152話「結晶飴の乱獲」
依頼を受けた俺たちは、十層の希少区域である『スライム達の古戦場』へと訪れていた。
「ユキ! 正面のゴールデンスライムたちを打ち上げてくれ!」
「ぴるっ!」
俺の言葉に、ユキが反射鎧を操作し、黄金スライム達を上空へと弾き飛ばしていく。
上空で身動きが取れなくなったところへ『白銀短剣』を滑らせ、黄金スライム達を両断する。
黄金色の光を弾けさせ、粒子へと変わった黄金スライム達は結晶飴をドロップさせた。
「よし、これで三十二個だな」
「ぴるるっ〜!」
古戦場に来る前に『黄金郷』と『白銀城』で好戦的な個体からも手に入れ、それなりに数が集まっていた。
「やっぱ守りの結晶飴に偏るな」
「そうですね。シルバースライムと違い、ゴールデンスライムは臆病な個体が多いので仕方ないかもしれないです」
少し離れた場所で、シズクと一緒に白銀スライムを狩っていた美咲さんが、短剣を納刀しながら言う。
「そうだな。ただ、三つの希少区域を回って思ったんだが、下の区域のゴールデンスライムの方が、好戦的な個体が多いみたいだ」
「ええ。上の階層に出るゴールデンスライムより、レベルが育っているからでしょうか。身体の大きさも、黄金郷にいるゴールデンスライムより大きいですし」
「詳しいところは表示されていないから分からないけど、美咲さんが言ったように、レベルは関係してると思う」
黄金郷にいた個体は、そのほとんどが『臆病』な個体だった。
倒したのも、『臆病』な個体を追い回していた『好戦』個体のみで、レベルも頭一つ分抜けていた。
おそらく、レベルは関係しているだろう。
「なら、やはり『古戦場』を狩場にして集めた方がいいですね」
「ああ、俺もそう思う。出現までの時間が少し長いけど、ここを狩場にして集めよう」
「はい。分かりました」
黄金と白銀、どちらにも母体個体が存在し、その母体個体を倒さなければ、分裂して増えていく習性も分かった。
なので、継続的に集められることも分かった。
「さあ、この調子で集めていこう!」
「はい! では、あそこにいる群れを狩ってきます! シズク!」
「ぷるっ!」
美咲さんの合図で、シズクが白銀の群れへ突っ込んでいく。
シズクに気付いた白銀スライム達が、銀の魔力弾を一斉に放つが、その全てが反射筒へと吸い込まれ、カウンターによって白銀スライム達が宙を舞う。
続いて、シズクの四枚の羽が四色に輝き、宙を舞った白銀スライム達を撃ち抜く。
防御も受け身も取れなかった白銀スライム達は、結晶飴と銀光液を残し、粒子となって消えていった。
「シズク、いつの間にあんな攻撃覚えたんだ」
初めて見る攻撃だ。
もしかしたら、密かに練習していたのかもしれない。
「ぴるっ! ぴるっ!」
「ん?」
ユキの声に視線を移す。
すると、シズクに負けじと二枚の反射鎧を白銀スライムの左右へ動かし、プレス機のように挟み込んでいた。
押し潰された白銀スライムは、そのまま粒子となって消えていく。
「ユキも、いつの間にそんな戦い方を……」
「ぴるるっ?」
「いや、何でもないよ。その調子でたくさん倒してな?」
「ぴるっ!」
さて、俺も負けていられないな。
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それから時間いっぱい使って結晶飴集めをした俺たちは、希少区域を抜け、探索者協会へと戻ってきた。
「それにしても、美咲さんのあの技、凄かったな」
「斬撃を飛ばすやつですか?」
「うん。突っ込んでくるゴールデンとシルバースライムを、片っ端から弾き飛ばして倒してたよね?」
あれは見ていて爽快だった。
まるでピンボールのように弾き飛び、倒れていくのだから。
「紫電一閃の応用です。出力を抑えればできるかなって思って試したら、出来ました」
「紫電一閃より、使いやすそうだね」
