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22話「初めての正式パーティー」


 探索者協会へ向かう途中、俺はコンビニへ立ち寄った。

 第二層で見つけた魔力湧水を採取するには、魔力保存容器を購入しなければならない。


 店主から聞いた価格は、容量によって一万円から三万円ほど。

 今の口座に、どのくらい残っていただろうか。


 念のため確認しておこうと思い、店内のATMへキャッシュカードを差し込んだ。

 暗証番号を入力し、残高照会を選ぶ。

 画面へ表示された数字を見て、思わず目を瞬かせた。



 ◇____________________


 普通預金残高


 680,620円


 ____________________◇



「六十八万円……」


 思わず小さな声が漏れた。

 何度見直しても、表示されている数字は変わらない。


 二週間ほど前。

 会社を解雇され、入院費を支払ったあとの残金は、三千円ほどしかなかった。


 明日の食費をどうするか。

 来月の家賃を払えるのか。


 そんなことばかり考えていた。

 それが今では、家賃や光熱費を払い、新しい装備を買ったあとでも、六十八万円が残っている。


「こんなに貯まってたのか……」


 黄金郷で手に入れた素材。

 希少区域や隠し通路の情報提供料。

 黄金王スライムの素材。

 そして、魔導検索眼鏡の検証協力費。


 一つ一つ、自分で見つけ、調べ、危険を乗り越えて得たお金だ。

 もちろん、六十八万円をすべて使っていいわけではない。

 探索者として稼いだお金には税金も掛かる。

 武器の修理や回復薬、保険、これから下の階層へ進むための装備も必要になる。


 それでも、少しくらいなら自分のために使ってもいいのかもしれない。


「……たまには、贅沢してもいいよな」


 残高照会を終了し、キャッシュカードを財布へ戻す。

 ATMを離れようとしたところで、飲み物が並ぶ棚が目に入った。


 いつもなら、一番安いペットボトルの水を選んでいる。

 だが今日は、少し迷ったあと、普段は値段を見て諦めていたカフェラテを手に取った。


 ついでに、朝食用の少し高いサンドイッチも籠へ入れる。

 合わせても、千円には届かない。


 それでも俺にとっては、久しぶりの贅沢だった。


「これくらいなら、罰は当たらないよな」


 会計を済ませ、店の外へ出る。

 カフェラテを一口飲むと、思っていたよりも甘かった。


 今日は、美咲さんとの正式なパーティー登録を行う予定だ。

 その後は魔力保存容器を購入し、第二層で見つけた魔力湧水について協会へ報告する。


 片手に少し高いカフェラテを持ちながら、俺は探索者協会へ向かって歩き始めた。



 ◇


「おはようございます、一城さん!」


 探索者協会へ到着すると、美咲さんが受付前で待っていた。


「おはようございます。待たせてしまいましたか?」

「いえ。私も今来たところです」


 美咲さんは俺が持っているカフェラテへ視線を向ける。


「それ、美味しいですよね」

「初めて買いました。いつもは水なので」

「それなら、次は別の味も試してみてください。期間限定の物も美味しいですよ」

「種類が多くて迷いそうです」

「今度、おすすめを教えます!」


 そんな話をしながら、二人で受付カウンターへ向かう。


「すみません。パーティー登録をお願いしたいのですが」

「新規のパーティー登録でしょうか?」

「はい」


 女性職員は俺と美咲さんの探索者ライセンスを受け取ると、端末へ読み込ませた。


「一城陸斗様と、佐伯美咲様ですね。パーティー登録は二名以上から可能です。代表者を一名決めていただく必要がありますが、どちらが担当されますか?」

「美咲さんでお願いします」

「一城さんでお願いします」


 二人の声が重なった。


「え?」

「え?」


 思わず顔を見合わせる。


