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61話「四つ目の魔法と妖精スライムへの道」


 第九層から戻った翌日の午後。

 俺たちは探索者協会の従魔訓練室を訪れていた。


土水晶(ストーンクリスタル)の安全性に問題はありませんでした」


 高橋さんが、検査を終えた土水晶を机へ置く。


「魔導具の素材として利用できる点は、一般的な土水晶と変わりません。ただし、スライム系従魔の魔法習得を補助する効果については、今回も通常の『鑑定』では確認できませんでした」

「地脈の祠については、何か分かりましたか?」

「第九層の記録には存在しない場所でした。入口を覆っていた蔓も、周囲の景色へ溶け込む性質を持っています。映像がなければ、調査員も通り過ぎていたでしょう」


 風の流れへ気付いた美咲さんと、蔓を動かしたシズクがいなければ、俺も入口まで辿り着けなかったかもしれない。


「祠は協会で保護し、内部の調査を進めます。採取場所の公開については、調査が終わるまでお待ちください」

「分かりました」

「土水晶は、予定どおりシズクの訓練へ使用して構いません」


 高橋さんから土水晶を受け取る。

 隣にいたシズクが、三つ目となる魔法習得用の水晶を見上げた。


「ぷるっ!」

「今回は土属性だよ」


 美咲さんがシズクを訓練室の中央へ下ろす。

 正面には、従魔の魔法訓練に使う強化標的が設置されていた。


「シズク。最初から強く撃とうとしなくていいからね」

「ぷるっ」


「まずは、習得条件を調べてみるよ」


 シズクと土水晶へ意識を向け、『解析鑑定』を発動させた。



 ◇____________________


 『土属性魔法・習得訓練』


 『対象:シズク』

 『使用素材:土水晶』


 『習得可能魔法』

 ・石弾(ストーンバレット)


 『習得条件』

 ・土水晶を体内へ取り込む

 ・土属性魔力を体内へ循環

 ・石弾の魔力構築を3回成功させる


 『現在の達成状況:0/3』


 『推奨』

 ・初回出力:10%以下

 ・標的までの距離:5メートル


 ____________________◇



「今までと同じように、土水晶を身体の中へ入れるみたい」

「シズク、いい?」

「ぷるっ!」


 美咲さんが、土水晶をシズクの身体へ近付ける。

 シズクが身体を伸ばして触れると、土水晶が柔らかな身体の中へゆっくりと沈んでいった。


 体内へ収まった瞬間、水晶から茶色い光が流れ出す。

 透明感のある青い身体の中へ、土属性の魔力が少しずつ広がっていった。


「急がなくていいよ。身体の中で動いている魔力を感じて」

「ぷる……」


 シズクが集中するように身体を低くする。

 しばらくすると、正面へ淡い茶色の光が集まり始めた。


 小さな石の形になりかけたものの、輪郭が崩れる。細かな砂となって、シズクの前へ落ちてしまった。


「ぷる……」

「最初から成功しなくても大丈夫だよ」


 美咲さんが、落ち込んだように潰れたシズクを撫でる。


「魔力の形は作れていたよ。次は、飛ばす前にもう少し固めてみようか」

「ぷるっ」


 シズクが再び土属性の魔力を集める。

 今度は砂にならず、小指の先ほどの石が作り出された。


「そのまま、標的へ向けて」

「ぷるっ!」


 石が勢いよく飛び、強化標的へ当たる。

 乾いた音が訓練室へ響いた。



 ◇____________________


 『石弾の魔力構築:成功』

 『習得進行度:1/3』


 ____________________◇



「成功したよ」

「ぷるるっ!」


「あと二回だね。でも、少し休んでからにしよう」

「ぷるっ!」


 すぐに続けようとするシズクを、美咲さんが抱き上げる。


「休憩も訓練のうちだよ」

「ぷる……」


 魔力を補給するための従魔用ゼリーを渡されると、シズクは大人しく食べ始めた。



 ◇



 休憩を挟みながら訓練を続ける。

 二回目の石弾は、親指ほどの大きさになった。


 三回目。

 シズクの前へ、拳ほどの石が作り出される。

 表面には土属性の魔力が渦を巻き、最初の石弾とは比べものにならないほど密度が高い。


「シズク。標的の中央を狙って」

「ぷるっ!」


 石弾が放たれた。

 低い音を響かせながら真っ直ぐ飛び、強化標的の中央へ激突する。

 標的が大きく揺れ、表面へ細い亀裂が走った。



 ◇____________________


 『習得条件:達成』


 『石弾の魔力構築:3/3』


 『新規魔法を習得しました』


 『石弾(ストーンバレット)

