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101話「峡谷の嵐鳥竜王」


 第十四層の初回調査から、二日後。

 探索者協会の訓練場で、シズクの『複合魔法・見習い』について確認が行われた。


 二種類の属性魔法を、同時に発動できる。

 ただし、魔法を作り出す位置や放つ方向が大きく異なると、片方の精度が低下することも分かった。


 魔力操作は中級へ上がったものの、技能名に見習いと付いている理由は、その辺りにあるらしい。

 それでも、使用回数の制限がなくなったことは大きい。


 魔力が残っている限り、シズクは同じ属性魔法を何度でも使える。

 十分な休息を取り、魔力が完全に回復したことを確認した俺たちは、再び第十四層への転移門を訪れていた。


「階層守護個体の推定位置まで、約一・九キロメートルです」


 髙橋さんが、前回作成した第十四層の地図を確認する。


「途中までは安全な経路を把握していますが、飛行型魔物との遭遇を完全に避けることはできません」

「分かりました。無理に進まず、シズクの魔力にも余裕を残します」

「お願いします。階層守護個体へ到達しても、戦闘が困難だと判断した場合は撤退してください」


「はい」


「ぷるっ!」

「ぴるっ!」


 シズクとユキも返事をする。


 二機のドローン型探索レコーダーが待機していることを確認し、俺たちは蒼銀色の転移門へ入った。



 ◇



 第十四層へ転移した俺たちは、前回記録した経路を進んだ。


 強風が吹く岩棚。

 崖沿いに伸びる細い道。

 峡谷鳥竜と響鳴鳥を倒した場所を通り、天然の石橋を渡る。


 三百五十メートルごとに通信中継器を設置し、髙橋さんとの通信が維持されていることも確認した。

 途中で二組の峡谷鳥竜と遭遇したが、響鳴鳥の姿はなかった。


 支援を受けていない峡谷鳥竜であれば、前回ほど速くはない。

 美咲さんが軽盾で急降下攻撃を受け流し、俺が着地した鳥竜の魔核を白銀短剣で貫いた。


 シズクは属性魔法を一種類ずつ使用している。

 複合魔法を覚えたからといって、毎回二つを同時に使う必要はない。


 通常の戦闘では魔力を温存し、必要な時だけ同時発動を使うことにしていた。


「ぷるっ!」


 シズクの氷槍(アイスランス)が、残った峡谷鳥竜の翼を凍らせる。

 飛べなくなった鳥竜へ美咲さんが近付き、黄金短剣で魔核を砕いた。


「これなら、魔力の消費も抑えられそうだね」

「ぷるるっ!」


「現在の魔力残量は九十一パーセント。まだ余裕はあるよ」

「ぷるっ!」


「シズク、陸斗さんに褒められて嬉しそうですね」

「ぷるるっ!」


 美咲さんが肩へ戻ってきたシズクを撫でる。


「ぴるっ」


「ユキも、風刃を防いでくれてありがとう」

「ぴるるっ!」


 ユキが白銀鎧を左右へ広げる。

 シズクとユキの体調に問題がないことを確認し、峡谷のさらに奥へ進んだ。



 ◇



 転移門から一・五キロメートルほど進んだところで、峡谷の形が大きく変化した。

 左右を囲んでいた岩壁が途切れ、無数の岩峰が立ち並ぶ場所へ出る。


 細長い岩山の頂上には、峡谷鳥竜の物と思われる巣がいくつも作られていた。

 俺たちが立っている岩棚から、最も大きな岩峰まで天然の石橋が架かっている。

 橋の先には、円形に開けた広い岩場があった。


「あそこから、大きな魔力を感じる」

「階層守護個体でしょうか?」

「調べてみる」


 円形の岩場へ『解析鑑定』を広げる。



 ◇____________________


 『第14層・階層守護区域』


 『状態』

 ・階層守護個体:活動中

 ・後衛支援個体:2体

 ・侵入者感知:未発動


 『環境上の注意』

 ・強風

 ・飛行個体優位

 ・石橋崩落の可能性

 ・守護区域外への落下危険


 ____________________◇



「階層守護個体と、支援役が二体いる」

「また前衛と後衛の組み合わせですね」

「うん。石橋の上で襲われると危険だから、戦うなら一気に向こうまで渡ろう」


『こちらでも、岩峰上の広場を確認しました』


 髙橋さんの声が通信機から聞こえる。


『石橋の耐久性までは分かりません。戦闘が始まった場合、橋の上へ戻らないでください』