「どうして俺なんですか? 探索者としての経験は、美咲さんの方が上ですよ」

「戦闘の指示は私が出します。でも、このパーティーが何を探し、どこへ向かうのかを決めるのは一城さんです」

「ですが……」

「私の目的は、ペットにできるスライムを見つけることです。そのためには、一城さんの解析鑑定が必要です」


 美咲さんが俺の目を真っ直ぐに見る。


「それに、希少区域や隠し通路を見つけられるのも一城さんです。だから、パーティーの代表者は一城さんがいいと思います」

「代表者は、強い人がなるものではないんですか?」

「違いますよ」


 美咲さんは小さく笑う。


「みんなが何を目指すのか決めて、最後に責任を持つ人です」

「最後に責任を……」


 会社員だった頃は、責任だけを押し付けられることが多かった。


 だが、美咲さんが言っているのは、それとは違う。

 自分たちで目的を決め、その結果を引き受ける。

 そのための代表者だ。


「分かりました。俺が代表者になります」

「はい。よろしくお願いします、リーダー」

「まだ、その呼び方には慣れませんね」

「そのうち慣れますよ」


 女性職員が微笑みながら、端末へ代表者を登録する。


「続いて、パーティー内での役割を登録します。こちらは後から変更できます」

「俺は探索と鑑定でお願いします」

「私は戦闘と護衛です」

「承知しました」


 画面へ二人の情報が表示される。



 ◇____________________


 ・パーティー代表

  一城陸斗

  担当:探索・鑑定・採取


 ・メンバー

  佐伯美咲

  担当:戦闘・護衛


 ____________________◇



「最後に、素材や報酬の分配方法を決めてください。協会の標準設定では、必要経費を差し引いたあと、人数で均等に分配されます」

「均等でお願いします」

「私もそれで大丈夫です」


 俺たちは迷わず答えた。


「希少な装備品が出た場合はどうされますか?」

「装備に向いている方が受け取ることにします。売却する場合は半分ずつで」

「一城さん、それでいいんですか?」

「美咲さんが戦ってくれるから、俺は探索に集中できます。半分ずつが公平だと思います」

「分かりました。それなら、私も遠慮しません」


 動画の収益は、それぞれのチャンネルへ。

 企業案件を一緒に受ける場合は、その都度相談する。

 個人で得た報酬や、パーティー結成前に見つけた物は分配対象外。

 いくつかの基本的な取り決めを登録した。


「これでパーティー登録は完了です」


 女性職員がライセンスカードを返してくれる。

 カードの裏面に、新しい表示が追加されていた。



 ◇____________________


 登録パーティー:あり


 代表者:一城陸斗

 構成人数:二名


 ____________________◇



「本当にパーティーを組んだんですね」

「これからよろしくお願いします」

「はい。こちらこそお願いします!」


 探索者になったばかりの頃は、誰かと組んで下の階層へ向かうことなど考えてもいなかった。

 だが今は、一緒に進んでくれる仲間がいる。


「一城さん」


 背後から声を掛けられる。

 振り返ると、調査課の高橋さんが書類を持って立っていた。


「高橋さん。おはようございます」

「おはようございます。パーティー登録をされたんですね」

「はい。先ほど終わりました」

「佐伯さんが一緒なら、下層の調査も安心ですね」

「任せてください!」


 美咲さんが胸を張る。


「ちょうどよかったです。昨日報告していただいた、第二層の湧水について結果が出ました」

「もう分かったんですか?」

「はい。保存容器を持った調査員を派遣し、採取した水を分析しました」


 高橋さんが書類を見せてくれる。



 ◇____________________


 『第二層・未登録採取地点調査報告』


 名称:魔力湧水

 品質:A

 用途:回復薬、魔力回復薬の調合液

