表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
43/59

43話「白銀王スライム」


 鏡から現れた六体の白銀王スライムが、俺たちを取り囲む。


 どれも同じ大きさ。

 身体の周囲には、銀色の結晶板が一枚ずつ浮かんでいた。


「また鏡像でしょうか?」

「調べます!」


 六体の白銀王スライムへ意識を集中させる。



 ◇____________________


 『白銀分裂』


 『本体:1体』

 『分身体:5体』


 『分身体の特性』

 ・物理干渉:可能

 ・攻撃能力:本体の40%

 ・破壊後の再生成時間:5秒


 『生成源』

 ・白銀王の結晶板


 ____________________◇



「先ほどの鏡像とは違います! 五体の分身体にも実体があります!」

「全部、攻撃してくるということですね!」


 六体の白銀王スライムが、同時に身体を変形させた。

 丸かった身体の一部が細長く伸び、白銀色の槍へ変わる。


「美咲さん、左から来ます!」


 美咲さんが盾を構える。

 三本の槍が、ほぼ同時に盾へ突き刺さった。

 衝撃を受けた美咲さんの身体が後方へ押される。


「っ……分身体でも、かなり重いです!」


 残る三体が、俺とシズクへ狙いを定めた。


「シズク、下がるぞ!」

「ぷるっ!」


 シズクと一緒に横へ走る。

 背後から迫った白銀色の槍が、直前まで立っていた床を貫いた。


 さらに別の分身体が進路を塞ぐ。

 羽靴で床を蹴り、その頭上を跳び越えた。


 着地した場所へ、別方向から槍が迫る。

 鋼短剣で受け流そうとするが、短剣一本で防げる太さではない。


「一城さん!」


 美咲さんが割って入り、槍を剣で弾いた。


「ありがとうございます!」

「私から離れ過ぎないでください!」

「はい!」


 白銀王スライムたちが一度距離を取る。

 直後、傷付いた分身体の姿が鏡の中へ消えた。


 五秒後。

 傷一つない状態で、再び鏡から現れる。


「普通に倒しても、すぐに復活するのは痛いな」

「原因は結晶板ですか?」

「はい。五枚が分身体を作り、残る一枚が本体を守っています」


 分身体を消すには、結晶板をどうにかしなければならない。

 だが、六枚の結晶板は白銀王スライムと共に動き続けている。


 美咲さんが一枚へ剣を振るう。

 刃が触れた瞬間、結晶板の表面が鏡のように輝いた。

 剣を振るった力がそのまま跳ね返され、美咲さんの腕が大きく弾かれる。


「攻撃が返ってきました!」

「反射障壁です!」


 俺は結晶板へ『解析鑑定』を発動させる。



 ◇____________________


 『反射障壁』


 『効果』

 ・物理攻撃を80%反射

 ・魔法攻撃を100%反射


 『結晶板:6枚』

 『障壁接続:正常』


 『一時停止条件』

 ・全ての結晶板へ3秒以内に同一の魔法を接触させる


 『停止時間:30秒』


 ____________________◇



「止める方法はあります! 六枚全てへ、三秒以内に同じ魔法を当てれば障壁が止まります!」

「六枚を三秒で……」


 美咲さんがシズクを見る。

 シズクが使える攻撃魔法は、風弾だけだ。

 しかも、魔力残量を考えれば使えるのは一回。


「一発で六枚へ当てる方法を探します!」


 結晶板へ風弾を直接当てれば、そのまま反射される。

 ならば、反射された風弾を別の結晶板へ当てられないだろうか。


 六枚の位置と角度へ意識を集中させる。

 だが、結晶板は白銀王スライムと一緒に動き続けていた。

 今のままでは、反射先が定まらない。


「一城さん、来ます!」


 六体の白銀王スライムが身体を低く沈める。


 今度は槍ではない。

 身体全体を円盤のように薄く広げ、高速で回転し始めた。


「回転斬撃です! 柱の陰へ!」


 俺たちは部屋の端にある銀色の柱へ駆け込む。

 直後、六枚の円盤が床を削りながら通過した。

 柱へ衝突する直前、白銀王スライムたちが軌道を変える。

 互いに交差しながら部屋を旋回していく。


「このままでは、狙いを付けられません! 何か、結晶板が止まる攻撃はありませんか!」


 美咲さんの言葉に白銀王スライムの攻撃情報を確認する。


 槍。

 回転斬撃。

 高速突進。

 そして、白銀光線。


「あります。白銀光線を放つ前に、六枚の結晶板が一か所へ集まります!」

「その時なら、反射させられますか?」

「角度が分かれば可能だと思います」


 白銀光線がどのような攻撃なのかは分からない。

 それでも、結晶板が揃う機会は他にない。


「次に光線の構えへ入るまで耐えましょう!」

「分かりました!」


 美咲さんが前へ出る。

