侵入痕跡は最小限に
ウルフ君を運ぶためもあってか、吉野さんは車で来ていた。
それに乗せて貰って、〇〇中央病院へ。吉野さんには馴染みのない病院だったが、実はカーナビで調べてみたところどうやら吉野さんと杉原氏の家の最寄り駅から電車で5駅ほど真っ直ぐ言った先の駅の近くにあった。
「藤山が病院にお見舞いに来た日に突然患者が昏睡状態から復活すると色々と面倒な事になるかもなので、吉野さんが一人で受付で名前とか見舞い先の情報を書いてもらえます?
私たちに関しては書かずに素知らぬふりをしておいて下さい」
病院に着き、ウルフ君に車で暫く待っている様に吉野さんが言い聞かせて車を降りたところで、受付について吉野さんに頼んだ。
ビジターパスっぽいものが無いと看護士とかに止められるかもしれないが、弱い認識阻害の結界を私と碧の周りに展開しておけば、忙しい看護士だったら無視するだろう。
車の中でそっと杉原氏に念話で確認したところ、個室に居るらしいので部屋にさえ入れれば誤魔化しやすい筈。
大部屋じゃなくて助かった。
一応大部屋でもプライバシーの為にスクリーンで各ベッドが仕切られているかもだが、そこに入る人数が何人だったかは退屈している同室の入院患者に見られてしまうだろう。
流石に大部屋の患者全員が一斉に眠り始めるのは少し怪しいだろうし。
「分かりました。
じゃあ、ちょっと受付に行ってきますね」
私のリクエストに特に違和感は感じなかったのか、吉野さんはあっさり頷いて受付の方に向かった。
生き霊を祓える祈祷師が現在医学の塊である病院とあまり仲が良くなくて、来た事を知られたく無いと言うのは当然な事だと思ったのかな?
ある意味、ウルフ君に関しては何にも治療行為はしてないんだけどね〜。
と言う事で、軽く私と碧に認識阻害の術を掛けながら吉野さんを待つ。
受付にはちょっとした列が出来ていたが、比較的サクサクと進んで、暫くしたらビジターパスらしきカードを首から掛けて吉野さんがキョロキョロしながら私たちと先ほど別れたところに来た。
「部屋は分かりました?」
碧がそっと声を掛ける。
一瞬びくっと驚いていたが、弱い認識阻害なので声を掛けられたら私たちに気付き、吉野さんが少し首を傾げつつも頷いてエレベーターの方へ動き始めた。
「西棟の4階だそうです」
と言う事でエレベーターに乗る。
下手にエレベーターの防犯カメラに私らと吉野さんが会話している姿が残って病院側の人間の注意を引いてしまったら困るので、エレベーターでは偶然一緒に乗った他人のふりをするよう、吉野さんには言っておいた。
ちなみに杉原さんは本人に聞いたところ、職場で他の人が資料を取ろうとした際に棚の上から重い箱が落ちて来て、運悪く側を歩いていた杉原さんの頭に当たって意識不明になって救急車で運ばれたらしい。
緊急連絡先の家族として遠方にいる妹が病院から電話を受けたのだが、数日後に短時間だけ顔を出して入院に必要な書類に記入して姿を消したので、結局何が悪くて意識が覚醒しないのかを杉原氏は知らなかった。
確かに、家族とかいった説明する相手がいないと、病院の人間が意識不明な患者の周辺で何が問題なのか話したりしないよね〜。
よく分からない脳の問題で意識が目覚めず、何故か今日になって覚醒したって言うのだったらまだ良いのだが、露骨に何か問題があったのにそれが奇跡的に治っていたら病院側に回復師の介入を疑われかねない。
特に、碧が病院に訪れた姿が防犯カメラに写っていたら不味いだろう。
一応メガネと帽子とマスクで誤魔化してるんだけどね。
看護士でも捕まえて、何が悪いのか吉野さんに尋ねさせないとね。
どの位病院とか退魔協会から後から疑われて裏を探られる様な言葉を掛けられるかは知っておきたい。
「一応、看護士に声を掛ける際に何が問題で意識が覚醒しないのか、聞いてみて貰えます?
個人情報だから家族じゃ無い人間に詳細は教えないでしょうが、原因不明でいつ目覚めてもおかしく無いかどうかぐらいは言ってくれるかもなので」
4階でエレベーターを降りて、吉野さんが教わった部屋番号へ進みながら頼んでおく。
ついでにこっそりクルミにその看護士にくっつかせて、表面意識でいいので読んで露骨にレントゲンとかCTやMRIスキャンで証拠が残っている様な異常があるか、分かると期待したいな〜。