「分かりました」


 美咲さんが軽盾を構える。

 ユキも、二枚の白銀鎧を俺たちの左右へ移動させた。


「シズク。風が強くても大丈夫そう?」

「ぷるっ!」


「それじゃあ、行こう」

「はい」


 俺たちは石橋を駆け抜けた。

 二機の探索レコーダーも高度を下げ、岩橋のすぐ上を飛んでくる。


 橋を渡り切り、円形の岩場へ足を踏み入れた。

 直後、正面にあった巨大な巣の中から、赤褐色の翼が立ち上がる。


 通常の峡谷鳥竜より、二回り以上大きな身体。


 全身を覆う鱗は濃い赤色。

 翼の先端には、風を纏った半透明の刃が伸びている。

 頭部には、王冠を思わせる三本の角。


 巨大な鳥竜が翼を広げると、岩場全体を覆うほどの風が巻き起こった。

 左右の岩柱には、一体ずつ響鳴鳥が止まっている。


 現れた魔物へ『解析鑑定』を発動させた。



 ◇____________________


 『第14層・階層守護個体』


 『嵐鳥竜王テンペストワイバーンキング


 『危険度:B』

 『属性:風』


 『種別』

 ・鳥竜種

 ・飛行型階層守護個体


 『特性』

 ・王竜鱗

 ・嵐翼

 ・上昇気流支配

 ・飛行制圧

 ・後衛守護


 『技能』

 ・嵐翼刃

 ・王爪急降下

 ・暴風圏

 ・岩砕尾

 ・風鎧

 ・後衛庇護


 『支援個体』

 ・響鳴鳥×2


 『飛行阻害条件』

 ・左右の翼へ3秒以内に一定以上の損傷を与える


 ____________________


 『響鳴鳥』


 『出現数:2』

 『危険度:D+』


 『技能』

 ・加速の歌

 ・治癒の歌

 ・共鳴嵐壁


 『共鳴嵐壁』

 ・2体の響鳴鳥が同時に歌うことで発動

 ・嵐鳥竜王への攻撃を軽減

 ・片方の歌が途切れた場合、効果低下

 ・両方の歌が同時に途切れた場合、効果解除


 『階層守護群・総合危険度:B+』


 ____________________◇



「総合危険度、B+……」

「第十三層の守護個体より上ですね」

「うん。支援役の歌を止めないと、まともに攻撃が通らない」


 左右の響鳴鳥が、同時に大きく息を吸い込む。


「歌が来る!」


 二重の鳴き声が、岩峰へ響き渡った。

 空気が震え、嵐鳥竜王の周囲へ幾重もの風が集まっていく。

 赤褐色の巨体が、風に押し上げられるように空へ浮かんだ。



 ◇____________________


 『共鳴嵐壁:発動』


 『嵐鳥竜王』

 ・飛行速度:上昇

 ・風属性技能:上昇

 ・被害軽減:60%

 ・継続回復:発動


 ____________________◇



「まずは、響鳴鳥の歌を止める!」

「ですが、左右に離れています!」


 二体の響鳴鳥は、岩場の両端にある岩柱へ分かれている。

 片方を攻撃している間に、もう片方の歌だけで嵐壁を維持できる。

 両方の歌を、ほぼ同時に止めなければならない。


「シズク。左へ氷槍、右へ石弾を同時に撃てる?」

「ぷるっ!」


「無理に急がなくていいよ。二体をしっかり狙って」

「ぷるるっ!」


 シズクの身体の左右へ、青白い魔力と褐色の魔力が集まる。

 その間にも、嵐鳥竜王が高度を上げた。

 巨大な翼が振り下ろされる。


「来ます!」


 無数の風刃が、上空から岩場へ降り注いだ。


「ぴるるっ!」


 ユキの白銀鎧が、俺たちの頭上へ移動する。

 二枚の装甲が並び、風刃を受け止めた。


 全てを防ぐことはできない。

 装甲の隙間を抜けた風刃を、美咲さんが軽盾で弾く。

 俺も白銀短剣で一つを受け流した。


「シズク、まだ慌てなくていい!」

「ぷる……!」


 シズクの前で、氷槍と石弾が同時に形を作る。

 先に放たれたのは、右側の石弾だった。


 石弾が響鳴鳥の止まる岩柱へ命中する。

 驚いた響鳴鳥の歌が、一瞬だけ止まった。


 だが、左側の氷槍が放たれる前に、右の響鳴鳥が歌を再開してしまう。

 共鳴嵐壁は僅かに揺れただけで、解除されなかった。


「ぷる……」


「大丈夫。もう一度やればいいよ」

「ぷる?」


「今度は、魔法を作り終えてから一緒に放とう。シズクならできる」

「ぷるっ!」


 シズクが、再び二属性の魔力を集める。