 『属性:土』


 『効果』

 ・土属性魔力によって石弾を生成

 ・対象へ重量を伴う衝撃を与える

 ・硬質な外殻や装甲の破壊に有効

 ・魔力出力に応じて大きさと重量が変化


 ____________________◇


「石弾を覚えたよ」

「ぷるるっ!」


 シズクが嬉しそうに跳ねる。

 体内に入っていた土水晶が、柔らかな身体の表面へ浮かび上がった。


 シズクが身体を伸ばすと、土水晶が外へゆっくりと押し出される。

 美咲さんが落ちる前に受け止め、用意していた布で丁寧に包んだ。

 土水晶は形を保っているものの、先ほどまでより光が弱くなっていた。


「これで、四種類ですね」

「うん。風、火、氷、土だね」


 速さと押し戻す力を持つ風弾。

 爆発と熱を与える火球。

 対象を貫き、凍結させる氷槍。

 重い衝撃で硬い物を砕く石弾。


 それぞれ、得意とする相手が違う。


「覚えるだけではなく、状況に合わせて使い分けられるようにならないとね」

「ぷるっ!」


 訓練室へ、用途の異なる四つの標的を並べる。


 軽い標的には風弾。

 耐熱標的には火球。

 水を入れた訓練袋には氷槍。

 硬質標的には石弾。


 最初は属性を切り替えるたびに少し時間が掛かっていた。

 だが、何度か弱い出力で繰り返すうち、シズクは迷うことなく四種類の魔力を作れるようになった。



 ◇____________________


 『属性切替訓練』


 ・風属性:成功

 ・火属性:成功

 ・氷属性:成功

 ・土属性:成功


 『達成状況:4/4』


 『魔力操作:安定』


 『推奨』

 ・本日の魔法訓練を終了

 ・次回訓練まで十分な休息を取る


 ____________________◇



「今日はここまでだよ」

「ぷる……」


 まだ続けたそうにしているが、四種類の魔法を使ったばかりだ。


「次は実戦だねっ」

「ぷるっ!」


「新しい魔法を使いたいみたいです」

「使う必要がないくらい安全に終わるのが一番なんだけどね」

「そうですねっ」

「ぷる?」


 シズクは、納得できていないように身体を傾けていた。



 ◇



 二日後。

 俺たちは第九層の階層守護部屋へ続く扉の前に立っていた。

 シズクの魔力は完全に回復している。


 四属性の切り替えにも問題はない。


「この先が、第九層の階層守護個体ですね」

「うん。反応は一体だけみたい」


 扉へ『解析鑑定』を発動させる。



 ◇____________________


 『第9層・階層守護部屋』


 『階層守護個体:活動中』

 『挑戦可能人数:6名』


 『第10層転移門:封鎖中』

 『解放条件:階層守護個体の討伐』


 ____________________◇



「シズク。戦う時は、私たちの指示を待ってね」

「ぷるっ!」


「最初は俺が能力を調べるよ。無理に攻撃しないで、相手の動きを見よう」

「分かりました」


 美咲さんが剣を抜く。

 俺も鋼短剣を構え、扉の開閉石へ触れた。

 重い音を響かせながら、扉が左右へ開いていく。



 ◇



 扉の先には、薄暗い森が広がっていた。

 円形の広場を囲むように木々が並び、頭上を覆う枝葉の隙間から青白い光が差し込んでいる。


 広場の中央には、巨大な鹿が立っていた。

 体高は三メートル近い。


 黒に近い深緑色の身体を持ち、頭から伸びた大きな角には紫色の光が流れている。

 俺たちが広場へ入ると、背後の扉が閉まった。


 巨大な鹿がゆっくりと顔を上げる。

 紫色の瞳が、俺たちを捉えた。


 すぐに『解析鑑定』を発動させる。



 ◇____________________


 『幻角鹿王(ミラージュスタッグ)


