107話「鏡の奥の銀の秘宝」
『スライムの黄金郷』を再調査してから、二日後。
今度は、第五層に出現した『スライムの白銀城』を訪れていた。
白銀色の城壁。
等間隔に並ぶ細長い塔。
曇りのない壁面へ周囲の景色が映り込み、城全体が巨大な鏡のように輝いている。
髙橋さんと護衛職員は、前回と同じく希少区域の入口付近で待機していた。
『城の形状は、前回の記録と一致しています』
「これから外門へ向かいます」
レコーダーから聞こえた高橋さんの声に返事を返し、白銀城へと歩を進める。
門の前には、三体の白銀スライムが並んでいた。
ATスライムの耳飾りから伝わるのは、強い警戒心。
俺たちが足を止めても、その感情が和らぐことはない。
「戦闘は避けられなさそうですね」
美咲さんが軽盾を構える。
白銀スライムの身体が鏡のように輝き、それぞれの左右へ同じ姿が現れた。
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『白銀スライム』
『希少個体』
『役割:外門守護個体』
『性格:警戒心が強い』
『危険度:C』
『特性』
・鏡像投影
・鏡面膜
・高速滑走
『攻撃』
・体当たり
・銀弾
・分裂突進
『ドロップ品』
・白銀魔核:100%
・白銀魔石:5%
・銀光液:1%
・守りの結晶飴:0.5%
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「鏡像を含めて、九体に見えます。本体の魔力だけを追います」
「分かりました」
「ぷるっ!」
「ぴるっ!」
三方向から、白銀スライムが地面を滑ってくる。
「正面は鏡像です!」
美咲さんが軽盾を振るうと、白銀スライムの姿が光となって散った。
直後、右側の本体が身体を細く伸ばす。
放たれた銀弾を、ユキの白銀鎧が斜めに受け流した。
「ぴるっ!」
銀弾が石畳へ当たり、白い欠片を散らす。
「シズク、鏡像へ風を広げて!」
「ぷるるっ!」
シズクを中心に風が広がった。
実体のない鏡像だけが次々と崩れ、三体の本体が露わになる。
美咲さんが一体の進路へ入り、軽盾で地面へ押さえ込む。
そのまま黄金短剣を突き込み、一つ目の魔核を砕いた。
残る二体のうち、一体をシズクの石弾が弾き飛ばす。
俺は露出した魔核へ白銀短剣を突き立てた。
最後の一体が美咲さんの背後から跳ぶ。
だが、ユキの白銀鎧に進路を遮られ、僅かに動きを止めた。
振り返った美咲さんの黄金短剣が、三つ目の魔核へ届く。
全ての魔核が砕けると、閉ざされていた外門がゆっくりと開いた。
残されたのは、三つの白銀魔核だけだった。
守りの結晶飴は出ていない。
それでも、調査で必要なのは都合のよい結果ではなく、実際に何が起きたかという記録だ。
◇
白銀城の中へ入る。
磨き上げられた床へ、俺たちの姿と二機の探索レコーダーが映っていた。
城内に白銀スライムの姿はない。
代わりに、最奥の広間へ近付いた時、壁と床に映っていた俺たちの姿が一斉に歪んだ。
「何か来ます!」
広間の中央から、大きな白銀色の身体が現れる。
表面には、城内の柱や俺たちの姿が映っていた。
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『白銀王スライム』
『区域守護個体』
『危険度:C+』
『特性』
・鏡面支配
・反射障壁
・白銀分裂
・高速変形
『ドロップ品』
・白銀王の魔核:100%
・白銀王の魔石:50%
・白銀王の鏡片:10%
・スライムの首飾り:5%
『補足』
・スライムの首飾り:所持済み
・現在の抽選対象から除外
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白銀王スライムの周囲へ、六つの分身体が現れる。
「ぷるっ!」
シズクが放った風弾が、一体へ向かう。
だが、分身体の前へ薄い障壁が生まれ、風弾をそのまま弾き返した。
「反射されます!」
美咲さんがシズクを抱えたまま横へ跳ぶ。
風弾が通り過ぎ、背後の柱へぶつかった。
「直接狙わなくていい! 床を凍らせて!」
「ぷるっ!」
青白い冷気が、白銀王スライムの周囲へ広がる。
鏡のようだった床が白く凍り付き、分身体の足元へ霜が付いた。
本体だけが、凍る直前に大きく跳ねる。
「上にいる個体が本体だ!」
ユキの白銀鎧が二枚に分かれ、着地点を左右から狭めた。
白銀王スライムは空中で身体を伸ばし、美咲さんへ向かって落下する。
美咲さんは軽盾を傾け、落下の勢いを横へ流した。
白銀王スライムが凍った床へ着地する。
動きが止まった一瞬に、俺は左から白銀短剣を突き出した。
