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第三十二話:緊急スクランブルと、響き渡る猫語

タイムリミットまで、あとわずか。

判明したトンデモ副作用から学園を守るため、アイラたち生徒会が一致団結!


隔離結界、解毒薬の特急錬成、そして全校を巻き込む大規模な「偽装アトラクション作戦」がスタートします。

時計塔の鐘が鳴り響いた瞬間、校内にこだまする無数の奇声とは――!?


スピード感全開の第32話、どうぞお楽しみください!


オカルト部の目を盗み、旧校舎裏の物陰に身を潜める生徒会一同。

リサが奪い取った『漆黒の禁忌調合法(中二病ノート)』を高速でめくり、眼鏡の奥の瞳を険しく光らせる。

「……成分と魔導配列の解析、完了しました。結論から申し上げますと、極めて悪質かつ破滅的な代物です」

リサが淡々と、しかし恐ろしい内容を読み上げる。

「初期段階……飲用直後から30分は、軽度の魔力活性と興奮、万能感が得られます」

「第二段階……30分経過後から約2時間で中枢神経の退行が見られます。言語機能が退化し、語尾が全て〜ニャ」「〜ニャン」に固定されます」

「次に異常な身体能力の覚醒。本能の抑制が外れ、校舎の壁や木々を素手で軽々とよじ登り始めます」

「最後に感情の暴走、好意や愛情のブレーキが完全に外れ、近くの人間へ怪力で抱きつき熱烈な愛を叫びます」

タクトが冷静に言う。

「……ただの暴徒化より質が悪いですね。尊厳の破壊力が尋常じゃない」

ノアはオカルト部の売上帳と端末データを照合して言う。

「旧校舎前の行列の捌け具合から逆算して、既に飲用した生徒は推定120名超え。しかも一般生徒だけでなく、運動部のエースや風紀委員まで含まれてます」

私は驚いて声を上げる。

「120人以上の生徒が、学園祭の真っ只中に猫語で壁をよじ登りながら愛を叫び散らかす……!? そ、そんなの大惨事どころの騒ぎじゃないわよ!」

トドメを刺されたセリアが、膝から崩れ落ちて地面に両手をつく。

「う、嘘よ……わたくし、当時は『真なる獣の魂を宿し、漆黒の夜を駆け抜ける禁術』のつもりで書いただけですのに……ッ!」

普段の気品が完全に消失し、恥ずかしさと絶望で耳まで真っ赤にするセリア。


セリアは地面に手をついたまま、真っ赤な顔で震えている。

「終わりですわ……! わたくしの華麗なる学園生活も、最上級生としての威厳も、すべてがこの一冊の黒歴史ノートと共に灰燼に帰すのです……!」

「『あいつ、中学時代に猫語で壁登るポーション開発してたんだぜ』なんて社交界で噂されたら、修道院へ出家するしかありませんわ……!」

と、普段の冷静沈着さが完全に消え失せてパニック状態だ。

そこへ、巡回用の腕章をつけたギルバートが

「アイラ、差し入れの焼き鳥だ」

と湯気を立てる紙袋を手にフラリと現れる。

そして至って真面目な顔で

「……む? どうしたのだ。セリア殿が床に突っ伏して嗚咽しているが」

と言うが、私はそんな場合じゃないので

「お兄様!? いま超非常事態だからあっち行ってて!」

と言う。

しかし状況を理解したギルバートは一切動じず、真剣な眼差しで腕を組む。

「……なるほど。生徒の暴動、あるいは当家の名誉に関わる不祥事の危機か。よし、アイラ、心配するな。被害者およびオカルト部員を含めた関係者百余名を、今すぐ公爵家の地下牢へ極秘裏に連行・隔離――」

