を抜けるたび、空気の色が変わっていく。 無機質な静寂から、油の匂い、金属がぶつかり合う音、そして何より、ニューソウルには存在しなかった「不快で、けれど生々しい人間の気配」がアキトの鼻腔を突いた。
「……ここから先が、お前の地獄だ。」 レオンが足を止めたのは、巨大な地下貯水槽を改造したとおぼしき、広大な吹き抜けの空間だった。
ご覧いただきありがとうございました。
チームのリーダー・レオンの名前、そして彼の口から語られる「夢を握りつぶした」という過去。ただの冷徹な指揮官ではない、彼の背負うものの重さが短い言葉の端々から伝わってくる回でした。
そして……レオンのハンドバンドに刻まれた幾何学模様。
リナが最期に見せた、瞳の奥のスクロールノイズ。
この二つの『不吉な紋章』が意味するものとは一体何なのか。アキトが胸の奥に押し込んだ疑念は、これからの運命にどう影を落としていくのか……。
リナの最期のぬくもりを右手に宿したまま、アキトは「生々しい人間の気配」が満ちる巨大な地下空間へと進みます。
「ここから先が、お前の地獄だ」
レオンの言葉とともに、物語は次回、待望の新章(レジスタンス修行・バトル編)へ突入します!
「レオンがカッコよすぎる!」「ハンドバンドはいったい何なのか、、、」と思ってくださった方は、ぜひ下方の【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)】で応援していただけると、新章を執筆する凄まじい爆速エネルギーになります!
動き出すアキトの運命を、次回もどうぞお楽しみに!