 俺とシズクは銀色の柱を背にし、白銀王スライムたちの動きを追った。


 回転を止めた分身体が、次々と槍を放つ。

 美咲さんは正面から受けず、盾と剣を使って軌道を逸らしていく。

 防ぎ切れなかった一本が、彼女の肩を掠めた。


「美咲さん!」

「かすり傷です! 止まらないでください!」


 赤い血が革防具へ滲んでいる。

 それでも、美咲さんの動きは鈍らなかった。


 白銀王スライムの本体が、部屋の中央へ移動する。

 五体の分身体も、本体を囲むように並んだ。


「来ます!」


 六枚の結晶板が宙へ浮かび、白銀王スライムの正面へ集まっていく。

 結晶板同士が向かい合い、光を増幅させ始めた。

 俺の視界へ、風弾が反射する経路が表示される。


 ◇____________________


 『推奨射出位置:右側面』

 『推奨射出角度:上方28度』

 『予測接触数:6/6』

 『成功可能時間:1.6秒』


 ____________________◇



「シズク、右へ!」

「ぷるっ!」


 シズクが床を跳ね、俺の指示した場所へ移動する。


「上にある、一番右の結晶板を狙うんだ!」


 シズクの身体へ残っていた魔力が集まる。

 白銀王スライムの結晶板にも、眩い光が満ちていく。


「今だ! シズク!」

「ぷるっ!」


 シズクが風弾を放った。

 風の球体が右端の結晶板へ命中する。

 反射された風弾が、隣の結晶板へ。


 二枚目。

 三枚目。


 風弾は光の筋を描きながら、次々と結晶板へ反射していく。

 六枚目へ命中した瞬間、全ての結晶板から光が消えた。



 ◇____________________


 『反射障壁:停止』

 『白銀分裂:解除』

 『再起動まで:30秒』


 ____________________◇



 五体の分身体が、銀色の粒子となって消滅する。

 残ったのは、部屋の中央にいる本体だけだ。


「成功です!」

「すごいよ! シズク!」


 だが、シズクの身体から力が抜け、その場へ平たく潰れてしまった。


「シズク!?」

「魔力切れのようです」


 美咲さんがシズクを抱き上げ、部屋の端へ移動させる。


「少しだけ待っていてね。すぐに終わらせるから」

「ぷる……」


 弱々しいながらも、シズクが返事をする。


「美咲さん、障壁が戻るまで三十秒です!」

「その間に倒します!」


 白銀王スライムが大きく震えた。

 六枚の結晶板が動かなくなったことで、身体の形を維持できなくなったように揺れている。

 だが、戦意は失っていない。


 巨大な身体を圧縮し、人間ほどの大きさまで縮んだ。

 身体の密度が増し、白銀色の表面がさらに硬く輝く。


「小さくなった……」

「来ます!」


 白銀王スライムが床を蹴る。

 先ほどまでとは比べものにならない速度だった。


 美咲さんが盾を構える。

 白銀王スライムの突進が盾へ直撃し、彼女の身体が大きく後方へ押された。


「重い……!」


 床を踏み締め、どうにか突進を受け止めている。

 俺は白銀王スライムの身体へ意識を集中させた。



 ◇____________________


 『高速変形・圧縮形態』


 『防御力:上昇』

 『移動速度:上昇』


 『弱点』

 ・攻撃直前、進行方向へ魔核が移動

 ・反対側の外殻強度が60%低下


 『反射障壁再起動まで:21秒』


 ____________________◇



「攻撃する瞬間、魔核が前へ移動します! その時だけ、背後の外殻が薄くなります!」

「一城さん、背後を狙えますか?」

「やります!」


 美咲さんが白銀王スライムを押し返す。

 俺は鋼短剣を握り、相手の背後へ回り込んだ。

 白銀王スライムがその場で反転する。


 狙いが俺へ変わった。


「一城さん!」

「大丈夫です!」


 羽靴へ力を込める。

 白銀王スライムが身体を沈めた。

 飛び掛かる直前、体内の魔核が俺のいる方向へ移動する。


「今だ!」


 地面を蹴り、白銀王スライムの頭上を跳び越えた。

 足元を白銀色の身体が通過する。

 空中で身体を捻り、薄くなった背後の外殻へ鋼短剣を突き立てた。


 甲高い音が響く。

 刃先が外殻を貫いたが、魔核までは届かない。


「まだだ……!」


 短剣を横へ動かし、亀裂を広げる。

 白銀王スライムが急停止した。

 身体から伸びた銀の触手が俺の脇腹へ直撃する。


「ぐっ……!」


 衝撃で身体が飛ばされた。

 床へ叩き付けられる直前、羽靴が着地の衝撃を軽減する。


 痛みはある。

 それでも、すぐに身体を起こすことができた。


「一城さん!」

「大丈夫です! 外殻は壊しました!」


 亀裂の奥から、白銀色の魔核が見えている。


