高野豆腐
誤算だった。
これさえあれば手軽に飢えを凌げる万能食材だと思っていたのだが…
栄養価も保存性も最高峰。
取得価格も極めて廉価だった。
『はぁ。』
思わずため息を吐く。
どうやら俺は高野豆腐が嫌いならしい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「やっほー♪
圭ちゃーん、遊びに来たでー♥」
「圭介さん、こんにちわー♥
途中で飲み物とヤングマガジンを買って参りました♥」
『おーう、2人共いらっしゃーい。
今日は配達終わったから、のんびりしていきな。』
「お!
料理?
今日は何を作ってるんや?」
「わぁ♥
*良いタイミングです♥」
*嘘です、この人達は料理の完成時間を精密に計算して来訪しています。
『うん、今日は高野豆腐でアレコレ試行錯誤していてな。
今、2人の皿も用意するよ…』
「「…。」」
あ、高野豆腐と聞いた瞬間に笑顔が硬直した。
「「(ニコッ)」」
『えっと、俺が考えたバリエーションなんだけどさ…』
「ドカちゃんって、やよい軒はまだやったか?」
「そうなんですよー。
おかわり自由って聞いて、かなり気になってるんですけど。」
「ほな、圭ちゃん。
ウチら晩飯食ってくるわ。」
「ワタクシのストロングゼロも残しておいて下さいね♪」
『いや、あの。』
(ドアバタン)
まぁな、俺がオマエらでも同じ選択したと思うわ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
食べ物なんて所詮は好き嫌いなので、旨い不味いは、どこまで行っても主観に過ぎない。
そして高野豆腐は俺の主観ではマズい。
『これの旨い喰い方をマスターすれば、エンゲル係数を抑制出来ると思ったんだがなぁ。』
豆腐が好物なので、当初の俺は高野豆腐開拓も余裕だと思っていた。
だが、当たり前だが豆腐と高野豆腐は全く別の食べ物であり、特にその食感の違いは俺を激しく絶望させた。
…クニュクニュしてて好きじゃない。
でも、余ってるし。
色々試さなきゃだなぁ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【第1ラウンド カップラーメン】
高野豆腐をラーメンに入れて食べるライフハックの噂は以前から聞いていた。
まぁ、乾燥食材同士だし相性は良いか…
そう思い、大量のお湯を沸かし味噌・豚骨・醤油の3つの味のカップ麺に高野豆腐を入れて食べてみる。
『…クニュクニュ。
うーん、満腹中枢は刺激してくれるんだろうけど、貴重な胃袋スペースを高野豆腐に割くと損した気分になるんだよな。』
期待していた豚骨との組み合わせは俺の好きな味ではなく、醤油と味噌なら、まぁ何とか我慢は出来るかなー?
という感想。
『うーん、カップラーメンの補強としては、ナシよりのアリかなぁ。
でも、俺。
そもそもカップラーメンってあんまり食わないからな。』
理由は分かっている。
俺の食生活はコメを主軸に据えているし、塩っ辛い御飯の友は大量にストックしている。
だから、カップラーメンは生活に入ってくる余地が無いんだよなぁ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【第2ラウンド ポタージュスープ】
ポタージュは俺の好物である。
ホームベーカリーで焼いたパンをポタージュに浸して食べるのは好きだ。
なので、同じ要領で高野豆腐をレトルトポタージュに浸してみる。
『うーん。
腹は膨れるんだけど…
食感が致命的になぁ。』
ぶっちゃけ、歯応えが邪魔だ。
ポタージュの風味を明らかに損なっている。
試しに余ったパンを浸して食べると美味しかったので、やはり組み合わせが悪いのだろう。
頭を抱えていると、久井から画像が送られてくる。
やよい軒の冷や奴を片手に横ピ。
…煽りおるわ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【第3ラウンド 肉吸い】
俺、めんつゆに豆腐・豚こま・ほうれん草を放り込んで鍋的な1品を作る事が多いのね。
1000円以内でボリュームが出せるレシピなので愛用している。
このレシピの豆腐を高野に置き換えたらと言う発想。
いや、分かってるよ。
どうせ口には合わない。
それでもね?