 採取条件:魔力保存容器を使用

      通常容器では、採取後に魔力が消失


 安全性:飲用非推奨、調合素材として使用可能


 ____________________◇



「解析結果と同じです」

「一城さんが報告してくださらなければ、発見はさらに遅れていたでしょう」

「今まで誰も気付かなかったんですか?」

「水が流れていること自体は、以前から知られていました」


 高橋さんは書類をめくる。


「ただし、普通の水筒や採取瓶へ入れると、三十秒ほどで魔力を失います。過去にも水を持ち帰った探索者はいましたが、協会へ到着した時には通常の地下水になっていました」

「だから、ただの水だと思われていたんですね」

「はい。今回は採取条件まで報告していただけたので、魔力を保った状態で持ち帰ることができました」


 解析鑑定で条件を見抜けなければ、俺も普通の水だと思っていただろう。


「現在、水源が一日にどのくらい回復するのか調査しています。それまでは、一パーティーにつき一日三リットルまでとします」

「分かりました」

「安全確認が終わり次第、正式な採取地点として協会の地図へ登録する予定です。よろしいでしょうか?」

「はい。俺たちだけで独占するつもりはありません」


 高橋さんは満足そうに頷いた。


「発見と採取条件の情報提供料として、三万円が支払われます」

「三万円も?」

「魔力湧水そのものは既知の素材ですが、初心者ダンジョン第二層では初めて確認されました。継続的に採取できれば、回復薬の供給にも役立ちます」


 報酬は、俺個人の口座へ振り込まれるらしい。


「美咲さん。半分受け取ってください」

「これはパーティーを組む前に、一城さんが見つけた物ですよ」

「でも、美咲さんの保存瓶がなければ持ち帰れませんでした」

「それなら、新しい保存瓶を一つ買ってください。それで十分です」

「分かりました」


 無理に渡しても、美咲さんは受け取らないだろう。

 魔力保存瓶を返す代わりに、同じ物を購入することにした。



 ◇



「魔力保存容器なら、これだな」


 探索者ストアへ向かい、店主へ魔力湧水の採取条件を伝える。

 店主が持ってきたのは、小型の水筒に似た容器だった。

 銀色の枠で保護されたガラス容器に、革製の背負い紐が付いている。


「容量は三リットル。魔力を含んだ液体なら、三日間は品質を保てる」

「ちょうど、協会から許可された量と同じですね」

「価格は一万八千円だ」

「購入します」


 美咲さんへ返すための小型魔力保存瓶も一つ購入する。


「ありがとうございます」

「こちらこそ、昨日は助かりました」

「では、魔力湧水を採りに行きましょうか」

「はい。正式なパーティーとして、最初の探索ですね」


 魔力保存容器を装着し、俺たちは第二層へ向かった。



 ◇



 第二層へ到着すると、昨日と同じ湿った空気が身体を包んだ。


「今日は、昨日見つけた水源まで向かいます」

「了解しました。周囲の警戒は任せてください」


 美咲さんが少し前を歩き、俺が地図を確認する。

 正式なパーティーとしての役割分担だ。

 しばらく歩くと、前方の水路から大きな水音が聞こえた。


「何かいます」

「水路の中ですか?」


 美咲さんが剣を抜く。

 次の瞬間、水路から緑色の影が飛び出した。


「っ!」


 俺たちは左右へ分かれて回避する。

 通路へ着地したのは、犬ほどの大きさがあるカエル型の魔物だった。


 苔のような濃緑色の皮膚。

 黄色い大きな目。

 喉元が風船のように膨らんでいる。


 俺はすぐに解析鑑定を発動させた。



 ◇____________________


 『湿地蛙(マーシュフロッグ)


 ・両生種

 ・性格:縄張り意識が強い

 ・危険度:E+


 ・攻撃方法

  伸縮舌

  飛び掛かり

  水弾


 ・ドロップ品

  良質な魔核(100%)

  伸縮舌(20%)

  魔力水袋(5%)