「はい。身体への負担も少ないですし、魔力消費も抑えられるので、気軽に使えます」
あれだけ連発していたのに、美咲さんに疲れた様子はない。
「ただ、何度か狙いを外してしまったので、練習しないといけないです」
「練習相手が必要だったら、いつでも言って。付き合うよ」
「はい。その時はお願いします」
そう言って、美咲さんが笑う。
「ぷるっ! ぷるるっ!」
美咲さんの肩の上で、シズクが四枚の羽を大きく広げた。
「ああ、シズクの攻撃も凄かったよ。四つの属性を一度に使えるようになったんだな」
「ぷるるっ〜!」
俺に褒められ、シズクが嬉しそうに身体を弾ませる。
「ぴるっ! ぴるっ!」
「ユキの攻撃もちゃんと見てたよ。反射鎧をあんなふうに使うとは思わなかったけどな」
「ぴるるっ〜!」
シズクとユキは、お互いに負けていないと言うように並んで身体を弾ませた。
その後も、美咲さんと会話をしつつ、ユキとシズクを伴って、髙橋さんから指定された協会の会議室へと向かう。
会議室のドアを開けて中へ入ると、タブレット端末を操作しながら仕事をする髙橋さんがいた。
入室したことに気づいたのか、髙橋さんが顔を上げる。
「お待ちしておりました。怪我などはありませんか?」
「はい。みんな問題ありません」
俺は髙橋さんにそう答えつつ、腰の魔法鞄を外して机の上へ置いた。
「どのくらい集まりましたか?」
「途中から数えるのをやめたので、具体的な数字は分かりませんが、恐らく二、三百はあるかと」
「そんなにですか……!」
「待ってくださいね。今取り出しますから」
そう言って、魔法鞄の収納口を開け、集めた結晶飴を机へ並べていく。
「ぷるっ!」
「ぴるっ!」
「お、仕分けしてくれるのか?」
シズクとユキが机の上へ飛び移り、取り出した結晶飴を黄金色と白銀色に分け始める。
俺が魔法鞄から結晶飴を取り出すたびに、二人が身体を使って机の上を転がしていく。
初めは小さかった二つの山が、次第に大きくなっていった。
「まだ入っているんですか?」
「はい。もう少しあります」
髙橋さんが驚く中、残っていた結晶飴も全て取り出す。
机の上は、黄金色と白銀色の結晶飴で埋め尽くされていた。
「これはもう、採取というより収穫ですね」
俺の言葉に、美咲さんと髙橋さんが苦笑する。
「ぷるるっ!」
「ぴるるっ!」
シズクとユキも、たくさんの結晶飴にテンションが上がっているのか、元気よく体を弾ませている。
◇
「ぷるっ」
「ぴるっ」
「ぷるっ」
「ぴるっ」
俺たちが力と守りの結晶飴を分けるため、髙橋さんが用意した保管容器へ移し替えていると、シズクとユキが一個入るたびに身体を伸び縮みさせる。
「ぷるっ」
「ぴるっ」
黄金色の結晶飴が入ればシズク。
「ぴるっ」
「ぷるっ」
白銀色の結晶飴が入ればユキ。
いつの間にか二人の中で順番まで決まったらしく、俺が続けて二個入れようとすると、
「ぷるっ! ぷるっ!」
「ぴるっ! ぴるっ!」
「はいはい。分かったから」
一度手を止める。
シズクが伸びる。
「ぷるっ!」
一個入れる。
今度はユキが伸びる。
「ぴるっ!」
もう一個入れる。
「何してるんですか。陸斗さん」
隣から美咲さんの笑い声が聞こえてきた。
「いや、俺にも分からないです。途中からこうなりました」
「ぷるるっ」
「ぴるるっ」
シズクとユキは満足そうに身体を揺らしている。
その後も二匹の掛け声を聞きながら、残っていた結晶飴を容器へ移していく。
やがて最後の一個を入れると、髙橋さんが集計した数を確認した。
「力の結晶飴が百四十六個。守りの結晶飴が百四十八個。合計、二百九十四個です」
「二百九十四個……」
「ぷるっ!」
「ぴるっ!」
シズクとユキが同時に跳ねる。
「二人も頑張ったもんな」
手を伸ばして頭を撫でると、シズクとユキは気持ちよさそうに俺の手のひらへ身体を押し付けてきた。