「普通の学園祭で国家反乱レベルの隠蔽工作を始めないで!? 外の模擬店で焼きそばでも食べてて!!」

「……そうか。ならば外周で待機しよう。何かあれば一刀のもとに斬り伏せる」

ギルバートが真顔のまま素直に引き返し、学園祭の雑踏へ消えていく。

私は両手でパンッと自分の頬を叩き、しゃがみ込むセリアの前に跪いてその両肩を力強く掴む。

「セリア先輩、顔を上げてください! 先輩の威厳も、生徒たちの尊厳も、全部私たちが力づくで守ってみせます!」

リサも続けて言う。

「ええ。証拠の回収と隠滅はすでに完了しています。あとは被害の発生を力技で揉み消すのみです」

ノアも自信満々に言う。

「先輩の黒歴史は、僕たちが全力でアトラクションに偽装してみせますから!」

頼もしすぎる後輩たちの言葉に、セリアがハッと目を見張り、涙目を拭って立ち上がる。


兄様を焼きそば屋へ送り出し、セリアが立ち直ったところで、私は瞳に鋭い光を宿して全員を見回す。

「時間がないわ。発症まで残りあと十数分! 被害者を一人も出さず、セリア先輩の名誉を守り、かつ学園祭を中止に追い込まないための『特別作戦』を開始するわよ!」

会長の頼もしい声に、メンバー全員の表情がキリッと引き締まる。

私はセリアとノアに言う。

「セリア先輩はノアと一緒に本校舎の屋上へ! 屋上の超巨大実験鍋を使って、全校生徒分の『広域中和剤』を一刻も早く調合してください!」

セリアは涙目を拭い、調合師のキリッとした顔つきになる。

「……ええ、任せてちょうだい。生みの親としての責任、必ず果たしてみせますわ!」

そして私はリサに言う。

「リサは旧校舎の武道場に多重結界を展開。捕獲した生徒の一時収容スペースを作って!」

「了解です。外部への情報流出を防ぐため、結界に遮音・視覚遮断の術式も上乗せしておきます」

さらにノアとタクトにも指示をする。

「ノアとタクトは校内放送と通信網をハック。『生徒会主催のゲリラ型体験アトラクション』として全校にアナウンスを流し、一般客のパニックを防いで!」

「了解。外周と本校舎の境界線に立ち、暴走した生徒が一般客のいる模擬店エリアへ雪崩れ込まないよう壁を作ります」

その返事に頷いて最後に言う。

「私とセナで、発症した生徒を片っ端から気絶&捕獲して武道場へ放り込むわ!」

それぞれが担当の配置へ向かって一斉に駆け出す。

旧校舎裏から全員が散開し、時計塔の針がジリジリと運命のゼロへ向かって刻まれていく。


各自が持ち場へ散開した直後、学園の中央時計塔からボーン、ボーンと重厚な鐘の音が響き渡る。

飲用からちょうど30分が経過した合図だ。

校内を吹き抜ける風が一瞬ピタリと止まり、不気味なほどの静寂が訪れる。

静寂を破り、全校放送のスピーカーからノアの落ち着いた声がクリアに流れる。

『――生徒会より全校の皆様へお知らせです。ただいまより、学園祭ゲリライベント【リアル脱出・怪異パニック】を開始いたします。一部の生徒によるアクロバティックな演出がございますが、すべて安全基準を満たした正規の催しですので、どうぞご安心してお楽しみください』

一般の来場者や生徒たちが「おおっ、面白そうなイベント始まった!」「生徒会すごいな!」とワクワクしながら拍手を送る。

アナウンスとほぼ同時に、本校舎の窓や中庭のあちこちから、理性を失った生徒たちの奇声が一斉に爆発する。

「うおおおおニャーーーッ!!」「我が内に眠りし獣が目覚めたニャン!!」

窓枠を蹴り破らんばかりの勢いで外壁を素手でスイスイよじ登り始める陸上部員。

「愛してるニャアアア!」と叫びながら近くの看板を怪力で引っこ抜き、猛ダッシュで突撃してくる剣道部員。

まさに阿鼻叫喚の猫耳ならぬ猫語ゾンビパニック状態だ。

本校舎の中庭、殺到する暴走生徒たちの前に私が立ち塞がる。

手首の関節をポキリと鳴らし、不敵な笑みを浮かべて腕まくりをする。

「よし……! 先輩の威厳と学園の平和のため、全員まとめて『無傷で』気絶させてあげるわ! ――行くわよ、セナ、タクト!」

身体強化の魔力を全身に迸らせて踏み出す。


兄様 ギャグ枠 どうして 「検索」


四章はこんな感じでギャグです……セリアがね……可哀想だね……


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