 『階層守護個体』

 『危険度:C+』


 『特性』

 ・幻角投影

 ・森林同化

 ・群像突進


 『攻撃』

 ・角突き

 ・蹄撃

 ・幻像突進


 『ドロップ品』

 ・良質な魔核(100%)

 ・幻角鹿王の角(30%)

 ・幻惑皮(10%)


 ____________________◇



「角で幻影を作るみたいです!」

「来ます!」


 幻角鹿王が頭を振るう。

 大きな角から紫色の光が広がり、周囲の木々へ流れ込んだ。

 一体だった幻角鹿王の姿が、二体へ増える。


 さらに四体。

 最後には、八体の幻角鹿王が俺たちを囲んでいた。



 ◇____________________


 『幻角投影』


 『本体:1体』

 『幻像:7体』


 『注意』

 ・幻像に攻撃能力なし

 ・本体との交差時に位置を入れ替える

 ・幻角が存在する限り再生成可能


 ____________________◇



「本物は一体だけ! 残りは幻影だ!」

「本体の位置は分かりますか?」

「今は、右から二番目!」


 美咲さんが右へ身体を向ける。

 直後、八体の幻角鹿王が一斉に駆け出した。

 互いに交差し、木々の間を走り抜ける。


「本体が中央へ移動! いや、左に移動した!」


 解析表示は本体だけを追い続けている。

 だが、八体が何度も交差するため、位置が目まぐるしく変わっていた。


「左から来るよ!」


 美咲さんが剣を振るう。

 刃は幻角鹿王の身体を抵抗なく通り抜けた。


「くっ、解析鑑定が追いつけない!」


 紫色の光となって消えた直後、背後から本体が飛び掛かる。


「美咲さん、後ろ!」


 美咲さんが振り返り、盾を構えた。

 巨大な角と盾がぶつかる。


 美咲さんの身体が、地面を滑りながら大きく押し戻された。


「美咲さん!」

「大丈夫です!」


 すぐに立ち上がる。

 幻角鹿王は再び幻影の中へ紛れ、八体へ戻っていた。


「ごめん。位置を追えていたのに、攻撃の瞬間まで伝えられなかった」

「陸斗さんが謝ることではありません」


 美咲さんは、周囲を走る幻角鹿王たちから目を離さない。


「全部を一人で見ようとしないでください」

「でも、本体を見失ったら……」

「本体のいる方向だけ教えてください。攻撃の瞬間は、私が判断します」

「分かるの?」

「幻影には、足音がありません」


 耳を澄ませる。

 何体もの幻角鹿王が走っているように見える。

 だが、地面を叩く蹄の音は一つ分しか聞こえない。


「それに、本体が通った場所だけ草が倒れています」

「本当だ……」


 解析表示ばかり追っていて、周囲の変化に気付けていなかった。


「陸斗さんには、私に見えない本体の位置が分かります。私には、本体が攻撃へ移る瞬間が分かります」

「二人で見ればいいんだね」

「はい。いつもどおりです」


 美咲さんが僅かに笑う。


「シズクもいるよ」

「ぷるっ!」


 シズクが美咲さんの肩で身体を伸ばした。

 八体の幻角鹿王が、再び速度を上げる。


「本体は左奥!」

「分かりました!」


 美咲さんが左へ向く。

 幻影には反応せず、草が踏み倒される位置と蹄の音だけを追っている。


 幻角鹿王の本体が、正面から突進してくる。

 美咲さんは直前まで動かなかった。


 角が届く寸前、身体を横へ回す。

 巨大な身体が目の前を通り過ぎる。


 すれ違いざまに剣を振り、幻角鹿王の脇腹へ浅い傷を刻んだ。


「当たりました!」

「ぷるっ!」


 幻角鹿王が怒ったように鳴く。

 周囲の幻影が一斉に消え、別の場所へ八体の姿が作り直された。


「幻影を消し続けても、すぐに戻るみたい」

「やはり、あの角をどうにかする必要がありますね」


 俺は本体の角へ意識を集中させる。



 ◇____________________


 『幻角』


 『役割』

 ・幻像の生成

 ・幻像への魔力供給

 ・本体の魔力反応を幻像へ複製


 『防御特性』

 ・斬撃耐性

 ・刺突耐性


 『弱点』

 ・高密度の打撃

 ・土属性攻撃


 『破壊時』

 ・全ての幻像を解除

 ・幻角投影を使用不能