反対側では、美咲さんが黄金短剣を構えている。
二本の短剣が異なる角度から反射障壁へ触れた。
「『腐食』!」
「『粉砕』!」
黒銀色と黄金色の光が重なり、透明な障壁へ亀裂が走る。
砕けた隙間から、白銀王スライムの魔核が見えた。
「ぴるっ!」
ユキの白銀鎧が背後を塞ぐ。
白銀王スライムが逃れるより早く、俺と美咲さんの短剣が魔核へ届いた。
魔核が砕け、大きな身体と六つの分身体が同時に銀色の粒子へ変わる。
床には、白銀王の魔核と白銀王の魔石が残されていた。
◇
俺たちは広間を分担して調べる。
左右の壁には、同じ大きさの鏡が六枚ずつ並んでいた。
どの鏡にも、向かい側の柱が映っている。
「……この鏡だけ、おかしい」
広間の右奥にある鏡。
現実では、先端の欠けた柱は入口から見て左側にある。
普通の鏡なら、映った柱は右側に見えるはずだった。
だが、その一枚だけは、現実と同じ左側に映っている。
「反射ではなく、別の場所を映しているんでしょうか?」
「調べてみます」
鏡へ『解析鑑定』を発動させた。
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『白銀城・隠し鏡扉』
『状態:封印中』
『解除機構』
・可動鏡:3枚
・光導線:接続待ち
・最終反射点:王冠を載せたスライムの紋章
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床に刻まれた白銀色の線を辿り、三枚の鏡を順番に動かす。
天井の魔石灯から落ちた光が、一枚目から二枚目へ反射した。
だが、三枚目から紋章までの間には二度、光の向きを変える必要がある。
「ユキ。白銀鎧を一枚ずつ、この位置へ動かしてくれる?」
「ぴるっ!」
二枚の白銀鎧が離れ、光の通り道へ浮かぶ。
一枚目が光を横へ。
二枚目が、その光を鏡の上に刻まれた紋章へ返す。
王冠の中心が輝いた。
異なる景色を映していた鏡が音もなく奥へ沈み、白銀色の通路が現れる。
「開きました」
『隠し通路を確認しました。内部を記録したあと、今回の調査を終了してください』
「分かりました」
通路の先に、小さな宝物庫があった。
中央の宝箱を開けると、白銀色の光が室内へ広がる。
中に収められていたのは三つ。
騎士の兜を被ったスライムが刻まれた銀笛。
半透明の刀身と、翼のような鍔を持つ白銀の剣。
そして、宙へ浮かぶ雫形の結晶だった。
「ぷる……!」
シズクが、美咲さんの肩から白銀の雫へ身体を伸ばす。
雫の内側を銀色の光がゆっくりと巡る。
シズクが近付くと、周囲へ薄い銀色の膜が広がった。
三つの品へ『解析鑑定』を発動させる。
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『白銀王の銀笛』
『希少度:S』
『分類:秘宝』
『推定買取価格:130,000,000円』
『効果』
・装備不要
・登録された味方のスライム従魔へ作用
・体力と魔力を回復
・士気を向上
・全能力値:5%上昇
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『白銀の結界剣』
『希少度:S』
『分類:秘宝』
『推定買取価格:500,000,000円』
『魔法効果』
・魔法結界
・魔力を流すことで、広範囲へ強固な結界を展開
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『白銀の雫』
『希少度:S』
『分類:秘宝』
『推定買取価格:45,000,000円』
『魔法効果』
・魔法結界
・設置場所の周囲へ小規模な結界を常時展開
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「銀笛は一億三千万円。結界剣が五億円。白銀の雫は四千五百万円です」
『五億円……。その場では性能を試さず、保護箱へ収めてください』
「はい」
白銀騎士の銀笛は、クランで共有する。
結界剣と白銀の雫は、美咲さんが所有することになった。
「本当に、私が頂いてもいいのでしょうか?」
「黄金冠と黄金花は、俺が受け取ることになったからね。それに、結界を使うなら美咲さんが一番合ってると思う」
「……分かりました。大切に保管します」
「ぷるるっ!」
「シズクも気に入ったみたいですね」
「ぷるっ!」
「地上へ戻ったら、またゆっくり見ようね」
「ぷるるっ!」
鏡像を操る白銀スライムと、白銀王スライム。
そして、鏡の奥に隠されていた三つの秘宝。
俺たちは白銀城の調査記録と新たな秘宝を持ち、希少区域の入口へ引き返した。




