15 竜士育成専門学校 エレンとの交わり
二人はベッドに横になって抱き合った。
「こんな事してても嫌じゃ無い。僕は悪い子だな、先輩と同じだ」ルザロワは顔を顰めた。
「ルザロワは余裕だな」
エレンは額にねっとりとキスをした。
「悪い子でも俺は嬉しくて堪らないよ。漸く受け入れて貰えた」
「単なる気紛れかもしれませんよ?」
「気紛れでも、ミカエルの代わりでもいいさ。ここから出るまでに、そんな考え消してやる」
ルザロワがエレンのキスを受け入れると、服を脱がせにかかった。
「初めてなので、優しくしてください」と慌てて言った。
「なんだ、ミカエルとはヤってないのか?」
「うん、最後までは、私が気が進まなくて」
「それは上々」
ルザロワはエレンに両手を伸ばすと身体を近づけてきたので抱きしめた。
「好きだ、ルザロワ。ずっと好きだった」エレンが耳元で呟いた。
「え、今更?」
エレンは身体を少し起こすとルザロワを見下ろした。
「ちゃんと言ってなかったな。初めて見た時から惹かれてた。いつも身体の関係から始まってたから、純情そうなお前をどうやって堕とせばいいかわからなかった」
「そうでしたか、さすが先輩」ルザロワは納得した。
「エレン、僕は、よくわからない。少なくても嫌いじゃ無かったです」
「それなら良かった。好きにさせる努力をしてみる」
「俺のこと好きか?」
「え?」
「俺はルザロワが好きだ。お前は?」
「エレン、好き、あなたが好き」
「ホントか?」
「おーい、ルザロワ、帰らないのか?」
「帰る…」ルザロワは言ったが動かなかった。
「ルザロワ?」
「動けません」
「おいおい」
「本当に、動けません。無理。でもトイレ行きたい」
ルザロワは勢い良く起き上がったが、途端に「痛たたたっ」と腰を押さえた。
「どこかの色欲魔人のせいだ」ぶつぶつ文句を言う。
「悪かったな。もう一回やったら慣れて治るかもよ」
「そんなわけ無いでしょう⁈」
「仕方無いな」
エレンはルザロワを抱えるとすぐそこのトイレまで運んでやった。
ルザロワはやっとベッドまで戻ってきて仰向けに寝転がると、エレンが寄ってきた。
「もう少ししたら、帰りますから、え?」
「やっぱり、もう一回」
「⁈」
「もう駄目、本当にダメ、限界超えた。私のバカ!どうして身体を許してしまったのでしょう」
最後に責められて動けなくなったルザロワは半泣きになった。
「明日は小レースあるのに、鞍に乗れるでしょうか?いや無理」
「クッションでも挟んでおけばいいだろ、ほら、シャワー浴びろ。早くしないとまた門が閉まるぞ」
「わかってますって!」
渋々起き上がるとフラフラと覚束無い足取りでシャワーをしに行った。
遊び人を舐めてた。ルザロワはぐったりしながらシャワーを浴びた。
体力は有る方だが、それより刺激が強過ぎた。
「好きにさせる方法がこれですか?短絡的でしょう!言わされてしまったけど」
エレンの思惑通りなのに、それより自身の単純さに呆れる。
ミカと完全に別れた訳でも無いのに、遊び人のエレンと寝てしまった。ミカならルザロワが引っかかって遊ばれた、と両方を責めるんだろうな。
シャワーを浴び終えると、心身共に案外スッキリしているのに気付いた。心のモヤモヤは何処かに行ったようだ。
かなり強引だったがミカの事は一区切りついた。
浴室から出るとエレンが身体を拭いてくれて、服を着るのを手伝ってくれた。
恥ずかしかったが、エレンの自分を見る目が格段に甘くなっていたせいでもある。
エレンは学校まで送ると言ったが、ミカが待ち構えてるかもしれないので断った。巻き込んではいけないと思ったからだ。
「次はいつ会えるか、わからないからまた手紙書くよ」