 嵐鳥竜王が翼を畳み、俺たちへ向かって急降下を始めた。


「美咲さん、鳥竜王をお願い!」

「任せてください!」


 美咲さんが前へ出る。

 軽盾を構えたまま、急降下する鳥竜王を正面から見据えた。


「ぴるっ!」


 ユキの白銀鎧も、美咲さんの左右へ移動する。

 鳥竜王の鉤爪が美咲さんへ迫った。


 美咲さんは直前で身体を横へ動かし、軽盾を鉤爪の側面へ叩き付ける。

 爪の軌道が逸れた。


 同時に、二枚の白銀鎧が鳥竜王の翼へぶつかり、急降下の方向を僅かに変える。

 鳥竜王は俺たちの横を通り過ぎ、再び空へ上がろうとした。


「今だ、シズク!」

「ぷるるっ!」


 氷槍と石弾。

 二種類の魔法が、今度は完全に同じ瞬間へ放たれた。


 左側の響鳴鳥へ、氷槍。

 右側の響鳴鳥へ、石弾。


 二つの魔法が同時に命中し、響鳴鳥の歌が揃って途切れた。



 ◇____________________


 『共鳴嵐壁』

 『歌唱個体:0/2』

 『効果:解除』


 『嵐鳥竜王』

 ・被害軽減:解除

 ・継続回復:停止

 ・飛行補助:停止


 ____________________◇



「成功した!」

「ぷるるっ!」


「響鳴鳥を倒します!」


 美咲さんが、氷槍を受けて岩柱から落ちた響鳴鳥へ駆ける。

 黄金短剣を振り下ろし、魔核を砕いた。


 右側の響鳴鳥も、石弾を受けて岩場へ落下している。

 羽靴で地面を蹴り、一気に距離を詰めた。


 白銀短剣を響鳴鳥の胸部へ突き立てる。

 二体目の魔核も砕け、峡谷へ響いていた歌が完全に消えた。

 直後、上空から大きな咆哮が聞こえる。


 嵐鳥竜王が、翼を大きく広げていた。


「支援がなくても、まだ飛べる!」


 鳥竜王を中心に、激しい風が渦を巻く。

 岩場に落ちていた小石が浮き上がり、俺たちの周囲を高速で回り始めた。



 ◇____________________


 『嵐鳥竜王』


 『暴風圏:発動』

 『風鎧:展開』


 『飛行阻害条件』

 ・左右の翼へ3秒以内に一定以上の損傷を与える


 ____________________◇



「次は、左右の翼を同時に攻撃する必要がある!」

「またシズクの複合魔法が必要なんですね」

「うん。でも、先に風鎧を弱める!」


 嵐鳥竜王が、暴風圏を纏ったまま急降下してくる。

 近付くだけで身体が風に押され、足元が崩れそうになる。


「ユキ、風上をお願い!」

「ぴるっ!」


 白銀鎧が俺たちの正面へ並び、吹き付ける風を弱める。

 美咲さんが軽盾を構え、その後ろから俺が羽靴で跳んだ。


 鳥竜王の鉤爪を白銀短剣で受け流す。

 刃へ強い衝撃が伝わった。


 それでも手を離さず、鳥竜王を覆う風へ白銀短剣を触れさせる。


「『腐食』!」


 黒銀色の魔力が、風鎧へ流れ込む。

 高速で循環していた風が濁り、一部の流れが崩れた。



 ◇____________________


 『風鎧』

 『腐食:有効』

 『防護効率:低下』

 『効果時間:9.12秒』


 ____________________◇



「美咲さん、今なら届く!」

「はい!」


 美咲さんが、風鎧の弱まった場所へ黄金短剣を振るう。


「『粉砕』!」


 黄金短剣の効果が風鎧へ流れ込み、腐食した場所から風の層が砕けていく。



 ◇____________________


 『金銀共鳴:発動』


 『腐食効果:増幅』

 『粉砕効果:増幅』


 『風鎧:解除』


 ____________________◇



 嵐鳥竜王を覆っていた風が消えた。


「シズク、左の翼へ氷槍! 右の翼へ石弾!」

「ぷるっ!」


 シズクが二つの魔法を同時に作り始める。

 だが、鳥竜王も待ってはくれない。

 長い尾が、美咲さんへ向かって振るわれた。


「ぴるるっ!」


 二枚の白銀鎧が尾の側面へ続けてぶつかる。

 一枚目では止められない。

 二枚目が反対側から押し返し、尾の軌道を美咲さんの頭上へ逸らした。


「ありがとうございます、ユキ!」

「ぴるっ!」


「シズク、今だ!」

「ぷるるっ!」


 二つの魔法が同時に放たれる。

 氷槍が、鳥竜王の左翼へ突き刺さる。

