垂れ流し的な……?
大崎(子)に現在掛けられている呪いは全ての人に無関心になる呪詛だった。
ただし本人の元々の人格がかなり人好きで社交的な様なので、呪詛で誰にも興味を持てなくても、自分の父が必死で話し掛けて諏訪神社まで引き摺って来ようとするのに抵抗はしなかったようだ。
ここ数ヶ月の記憶をざっと読んでいくと、言動が滅茶苦茶にブレている。確かにこれは親が心配する訳だわ〜。
矢鱈と人と話したくなって手当たり次第に出会った相手に話しかけたと思ったら、全く口をきかずに必要に応じてチャットアプリで実質筆談するようになり。
何かの悪霊の憑かれたのか?!と厄祓いに連れて行ったらまともになったと思ったら今度は突然周囲の人を大切にしすぎてそちらを優先し、自分のことを二の次三の次にして危うく食事すら忘れて人のための動こうとし始め。再度厄祓いしたら今度は自分の事を優先しまくって他の人間の言葉すら聞く時間を惜しむ様になり。
笑い上戸になったと思ったら怒りっぽくなり、寝る間も惜しんで仕事に打ち込んだと思ったら最低限の定時しか働かず、5時になったら仕事を飛び出し。
厄祓いで毎回症状がマシになるものの直ぐに異常が起こるため、家族だけでなく周囲の人間も大崎さん(子)が双極性障害でも発病したのではと噂をするようになっていた。
本人もそうかもと思い始めていて、そろそろ精神病院に入院する事を考えていたのだが、引っ切り無しに襲い掛かってくる呪いのせいでちゃんとした思考すら長期間維持することが難しくてまだ行動に至っていない。
なんとまぁ。
ちょっと可哀想すぎて同情しちゃうぞ?
もっと昔の記憶を読むに、少しお調子者な明るい男性で、その気もないのにちょっとナンパっぽい言動で女性に声をかける悪癖と言えるかもしれない習慣があるだけな(一応)好青年だった。
だが。
どうやらうっかりナンパっぽく話しかけた相手の一人が不味かったようだ。
連続呪いが始まる少し前から微妙にストーカーっぽく何処にでも出てくる女性の記憶が残っている。
本人はナンパしたつもりが無いので相手が大崎さん(子)に誘われたと思ってその好意に応じているつもりなのに、ほぼスルーしちゃっている記憶もある。
そして記憶の中で、呪いが始める直前ぐらいの女性の視線は中々ヤバそうだった。しかも毎回呪いで大崎さん(子)の人格がブレるたびにその女性が姿を表して声を掛けてきている。
うん、犯人はこの女性じゃない?
呪師じゃない感じだから、これって偶然物凄く呪詛に適性があって。強く願ったらそれが呪いになっちゃうような人だったのではと思われる。
どれだけ才能があっても、呪う対象の体の一部か何かを持っていないと呪詛が届かない筈なのだが……大崎さん(子)の服に付いていた髪の毛でも集めて持っているのかね。
いや。
よく見たら、最初にこの女性に会ったのって美容院だ。
大崎さん(子)の普段から使っている美容院で新しく働き始めた見習いっぽい子で、髪の毛を洗ってマッサージをして貰っている時にナンパ紛いな言葉を掛けたのが不幸な関係の始まりっぽい。
うげ〜。
普段から使っている美容院で働いている人だったら、髪の毛なんて幾らでも入手し放題じゃん。
とは言え、もう数週間も呪詛を掛けて返されているんだから、そろそろマジで多重人格になっているか統合失調症になっているか、もしくは何か別な精神病っぽくなっていて仕事を辞めてそうだけど。
つうか。
なんで呪うのを辞めないんだろ?
もしかして、呪っている自覚がないのかな??
誰かに強く執着しちゃうと想いが強くなりすぎて呪詛の形になってしまう、ある意味無意識な呪詛の垂れ流し系な人間?
呪詛を使ったと司法に訴えるよりも呪詛の能力を封じられないか、試すべきかもだけど。呪詛って魔力を使った才能とも違うから、殺すとか他者への興味を根こそぎ封じるみたいな力業を使わないと、封じるのは難しいかも?
第一、悪意がない(多分?)とは言え、人にこれだけ迷惑をかけて無罪放免は無いよねぇ。
ちょっと対処が難しいなぁ。
大崎さん(父)がいくら説得しようとしても効果はなさそう。