私もなるべく書きます、と言ってエレンの熱い抱擁とキスで別れを告げた。
夕飯前ギリギリに帰って来て、食べた後は眠くてベッドに横になったらすぐに寝てしまった。どうせあちこちにキスマークが付いているので、人がいる時はシャワーできない。
勉強…明日にします。心の中で誰かに言い訳していた。
次の日のレースの時は小さいクッションを借りて鞍と尻の間に挟んだ。お腹の調子が悪くて、と言い訳しながら。
空は晴れ渡り、遠くの地平線まで見えた。
一位を保っていたルザロワは周りの景色を楽しむ余裕さえあった。
こんなに心が軽くなったのは久しぶりな気がする。
ミカは相変わらず口をきいてくれないので、手紙にミカの束縛が嫌になったから別れる事と、エレンと付き合うと書いてミカの机の上に置いた。
その日の夜、勉強してるとミカから声をかけられた。
二人で小会議室へ行く。4、5人用の部屋で部屋の真ん中にテーブルがあり、囲むように椅子がある。
本当に重要な会議のような雰囲気になる。二年生で入学式の打ち合わせで使って以来だ。
「手紙読んだ。僕と別れて、エレンと付き合いたいと?」
「微妙に違います。ミカとは別れて、エレンと付き合う事にしたって書きました。エレンの気持ちもちゃんと確かめた」
「また、僕に黙って」
「ミカが、話を聞いてくれませんでした!君もパートナーを見つけたようですし、これで終わりです。二股はしたくもされたくも無い」
「彼は単なる後輩だ。ルザロワと別れたつもりはなかった。君がどれだけ僕に誠意を見せてくれるか試してたんだ」
「試す?その上から目線が嫌になったのです!ミカに叩かれた時目が覚めた。僕は暴力や束縛されるのも嫌いだし、もう我慢できなくなった。良い機会だった」
「それなら、言ってくれれば」
「私はミカが大好きでした。結婚したいとまで思っていました。別れるきっかけを作ったのは私だけど、もう、ミカに付いていけません。エレンが居なくても、ミカとはダメになってました」
「結婚まで考えてたんなら、またやり直そうよ。今度は上手くやるよ」
「もう、いいのです、ミカ。冷めてしまった。話す事は私からは以上です。今迄ありがとう。帰っていい?」
ミカは黙り込んだ。
いたたまれなくなったルザロワは椅子から立ち上がると「帰るね、おやすみ」と言って会議室を出た。
もっと取り縋るかと思っていたから、拍子抜けした。エレンに報告しようと文面を考えていたら、走ってくる音がしたので、振り返った。
「ルザロワ!」息を切らしてミカが立ち止まった。
「恋人は駄目でも、友達としてなら、やり直せないかな?このまま卒業は寂しいよ」
ルザロワは涙が出てきて、思わず手を差し出した。
「そうだね、私にとってミカは初めての大事な友達。私もまた、ミカと仲良くしたいです」
ミカも恐る恐る手を伸ばし、二人は握手した。
ミカと別れたから、これからよろしくと手紙を送ったら、今度の休みに会いたいと2週間後の休日を指定してきた。
「休み取りにくいんじゃなかったのか?」
不思議に思ったが、同僚にシフトを代わってもらったそうだ。
今回も昼食を一緒に食べて、その後宝石店に連れて行かれ、お互いの目の色の石のついたイヤーカフとピアスを買ってもらった。
ピアスは一つずつお互いの色を交換して、ルザロワにはピアスホールが無いので、その場で針を刺して開けられてしまった。
「痛いです〜ジンジンします〜」
「すぐ治まるって!」
半泣きのルザロワと共に、連れ込み宿に入った。
文句を言うルザロワを、エレンはベッドの中で甘やかして、やっと機嫌を直させた。
抱きついてきたルザロワの背中を撫でながら言った。
結局ルザロワは疲れ果てて、場所を変えて普通の宿に一泊していく羽目になった。