 ____________________◇



「マーシュフロッグです! 舌と飛び掛かりに注意してください!」

「分かりました!」


 湿地蛙の喉が大きく膨らむ。


「水弾が来ます!」


 俺の声と同時に、湿地蛙の口から水の塊が放たれた。

 美咲さんが横へ動いて躱す。

 水弾が岩壁へ衝突し、硬い音を立てた。


「結構な威力ですね!」

「次は舌が来ます!」


 湿地蛙が口を開く。

 赤い舌が、一気に俺へ向かって伸びてきた。

 横へ避けようとするが、舌の方が速い。


「させません!」


 美咲さんの剣が、伸びた舌を横から弾いた。

 軌道を逸らされた舌が、俺の肩を掠めて通り過ぎる。


「ありがとうございます!」

「舌を戻す時が隙になります!」


 湿地蛙は長く伸ばした舌を、すぐには口へ戻せないらしい。

 俺は鋼短剣を抜き、一気に距離を詰めた。

 湿地蛙が逃げようと身体を縮める。


「跳びます!」

「右へ追い込みます!」


 美咲さんが左側から剣を振り、逃げ道を塞ぐ。

 湿地蛙は予定していた方向を変え、俺の正面へ跳んだ。


「今だ!」


 鋼短剣を両手で握り、腹部へ突き刺す。


 確かな手応え。

 刃先が魔核へ届き、湿地蛙は緑色の粒子となって消えた。


「倒せました……」

「良い連携でしたね!」


 美咲さんが笑顔で手を上げる。

 俺も手を上げ、軽く掌を合わせた。

 地面には、これまでより少し大きな魔核が残されている。



 ◇____________________


 『良質な魔核』

 『品質:B』

 『希少度:D』

 『用途:魔力伝導素材』

 『推定買取価格:500円』


 ____________________◇



「良質な魔核。一個五百円です」

「第二層の魔物は、第一層より魔力が多いですからね」

「名前は違っても、用途は普通の魔核と同じなんですね」

「魔力を伝える効率が高い分、価格も上がるみたいです」


 良質な魔核を素材鞄へしまう。


「一城さん」

「はい?」

「さっきの戦い、私が全部倒したわけではありません」

「そうですね」

「一城さんが動きを見抜き、最後の一撃も当てました。これがパーティーです」

「……はい」


 守られているだけではない。

 俺にも、仲間のためにできることがある。


「次も、この調子で行きましょう」

「はい!」


 俺たちは水源へ向かって、再び歩き始めた。



 ◇



 魔力湧水のある場所へ到着し、背負っていた保存容器を下ろす。


 蓋を開け、湧水の下へ置く。

 透明な水が少しずつ溜まり、容器の中で淡い青色へ変わっていく。


「一杯になるまで、少し時間が掛かりそうですね」

「俺が見ているので、美咲さんは周囲の警戒をお願いします」

「分かりました」


 容器へ水が溜まるのを待つ。


 一リットル。

 二リットル。

 やがて、協会から許可された三リットルへ届いた。


「採取完了です」


 蓋を閉め、解析鑑定で状態を確認する。



 ◇____________________


 『魔力湧水』

 『容量:3リットル』

 『品質:A』

 『状態:良好』

 『推定買取価格:6,000円』


 ____________________◇



「三リットルで六千円です」

「魔物と戦わずに採れる素材としては、かなり良いですね」

「水源を傷付けないよう、大切に採らないといけませんね」


 保存容器を背負い直す。


「それでは戻りましょう」

「待ってください」


 美咲さんの声が低くなる。

 彼女は剣を抜き、通路の奥を見つめていた。


「何かいます」

「どこですか?」

「分かりません。でも、視線を感じます」


 俺も通路へ目を向ける。

 見えるのは、苔に覆われた岩壁だけ。

 魔物の姿はない。


 それでも、壁の一部に違和感があった。

 苔の模様が、ゆっくりと動いている。


「……あそこです!」


 俺が指差した瞬間、岩壁から二本の鎌が振り下ろされた。


「下がって!」


 美咲さんが俺の前へ入り、剣で鎌を受け止める。

 金属同士がぶつかったような硬い音。

 苔だと思っていた物が、岩壁から剥がれ落ちる。


 現れたのは、人間の上半身ほどもあるカマキリ型の魔物だった。

 全身が苔と同じ緑色に染まり、二本の鎌が鋭く輝いている。


 俺は解析鑑定を発動させた。



 ◇____________________


 『苔蟷螂(モスマンティス)


 ・昆虫種

 ・性格:獰猛

 ・危険度:D

 ・能力:環境擬態


 ・攻撃方法

  鎌による連続斬撃

  奇襲

  飛び掛かり


 ・ドロップ品

  良質な魔核(100%)

