学校はストレスの坩堝
週が明けて、私達は源之助と一緒に予定通り諏訪へ来た。
アパートに着いて、着替えや細々とした個人的な荷物を自分の部屋に置いてから碧の部屋へ。ちょうど碧が碧ママに到着の連絡を入れるための電話を終えたところだった。
「悠君、名古屋のそこそこの古い退魔師の家に住み込みで弟子入りしたらしいよ」
「え?
弟子入り先が碧ママの友達だったの?」
流石に『ちょっとした知り合い』程度だったら新しい弟子の事なんて知らせて回らないよね?
「親しい友人の親戚。
なんかこう、学校で才能が覚醒した場合なんかどうなるんだろ〜なんて話をしてたら、予備校生でそれが起きたって話になって。詳しく確認したら太田悠君だった。
聞いてみたら、ちゃんと風系の術が得意な術師を悠君の母親が仕事の伝手で見つけて頼み込んだらしい」
碧が教えてくれた。
へぇぇ。
中々な偶然だね〜。まあ、碧ママは顔が広そうだから、そこまで不思議じゃ無いのかもだけど。
でも良かった。弟子と師匠の適性が一致しているのは重要だからね。
ハズレを退魔協会から紹介されて大金をドブに捨てる羽目にならなそうで、一安心だ。
まあ、元々退魔師は江戸時代に無法者退治も兼ねていたせいで元素系術師が一番日本では多いみたいだから、黒魔術師や白魔術師の師匠を見つける方が難しいのかも。
黒魔術師系は多分幕府や朝廷や藩の暗部とかに引っ張られていただろうし、下手をしたら今でも暗部的な仕事に引き摺り込まれる事が多そうだ。そうなったら一般家庭の人を弟子として取るのは難しそう。
そして白魔術師は回復師として十分以上に忙しい。
そう考えると、以前自分で作ったゾンビ犬に殺された西田俊介なんかも、退魔協会の師匠斡旋がいい加減すぎたと言うよりも、他に選択肢が無かったから適性が違う師匠に弟子入りする羽目になったのかも?
どちらにせよ。悠君が元素系適性持ちで良かった。
下手に黒魔術師系だったらマジで私に世話が押し付けられたかも。
もっと長年働いて、超ベテランな特級術師として知れ渡る様になったら日本の一般的な退魔術と違う力の使い方を教えても問題はないだろうが、今それをやったら怪しすぎるからねぇ。
幾ら白龍さまに教わったと言い訳しても、符の作り方や魔法陣に関しては白龍さまが〜と言える範囲に限りがある。
何と言っても龍と言えば究極の力技で解決する存在だもんね。『フ? 何それ美味しいの?』の世界だろう。
それはさておき。
「彼に良さげな師匠が無事に見つかって良かったね。
でも、考えてみたら退魔師家系で子供の頃から覚醒に努めているならまだしも、一般家庭出身な術師なんて、基本的に才能が覚醒するのって小学生高学年から高校生ぐらいの時期のなる筈。
学校であんな感じに力が暴発したら危なくない?」
それこそ、兄貴の彼女みたいに慰霊碑をうっかり壊して悪霊に祟られたショックで成人してから覚醒するのは例外だろう。
普通は思春期のホルモンに振り回される時期に、才能も開花する事が殆どな筈。
そうなると、学校で虐められたからなんて場合だったら報復に使うかもだし、虐める側が覚醒した場合は周囲に分からないように虐めるのも可能になる。
まあ、虐める側はそこまで隠さずに、皆で楽しんで周囲に見せつけながら虐める事が多そうだから、才能に目覚めたのに隠れて虐めに使うことは少ないかな?
嫌がらせとしてやる可能性はあるけど。
「まあ、ある日突然爆発してクラスメートを虐殺しちゃったら困るけど、大抵はそこまで行く前になんらかの兆候は出るからね。
私立も公立も、校長や教頭レベルは退魔師の存在を知っているしヤバそうだったら地元の退魔師に相談できる連絡先を貰っているんだって」
碧が教えてくれた。
なるほど〜。
まあ、そうじゃなきゃ、それこそアメリカでちょくちょくある学校での銃の乱射事件並みに日本でも鎌鼬による子供の大量虐殺……とまで行かなくても原因不明な怪我人多出なんて事件が起きてるよね。
「碧パパなんてそう言う相談先になってそう。
ちなみに、今晩も夕食食べに行って良いって?」
都合が悪いんだったら何か食材を買いに行くけど。
「勿論。
そう言えば、今日は寝る前にお米を研いでおかない?
先月買った電子レンジで炊いたご飯は水を多めにしてもやっぱりなんか芯が残っている感じだったから、前の晩から浸けておいたらどうなるか、試そう」
碧が言った。
「だね。
とは言え、前の晩から準備しなきゃいけないって電子レンジで炊く手軽さと言うメリットを打ち消してる感じだけどね」
これでダメだったら炊飯器を買うか、パックのをレンチンする形にしよう。