 ____________________◇



「角の弱点は、土属性です!」

「石弾なら壊せますか?」

「付け根へ当てれば、いけると思う!」


 美咲さんが、肩にいるシズクを見る。


「シズク。石弾で角の付け根を狙える?」

「ぷるっ!」


「陸斗さん。シズクへ本体の位置を教えてください。私が角を向けさせます」

「分かった」


 幻角鹿王が動き始める。


「本体は右奥。木の横を回ってくる!」


 美咲さんが広場の中央へ駆ける。

 幻角鹿王は狙いを彼女へ定め、頭を低くした。


「来るよ!」


 八体が、異なる方向から同時に美咲さんへ迫る。

 美咲さんは目を閉じることなく、蹄の音を聞き分けていた。


「右後ろ!」


 身体を反転させる。

 幻角鹿王の本体が、木々の間から飛び出した。


 美咲さんは盾を斜めに構え、角の先端を受け流す。

 幻角鹿王の頭が僅かに持ち上がった。


「シズク、左の角の付け根!」

「ぷるっ!」


 シズクの身体の前へ、茶色い魔力が集まる。

 訓練で作ったものよりも小さい。


 その分、魔力を強く圧縮した石弾だった。

 幻角鹿王が美咲さんを振り払おうとする。


「今です!」

「ぷるっ!」


 石弾が放たれた。

 重い音を響かせながら幻影の間を抜け、本体の角へ命中する。


 硬い物が砕ける音が、森へ響き渡った。

 幻角鹿王の左角が、付け根から折れる。


 周囲にいた七体の幻影へ亀裂が走り、紫色の粒子となって一斉に消滅した。


「幻影が消えました!」

「これなら、もう惑わされません!」


 幻角鹿王が激しく頭を振るう。

 魔力の流れを失った残りの角からも、紫色の光が消えていた。


 美咲さんが正面へ回る。

 幻角鹿王は片方だけになった角を向け、そのまま突進した。


「美咲さん、正面から来る!」

「見えています!」


 美咲さんは横へ避けながら、剣を振り下ろす。

 刃が前脚の付け根へ食い込み、幻角鹿王の巨体が傾いた。

 それでも倒れず、後ろ脚で地面を蹴ろうとする。


「シズク、前脚へ氷槍!」

「ぷるっ!」


 青白い魔力が集まり、細長い氷の槍が放たれる。

 傷付いた前脚へ突き刺さり、周囲の草ごと凍り付かせた。

 幻角鹿王が体勢を崩し、地面へ倒れる。


「美咲さん、胸の中央に魔核がある!」

「りょうかい!」


 美咲さんが踏み込む。

 一撃目で胸元を覆う毛皮を切り開き、続く二撃目で露出した魔核を貫いた。


 幻角鹿王の身体へ紫色の亀裂が走る。

 最後に大きく震えたあと、無数の粒子となって崩れていった。



 ◇____________________


 『第9層・階層守護個体』

 『討伐:完了』


 『第10層転移門:解放』


 ____________________◇



「倒せた……」


 俺は息を吐き、短剣を下ろす。


「陸斗さん、怪我はありませんか?」

「俺は大丈夫。美咲さんは?」

「盾で受けた時に腕が痺れましたが、怪我はありません」

「念のため、あとで確認するよ」


 シズクが美咲さんの肩から跳び下りる。


「ぷるるっ!」


「石弾、ちゃんと当たったね」

「ぷるっ!」


 シズクが誇らしそうに身体を伸ばす。


「氷槍も、いいタイミングだったよ」

「ぷるるっ!」


「褒められすぎて、いつもより伸びていますね」

「それくらい活躍してくれたからね」


 幻角鹿王が消えた場所には、良質な魔核と折れた角が残されていた。

 角へ『解析鑑定』を向ける。



 ◇____________________


 『幻角鹿王の角』


 『品質:A』

 『希少度:B』

 『推定買取価格:120,000円』


 『用途』

 ・幻影系魔導具の素材

 ・魔力投影装置の中核素材

 ・幻惑耐性装備の加工素材


 ____________________◇



「角もドロップしています。十二万円の素材です」

「三十パーセントを引いたんですね」

「うん。使い道も多いみたいだから、需要がありそうかな」


 良質な魔核と角を探索鞄へ収める。

 守護部屋の奥では、新たに解放された転移門が青白い光を放っていた。

 その周囲には、いくつもの丸い模様が刻まれている。