  蟷螂の鎌殻(15%)

  魔力複眼(3%)


 ____________________◇



「モスマンティス! 危険度、Dです!」

「第二層では強い個体ですね!」


 美咲さんが鎌を押し返し、距離を取る。

 モスマンティスは岩壁へ跳び付くと、再び苔と同じ色へ変化した。


「また消えた……」

「動き出すまで、見分けるのが難しいです!」


 美咲さんが俺を庇うように立つ。

 このままでは、攻撃されるまで位置が分からない。


「擬態を解除する方法は……」


 モスマンティスへ意識を集中させる。

 見つけたいのは、環境擬態を破る条件。

 すると解析結果へ、新しい項目が追加された。



 ◇____________________


 『環境擬態』

 『解除条件:体表を水で濡らす』

 『再使用まで:3分』


 ____________________◇



「水です! 身体を濡らせば、擬態を解除できます!」

「水……でも、魔力湧水は使わないでください!」

「もちろんです!」


 せっかく採取した魔力湧水を、魔物へ掛ける必要はない。

 通路の脇には、普通の地下水が流れている。

 俺は空になった水筒を取り出し、水路へ沈めた。


「時間を稼ぎます!」


 モスマンティスが岩壁から飛び出す。

 美咲さんが鎌を剣で受け流す。


 一撃。

 二撃。


 左右から繰り出される鎌を、美咲さんは後退しながら防いでいく。


「美咲さん、離れてください!」

「はい!」


 美咲さんが大きく後ろへ跳ぶ。

 俺は水を満たした水筒を、モスマンティスへ向かって振り抜いた。


 蓋を外した水筒から、水が勢いよく飛び出す。

 水を浴びたモスマンティスの体表から、緑色の模様が流れ落ちた。

 現れたのは、灰色がかった本来の身体。


「擬態が解けました!」

「今です!」


 美咲さんが一気に距離を詰める。

 モスマンティスが鎌を振り上げる。

 だが、姿が見えていれば奇襲にはならない。


 美咲さんは最初の鎌を躱し、二本目を剣で弾く。

 懐へ潜り込み、胴体へ鋭い一撃を放った。

 魔核を切り裂かれたモスマンティスが、灰色の粒子となって消えていく。


「やりました!」

「美咲さん、大丈夫ですか?」

「怪我はありません」


 美咲さんが剣を収める。


「一城さんが解除条件を見つけてくれたおかげです」

「俺だけでは、水を掛ける前に斬られていました」

「だから、パーティーなんです」


 美咲さんが笑う。

 地面には、良質な魔核と、鎌の形をした緑色の素材が残されていた。


「二つありますね」


 鎌の素材へ解析鑑定を発動させる。



 ◇____________________


 『蟷螂の鎌殻』

 『品質:B』

 『希少度:C』

 『用途:剣、短剣、採取道具の材料』

 『推定買取価格:7,000円』


 ____________________◇



「蟷螂の鎌殻です。推定価格は七千円」

「十五パーセントの素材が出たんですね」

「良質な魔核と合わせて、七千五百円です」

「魔力湧水を含めれば、一万三千五百円ですね」

「二人で分けると、一人六千七百五十円です」

「計算が早いですね、リーダー」

「会社で数字ばかり見ていましたから」


 素材を回収し、今度こそ帰路へ就く。

 正式なパーティーとして行った、最初の探索。

 魔物との戦いも、素材の発見も、一人の時とは違っていた。

 美咲さんが魔物の攻撃を防ぎ、俺が隠された条件を見つける。

 二人の力を合わせれば、単独では倒せない相手にも勝つことができる。


「次は第三層ですね」

「もうですか?」

「すぐに行く必要はありません。第二層へ慣れて、装備や連携を確認してからです」

「それなら安心しました」

「少しずつ進みましょう。一城さん」

「はい」


 その先には、第四層と第五層もある。


 今はまだ遠い場所だ。

 それでも美咲さんと一緒なら、たどり着ける気がした。

 こうして俺たちの正式なパーティーとしての初探索は、無事に終わった。


読んでいただきありがとうございます。

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