死霊使いはお断りしたい
「取り敢えず、源之助と家に戻って今日はしっかり遊んでご機嫌を取ろう!
その間に、青木さんが何か知らないかメールで聞いてみようか」
碧が提案した。
直ぐに青木氏に会いに行くかと思ったが、源之助のご機嫌取りを優先するらしい。
「そうだね。
ちなみに、見つかったら碧が清めの大部分を担う羽目になると思うけど、良いの?」
碧も私もやろうと言う気が満々だが、実際に清めるのは碧の方が向いているんだよねぇ。
ある意味、蠱毒になった状態の死霊を使い魔として利用するならそれは死霊術に近いので、死霊使いに適性がある黒魔術師にもできる。
使い魔として支配下に置き、使い潰すとか、ある程度消耗させた後で解放するって言うのなら私でも出来るんだけど、穢れまみれになっちゃってると普通の使い魔としての契約は難しいんだよねぇ。
まあ、わたしは死霊使いとしての経験は前世でも無いので、ある程度の試行錯誤が必要になるだろうが。
でも、非業の死(ペットにこの言葉が当て嵌まるのか知らないけど)を迎えて怨みと苦しみで穢れ塗れな犬や猫達と契約を結ぶのは遠慮したいし、そんな霊の使い道なんて呪詛に近いようなのしか無い。
うっかりしたら来世がまたゴブリンになりかねないので、清めて昇天させてあげるの一択なので、碧がやる方が向いてるんだよねぇ。
「勿論よ!
可哀想な犬や猫の霊を慰めて昇天させてあげなきゃ!
ただねぇ。下手に大々的にやると多頭飼育崩壊なんぞやらかしたアホ達に後始末よろしく!みたいな感じで次々と縋られそうなのが問題かも」
碧が途中から微妙そうな顔になった。
「こう、放置しているとそのうち呪師とか死霊使いとかが蠱毒の残滓を収穫しに来ちゃうかもなのが心配だけど、だからと言って私らが自発的にそう言う現場を探して清めているって知られるとタカリが際限なく集まりそうだよねぇ。
タカリを避ける為に特に危険なのを私らが人知れず清めてたら、多頭飼育崩壊があっても霊的な問題は起きないと思い込むアホも出てきそうだし」
この国に死霊使いがいるのか知らないけど、少なくとも以前渋谷の方でテロをやろうとした大陸から来た術師は死霊使いだった。
そう言う技術を日本で広めるクソッタレもいるだろうし、自分で手配しなくても蠱毒状況を作り上げるバカが日本で頻出していると知ったら、それを収穫しに日本に来るようになると思う。
多頭飼育崩壊って、ブリーダーが劣悪な環境で母猫や母犬に繰り返し出産を強いるのを禁じる規制を国が作ったせいで強制的に引退させられた母体や、ペットショップで売れ残って無条件に愛らしい時期を過ぎちゃった犬猫を殺すのを禁じた規制のせいで、売れ残った仔を受け入れる先が良い加減に運営していて起こすケースも多いと聞いた。
そう考えると、犬猫の虐待を禁じる規制なんぞ無さそうな大陸の大国じゃあ蠱毒状況を作ろうと思ったら自分で色々と頑張らなきゃいけない。
それが日本では善意もしくは利益目的で始めた連中が、収拾がつかなくなってもちゃんと対処しないせいであちこちで蠱毒状態が自然発生的に起きているのだ。
悪の術師にとっては美味しすぎる収穫場だろう。
しかも、次から次へと起きているようだから、本国に帰らずに適当に呪ったり暗殺したりする依頼を受けつつ多頭飼育崩壊現場の噂やニュースを適当に拾って蠱毒状態で死んだペットの死霊を集めて回ればいいのだ。
マジで日本の治安にも悪影響が出そう。
とは言え、それで死霊使い達が裏社会の殺し合いとか、裏金が好きな政治家とかを殺す依頼だけを受けるならある意味良いんだけどねぇ。
でも、残念ながらまともな事業家とか、真摯に国の為に動いていて金で買収されない政治家とかが狙われる可能性の方が高そう。だからやっぱ死霊使いが集まってくるような状況を放置するのは良くないよね。
「青木さんに何かいいアイディアがないか、相談してみよう。
そう考えると、メールで聞くのは無しかな?
いや、多頭飼育崩壊がこの近辺でどのくらいあるのか確認してもらって、その事について話し合いたいって予約を入れようか」
碧が言った。
「だねぇ。
考えてみたら、あの獣医が行ったボランティアにしたって、ここ近辺じゃないかも。
ここら辺だったら耕作放棄地が出たら面倒でもちゃんと手続きして農地から正式に用途変更させて家なりマンションなりを建ててるよね」
もう少ししっかり獣医の記憶を読めなかったのは痛い。
源之助があまり暴れなかったから、どさくさ紛れに獣医に触れるにしても一瞬以上だとちょっと怪しいかなと遠慮したんだよねぇ。
まあ、青木氏がお手上げだったら、後輩が多頭飼育崩壊に関するレポートを書こうとしているのでちょっと情報を下さい〜とでも言ってあの獣医に連絡しよう。




