神様にも選ぶ権利はあるよね
「鳥の視力って凄く良いとは聞いていたけど、本当に凄いのね〜!
でも、凄くても山が広すぎて、遭難者を探そうと思ったらもっと沢山使い魔が必要かも」
翌日、使い魔契約が上手くいっているか確認するついでにランチを食べさせてもらい(実際はランチの重要度の方が高い)に藤山家へ行ったら、ちょっと疲れたように碧ママが言った。
「でも、沢も尾根も倒木も関係なく探せる上に、自分で木を避けて飛んでくれるから、ドローンよりも更に便利だね。
まあ、将来的にはAIも勝手に木を避けながらドローンを飛ばして遭難者を探してくれるようになるかもだけど」
ランチに戻ってきていた碧パパが付け足す。
なるほど。
昔だったら使い魔に勝る捜索用の手段は無かったけど、いつの日か全自動で物理的な救出以外の全てをやってくれるAI搭載ドローンが出来たら、そっちの方が更にスグレモノになるかも?
でもまあ、費用対効果的には使い魔の方が圧倒的に安いけどね。
……いや、退魔師じゃなきゃ使い魔を持っていないことを考えると、諏訪みたいに退魔師が地元の柵で捜索に駆り出される状況じゃ無い限り、下手したらAI搭載ドローンの方が安くなる可能性もあるか。
そこまでハイテクなAIがどのくらいの値段で買えるかによるんだろうね。
ドローンそのものは戦争用に大量生産している間に大分と製造コストが下がったらしいから、退魔師の時給より安そうだ。
便利な世の中になりつつあるけど、いつの日かヤバい大陸の専横国家がドローンを使って日本のインフラや米軍基地(もしくはその周辺)に攻撃を仕掛けてくるかもと考えると、怖くもある。
それはさておき。
「使い魔の目で主が自分で探す必要はありませんよ?
折角浮遊霊を使っているんです。
一人とか、遭難した少人数の生きた人間が人里から離れたところに居ないか探してって言えば、探してくれますよ。
どの区域を優先的に探すかだけは、お二人が自分の使い魔に指示した方が良いでしょうが」
死霊って言うのは生きた存在に対して敏感になるんだよね〜。
悪霊とかゾンビじゃ無いから、幸いにも生きた存在を憎んで襲おうとする訳ではないんだけど。プラスに対するマイナス的な相反する存在であるせいか、それこそ霊の感知能力的には生き物は光って視えるようなのだ。
慣れていないと熊や鹿と人間の違いが分からないかもだが、慣れれば生きた人間を探せと言うだけで、その他の動物をフィルターして、残った人間だけ見つけてくれる。
「あら?
そうなの?
じゃあ、山奥に一人で住んでいるような変わり者や、山登りの人が使う山小屋の位置とかをあらかじめ教えておいて、そこは除外して探してって頼んでおくと良いかもだわね」
冷やし中華のお皿を出しながら碧ママが言った。
冷やし中華って美味しいけど色々と具を作るのが面倒で、食べるなら外でって感じになり勝ちなんだけど、藤山家だと作ってくれるんだね〜。
夏はこれが不思議と美味しいから、嬉しい。
「取り敢えず、色々と練習しておかないとだわね。
見つけるのが出来るようになったら、次は見つかった場所が地図の上で何処かと、私たちがどうやってその人を見つけたかを説明する理由づけとかも練習しておかないとだし」
碧ママが言った。
「下手にお告げですなんて言ったら面倒そうだよね」
碧が顔を顰めて言った。
「そうよねぇ。
山に入るアホなんて、白龍さまの目に留まる価値もないように虫ケラが殆どなんだから、そんな奴の為に神様がお告げを出してくれるなんて思われても業腹だわ」
碧ママが言った。
おおう。
ちょっと思っていたのと違う方向で『神のお告げ』を避けるんだね。
まあ、確かに由緒正しい諏訪神社の宮司を代々継いできた藤山家だったら、使い魔契約の秘術が残っていたって話が広まっても京都の旧家や退魔協会だって変ないちゃもんは付けてこないか。
とは言え、確かに氏神さまの手を借りて助ける対象に、有象無象なアホも含まれるなんて話が広まると不味そうだね。来ない方が良いぐらいなアホが、その時だけ助けを求めに縋ってきそうで面倒な事になりそうだ。
縋ってきたからって助けなきゃいけない謂れは神側にだって無いけど、助ける人間を選ぶと依怙贔屓だって感じで炎上しそう。
何故か善意の助けって、いつの間にか義務になりやすいんだよねぇ。
「まあ、使い魔を使う上で問題が起きたら言ってください。
必ずしも解決できるとはお約束出来ませんが、何かアドバイス出来るかもですから」
さて。
今日も頑張って草入りの箱を倉庫モドキスペースへ運ばねば。
マジで今の時期は草が多いから、運んでも運んでも終わらない。
碧の親戚の子供にでも、バイトで手伝って貰えないか、後で相談してみようかなぁ。
取り敢えず、これでこの章は終わりです。
明日はお休みを頂きますが、明後日からまた宜しくお願いします!




