ペナルティ無しじゃないとね
『いつもお世話になっております、退魔協会の遠藤です』
いつもの職員の声がスピーカーモードにした電話から流れてきた。
「こんにちは。
もう直ぐ諏訪に行く予定なんで、長期間な依頼は遠慮したいですね〜」
碧が挨拶を返しながら、遠慮なく遠藤氏にこちらの要求を突きつけた。
考えてみたら、もう特級術師なんだから、偉そうにこっちの要求を突きつけてもオッケーなのかな?
まあ、以前だって遠慮はほぼして無かったけど。それでも『学生だから学業を優先したいんです〜』とか、一応しおらしいことを言っていたんだよね。
考えてみたらそれこそ昇給テストを兼ねるような敢えて難しい案件以外は、退魔協会の依頼もせいぜい一泊2日って言う依頼が殆どだけどね。
以前やった、大規模再開発のマンションを祓って回る依頼が例外だったと思う。
まあ、どこぞの旧家の蔵掃除に付き合うなんて言う様な案件だと数日かかる事もあるけど。そんな蔵がある様な旧家は諏訪(と言うか地方)の方が多いかも。
あっちに行っている間は快適生活ラボの作業が多いから、やはり数日掛かるような依頼は遠慮したいし。
結局、私らって日数が長い依頼は避けたいんだよね。
まあ、それは誰でも同じかも。
家から簡単に通える距離ならまだしも、遠距離な場所だったら誰だって通うのも旅館に何日も泊まって仕事するのも嫌だよね〜。
独身だったり家族生活を投げてる人だったら退魔協会(と言うか依頼主)の金でのんびり温泉旅館でゆったりしながら日数を掛けて依頼をこなすのが好きな術師とかも居るかもだけど。
昔だったら芸者さんとか呼ばせて接待させて喜んでいた助平ジジイもいたんだろうなぁ。
昭和の時代(平成も?)だと田舎の旅館なんかへ職場旅行で行くとコンパニオンが出てきたらしいけど、最近じゃあ職場旅行自体が減っているらしいからコンパニオンも激減してそう。
そう考えると、接待大好き助平ジジイも経済に貢献してたんだね。
大抵そう言うのって、周囲の女性に対してもセクハラしまくる迷惑野郎が多そうだけど。
職場の人間にセクハラする代わりに、お金貰って上手にあしらえるコンパニオン相手にちょっかい出していてくれる方が周囲にとっても助かるのかも。
まあ、それはさておき。
『実は……都心の再開発案件なんですが、何処かに悪霊が居ると思われるものの、調査員が探しても見つからず。現場での事故だけが多発して困っている案件なのです。
出来ればどこに隠れていたのか教えて頂き、調査員に見せて頂きたいですが、どうしても見当たらない場合は全体的に浄化してしまうのでも結構です』
遠藤氏が言ってきた。
おや。
調査員が行ったのに悪霊が見つからないなんて珍しいね。
「本当に霊障なんですか?
ライバル企業や地元の反対派住民のサボタージュではなく?」
悪霊が居なくても、悪意とかが溜まった場所だったら穢れの蓄積は起きるからねぇ。
『サボタージュでは説明が付かない現象が起きているので。多分霊障である可能性が高いと思われますが、もしもサボタージュである事を確定できた場合はそれでも報酬が出ます』
遠藤氏が応じた。
なるほどね。
確かに、サボタージュや嫌がらせである事が判明したら犯人を捕まえるなり嫌がらせのカラクリを解明するなりで再開発の作業は進められるもんね。
助かった依頼主から退魔協会にお金は入るから、問題はないのか。
「分かりました。
ちなみに、何も見つからず、全体を浄化しても結局嫌がらせなりサボタージュなりが続いた場合、ペナルティ無しでのキャンセルは可能ですか?」
碧が尋ねる。
『勿論です』
確かに、どうしても分からなかったら最悪、報酬なしでキャンセルせざるを得ないかもだよね。
その時に罰金を取られたりしたらたまったもんじゃない。
昔だったら人間が来て嫌がらせとかをしていただろうから見張っていれば犯人を見つけられただろうけど、今だったらそれこそ遠隔で半導体とか電波とかに影響出来る道具があったら重機とかを故障させちゃって解体工事とかもストップさせる事は可能なんじゃないかな?
まあ、そんなSFもどきな武器っぽいのが実在するのかは知らないけど。
と言うか。
呪師がいるのだ。
退魔師で悪堕ちした人が居たら、元素系魔術師だったら遠距離で術を使って解体工事のサボタージュも可能だと思うけどね〜。
現場の人間を騙すと言うか洗脳して意図していない行為を意識せずにやらせるなら黒魔術師がいたら比較的簡単だし。
まあ、そんな面倒な案件じゃないと期待しておこう。