常にレシピを開拓しなきゃ、エンゲル係数がヤバい事になってるからね。
『うーん、前の2つよりマシだけど…』
これはまだ食べれた。
『問題は豆腐を普通に食いたい点なんだよな。』
食材として豆腐は安い上に、近所に幾らでも売ってる店がある。
というより、配達員の俺は最終配達が終わってから帰るまでに、どこかで生鮮を購入可能。
つまり、わざわざ代用品を使う理由がない。
このレシピを作るなら、どのみち豚肉やほうれん草を購入するのだが、その際に豆腐もついでに買えば良いだけなのだ。
生活サイクル的にも高野豆腐は不要。
『うーん。』
久井の買ってきたストゼロをプシュッと開けて思考タイム。
『酒のツマミに高野豆腐って話も聞かないしなぁ。』
どこの居酒屋に行っても冷奴は定番だが、高野豆腐なんて見た事がない。
もしも酒と高野豆腐の相性が良いのなら、とっくに居酒屋の定番メニューになってる筈だ。
そうなっていないと言う事は…
『合わねーんだろうな。』
ヤケになり、高野豆腐をそのまま齧ろうとするも、堅くて歯が立たない。
『うーーん、この…』
もはや、意地である。
この高野豆腐を消化しないと負けた気がする。
それは耐えられない。
何としても、食べられる方法を編み出さねば。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【インターバル エアフライヤー】
ヤケになって、エアフライヤーに放り込む。
いや、勿論自分でも分かってるよ?
水分で戻す食品に熱風を当てた所で意味が無いと。
でも、嫌いな食べ物に手間をこれ以上掛けたく無かった。
200℃設定で3分加熱。
多少は柔らかくなったので醤油を掛けて泣きながら食べる。
当然、マズい。
『高野豆腐は諦めるか…
普通に飯を炊いて梅干しで食おう。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
精も根も尽き果てた俺は、何気なく炊飯器にコメをセットし、炊飯ボタンを押そうとする。
『…手ぶらじゃぁ、終われねぇよな。』
【最終ラウンド カオマンガイ式】
高野豆腐を1つだけ炊飯釜に放り込んで、早炊きボタンON。
俺、鶏肉が安い日は《なんちゃってカオマンガイ》を作る事もあるからな。
その要領で高野豆腐も可食状態に持っていける予想はあった。
但し、否が応でも味にも想像がついてしまう。
「圭ちゃん、ただいまー。」
「ただいま戻りました。」
『おかえりー。』
やよい軒でお代わりを繰り返した2人は、その所為でご飯切れを引き起こしてしまい、他の客に怒られたので退店して来たとのこと。
俺も人の事は言えないが、この2人って地味に迷惑客だよな。
PiPiPi♪
「お!
ご飯炊いてくれたんか?」
「流石圭介さん!
ワタクシの空腹を計算に入れて下さったのですね♥」
俺が無言で蓋を開けると2人が覗き込んで来る。
「「カオマンガイ♥」」
残念ながら鶏肉ではなく高野豆腐であると告げると、2人は勝手に梅干しや食べるラー油を準備し始めた。
あれ?
コイツらって、食い過ぎてやよい軒を追い出されたんじゃ…
『「「いただきまーす。」」』
2人は幸せそうな顔で俺が炊いた飯を貪り、俺は釜から取り出した高野豆腐を麺つゆに浸して囓る。
うむ、程よく戻っている!
しかも炊飯のついでだから、全く手間もかからなかった!
『モグモグ。』
だが、俺の好きな味では無かったので、コンビニで豆腐を買って口直しした。
『旨いッ!』
飲みかけのストロングゼロにも合うし、豆腐ほど優れた食材は無いと確信した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
高野豆腐は今でも棚に置いてある。
自分では頑張って食べているつもりなのだが、減る気配は未だ無い。
to be next dish ⇒
【名前】
円蹴圭介
【所持品】
ジェッター BE-ELHC 2022年モデル 27インチ・サンゴールド (Panasonic)
丸型七輪 (富士見産業)
業務用フライヤー10リットル (DIY HOME)
業務用寸胴8.3リットル (赤川器物製作所)
1升炊き炊飯器 (象印マホービン)
ドカベン (ドカベンより寄贈)
2斤ホームベーカリーSD-BMT2000 (Panasonic)
足付きスモーカーグリル (SUNLIFER)
5段型プランターセット×2 (GARDENA)
ノンフライオーブン14リットル (EPEIOS)
【贔屓力士】
阿倍野嵐 笑太郎




