どうやって探すか
「は〜い、良い子だねぇ、ちょっとじっとしていてね〜」
獣医が優しく話しかけながらアシスタントの人に手伝って貰いながら器用に源之助の手足を押さえ込んで、後ろ足の毛を分けてアルコール消毒し始めた。
あれ?
「猫って首の後ろあたりが痛覚があまりないって話だから、そこに注射をするんじゃないんですか?」
暴れるようだったら一時的の源之助の痛覚を麻痺させても良いけど。
「猫用のワクチンってごく稀に、その刺激から腫瘍ができちゃう事があるんですよ。
そうなったらそれを切り取る必要があるんだけど、首の後ろじゃあ危険でしょう?
だからちょっと痛いけど、足でやるんです」
獣医が説明してくれた。
「そうなんですか?!」
ワクチンで腫瘍?!
もしかして、アメリカの大統領を輩出したような名家出身の政治家が、あの頭のおかしい大統領に協力した見返りで保健福祉長官にしてもらい、次々と予防接種をやめさせてるけど。もしかして人間もワクチンで腫瘍ができるの?
いや、でもあの大統領とか保健福祉長官は予防接種で鬱病になるとか、自閉症になるとか証拠もなく主張しているだけで、癌になるとは言ってなかった筈。
あいつらだったら100万人に一人でもワクチンのせいで腫瘍が出来た患者がいたらそれを声高に主張していただろうから、人間はワクチンでは腫瘍にならないんだろうなぁ。
猫のワクチンだけ、腫瘍になるような薬を流通させているなんてちょっと酷いという気がする。
それ以外だと効果が下がるんかね?
まあ、それはさておき。
それほど痛くなかったのか、源之助は大人しく注射を受け入れ、次に採血もされている間もそれほど暴れず、シャー!と威嚇もしなかった。
良い子だね〜。
獣医が注射器を片付けている間に碧が源之助を撫で回して褒めまくっておく。
「そう言えば、大分とお疲れなようですが、今の時期ってやっぱ健康診断とか病気で駆け込んでくる患者とかが多いんですか?」
よく知らない人に『疲れて見える』なんて言うのは失礼かもだが、まあ実際に目の下にかなりの隈があるし、許してくれると期待しながら話題を振る。
「いえ、患者が普段より多いわけじゃあないんですよ?
ただ、窓を開けたり散歩に行ったりする人が増えるようになると多頭飼育崩壊なんかの報告が増えて、先生がそう言う現場の手伝いにボランティアで行く事が増えちゃっててそちらが大変なんです」
笑って誤魔化そうとした獣医を遮って、アシスタントの人が応じた。
そこまで疲れるならボランティアを減らせと言いたいんだろうなぁ。
でも、問題はボランティアに行ったからって訳じゃあないんだよ。
と言うか、ボランティアに行ったのが原因だけど、理由はアシスタントの人が思っているような常識的な原因じゃ無いと言うべきか。
「あ〜。
多頭飼育崩壊ってやっぱ助からなかった子とかも多いんでしょうねぇ。
多くの死に触れる羽目になってしまった場合は、終わった後に神社とかで厄祓いをする方が良いかもしれませんよ?
あの西の方にある〇〇神社なんか、ペットの埋葬なんかも真摯にやってくれるんですよ。だから多頭飼育崩壊で犠牲になってしまった犬や猫の霊が昇天できずに彷徨っている場所に行った後にはあそこで厄祓いしてもらうと、儚くなっちゃったワンちゃんや猫ちゃん達も次に行くべき方向が分かるかもですし、先生もスッキリするしで良いかも知れませんね」
あんまり熱心に勧めると頭がおかしいのかと思われかねないが、お葬式から帰ったら塩を振りかける日本だったら有りえそうな程度だと期待する言葉で厄祓いを勧めておく。
「あ〜。
確かに、普通に可愛がられて死んじゃった子達ならまだしも、あの状況で死んじゃったら彷徨っていても不思議はないかもですねぇ。
今度の休みにでも、行ってもます」
何か思い当たると言うか納得できる点があったのか、獣医がちょっと疲れたように頷いた。
「忙しいなら電話で頼めば仕事の前や後の朝や夜でも対応してくれる事も多いですよ?
ちなみに、そんな酷かった現場って良くあるんですか?」
その多頭飼育崩壊の現場も穢れだらけだろう。
そのうち青木氏経由で何か依頼が入るかもだが、蠱毒チックになっている現場を見つけ出せそうならちょっと清めてあげたい。
「それ程多くはないんですけどねぇ。
ちょっと立て続けに何件か発見されちゃったせいで……」
獣医がため息を溢したが、それ以上は教えてくれなかった。
やっぱ守秘義務とかがあるのかな?
不動産屋がそう言う多頭飼育崩壊の現場の後始末とかその後の売却に声を掛けられると期待して、青木氏に聞いてみよう。
彼も知らなかったら、ハネナガに探してもらうかなぁ。
カラスの霊ってどのくらいそう言うのを探すのに向いているか知らないけど。
というか、私が呼ばない時ってハネナガはフラフラ飛び回っているみたいだから、知らないか先に聞いてみるのもありかも?