「次が、探索者協会で最後の階層とされている第十層ですね」

「うん。でも、今日は戻ろう。シズクも新しい魔法を使ったからね」

「ぷる……」


「第十層は逃げないから、しっかり休んでからにしよう」

「ぷるっ」


 俺たちは転移門の開放を記録し、地上へ戻ることにした。

 立ち去る前に、もう一度だけ転移門へ刻まれた模様を見る。


 第一層と第五層で、何度も目にしてきた丸い身体。

 それは、何体ものスライムを模した紋章だった。



 ◇



 地上へ帰還したあと。

 探索者ストアの休憩スペースで撮影した映像を確認していると、美咲さんが小さな声を上げた。


「陸斗さん。シズクの身体が……」


 隣を見る。

 美咲さんの膝に載っていたシズクの身体から、淡い光が漏れていた。


「ぷる?」


 シズク自身も気付いていないらしく、不思議そうに身体を傾ける。

 透明感のある身体の中央。


 そこにある従魔核が、赤、青、緑、茶色の光を順番に放っている。

 やがて四つの光が重なり、淡い虹色へ変化した。


「新しい魔法を覚えた影響かな?」

「痛がってはいません。でも、念のため調べてください」

「分かった」


 シズクの従魔核へ意識を集中させ、『解析鑑定』を発動させる。



 ◇____________________


 『個体名:シズク』


 『現在種族:魔法(マジック)スライム』


 『進化条件解放を確認』


 『進化候補』

 ・妖精(フェアリー)スライム


 『進化条件』

 ・四属性魔法を習得:4/4 達成


  風属性:習得済み

  火属性:習得済み

  氷属性:習得済み

  土属性:習得済み


 ・魔石結晶による強化:1/3


 ・魔力操作:中級

  現在段階:初級


 『進化可能:いいえ』


 『備考』

 ・魔石結晶による基礎魔力量の強化は、進化後も継承される


 ____________________◇



「妖精スライム……」


 表示された進化先を見て、思わず呟く。


「シズクが、また進化できるんですか?」

「うん。ただ、すぐに進化できるわけではないみたい」


 解析結果を、美咲さんへ説明する。


「四属性の習得は達成してる。あとは魔石結晶をあと二個使って、魔力操作を中級まで上げる必要があるよ」

「魔石スライムから手に入れた結晶ですね」

「うん。でも、滅多に現れない魔物だから、焦らずに探そう」

「そうですね。魔力操作なら、今からでも訓練できます」


 妖精スライムという言葉が気になったのか、店主さんもカウンターの奥からやってきた。


「妖精スライムだと?」

「シズクの新しい進化先みたいです」

「俺も名前くらいしか聞いたことがねえ。確認例がほとんどない、希少進化種だったはずだぞ」

「そんなに珍しいスライムなんですね……」


 美咲さんが、膝の上にいるシズクを見る。


「シズク。妖精スライムへ進化したい?」

「ぷる?」


 シズクには、まだよく分かっていないらしい。

 それでも、強くなれるという意味は伝わったのか、元気よく身体を伸ばした。


「ぷるっ!」


「それなら、少しずつ頑張ろうね」

「ぷるるっ!」


 シズクの周囲へ、風、火、氷、土の魔力が順番に浮かぶ。

 すぐに光は消えたものの、先ほどより切り替えが滑らかになっていた。


「もう訓練を始めてる……」

「今日は階層守護個体とも戦ったんだから、もう休もうね」

「ぷる……」


 美咲さんに止められ、シズクが残念そうに小さく縮む。


 第九層を突破し、第十層への転移門を開いた。


 さらに、四つ目の魔法を習得したことで、シズクの新たな進化条件まで解放された。


 妖精スライム。


 その進化へ辿り着くために何が必要なのか、俺たちにはもう見えていた。

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― 新着の感想 ―
この解析鑑定ってなんの犠牲も無く、制限も無いまま使えすぎやない? 彼の中で何があってこんな超絶能力使えるようになったとか明かされる時あるのかねぇ? あまりにも消耗無さすぎやない?
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