 美咲さんが駆ける。

 白銀王スライムが外殻を再生しようと身体を震わせた。



 ◇____________________


 『反射障壁再起動まで:3秒』


 ____________________◇



「間に合って!」


 美咲さんが白銀王スライムの背後へ踏み込む。

 剣を両手で握り、俺が作った亀裂へ突き立てた。


 刃が魔核を貫く。


 白銀王スライムの身体が大きく膨らんだ。

 止まっていた六枚の結晶板へ、再び光が灯り始める。

 だが、障壁が戻るよりも早く、魔核へ亀裂が広がった。


 巨大な白銀色の身体が、無数の粒子となって崩れていく。

 六枚の結晶板も砕け、銀色の光となって部屋へ舞い上がった。


「倒した……」


 美咲さんが剣を床へ突き、息を整える。


「一城さん、怪我を見せてください!」

「脇腹を打っただけです。それより、シズクを」

「シズクは魔力切れです。休ませれば大丈夫です」


 美咲さんが俺の脇腹を確認する。

 防具の上から触れられると痛みはあるが、骨に異常があるような感覚はなかった。


「念のため、回復薬を使います」

「その傷なら、美咲さんも使ってください」

「分かりました」


 互いの傷を治療してから、シズクのもとへ向かう。


「シズク。終わったよ」

「ぷる……」


 美咲さんの声に応えるように、シズクが僅かに身体を伸ばした。


「シズクの風弾がなければ、勝てなかった。ありがとうな?」


 俺が撫でると、シズクは満足したように身体を揺らした。

 部屋の中央では、白銀王スライムが消えた場所に三つのドロップ品が残されていた。


 大きな白銀王の魔核。

 白銀色の魔石。

 そして、銀色の首飾り。


「首飾りが出ています……」

「ドロップ率は5%でしたよね?」

「はい。本当に手に入るとは思いませんでした」


 首飾りを拾い上げる。

 銀色の細い鎖に、透明なスライム型の宝石が取り付けられていた。

 俺は『解析鑑定』を発動させる。



 ◇____________________


 『スライムの首飾り』


 『品質:S』

 『希少度:A』

 『推定買取価格:420,000円』

 『売却:非推奨』


 『効果』

 ・装備者の魔力耐性を僅かに上昇させる

 ・スライム種との魔力親和性を高める


 『シリーズ装備:4/5』


 ____________________◇



「これで、五つあるシリーズ装備のうち四つが揃いました」

「あと一つですね」


「ぷるっ」


 首飾りの宝石が気になるのか、シズクが身体を伸ばす。

 美咲さんが抱いたまま近付けると、シズクは宝石へそっと触れた。

 触れられた首飾りが、淡い青色の光を放つ。


「シズクに反応しています」

「スライム種との魔力親和性を高める効果があるみたいです」

「一城さんが装備したら、シズクとも今まで以上に意思を通わせられるのでしょうか?」

「可能性はあります」


 今は俺に従魔はいない。

 それでも、いつかスライムと契約することがあれば、この首飾りは大きな助けになるかもしれない。


 首飾りを大切に小型ケースへ収める。

 直後、白銀王の間へ穏やかな鐘の音が響いた。



 ◇____________________


 『希少区域:スライムの白銀城』


 『区域守護個体:討伐完了』

 『攻略状態:達成』


 『残り時間:1時間12分47秒』

 『帰還門:開放』


 ____________________◇



 部屋の奥に、白銀色の光で作られた帰還門が現れる。


「まだ時間はありますが、戻りましょう」

「そうですね。シズクも一城さんも休ませないと」

「美咲さんも怪我をしていますよ」

「私は回復薬を使いましたから大丈夫です」

「俺も同じです」

「では、全員休憩が必要ということですね」


 ドロップ品を回収し、帰還門の前へ立つ。

 振り返ると、王の間にあった鏡は全て光を失っていた。

 俺たちは白銀色の揺らぎへ足を踏み入れる。


 身体が僅かに浮く。

 次に足の裏へ硬い感触が戻った時には、初心者ダンジョン第五層の通路へ戻っていた。


「帰ってきましたね」

「ぷる……」


 美咲さんの腕の中で、シズクが安心したように身体を丸める。

 素材鞄の中には、守りの結晶飴。

 小型ケースには、四つ目となるスライムシリーズの首飾り。


 残る装備は、あと一つ。


 それがどこにあるのかは分からない。

 だが、初心者ダンジョンのさらに先に、答えが待っているような気がした。

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援いただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