 翼の付け根から白い霜が広がり、左側の羽ばたきが止まった。


 石弾は、右翼の中央へ命中する。

 硬い翼膜が衝撃で裂け、鳥竜王の身体が大きく傾いた。



 ◇____________________


 『嵐翼鳥竜王』

 『左翼:凍結』

 『右翼:損傷』


 『飛行阻害条件:達成』

 『飛行能力:一時停止』


 ____________________◇



 嵐鳥竜王が高度を失う。

 巨大な身体が岩場へ落下し、赤褐色の砂と石片を巻き上げた。


「今なら地上で戦える!」


 羽靴で地面を蹴り、鳥竜王へ近付く。

 鳥竜王が身体を起こし、嘴を大きく開いた。

 内部へ風属性の魔力が集まっている。


「正面から風が来る!」

「ぴるっ!」


 ユキが二枚の白銀鎧を重ねる。

 直後、鳥竜王の口から圧縮された暴風が放たれた。


 白銀鎧へ風がぶつかり、半透明な装甲が激しく揺れる。

 少しずつ後方へ押されている。


「ユキ、もう十分だ! 左右へ逃がして!」

「ぴるるっ!」


 二枚の装甲が、重なった状態から斜めへ開く。

 正面から受け止めていた暴風が、装甲に沿って左右へ分かれた。

 俺たちの中央に、風の弱い道が生まれる。


「美咲さん!」

「はい!」


 俺と美咲さんは、左右へ分かれて鳥竜王へ駆けた。

 白銀短剣を、左側の王竜鱗へ突き立てる。


「『腐食』!」


 赤褐色の鱗へ、黒い染みが広がった。

 反対側では、美咲さんが黄金短剣を振り上げる。


「『粉砕』!」


 金と銀の光が、鳥竜王の胸部を挟むように広がる。



 ◇____________________


 『金銀共鳴:発動』


 『王竜鱗』

 ・腐食:進行

 ・粉砕:進行


 『防護解除まで:2.36秒』


 ____________________◇



 嵐鳥竜王が、片方だけ動く翼を振り回す。


「ぴるっ!」


 ユキの白銀鎧が翼の進路へ割り込み、俺たちへ届く前に押し返した。


「ぷるるっ!」


 シズクの石弾が、腐食した王竜鱗へ命中する。

 大きな亀裂が走った。


「今です!」


 美咲さんの黄金短剣が、亀裂へ振り下ろされる。

 『粉砕』によって胸部の鱗が砕け、その内側にあった魔核が露出した。

 嵐鳥竜王が、最後の力で身体を起こそうとする。

 白銀短剣へ魔力を流した。


「『加速』!」


 振るった刃だけが速度を上げ、露出した魔核へ突き刺さる。

 『貫通』が発動し、刃先が魔核の中心へ届いた。


 美咲さんも黄金短剣を反対側から押し込む。

 黄金と白銀の刃が、魔核の内部で交差した。


 硬い音と共に、魔核が砕ける。

 嵐鳥竜王の身体が赤褐色の光へ変わり、峡谷を吹き抜ける風の中へ溶けていった。



 ◇____________________


 『第14層・階層守護個体』

 『討伐:完了』


 『第14層踏破:完了』


 ____________________◇



「倒せた……!」


 周囲に、ほかの魔物の反応はない。


「全員、怪我はない?」

「ありません」

「ぷるっ!」

「ぴるっ!」


 シズクとユキも無事だ。

 ユキの白銀鎧には細かな傷が増えているものの、動かすことはできている。


『討伐を確認しました!』


 髙橋さんの声が、通信機から聞こえる。


『皆さん、ご無事ですか?』

「全員無事です。ユキの白銀鎧に傷がありますが、機能に問題はありません」

『帰還後、すぐに状態を確認します。シズクさんの魔力はどうですか?』


 シズクへ『解析鑑定』を発動させる。



 ◇____________________


 『個体名:シズク』

 『状態:良好』


 『魔力残量:37%』


 『魔力操作』

 ・中級


 『複合魔法・見習い』

 ・同時制御可能数:2

 ・技能習熟度:上昇


 『推奨』

 ・追加戦闘を回避

 ・魔力回復まで休息


 ____________________◇



「魔力は三十七パーセントです。追加の戦闘は避けた方がよさそうです」

『分かりました。ドロップ品を回収し、次の階層へは進まず帰還してください』

「はい」


「ぷる……」


「疲れたよね。今日は、もう魔法を使わなくていいよ」

「ぷるっ」


 美咲さんがシズクを抱き上げ、身体を優しく撫でる。


