家族は難しい
「日本って兄妹間での絶縁って無いんだってね〜」
ちまちま描いていたアイピロー用の符を描き終え、干す場所にそっと置いてリビングの方へ気分転換に移動した。
ついでに昨晩暇つぶしに調べた事を言及する。
碧が源之助と一緒にソファに寝転がっている。
「そうなんだ?
兄妹って片方が生活保護を受ける様な状況になったらもう一方が支援しなきゃいけないらしいのに、絶縁できないってなんか業腹だね」
碧がそっと源之助のおでこを撫でながら応じる。
「まあ、そっちの支援義務は自分の生活に差し支えない範囲でって程度らしいから、あっさり断れるんでしょう。
それよりも、遺言書を買いてちゃんとそれを誰かに預けとかないと、杉原さんが何か怪しげな状況で死んでも妹の方に遺産がいっちゃうけどね。
ただし兄妹だと法定の遺留分が無いらしいから、一円も遺産を残さないのは可能らしい。まあ、だからこそ絶縁と言う手続きが兄妹間では必要無いってことで存在しないのかも」
遺言書が無い場合は杉原氏の死によって妹が一番得をするんだから、殺人を疑われたら妹が第一容疑者になるかもね〜。
だけどねぇ。
それこそ、酔っ払って階段から足を踏み外したとか、病院で昏睡状態になったまま目覚めなかったとかって、殺人があったかどうかの証明すら難しそう。
ある意味、一番怪しまれずに殺せる機会を逃して、警戒されちゃったんだから妹にとっては痛恨のミスってやつだろうけど。
「まあ、態々新潟から東京まで出てきて兄を殺そうとする程は仲が険悪じゃないと期待したいね。
それでも、家の鍵は変えた方が良いだろうけど」
碧が笑いながら言う。
「流石に、家の中の物を売り払われたら鍵は変えるでしょう。
結局、同居してない家族だから証拠があれば窃盗罪で起訴する様に警察に要求するのは可能らしいけど諦めたって言っていたから、鍵を変えるのと遺言書を作成する程度しか出来ないだろうけど」
なんか、民事不介入って事で、妹が腕時計を売り払ったと分かった時点で警察からは『妹さんなんだから被害届も引き下げますよね?』と言う感じな対応だったらしい。
杉原氏が弁護士に相談したら一応告訴する様に主張するのは可能だが、警察もあまり協力的じゃ無い場合が多いし、昔から自分に何かが遭った際にはあげると言われていたと主張されたら水掛け論になって、裁判は難しいと言われたらしい。
弁護士費用や、妹が有罪になったところで両親の世話の問題があるしと言った事を考え、諦めて妹を排除する目的の遺言書だけ作ったと杉原氏が先日教えてくれた。
「まあ、殺されかけたので遺言書から排除したし、今後は顔も見たく無いし父親が怪しい状況で死んだら殺したのではと警察に相談すると知らせる程度しか現実的には出来なそうだよね〜。
父親にお酒を飲む様に唆す程度じゃあダメだけど、少なくとも階段の上から突き落とすのはやり難くなったんじゃない?」
碧がこちょこちょと源之助の肉球を擽るように撫でながら言った。
「だね。
将来の不安からお金が欲しくて変な事をしているなら、損害賠償で訴えたところで結局払うのは親になりそうだし」
杉原氏の親がどのくらいお金を持っているのかは知らないが、母親が施設に入り、父親がそこそこ深酒するだけの資金力はあるみたいだからねぇ。
今時の高齢者だったらそれなりに年金もあるのだろう。
妹の方は、離婚のタイミング次第では年金だけでは生活するのに足りなくなるかもだけど。
マジで、遺産が減らない様にと父親を早死させる為にお酒や塩分過多な料理を出してそう。
もしかしたら父親が長生きする方が年金が定期収入になって良いのかもだけど。
でも、それだったら高齢者にガンガン酒を飲めば良いとは言わないと思うが。
介護疲れでノイローゼになっているなら、そこまで計画性を持って考えてはいないのかもね。
母親が施設に入ったのだったら介護疲れもかなり解消されただろうし、まともな状態に戻ると期待しておこう。
なんだかんだ、碧と気軽な噂話的に杉原氏のこれからのことを話していたら電話が鳴った。
この呼び出し音は退魔協会だ。
流石にこんなに早くこないだの杉原氏の治療もどきがバレて苦情の連絡が来たとは思えないから、何か依頼かな?




