これで終わるといいね〜
「え〜と、太田君のご両親に話し合うのは退魔協会の吉田さんだけで十分よね?
私たちはもう帰って良いかしら?
その前に太田君が何か退魔師の実情とかについて質問したいなら答えるけど」
取り敢えず、あの工事現場の問題は太田君を説得して能力を封じるなり、退魔師になる訓練を受けさせるなりすれば、解決される筈。
そこら辺の話し合いは調査員か、退魔協会のスカウトちっくな人かに任せれば良いよね?
「最初に声を掛けてきたのはお姉さんなんだから、せめて親との最初の話し合いまでは付き合う義務があると思うな」
吉田氏が私の言葉へ合意できる前に、太田君が口を挟んだ。
ちっ。
若い大学出たてな女性二人が一緒の方が、40代ぐらいの男性より信頼できそうなのかね?
美人局的に女性が使われる事だってあるんだよ?
「そうですね、退魔師の実務的な話等の質問に答えるにはお二人が同席する方がいいかも知れません。
ちなみに君のご両親はいつだったら会えるかな?」
吉田氏が太田君のリクエストに便乗して私らの足止めをした上で、太田君に尋ねた。
「平日は両親のどちらも仕事だけど、明日だったら週末だから時間を取れるんじゃないかな」
太田君が言った。
そういえば、明日は週末だっけ。
明日中に話が纏ったら来週は諏訪に行きたいところなんだけど。
最初の話し合いにだけ参加すれば、あとはもう良いよね?
「お二人は明日で大丈夫ですか?」
吉田氏が聞いてきた。
「明日で終わるんだったらその方が良いですね。
今、太田君のご両親に連絡を取って時間と場所を確定できるかしら?
碧が応じる。
そうだよね〜。
下手したら残業までしているご両親が帰ってくるまで明日の予定が確定しないとなると、流石にそれは迷惑すぎる。
「君のスマホでご両親に電話をかけて、挨拶の後で私に話させて貰えるかな?」
吉田氏が太田君に頼む。
「直ぐに出てくれるかは知らないけど。着信履歴あったら昼休みに答えてくれるかなぁ?」
そう言いながら、太田君が自分のスマホを取り出した。
確かに仕事中に私用電話はダメだよねぇ。
会議中だったりしたら机の引き出しの中に置きっぱなしにしてるかもだし。
そう思っていたら、先に母親の方に掛けたらしい。
女性の声が直ぐに電話へ答え、ボソボソと太田君とやり取りした後に吉田氏へスマホが渡され、色々と『太田君の才能が』とか『将来の選択肢に関してご相談したい事が』なんて言葉が出てきた後、暫くして話が纏ったらしい。
なんかこうやって横から聞いていると、かなり怪しいねぇ。
スポーツとか、見た目がすごく良くてスカウトされても当然な子だったらまだしも、比較的普通な浪人生が成人男性からスカウトされて親と話したいと言われるなんて、新手の詐欺かと疑われても仕方ないかも?
なんかこう、母親側の声もはっきりとは聞こえなかったけど、最初に息子と話していた時と比べて吉田氏との会話の声は明らかになんか警戒心が滲み出ている雰囲気だったし。
まあ、それでも息子が少しノイローゼ気味なのは気付いていたのか、もしくはヤバい詐欺だとしても親の介入なしに話が進められたら危険だと思ったのか、翌日の10時に太田家を訪問する事で話が纏った。
考えてみたら、今じゃあ18歳で成人だから、経済的には弟子入り費用を払えないけど、借金して弟子入りするみたいな話だったら親抜きでもできちゃうからね。
そこら辺も警戒しているのかも?
「お父さんの方は電話しなくていいの?」
思わず太田君に尋ねる。
共働きでも子育ては母親に丸投げタイプな父親なのかな?
「親父には母さんから電話する方が確実だから」
太田君が答えた。
カカア天下なのか、息子の話はあまり耳を傾けない父親なのか。
まあ、明日の朝に会えば分かるだろう。
取り敢えず。
住所と何かがあった場合の連絡先として電話番号を貰って、今日の仕事は終わりとなった。
風系が強い術者だったら、私よりもそれこそ最初の退魔協会のオリエンテーション研修で一緒になった蓮クンの方が質問を受けるのに向いているんだけどね〜。
一応、後で太田君が蓮クンに連絡できる様に電話番号かチャットアプリのIDを渡してもいいか、蓮クンに聞いておこうかな……。
明日に伺った時に既に太田君がご両親に退魔師の話をしてあるか否かで、親子の関係もある程度見えるかもね〜。
ちゃんと自分から説明できるぐらいの信頼関係があると良いんだけど。