「二つの魔法を、しっかり同時に当てられましたね」

「ぷるるっ!」


「シズクのおかげで、鳥竜王を地面へ落とせたよ。ありがとう」

「ぷるっ!」


 シズクが、嬉しそうに美咲さんの腕へ身体を預けた。



 ◇



 嵐鳥竜王が消えた場所には、良質な魔核と大きな鉤爪。

 そして、折り畳まれた赤褐色の翼膜が残されていた。

 翼膜へ『解析鑑定』を発動させる。



 ◇____________________


 『嵐鳥竜王の風翼膜(テンペストウイング)


 『品質:A』

 『希少度:A』

 『推定買取価格:1,480,000円』


 『特性』

 ・風属性耐性

 ・軽量

 ・高い魔力伝導性

 ・周囲の気流を整える


 『用途』

 ・耐風外套

 ・飛行補助装備

 ・滑空装備

 ・探索レコーダー用外装

 ・風属性魔導具


 ____________________◇



「探索レコーダーの外装にも使えるみたいだ」

『飛行型魔導具の開発素材としても、非常に価値が高いと思われます』

「売却するかは、地上へ戻ってから相談します」

『はい。クランで保有される場合は、調査に必要な範囲だけ記録させてください』


 響鳴鳥から出た良質な魔核と響鳴羽も回収し、全て魔法鞄へ収める。

 その直後、岩場の中央へ新しい表示が現れた。



 ◇____________________


 『第14層・先行攻略条件達成』

 『第14層の入場条件を変更します』


 『スライム系従魔・同行条件』

 ・解除


 『探索者協会登録調査隊』

 ・進入可能


 『一般探索者』

 ・現在封鎖中

 ・探索者協会による安全性評価後に開放可能

 ・第13層踏破記録が必要


 『次回先行攻略対象』

 ・第15層


 『第15層入場条件』

 ・条件達成者

 ・条件達成者と同一の登録パーティー

 ・条件達成者を含む登録クラン

 ・条件達成者を含む登録共同探索隊

 ・利用資格を持つスライム系従魔の同行


 ____________________◇



「第十四層の制限も解除されました」

『確認しました。第十五層への転移門を記録してください』


 巨大な巣があった場所の奥へ、二つの転移門が現れる。

 一つは、第十三層へ戻る青い転移門。


 もう一つは、第十五層へ続く蒼銀色の転移門だった。

 蒼銀色の揺らぎには、これまでよりも多くのスライムの紋章が浮かんでいる。


「ぷる……?」

「ぴる……?」


 シズクとユキが、揃って転移門を見つめる。

 第十五層への転移門へ『解析鑑定』を発動させた。



 ◇____________________


 『階層転移門』


 『転移先』

 ・第15層


 『生息分類』

 ・スライム種


 『階層状態』

 ・未踏破

 ・階層守護個体:活動中

 ・希少区域反応:あり

 ・詳細情報:未解放


 ____________________◇



「第十五層は、スライム種だけが暮らす階層みたいだ」

「シズクやユキと同じ、スライムたちがいるんですね」


「ぷるっ!」

「ぴるっ!」


 シズクとユキが、蒼銀色の転移門へ向かって身体を伸ばす。


「今日は入らないよ」

「ぷる……」

「ぴる……」


「魔力と装備を回復させてから、みんなで来ような」

「ぷるっ!」

「ぴるっ!」


 シズクとユキが、素直に身体を縮める。

 二機の探索レコーダーで、第十五層への転移門を記録する。


 第十一層から始まった、迷宮の第二区域。


 森林。

 湿地。

 砂漠。

 峡谷。


 異なる環境を持つ四つの階層を越え、俺たちはついに、第十五層へ辿り着いた。


 蒼銀色の揺らぎの先に待っているのは、スライム種だけが生息する階層。

 そして、まだ詳しい情報の表示されない、新しい希少区域だった。

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― 新着の感想 ―
このままいけば最終階層は各種 属性最終形態スライム全種、各変異進化系スライム全種、でボスはオリジンスライムとか出てきても不思議ではないね
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